レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

3月の新刊 河村、名香、桑田、河

2012-03-28 15:39:54 | マンガ
河村恵利『青野赤原ーー室町足利伝』
 私があまり知らないからといって断言はできないが、戦国末期に比べれば室町時代の初期はやはりマイナーなほうだろう。鎌倉と京都に分裂した一族での争いなので、えーと、ここに出てくるのはどちらの舞台だったっけ?とたびたび迷った。とは言え、だからといって人間関係のドラマを味わうことが難解なわけではない。本人同士に悪意がなくとも、周囲にひきずられたり、気持ちがすれ違ったりして悲劇にもなる、そういう切なさは充分に伝わる。
 義満はほんの少しの出番だけど、寵愛された世阿弥の若かりし頃を河村さんが描いたらどうなるだろうか。
(このへんの過去の名作はなんといっても木原さんの『夢幻花伝』。あの義満はめっぽうかっこよかった~~!)

名香智子『マダム・ジョーカー』10
 『ティーンエイジャー』に登場の、藤原百合子嬢の高校の友達がいい味。
 「熊鈴」(大熊美鈴)はブサイクな秀才、その幼馴染の刃物屋の息子研人(わかりやすい名前だなあ)はマイペースなお気楽者。
 「美人って得だよね・・・(略) 容姿がいい人優先の職業ってたくさんあるし」
 「それは 足が早ければオリンピック選手になれるのと同じだろ?」
 「全然違うじゃない!」
 「同じだろ 身体的に恵まれてるってことで」
 ううむ、違う気もするし、一理ある気もするし面白い。

桑田乃梨子『放課後よりみち委員会』1 幻冬舎 A5
 男子高校生・姫野光里(ひめのひかり)、学校で見知らぬドアをくぐったらそこは別世界、光里はセーラー服の女の子になっており、しゃべるトラとクマとペンギンがいた。その動物たちは先輩たちで、なぜか光里だけが人間のまま。その世界には10年前に先生の友達が逃げ込んでしまったので探してもらいたいという。
 ファンタジーというジャンルを私は好かないけど、こういう、日常の中に不思議なものが混じってるくらいの話だとわりに抵抗が少ない。くわたん流のんびりモードで語られるとゆったりと溶けこめるし。 この人の描く動物も味があるし。
 (ところでこの、性別が変わったり動物になったりという設定をローマキャラで想像したくなった。もちろん、オクタは女の子化して、アグは犬で。)

河あきら『WONDER!』14.5巻  双葉社
 別冊マーガレットを愛読していた時期、私のいちばん贔屓は河あきら(そして市川ジュン)だった。(いまは二人ともレディスにいる)
 数年前、新刊棚で『WONDER!』を見つけたとき、カバー絵で、おおっ、なんて好みの犬!と即座に買い、そのあとで続き物であることに気がついた。一言でまとめれば、超能力犬のワンダーとその飼い主の日夏家の人々のホームドラマということになるだろう。
 数巻買ったところでなんとなく途絶えていたのだが、連載は既に終わっているらしい。かなりたまっているのに、不況のため14巻からあとは飛び飛び収録で16巻までしか出さないーーという予定だった、しかし14巻を読んだ読者から苦情が多かったので、もらしたぶんも出して、このあとは全話収録することになったという話である。それで「14,5」巻などというヘンなものが出た次第、しかもこれが通常の倍以上の厚さ。 そういう裏話を知ったので、その14,5巻を私も買った。
 誰を主人公とみなしていいのかわからんが、保育士の航太、その従妹みや(小学生)、問題のある子供や大人たちもいろいろ登場する。糾弾するのではなく、たいていの人は、なにかしらの救いや改善の余地を持って描かれてほっとさせられる。(いつぞやのニグレクト母はそのあと出てきたのだろうか) アクチュアルな要素もあるし、テレビドラマ向き。
 
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