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マガジンひとり

オリンピック? 統一教会? ジャニーズ事務所?
巻き添え食ってたまるかよ

ザ・スリッツ:ヒア・トゥ・ビー・ハード

2019-05-30 18:54:01 | 映画(映画館)
Here to Be Heard: The Story of the Slits@早稲田松竹/監督・脚本・撮影・編集:ウィリアム・E・バッジリー/出演:ドン・レッツ、ヴィヴ・アルバータイン、ポール・クック、アリ・アップ、デニス・ボーヴェル、テッサ・ポリット、ケイト・コラス、バッジー/2017年イギリス

超低予算、情熱だけで作られた作品。この映画は正直で残忍で、生々しいエモーションに満ちている。―テッサ・ポリット(スリッツ)

本作は世界初の女性のみのパンクロック・グループ、スリッツのドキュメンタリー。彼女たちの歴史を70年代中ごろのバンド結成時から、解散以後のメンバー個々のストーリー、2005年の再結成、そして2010年、本作の制作中にがんでボーカルのアリ・アップが亡くなるまでを追う。

アーカイヴ映像や初めて公となる写真の数々、メンバーの証言やファン、プロデューサーや評論家などスリッツに影響を受けてきた面々のインタビューで構成された本作を、まさにアリ・アップの言葉が端的に表わしている。「私は人に好かれようと思ってここにいるのではない。人に聴いてもらうためにここにいるの」。

監督は2011年のデビュー作であるワシントン州オリンピアのバンドKARPのドキュメンタリー映画『Kill All Redneck Pricks: A Documentary Film about a Band Called KARP』が10カ国で上映され好評を博したウィリアム・E・バッジリー。本作は長編第2作となる。 


 
The Slits / Typical Girls (1979)
わめきたてちゃダメ 反抗しちゃダメ
直感だけで行動すればいい どうせ何も決められないんだから

普通の女の子は、すぐ台無しにする
普通の子は、自制心なんてない
普通の子が何を考えてるかなんてお見通し

普通の子になろう
普通の子はとっても素敵

普通の子はいつも何か探してる
普通の子は雑誌を買う
普通の子は彼氏に頼る
普通の子は見栄っ張り
普通の子は反抗しない

誰が普通の子を作り上げたの?
最新の改良型が出てくる?
普通の女の子は普通の男の子と付き合っちゃえ
普通の女の子は普通の男の子と付き合っちゃえ


まるで老人の繰り言のように【福沢諭吉の学問のすすめは当時の識字率を上回るほど売れた】【私の同い年の従弟は親子で在特会・桜井誠の応援に出かけた】【ザ・クラッシュのフロントマン、ジョー・ストラマーは友人の恋人を寝取りたがる悪癖があった】の3つに当ブログで何度も触れてきた。この3つは互いに連環しているように思うし、恐縮ですがこれからも触れることになりそう。今回はもちろんジョー・ストラマーの件。

Pitchforkが1970年代の200曲を選んで発表した際 https://pitchfork.com/features/lists-and-guides/9935-the-200-best-songs-of-the-1970s/?page=1 対抗意識を燃やした私はそこに選ばれていない曲から200曲を選んで発表。堂々の1位に輝いたのがクラッシュのComplete Controlである。完全管理。「ちくしょう、この歌も管理されちまってる!」という自由を求めるストラマーの叫びは、普通の女より友人の彼女に対して欲望を爆発させてしまう彼のエゴと表裏一体で、どちらかが欠ければもう一方も失われ、ストラマーはストラマーでなくなる。

クラッシュの音楽には枠がなく、自由で、バラエティーに富んでいた。2枚組のロンドン・コーリングから1年ほどで3枚組のサンディニスタを発表。驚異のポテンシャルであった。しかし多くの曲を共作していたミック・ジョーンズが抜けると生彩を欠くようになり、解散後の活動もクラッシュ時代に比べ寂しいもので、2002年に50歳で死去。もう彼のエゴは存在しないから、私は安心してComplete Controlの自由を浴びるようにむさぼることができる。

スリッツのTypical Girlsは上記Pitchforkのリストで70位である。恥ずかしながら今回の映画で初めて歌詞を味わった。攻撃的ながら、普通の女の子そのものより、「普通」の基準を決める雑誌や広告の側に視線が向いていて、さしずめいまならバカホやツイッター・FBってことになるのか、鋭さは失われていない。しかし歌詞は凄いが、スリッツはポストパンクの第一集団とも位置付けられており、既に初期パンクの疾走感はない。ダブの影響を受けた混沌としたサウンドで、曲や演奏の魅力は歌詞ほどではない。

映画を見ると、当時の「女性はこうあるべき」という固定観念は非常に強く、音楽もまた男中心の「セックス&ドラッグ&ロックンロール」の世界でレコード会社やラジオや雑誌が主導権を握っており、スリッツの3人(4人の時期も)は先駆者として苦戦を免れなかった。音楽性の幅も広くなく、スリッツが輝いたのは短期間に過ぎなかった。その後の人生もこの映画のテーマであり、華やかではないが、普通の女性の喜びと悲しみがある。

いまはSleater-KinneyやYeah Yeah Yeahsなど作曲能力が高く、おばさんになっても持続できる女のパンク/オルタナティブが定着。一方で、「普通の子の基準」を決める側に韓国や中国が加わってきている—🚺
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25-May-2019 Top 20 Hits

2019-05-27 11:24:19 | Weekly Top 15
1. ← 1. 2 Lizzo / Juice (2019 - Cuz I Love You)
2. ← 5. 6 Wintersleep / Terror (2019 - In the Land of)
3. ← 4. 4 Anna Tivel / The Question (2019 - The Question)
4. ← 12. 2C Duncan / Health (2019 - Health)
5. ← 3. 5Fat White Family / When I Leave (2019 - Serfs Up!)
6. ← 2. 6 David Chalmin, Bryce Dessner, Katia Labèque, Marielle Labèque / Dessner: Haven (2019 - El Chan)
7. ← 18. 3CY8ER / デッドボーイ、デッドガール (2019 - Single)
8. ← 10. 3 Beyoncé / Before I Let Go (2019 - Homecoming: The Live Album)
9. ← 6. 8 Palehound / Killer (2019 - Single)
10. ← 7. 8Die Heiterkeit / Jeder Tag ist ein kleines Jahrhundert (2019 - Was passiert ist)
11 ← 9. 5 The Mountain Goats / Younger (2019 - In League with Dragons)
12. ← 18. 2Jamila Woods / Basquiat (2019 - Legacy! Legacy!)
13. ← 8. 9 Strand of Oaks / Weird Ways (2019 - Eraserland)
14. ← 15. 3 Lucy Dacus / My Mother & I (2019 - Single)
15. ← 16. 4 Avey Tare / HORS_ (2019 - Cows on Hourglass Pond)



16. NEW 1 Alex Cameron / Miami Memory (2019 - Single)
17. ← 11. 8 Kevin Morby / No Halo (2019 - Oh My God)



18. NEW 1 The National / Rylan (2019 - I Am Easy to Find)
19. ← 14. 6Damon Locks, Black Monument Ensemble / The Colors That You Bring (2019 - Where Future Unfolds)
20. ← 13. 6 Big Thief / Cattails (2019 - U.F.O.F.)
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18-May-2019 Top 20 Hits

2019-05-18 20:05:17 | Weekly Top 15
1. NEW 1 Lizzo / Juice (2019 - Cuz I Love You)
2. ← 1. 5 David Chalmin, Bryce Dessner, Katia Labèque, Marielle Labèque / Dessner: Haven (2019 - El Chan)
3. ← 3. 4Fat White Family / When I Leave (2019 - Serfs Up!)
4. ← 7. 3 Anna Tivel / The Question (2019 - The Question)
5. ← 8. 5 Wintersleep / Terror (2019 - In the Land of)
6. ← 2. 7 Palehound / Killer (2019 - Single)
7. ← 5. 7Die Heiterkeit / Jeder Tag ist ein kleines Jahrhundert (2019 - Was passiert ist)
8. ← 4. 8 Strand of Oaks / Weird Ways (2019 - Eraserland)
9. ← 12. 4 The Mountain Goats / Younger (2019 - In League with Dragons)
10. ← 16. 2 Beyoncé / Before I Let Go (2019 - Homecoming: The Live Album)
11. ← 10. 7 Kevin Morby / No Halo (2019 - Oh My God)



