レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

『残照の記』

2008-04-24 15:06:57 | ローマ
 BLジャンル、日本文芸社KAREN文庫から出た『ローマ、残照の記』、まえにここで予告を転載した。出たので買って読んだ。
 名門貴族の美青年が権力者セイヤヌスに目をつけられ、弟を人質にとられて散々蹂躙されまくる。彼の幼なじみで立場上セイヤヌスに仕える士官は、アントニアの訴え状をティベリウスに届け、セイヤヌスは処刑される。
 まぁ・・・、権力者にいたぶられる美少年、このテの話の設定としてはありがちなのだ。セイヤヌスなんてローマ史になじみがなければ有名ともいえないが、あっても、こいつならどんな悪い役をふってもたぶん苦情は出るまい。
 「先々帝カエサル、先帝アウグスティヌス」なんてミスにツッコミいれたくなるのは仕方あるまい。
 それよりも私がひっかかった点は:主人公の容姿が、ギリシアの血ゆえの黒髪に小麦色の肌がエキゾチック、というのはいいとして、金髪なんて珍しくない、という設定になっていること。そりゃ、世界都市にはいろいろいるだろうけど、ギリシア人だって明色の髪はあるはずだけど(ゲルマン人たるドイツ人だって金髪碧眼ばかりいるのでは決してないし)やはりどちらかといえばダーク系が多数派ではないのか。私がこう思うのは、アウグストゥスの金髪・灰色の目を特徴的なものだとしておきたいからでもあるけど。
 ティベリウスとアントニアは名前しか出なかったな。ひたすらいやらしい悪役のセイヤヌスしか実在人物がおらず(私が知らないだけでチョイ役にいたかもしれんが)、歴史ものという気分になれない。
 さてこの本、売れるのかどうか。
 BLでもライトノベルでも、史実を生かした面白いローマものが出てきてもらいたいものだ。幸か不幸か、スキャンダラスな題材にだって事欠かないし。
コメント
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