街中で内科医院を開業していると数多いMRという薬品メーカーの医療情報担当者と会うことになる。医療情報担当者といっても現実には薬のセールスが第一の仕事で様々な方法で自社製品の売り込みをされる。中には気が合いあれこれとおしゃべりをして友達のようになれ、転勤時には名残り惜しく、記憶に残る人も居る。
新入りのMRにどのような指導がされるのかよく知らないが、各社それぞれの面会セールスのノウハウを持っていると思う。四十年前には塩野義と藤沢のMRは優秀というか定評があった。今ではMRの仕事内容も変わってきたし、薬品メーカーにも盛衰があるから、塩野義に嘗ての味わいはない。藤沢(合併して現アステラス)にはまだ良い社風が残っている感じがする。
患者と医者に相性があるようにMRと医師にも相性があるから、これが絶対という法則や方法はないのだが、それでも優劣の差は出てくる。
どんな申し送りがあったか、高々二三回目の訪問で親しげにサッカーの話を長々としたり、耳にタコができる自社製品の売り込みに最敬礼のお辞儀を連発したり、忙しい時間に用意してきたことを全部話そうとするMR諸氏には、内心うんざりさせられる。
もう何年も通っているのに買って下さいとしか言えない人も居る。失礼ながらもう少し考えろと言いたくなる。上司の厳しい言葉やノルマもあるだろうし、営業職が不向きだったせいもあるだろうか、若いMRの中には辞められる人も居る。多くはないが転職してMRになったという人も居る。二十五年前には女性MRは皆無と行ってよかったが、最近は三人に一人は女性になった。最初は戸惑ったが最近は女性MRにも慣れ、普通にあれこれ話をしている。
最後に貴重なアドバイスをしておけば、診察の合間に五分十分会って、旨い物の話や旅の話が出来るようになれば、第一関門は通過し、良い評価を得たと考えておられるかもしれない。勿論、楽しい話が出来るということは大切なのだが、評価の一番のポイントは役に立つ情報を提供してくれるかどうか、信頼できる人物かどうかにある。ちょいと美人でも、楽しい話ができても私の閻魔帳にはせいぜい一重丸しか付かない。本当に役立つ情報をくれて、信頼できるMRには二重丸、時には花丸を付けている。