12. NEW 1 C Duncan / Health (2019 - Health)
13. ← 9. 5 Big Thief / Cattails (2019 - U.F.O.F.)
14. ← 6. 5Damon Locks, Black Monument Ensemble / The Colors That You Bring (2019 - Where Future Unfolds)
15. ← 20. 2 Lucy Dacus / My Mother & I (2019 - Single)
16. ← 14. 3 Avey Tare / HORS_ (2019 - Cows on Hourglass Pond)
17. ← 11. 9 Rubel / Mantra (feat. Emicida) (2018 - Casas)



18. NEW 1 Jamila Woods / Basquiat (2019 - Legacy! Legacy!)
18. ← 19. 2CY8ER / デッドボーイ、デッドガール (2019 - Single)
20. ← 17. 4 Robert Forster / One Bird in the Sky (2019 - Inferno)
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旧作探訪 #152 — ゼイリブ

2019-05-16 18:43:16 | 映画(映画館)
They Live@早稲田松竹/監督・脚本・音楽:ジョン・カーペンター/原作:レイ・ネルソン/出演:ロディ・パイパー、キース・デヴィッド、メグ・フォスター、ジョージ・“バック”・フラワー、ピーター・ジェイソン、レイモン・サン・ジャック/1988年アメリカ

あなたはもう、誰も信じられない——。

失業者のネイダは、仕事にありついた工事現場で作業員・フランクと親しくなり、彼の紹介で教会の用意したテントで寝起きするようになる。ある日、牧師たちが組織的に殺される現場を目撃したネイダは、教会内で大量のサングラスを発見する。このサングラスをかけると、町ゆく人の一部がガイコツのような姿に見え、広告看板や新聞・TVなどは「OBEY(従え)」「STAY ASLEEP(眠ったままでいろ)」のような命令の言葉に見える。

やがてこのサングラスには、普通の人間と、地球侵略を企む異星人とを見分ける力があると知ったネイダは、異星人と戦う同志たちと知り合い、ゲリラ戦に身を投じるのだった…。

ゼイリブ』は歯止めの効かなくなった巨大な資本主義に対して大声で反対を唱える映画だ。——ジョン・カーペンター

1988年公開の『ゼイリブ』は、ジョン・カーペンター監督がサブリミナル効果による姿なき侵略を描いたカルトSFの快作。異星人による地球侵略=ごく一部の特権階級がマスコミや広告を牛耳り人びとを洗脳&搾取してゆく姿。暴走する資本主義への痛烈な批判は、飼い慣らされる一般大衆への警鐘として、製作から30年を経た現代日本でもさらに生々しく響くであろう。



iTunes時代前期、最優先の1000曲というのを選び、当ブログでも記事化して、入れ替えも行っていたが、近年これを2500曲まで拡張し、さらに予備軍として「アガる~」という選曲リストも整備中で、ブログとの同期は放ったらかしに。総数が増えても、わが国の音楽は逆に減ってゆく。1000曲の中に選んでいた森高千里の「私がオバさんになっても」は、2500曲からもアガる~からも漏れてしまった。

