
魚雷に、搭乗員1名が辛うじて乗り込むだけの操縦室を取り付けた特攻兵器「回天」。

この展示室の決戦兵器には、大和などに少しは感じられた華やかさとか誇りといったものが一切感じられません。戦局が窮まり、切羽詰まった中で考案、実行された自爆兵器ですから。

「回天」では100名以上の搭乗員が戦死しています。その他にも訓練中の事故で亡くなった人や、他の特攻兵器で亡くなった人が少なくありません。身の程知らずの戦争遂行は国民に多大な犠牲を要求しました。

搭乗員として戦死された塚本少尉の遺影と遺品が展示されています。享年21歳。

こちらは2人乗りの「海龍」。いずれにしても特攻兵器で、乗員の生還は想定されていません。不気味な存在感が回りを圧します。この異様な空気の前では、十分の一大和は所詮模型だなと感じます。

敗色が濃厚になり、設計も生産も不自由な中で、ただただ搭乗員の自爆のみを目的とした、いわば手抜き兵器。この不細工な工作精度を見て下さい。こんな物に前途ある若者を乗り込ませて、人間魚雷に仕立て上げていたのです。

精度のない工具で穿ったような穴。搭乗員の嗚咽が漏れ聞こえてきそうな錯覚がします。戦争の現実というのがどういうことだったのか、この展示こそできるだけ多くの人に見て頂きたいと思います。