地球博でも大人気だった「となりのトトロ」の舞台、「サツキとメイの家」です。
古い家という設定ですが、デザインは当時としてはモダンな感じです。妻部分の屋根が少し下に被っている、ドイツ破風(多分、戦争中のドイツ兵の鉄かぶとに似ているから)と呼ばれる急勾配の屋根の形とか、羽目板を少しずつ重ねて張る、白いよろい張りの外壁(ラップラウンドサイディング)とか、日本じゃなくてヨーロッパの童話に出てくるような住宅です。
「トトロ」の設定年代である昭和30年に、こんな古家があったとしたら、建築は戦前ですね。田舎ではとても目を惹く家だったでしょう。当時は和風建築が当たり前でしたから、こんな建物はわざわざ「洋館」と呼ばれていました。私の子供の頃は、北海道の開拓地に行くとこんな建物が名物であるとされていましたので、一般の田舎では珍しかったのでしょう。
よく見ると、後ろ半分は燻し瓦も重厚な和風建築です。
前半分も、掃き出し窓を見ると、既存の和風建築を改装したもののように見えます。ここは引き違い戸だったのを観音開きの窓に変更したのでしょう。開口部が大きく、窓と窓の間の補強も控え目であり、構造的にはかなり無理をしているようです。中古住宅として見ると、悪質リフォームに近いことをしています。
後ろ側は普通の田舎家ですね。床下に風を通して湿気を防ぐ構造です。湿気はこもりにくい反面、基礎構造が脆弱で地震や地盤の変形には弱いと考えられます。住宅としては建築許可が下りないはずですので、展示物として作ったのでしょうね。
水も井戸で汲み上げます。遊びに行くだけならこれも楽しいでしょう。
遠くから見るとこんな感じです。住宅にしっかりとしたファサード、つまり顔があるというのはいいことです。