いまになってみると、「男たちは若い女ばかりチヤホヤ・デレデレするな」という抗議の面より、「オバさんになっても私をオープンカーに乗せて見せびらかしてよ」という自慢・広告の面が主であるように感じられ、彼女の曲で2番目に重要と思っていた「青春」でも「失恋して悲しいけど免許も取るしパソコンも買うしロンドンへ行くわ」のように消費礼賛しているし、何より現在の森高さん自身がウシジマくんの今井万里子ばりの全身広告じゃないですか。万里子の趣味が人の結婚を壊すことであるのに対し、幸せな結婚・家庭生活の宣伝も兼ねている森高さんは、家族を人質に取る格好で夫に滅私奉公を強いるニポン資本主義が侍らせるレースクイーン—(^o^≡^o^)


ゼイリブという言葉は、牧師たちが宇宙人の侵略を「彼らは生き、われわれは眠る」となぞらえることから来ている。軍拡と新自由主義の80年代、レーガンの米国をゾンビ的なSFスリラーに戯画化してみせた。アイデアは秀逸ながら、敵を宇宙人としていることで、ゲーム的な世界観というか、主旨と裏腹に戦争や銃社会の肯定につながってしまう安っぽい活劇だ。本当の敵は人間のうちにある。ユダヤ教は偶像を禁止したのに、キリスト教は偶像を前面に立てて大規模に集客した。アムウェイなどのマルチ商法が、統一されたロゴの健康食品などを売るのは、ほぼキリスト教。ナチスのカギ十字も。わが国も江戸時代には弾圧しておきながら、その技術的な部分=人間そのものを資本として国の単位で戦争や貿易に勝つ帝国主義のみ取り入れ、「もっとも成功したプロパガンダ」とも称される軍国主義を実現。

ニポンの大学生が入学式から既に黒やグレーのリクルートスーツ一色である様子は、イワシの魚群が、大きな魚から食べられまいと、一糸乱れぬ集団行動をとるのとよく似ている。大学生も、せっかく勉強したし、学費も払うので、自分だけは助かりたい、安定した大企業に勤めたいから自由や個性より従順さ・規律正しい集団主義をアピール。OECDの調査が始まって以来ずっと、読解力・数学的思考など、わが国の学習到達度は人口が多い国としては圧倒的に高いが、これは逆に知識や情報によって大量の人間を洗脳し、ロボットのようにコントロールできることを示すものでしかない。こんどはBAKA安倍と側近はジャニーズ・吉本芸人・AKBなどを総動員して改憲に向け大量宣伝するみたいですね。中森明菜の音楽の才能は、近藤真彦とは比べものにならないほど大きい。そもそも近藤さんはジャニー喜多川の性暴力の代償としてテレビに出させてもらって有名人になった。工藤静香は明菜より劣るが、しかしSMAPよりは以下同文。あなたがたもSMAPや嵐が好きですか。洗脳されてますね。政府と資本主義のプロパガンダで、完全に。ゼイリブのサングラス越しには「服従」「消費せよ」「結婚出産せよ」「眠り続けろ」とみえる筈です—Σ(°Д°;)
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読書録 #13 — 産業革命と民衆、ほか

2019-05-13 17:35:20 | 読書
山竹伸二/「認められたい」の正体/講談社現代新書2011
読書メーターを退会、アカウントを消去しました。SNSという性質上、読書量の自慢と人気の自慢が、気にしないつもりでも圧迫してくる。ありきたりの薄っぺらな読書感想で、イイネやフォロワーを増やすだけが目的のように見えるアカウントも。自由に生きることと、社会で評価を得てしかるべき居場所を見つけることは相反する面がある。本書はこれを、さまざまな文献を引いて考察し、情報洪水のなかで「空虚な承認ゲーム」に溺れざるをえない現代人に警鐘を鳴らす


永井均/マンガは哲学する/講談社+α文庫2004
萩尾望都さんの短篇中でも世評が高く、本書でも絶賛されている「半神」を私はあまり好きではない。設定が極端すぎてありえないから、「愛よりもっと深く愛し、憎しみもかなわぬほど憎んでいた」などという結末も、現実ばなれした観念論のようで身につまされないのだ。いまにして思えば、トロッコを放置すれば大勢が死んでうんぬんのような、高みからの特権的な問いかけにも似た俗物臭を嗅ぎ付けたのかも。古今のさまざまな漫画に「形而上の問いかけ」を見いだそうという本書もその系統で、へそ曲がりの私はほとんど新たに読んでみようという気にはならない。ただ『自虐の詩』の「人生には幸・不幸を超えて意味がある」という結末を、(熊本さん・イサオなど)人との出会いに恵まれたことによる結果論ではないかと指摘しているのは鋭いと思う


スチュアート・マクミランほか/本当の依存症の話をしよう ラットパークと薬物戦争/星和書店2019
2012~13年にwebで発表された漫画「War on Drugs」と「Rat Park」に医師の解説を付す。米ニクソン大統領が掲げた薬物戦争は「禁酒法」と同様に失敗し、薬物渦はより深刻化している。酒を飲む者がすべてアル中になるわけでないように、薬物に耽溺する者は病気なので刑務所より治療が必要であり、違法化しても需要が消えるわけではないから製造者は闇に潜り犯罪カルテルを形成する。研究用の白ネズミが放っておけば薬物を自己注射して溺れるという実験も、本来社交的で活発なネズミをケージに閉じ込めたからで、他のネズミと遊んだり交流できる環境ではそうならないという研究結果が。薬物の作用より「孤立」が問題。バカホ(スマホ)が社会を分断し、SNSや各種アプリにより若者を刹那的・自己愛的に生きるよう仕向けているのも動物実験というか戦争というか—


ジェームズ・ブラッドワース/アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した/光文社2019・原著2018
労働者階級の人びとは、現実からの感情的な逃げ道として脂っこいポテトチップスを買う。あるいはアマゾン倉庫の重労働をしていると「無性に酒が飲みたくなる」。闇金ウシジマくん・ヤミ金編で見たような言葉だ。新自由主義の本場・米英では金融やGAFAが法の網を逃れて巨大化しているが、いっぽうで文化や人生観の幅が広く、アマゾン倉庫・訪問介護・コールセンター・ウーバーの車という「英国の最底辺」で実地に働き、克明にリポートする著者のような良心も健在。空き時間を自主的にお金に換えられる触れ込みの「ギグ・エコノミー」は、企業にとって雇用責任を免れ、仕事がない時間には何の保障もなく、お金と時間と体力と気力、立場の弱い者を集めて容赦なく削り取る、新しい奴隷制度—


H・G・ウェルズ/タイム・マシン/角川文庫1966・原著1895
『アマゾンの倉庫で絶望、ウーバーの車で発狂』の中でディストピア小説として紹介されており、表題作を再読。タイムマシンを発明した主人公は自ら実験台となって80万年後の人間社会を目撃する。「すぐれた祖先のことを忘れ去ってしまったひ弱な生物エロイと、おぞけをふるうほど嫌な白っぽい生物モーロック」が人類の成れの果て。前者は資本家の末裔で、裕福で葛藤のない暮らしが知力・体力を退化させ、後者は労働者の末裔で、長い地下生活のすえ夜間に地上でエロイの肉をむさぼる食人種へと退化。この見方は社会主義に傾倒していたウェルズによる(同時代の)文明批評であろうが、後年には第二次大戦をほぼ正確に予見したThe Shape of Things to Come(音楽界でよく聞く言い回しですね)を著しており侮れない


門山栄・村岡健次・川北稔/産業革命と民衆(生活の世界歴史・10巻)/河出文庫1992・原著1975
机上の学問でなく、人びとの生活臭が立ちこめるような生き生きとした記述の数々。これほど面白く読める歴史書は初めて。人生の100冊を選ぶとしたら入りますね。ジメジメした地下室で暮らす子だくさんの労働者。貴族・ジェントリー(地主)が見せびらかすための余暇の楽しみが庶民に広まる様子。喫茶店での儲け話や組合活動。その喫茶店で飲まれる紅茶・コーヒーは侵略・植民地支配によって獲得できたもの。人の欲望に密着していたことで英国の産業革命は成功し、上流・中流・労働者という階級社会も同時に形成された。やがてこの革命に米国・ドイツ・日本もキャッチアップするが、加工貿易や戦争など外部に犠牲を求める資本主義の構造がいま英国でもニポン低国(白人に倣うあくどい日本の蔑称)でも内部に牙を向け、自壊を始めているといえよう


中川理/重税都市 もうひとつの郊外住宅史/住まいの図書館出版局1990
バブル期に文部省の助成を得て、東京・京都・大阪の地方税制がいかに郊外の宅地化を促したかについて掘り起こしまとめた生硬な研究書。産業構造の変化に伴い、明治後期に地方から大都市への人口流入が顕著となった。国税が徴収する地租(農業本位の)・所得税・営業税などの「付加分」に頼らざるを得なかった府県・市町村では、一人当たりの戸数割り⇒家屋当りの家屋税(逆進性を和らげる)を順次創設。ただし市内の資産家の意向が重かった京都市では戸数割りが残され、工業化が速く市内の煤煙がひどかった大阪市と併せ、より切実・経済的な理由から郊外化が進んだのに対し、家屋税を最初に作った東京市ではより計画的に「田園都市」イメージの宣伝など官民柔軟に宅地開発を進めたことがうかがえる


上原善広/路地の子/新潮社2017
人の嫌がる仕事=屠畜・食肉業は、タテ社会の底辺に置かれた地区の人びとにとって経済的安定に加え、役所などとパイプを設けて集団として各種の権利をかち得る土台ともなる。著者の父・上原龍造さんは激しい気性ながら商才と人望を備え、「金さえあれば差別されへんのや」と、利権を独占する解放同盟と対立しながら商売と新たな組合作りのため数々の修羅場をくぐり抜ける。成り上がる過程で印象的なのが「先輩の妻に貢がせ、寝取る。若い女は金持ちになってから買えばよい」。この処世は後年彼を「寝取られる」側に立たせたり、著者含む息子たちをグレさせたり因果の連鎖を招き寄せる—


倉田真由美/だめんず・うぉ~か~①/扶桑社SPA!文庫2004・原著2001
10年くらい前のロンハーによればチュートリアル徳井さんは自宅マンションに夜毎違う女を引っ張り込んで、そのほとんどが「中の下」だそうで、中の下の女の控えめなところが良いのだとか。それは容貌が中の下だからというより、徳井さんのようなイケメンなら一晩だけでもと思うタイプだからなのでは。ナニ金の金畑社長の言う「経験とかノウハウみたいなもんどないやって換金するんや」とはそういうこと。チャラい若者のナンパ術は俺の役には立たない。だめんずは、安易に肉欲を満たせるので相対的に助長される面も。酒・バクチ・暴力。殴る・貢がせる・風俗などで働かせて自分は遊ぶ。反面教師にさえならない連中ではあるが、くらたまさんのペンは軽妙で、さくさく読める


清沢冽/暗黒日記/岩波文庫1990・原著1988
政財学界に広い人脈を持つジャーナリスト・評論家の清沢氏が戦局悪化する1942~45年に新聞の切り抜きなども貼り付けながら書き残した日記。なお清沢氏は戦争終結を待たず45年5月に病気で急逝した。1943「現在世に幅をきかしている者は馬鹿か便乗主義者である(とくに徳富蘇峰)」「第一次大戦の時にいわゆる成金が日本を一変させた。今度も同じ」。1944「日本人が良心的でないのは、どこに原因があるのだろうか。国家を最大絶対の存在と考え、国策の線に沿うことが義務だと考える。と共にそうすることが利益にかなうという利益主義」。1945「教育の失敗だ。理想と教養なく、技術だけを習得した結果だ」。彼は石橋湛山・鳩山一郎といった後の首相とも親交があり、きたる敗戦後は教育を改革し、言論を活発にし、国民の無知蒙昧と付和雷同を改めなければならないと考えていた。聞こえますか、改元や五輪に浮かれるみなさん—(;´Д`)
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11-May-2019 Top 20 Hits

