いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

ヤマハがベーゼンドルファーを買収

2007年11月30日 | 極楽日記
 朝のニュースを見ていたら、スタインウェイ、ベヒシュタインと並ぶピアノの名門、オーストリアのベーゼンドルファー社をヤマハが買収すると報道され、ちょっと驚きました。コンサート用のグランドピアノでは定評があったものの、売れ行きは低迷しておりヤマハの資本参加を受け入れたそうです。

 ベーゼンドルファーの生産規模は年産300台から400台と言われており、同じコンサート用の最高級ピアノを生産するスタインウェイが早くからアメリカに進出し、年産2,500台規模まで拡張した(それでもヤマハより2桁少ない)のとは対照的に、本拠地であるウィーンの古い工房でこつこつと生産を続けていたようです。今回の買収金額は23億円と推定されていますが、年産わずか300台の会社に対してこの金額は見合うものでしょうか?それとも安い買い物でしょうか?

 まずベーゼンドルファーはヤマハの資金で経営が安定しますし、世界中に拠点のあるヤマハの販売およびサービスネットワークを利用できますから、もう少し売り上げを増やすことができるでしょう。もう少し、と言うのは大幅な規模拡張を望んでいないだろうからです。世界各地のコンサートホールや音楽学校がスタインウェイを選ぶのは、高級ピアノ製品の供給とサービス体制で同社が優れた体制を整えていたからです。プロの道具はメンテナンスなしでは使えませんからね。ヤマハの協力でサービス体制がスタインウェイに並ぶのなら、ベーゼンドルファーを検討するホールも増えるでしょう。

 アコースティックピアノの販売は少なくとも日本では頭打ちです。しかし中国やインド、中東などが経済的に発展するにつれて、ピアノの需要も拡大すると予想されます。ヤマハのアジア市場攻略に当たって、ベーゼンドルファーのブランドは利用価値があるでしょう。

 ライバルであるカワイがスタインウェイのライセンスで「ボストンピアノ」を生産しているように、ベーゼンドルファーも中級ブランドに展開してくるかも知れません。ボストンピアノの場合はスタインウェイが主導なので、カワイは下請けとして生産するだけですが、ベーゼンドルファーの場合はヤマハがコントロールできるため、新しいブランドで大きな利益を上げることも見込まれます。

 またヤマハが世界先端を走る音源ビジネスでも、ベーゼンドルファーは利用価値があるでしょう。クラビノーバの高級ラインに「ベーゼンドルファー音源使用」となれば興味のあるファンは少なくないはずです。

 こうしたブランド価値を考慮すれば、世界最大の楽器メーカーであるヤマハにとって買収金額は高くないと考えます。むしろ、この金額ならどうして他の会社が手を出さなかったのだろうとも思いますが、これは安易な他業種による買収やブランドの乱用によりベーゼンドルファーの価値を下げられることを憂慮した結果でしょうね。ヤマハならコンサートグランドピアノでも新参ながら定評があり、ベーゼンドルファーのブランドを毀損することなく守ってくれるだろうと判断されたのだと思います。コラボレーションの成果が楽しみです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする