レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

宝塚『アウグストゥス』

2021-07-25 08:52:14 | ローマ
『アウグストゥス 尊厳ある者』
DVDで鑑賞。
 歴史好きの一部に確かにいるローマ史好きにとってはおいしいパート、しかし一般にメジャーであるとは言えないであろうくだり、初代皇帝への道のりという過程が、ついに宝塚歌劇になったとは感慨を覚える。(そりゃまあ宝塚の演目も実のところかなりの雑食らしいけど・・・)

 カエサルの凱旋式へと急ぐオクタ(この話では「オクタヴィウス」で統一されている)、馬を調達しようとして盗賊に襲われ、そこへ救援に現れたのはまさかではなく期待どおりに(少なくとも一部のファンには)アグリッパ。
 ・・・初登場から既に、非力さと鋭さ、そしてアグに対する遠慮なしの人使いの荒さが表現されていて喜んでしまう!このあとアグは連中捕縛に一役かわされたのだろうか。
 
 カエサルがロン毛。
 「ハゲの女たらし」という堂々たる史実があるのに、実際にハゲで表現された例はけっこう少ないと思う。

 白地に赤縁という恰好が多用されているぶん、『暁のローマ』の時よりも衣装のローマっぽさは増しているけど、太もも出したミニスカートはやはり不採用なのが残念である。
(ヘンデルのオペラ『ジュリアス・シーザー』は「プレミアムシアター」で見たが現代ファッションで、ローマ兵は迷彩服に銃をたずさえていた。ミニスカートで舞い踊るローマ兵を見たいものだ)
 ヒロインのポンペイアは、ポンペイウスの娘としてカエサルを仇として狙ったが、オクタの意見で放免された、しかし自分のその憎悪がさらなる多くの流血へとつながってしまったとして・・・
 ネタバレなので行開け。


 ・・・私は基本的に女が死ぬ展開は好きでない(さいとうちほさんの「女はしぶとく生きろ、男は潔く散れ」というポリシーにはかなり共感する)。
 ポンペイア死なせないでほしかった。巫女として祈りで贖罪をということでもおさまるのに。アクティウムで風向きを変えたのは生霊でもできるということで!
 ところで、ポンペイアはカエサルの暗殺のあとで死んだということだけど、では、オクタが神殿で会った巫女姿の彼女はすでに亡霊だったということ?



ネタバレ終わり

 アクティウム海戦を前にアグリッパの歌う『友よ』、
「友よ俺は戦う いつか君が成し遂げる理想の世界夢見て~~かけがえのない君と共に」
これを歌い上げてくれただけでもこの舞台の意義はあった!ありがとう!
 出番は少ないけどもう一人の片腕マエケナスも登場、オクタのプロデュースといった感じ。

 アントニウスは粗野な面を強調している。オクタにたびたび「おまえの心はどこにある?」
 ニーチェが『悲劇の誕生』(読んだことないけど)で秩序、調和、「アポロ的」 陶酔、酩酊、「ディオニュソス的」を対比して論じたことは有名だけど(よくそう言われる)、アントニウスと縁のあるというかなぞらえられる神話キャラはヘラクレスとディオニュソスであり、オクタのイメージキャラクターはアポロンである。(私個人としては神話でアポロンもけっこう賢明じゃない感じがしているし、あんまり秩序というのも似合わないと思っているけど、オクタとのけっこう違うと思うけど)
 さかもと未明さんのマンガでも、アントニウスは自分の感情に流されがちで、そのことを悔いていないようにオクタにも主張している、宝塚での作者もこのマンガを参考にしていたのではという印象を受けた。

 歌詞(特に『友よ』)が知りたいと思って検索したら、「画像」で見覚えのある画風が出てきて、やはりいたるさんだった、もうかった気分。
 ほかの歌はいくつか見つかるけど『友よ』は未発見。
 

コメント (5)
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