2019-05-11 19:46:53 | Weekly Top 15
1. ← 1. 4 David Chalmin, Bryce Dessner, Katia Labèque, Marielle Labèque / Dessner: Haven (2019 - El Chan)
2. ← 2. 6 Palehound / Killer (2019 - Single)
3. ← 4. 3Fat White Family / When I Leave (2019 - Serfs Up!)
4. ← 3. 7 Strand of Oaks / Weird Ways (2019 - Eraserland)
5. ← 6. 6Die Heiterkeit / Jeder Tag ist ein kleines Jahrhundert (2019 - Was passiert ist)
6. ← 5. 4Damon Locks, Black Monument Ensemble / The Colors That You Bring (2019 - Where Future Unfolds)
7. ← 14. 2 Anna Tivel / The Question (2019 - The Question)
8. ← 10. 4 Wintersleep / Terror (2019 - In the Land of)
9. ← 8. 4 Big Thief / Cattails (2019 - U.F.O.F.)
10. ← 13. 6 Kevin Morby / No Halo (2019 - Oh My God)
11. ← 9. 8 Rubel / Mantra (feat. Emicida) (2018 - Casas)
12. ← 15. 3 The Mountain Goats / Younger (2019 - In League with Dragons)
13. ← 7. 8 Weyes Blood / Movies (2019 - Titanic Rising)
14. ← 17. 2 Avey Tare / HORS_ (2019 - Cows on Hourglass Pond)
15. ← 12. 7 Calexico and Iron & Wine / Father Mountain (2019 - Years to Burn)



16. NEW 1 Beyoncé / Before I Let Go (2019 - Homecoming: The Live Album)
17. ← 16. 3 Robert Forster / One Bird in the Sky (2019 - Inferno)
18. ← 20. 2Emily King / Caliche (2019 - Scenery)



19. NEW 1 CY8ER / デッドボーイ、デッドガール (2019 - Single)



20. NEW 1 Lucy Dacus / My Mother & I (2019 - Single)
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4-May-2019 Top 20 Hits

2019-05-04 20:18:55 | Weekly Top 15
1. ← 4. 3 David Chalmin, Bryce Dessner, Katia Labèque, Marielle Labèque / Dessner: Haven (2019 - El Chan)
2. ← 3. 5 Palehound / Killer (2019 - Single)
3. ← 2. 6 Strand of Oaks / Weird Ways (2019 - Eraserland)
4. ← 10. 2Fat White Family / When I Leave (2019 - Serfs Up!)
5. ← 7. 3Damon Locks, Black Monument Ensemble / The Colors That You Bring (2019 - Where Future Unfolds)
6. ← 5. 5Die Heiterkeit / Jeder Tag ist ein kleines Jahrhundert (2019 - Was passiert ist)
7. ← 1. 7 Weyes Blood / Movies (2019 - Titanic Rising)
8. ← 9. 3 Big Thief / Cattails (2019 - U.F.O.F.)
9. ← 6. 7 Rubel / Mantra (feat. Emicida) (2018 - Casas)
10. ← 15. 3 Wintersleep / Terror (2019 - In the Land of)
11. ← 8. 8 King Gizzard & the Lizard Wizard / Cyboogie (2019 - Fishing for Fishies)
12. ← 11. 6 Calexico and Iron & Wine / Father Mountain (2019 - Years to Burn)
13. ← 12. 5 Kevin Morby / No Halo (2019 - Oh My God)



14. NEW 1 Anna Tivel / The Question (2019 - The Question)
15. ← 16. 2 The Mountain Goats / Younger (2019 - In League with Dragons)
16. ← 19. 2 Robert Forster / One Bird in the Sky (2019 - Inferno)



17. NEW 1 Avey Tare / HORS_ (2019 - Cows on Hourglass Pond)
18. ← 14. 4 Hatchie / Stay with Me (2019 - Keepsake)
19. ← 13. 7Yola / Faraway Look (2019 - Walk Through Fire)



20. NEW 1 Emily King / Caliche (2019 - Scenery)
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