『罪悪』 フェルディナント・フォン・シーラッハ ☆☆☆★
『犯罪』が素晴らしかったシーラッハの第二短編集。やはり水準以上のクオリティはキープしているものの、前作ほどのインパクトはなかった。共通するフォーマットが感じられ、融通無碍の展開を見せてくれた前作と比べるとバラエティの幅は狭まった感じがする。それから、最初の「ふるさと祭り」をはじめとして、痛ましい事件が多いのも本作の特徴である。
文体は相変わらず簡潔さとクールさが際立っていて、それが痛ましく残酷な事件の様相とあいまって独特の読後感を残す。読み流そうと思えばさらっと読めてしまうが、読者の心の中に気がかりな何かを残していくのである。そういう意味で言うと、一見淡々とした端正さのせいで瀟洒にすら思える短編集であるけれども、実は結構重たい。
そんな中、一番長い「鍵」は他の短編と毛色が変わっていて、ちょっとコミカルなところもある、しかし切れ味鋭いノワールである。登場する女仕事人が非常に印象的だった。前作の「正当防衛」を読んだ時も思ったが、この人にマンシェットみたいな長編ノワールを書かせたら面白いものが出来るのはないか。それから最後に収録されている「秘密」は、まるでリラックスしたアンコール演奏みたいな、ユーモラスで笑える短編である。シリアスで冷たい本短編集の後味を和らげている。
『犯罪』が素晴らしかったシーラッハの第二短編集。やはり水準以上のクオリティはキープしているものの、前作ほどのインパクトはなかった。共通するフォーマットが感じられ、融通無碍の展開を見せてくれた前作と比べるとバラエティの幅は狭まった感じがする。それから、最初の「ふるさと祭り」をはじめとして、痛ましい事件が多いのも本作の特徴である。
文体は相変わらず簡潔さとクールさが際立っていて、それが痛ましく残酷な事件の様相とあいまって独特の読後感を残す。読み流そうと思えばさらっと読めてしまうが、読者の心の中に気がかりな何かを残していくのである。そういう意味で言うと、一見淡々とした端正さのせいで瀟洒にすら思える短編集であるけれども、実は結構重たい。
そんな中、一番長い「鍵」は他の短編と毛色が変わっていて、ちょっとコミカルなところもある、しかし切れ味鋭いノワールである。登場する女仕事人が非常に印象的だった。前作の「正当防衛」を読んだ時も思ったが、この人にマンシェットみたいな長編ノワールを書かせたら面白いものが出来るのはないか。それから最後に収録されている「秘密」は、まるでリラックスしたアンコール演奏みたいな、ユーモラスで笑える短編である。シリアスで冷たい本短編集の後味を和らげている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます