レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

尊厳者誕生日!

2006-09-23 05:42:27 | ローマ
 9月23日はアウグストゥスの誕生日。
 でも「オーガスト」が8月なのは、「私の生まれた9月よりも、むしろ8月をとったのは、最初の執政官に就いたのがたまたまこの月で、そして特別輝かしい勝利を収めたのもこの月であるから」--スエトニウス『ローマ皇帝伝』の31節。これは、個人よりも公優先、独裁にあらずというアピールなんだろう。

 『皇帝伝』などで誕生や幼少時について注目してみる。

 その前に、『絵画で読む聖書』中丸明 から一言。
 この中丸氏は、イエス誕生時のヘロデ王による赤ん坊殺し(「えいじ」という語が変換できない!「えいじ虐殺」のほうが雰囲気出るのに!)はマタイの捏造だと主張している。ほかの福音書にも史書にもなく、史的にも無理があるが、偉人の生涯は苦難と奇蹟で飾ったほうがかっこつくから、モーセの例を参考にして創ったのだろうと推察している。

 「この背景にはまた、初代ローマ皇帝アウグストゥス帝(在位前27~後14年)の誕生伝説が見られる。
 これに拠れば、シーザーの死後、ローマの元老院は、二度と国王を推戴すまいと、アウグストゥス誕生の前63年に、イタリアで生まれたすべての男児を殺させ、それによって預言された、新しい独裁者である幼いアウグストゥスを、確実に排除しようと、決定を下した、ということになっている。」

 ここまで読んで、・・・そんなムチャクチャな、と多くの人が思うだろう。カエサルの死が前44年なんだから。年代がおかしいぞ。どこかで誤解が混じったな。
 でもその年代のミスを除けば、スエトニウスにもある話だ。94節には、生まれる前や幼少時の予兆が記されている。
「生まれる数ヶ月前に、ローマの公共の場所に奇怪な現象が起り、これを占った者は、「造化がローマ国民のために王を孕んでいるのだ」と警告した。元老院は恐慌をきたし、「何人もこの年に生まれた子を養育してはならぬ」という議決を行う。しかし自分の妻が身ごもっていた元老院議員たちは、この予言をそれぞれ勝手に自分の家族にあてはめ、さきの議決を国庫に持ちこまぬように工作したという」
 こういうの、たいていはあとからつくられたのだろうけど。
 蛙に「黙れ」で黙らせた話も笑えるけど、鷲が幼い彼の手からパンをさらい、舞い上がり、また返したという話も想像をかきたてられる。この鷲はきっとユピテル(ゼウス)だったんだ。ガニュメデスの引退後に備えて、可愛い子をまたスカウトしよ~という目的で降りてきていたのに違いない。神々しく(?)解釈するならば、パンを取ったのは貢物を受け取ったの意味で、それを返したのは、地上の支配権を与えたこと。少なくとも、こういうエピソードを広めた側ではそういう意図だろう(マエケナスは面白がってプロデュースしていそうだな)。 クィントゥス・カトゥルスその他の夢で、ユピテルの膝に抱かれているとか、「その子の可愛い唇に触れた指を~」なんて場面も、ユピテルには前科があるだけになにやらあやしくも見える・・・。
 
 誕生花や花言葉は本によって違いがあるけど、「9月23日 白いコスモス「清純」」は合うだろうか? コスモスは、風で簡単にそよぐけど、完全に倒れずにぐぐっと起きてくるしぶとさがハマっている。

 お産に立ち会って会議に遅刻したガイウス・オクタヴィウスさんの心のうちは、カティリーナのことなんてどうでもいいくらいハイだったに違いない。
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