マガジンひとり

自分なりの記録

小沢真珠郎

2008-02-11 21:09:20 | 読書

『真珠郎』横溝正史(角川文庫)
鬼気せまるような美少年「真珠郎」の持つ鋭い刃物がひらめいた!その瞬間、すさまじい悲鳴を上げて展望台から転がり落ちた男。夕日が、血塗られた刃物をいっそう赤く照らした…。
休暇中の旅行先で私、椎名耕助は怖ろしい殺人事件に巻き込まれてしまった。滞在することになった旧家の美しい娘・由美とその伯父。事件の直前、不吉な予言を残して立ち去った老婆は何者?
さらに事件で伯父を失い、財産を継ぐことになった由美と、私の友人で滞在中だんだんと不審な態度を見せるようになった乙骨三四郎が婚約するという…。



古本狂時代だった1993~95年ころ、さまざまな古い文庫本の中でもオラを惹きつけてやまなかったのが1970年代あたりの角川文庫。横溝正史の黒地に緑字の背表紙なんてたびたび夢に出てきたほど。
戦後の代表作『獄門島』『犬神家の一族』などでなくて、谷崎潤一郎や耽美系少女マンガに通じる味のある戦前の『鬼火・蔵の中』や本作を先に読んだのが正解だったようである。
しかし今読んでみるとくだらねえなあ…ちょっと冒頭を引用してみましょうか。

真珠郎はどこにいる。
あの素晴らしい美貌の尊厳を身にまとい、如法暗夜よりもまっくろな謎の翼にうちまたがり、突如として世間の視聴のまえに躍りだしたかと思うと最初は人里離れた片山蔭に、そしてその次には帝都のまっただ中に、世にも恐ろしい血の戦慄を描き出した奇怪な殺人美少年。いったい、あいつは、どこへ消えてしまったのだろう。

2時間ドラマ?でなくてマンガ?いやいやこれの書かれた当時にはテレビなんてないし大人がマンガを見る習慣もなかった。考えてみれば誰もが楽しめる娯楽の大きな部分を小説が占めていたのね…
オラが読んだときからしても今はネットが増えて、本を読む時間は短くなるいっぽうで、フィクション小説を読むことはさらに少ない。2006年は6冊で07年には1冊まで激減。どうしても同じ時代に読んでおかなきゃ、と思わせる作品がないことも事実ではあるが、時間争奪戦の厳しい昨今、読書というのもけっこう贅沢なスローライフになりつつあるかも。
古本狂時代に買い漁った昔の角川文庫やハヤカワ文庫がいつまでも手つかずのまま。
このほどスパンアートギャラリーで文庫カバー・イラストを手がけた杉本一文さんのオリジナル・プリントを入手して、しばし横溝正史の世界に浸るとともに、もはやその世界が浮き世ばなれした竜宮城になってしまってることに気づかされた。
しかしこのイラスト、推理小説なのに一部ネタバレしてしまってるよ…おっぱいがあるじゃありませんか。


真珠郎 (角川文庫 緑 304-16)
横溝 正史
角川書店

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