いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

大相撲改革は警察主導になる

2011年02月16日 | たまには意見表明
 先日、「大相撲八百長報道の意図するもの」で考えてみた続きです。八百長が明白になったとして、大相撲をどうやって再生するべきかということですね。

 まずは徹底したソフトランディング。八百長を認めた数人を追放して、トカゲの尻尾切りで納得してもらう。理事には警察出身者の名前を借りる。世界には大相撲どころでない難問が山積みになっています。野次馬的に騒いでいるだけの人も、そのうち小向美奈子が収監されたりすればそっちに目を向けるだろう、という日本相撲協会が考えていそうな近未来像。

 大相撲のファンは何十年と年季の入っている人が多く、だいたい八百長がありそうだなんてことは言われるまでもなく承知しています。こうした通(つう)の人は優しいですから、本場所が再開されればまた切符を買ってくれるでしょうし、テレビも見てくれるでしょう。相撲が格闘技だったのは野見宿禰(のみのすくね)と当麻蹴速(たいまのけはや)が命懸けの勝負をした時代のことであって、こうした優しいファンは、興行として年間に本場所で90番、地方巡業やトーナメントでも多くの取り組みに出場するプロの力士にそこまで要求しません。たまにいい立ち合いがあれば、「ガチンコ」と言って誉めてくれます。

 こういうタニマチが求めるのは、単なる強さじゃなくて様式美だと言われます。だから勝負に強くても外国人は駄目、と臆面もなく言えるわけ。こうしたお爺さん連中が望むのは、ある意味で歌舞伎みたいな伝統芸なんでしょう。歌舞伎では、例えば牛若丸と弁慶のどちらが勝つかなんて最初から決まっています。でも誰も八百長だなんて怒らないでしょう?相撲も同じとは言わないまでも、ある程度の筋書きは許容してきたんです。血筋が良くないと主役になれないのも、大相撲の外国人排斥に似ていますね。


 ただこれでは昔からの「大人の事情」を解さない新しいファンが離れていく危険がありますし、NHKも老人専用の中継番組にはしたくないでしょう。お爺さんの多い横綱審議会などはソフトランディングが心地よいと思いますが、新聞やネットで改革案を出してくれている文化人や財界人は、八百長を排してもっときちんとした勝負にしたいようです。

 例えば、取り組みが前もってわからないように当日まで秘密にするとか、負けたら終わりのトーナメント戦を導入するとか、有効な提案はいくつも出ています。テニスやゴルフみたいにオープン参加にして、部屋に所属しないフリーの力士が出場できるようにするとか、横綱や大関のような肩書きは名誉職にして、収入の過半を賞金が占めるようにするとかも考慮すべきでしょう。フリーの力士が出場できるようになれば、例えばハワイの力士がそのまま土俵に上がり、モンゴルの力士が幕内力士と対戦するようになる。あるいはフットボール出身のボブ・サップみたいな選手が出場してくる。こうなるとノスタルジックな観点からは許容できないかもしれませんが、土俵が活性化して真の大相撲に近付く気もします。

 素人が本場所に出ちゃ危ないって?それなら本場所出場者を決める予選を開けばいいでしょう。相撲の盛んなハワイやモンゴルに教習所を置いて、予選の大会を勝ち残った選手だけ本場所に上げればいい。ボクシングや総合格闘技だってやっていることです。鎖国で外国人選手やアマチュア選手をほとんど排斥して、守りに徹してきた今までの方針を変え、本当に相撲を国際化するために攻めに転ずるのです。日本のローカル競技だった柔道が、世界に進出して"JUDO"という最も普及した格闘技になったのを見習えばいいでしょう。


 まあでも、残念ながらソフトランディングで終わっちゃうんだろうなというのが私の予想です。何しろ相撲協会の体質を変えたくない人が多すぎる。実はその「変えたくない」筆頭が題名に書いた警察だという気がしているのです。

 メールを公表して八百長を裏付けた警察が、なぜ改革に反対するかって?

 だって、談合の通じない外国人力士が増えたり、オープントーナメントになったりして真剣勝負ばかりになったら、警察の介入する余地がなくなるじゃないですか。今この時期に、これだけの規模でメールを公表したのは、かなり周到な計算があるのだと思います。相撲協会は全力士に携帯電話提出を求めるなど、一応は八百長の全貌解明に努力しているようなポーズを取っていますが、「古いのは壊れた」とか「機種変更した」とか言われて調査が進んでいないようです。

 でも、警察が強制捜査に進んだら?

 八百長は法律で禁じられていないらしいので立件の対象でないにしても、野球賭博あるいは相撲賭博の容疑はあるわけです。強制捜査の理由なんてどこからでも出てきます。いや、既に相当の証拠を押収しており、公表分はそのごく一部だと見るのが合理的じゃないでしょうか。それじゃなぜ全部公表して、水面下の八百長を白日の下に曝さないのかと言われれば、恐らくそれは警察の温情です。まあ、金の卵を産むがちょうを殺さないことを「温情」と言うならです。

 大阪場所が中止になるタイミングで公表したのも、温情の表れかもしれませんね。自前の両国国技館で開催できる東京場所と違って、会場を借りて行う地方場所の収益は相対的に少ないはずですから、大阪場所が中止になっても過大な損失にはなるまい、ということでしょう。ただ、相撲協会に任せておくと全容解明が進まず、ずるずると次の場所も中止になる可能性はあります。

 警察は今回の事件で相撲協会に恩を売ると同時に、「私たちが何を求めているのかわかってるでしょうね?」と圧力を掛けているのだと思います。もし警察の意向に背いた方向で改革が進むなら、その時は残りのメールをぶちまけて相撲協会を焼け野が原にしてやるぞ、という暗黙の脅しじゃないでしょうか。このように空想すると、相撲協会は警察出身者を理事に採用するのは当然、その他にも極めて警察寄りの改革手段しか取れないだろうということになります。

 私の本心では格闘技としてのオープンな"SUMO"が希望なので、警察とお爺さんしか喜ばないような路線を改革と呼びたくないのですが、今は悪い予想が当たりそうな気がして相撲への興味を日々失っています。できれば誰かに「違う!」と言って頂きたいのですが。
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