マガジンひとり

自分なりの記録

Sumo Decade - 1981

2014-01-26 20:53:23 | Bibliomania
初場所に千代の富士が関脇で優勝、その後一気に横綱まで駆け上がった昭和56(1981)年の相撲界は、一方で貴ノ花と輪島という一時代を画した人気力士が引退するなど、新旧交代が色濃く表れるものとなった。琴風が大関昇進、さらに次を狙う隆の里が3場所、朝汐が2場所で10勝以上し、北天佑や若島津も幕内定着して地力を増したが、横綱・若乃花は6場所中4場所で休場し、高見山や北の湖の連続出場もストップした




角界のプリンスとして人気を集め、大関在位50場所に及んだ貴ノ花が初場所2勝4敗と不振で7日目に引退を表明




1敗の北の湖と全勝の関脇・千代の富士が千秋楽に対戦(北の湖が張出横綱で大関が貴ノ花引退、増位山は北の湖と同部屋のため)、本割は北の湖が勝ち、優勝決定戦では北の湖が右四つに組み止め上手が取れないまま強引に攻めたところを千代の富士が上手投げに下し初優勝、場所後の大関昇進も決めた




横綱・輪島が春場所3日目に引退を表明、師匠の定年も控えておりそのまま花籠部屋を継ぐ形に。この場所は大関・増位山も引退し、北の湖が13勝2敗で21度目V




夏場所、北の湖は朝汐に敗れたのみ、大関・千代の富士は北天佑に敗れたのみの1敗で千秋楽に相星決戦、北の湖が吊り出して連覇




名古屋場所、またも北の湖と千代の富士が1敗で相星決戦、若乃花が休場がちなこともあり、両者が千秋楽に相まみえるのは4場所連続(初場所は決定戦も)となる。千代の富士が上手出し投げで北の湖の体勢を崩してそのまま寄り切り、2度目の優勝




連続して好成績を挙げた千代の富士は場所後に横綱に昇進




大関不在となった秋場所は、琴風が14日目に初優勝を決め(12勝3敗)、場所後に大関昇進。なお新横綱・千代の富士は足首を痛め途中休場、1425回の連続出場記録を続けていた高見山も途中休場した




九州場所は千代の富士と朝汐による3敗同士の優勝決定戦となり、本割(13日目)では苦杯を舐めた千代の富士が勝ち横綱初賜杯




千代の富士、朝汐の優勝争いと共に、初土俵から皆勤してきた北の湖が途中休場したことも話題を呼んだ九州場所。夏巡業でヒザを痛めてから、別人のように脆く崩れる場面を見せ始め、この休場により連続勝ち越しは50場所、連続二桁勝星も37場所でストップ、大横綱にも落日の気配が–
コメント

Top 20 Hits of 25-Jan-2014

2014-01-25 19:06:45 | Weekly Top 15
1. ← 2. 2 "Says" Nils Frahm (2013 - Spaces)
2. ← 1. 3 "Days Are Gone" HAIM (2013 - Days Are Gone)
3. ← 8. 2 "Stranger to My Happiness" Sharon Jones & the Dap-Kings (2014 - Give the People What They Want)



4. NEW 1 "Blue Moon" Beck (2014 - Single)
5. ← 3. 6 "Come Down to Us" Burial (2013 - Rival Dealer EP)
6. ← 5. 5 "Xe2" Mssingno (2013 - Mssingno EP)
7. ← 4. 5 "Touch (feat. Paul Williams)" Daft Punk (2013 - Random Access Memories)
8. ← 10. 4 "You Show Great Spirit" Prurient (2013 - Through the Window)
9. ← 9. 4 "XO" Beyoncé (2013 - BEYONCÉ)
10. ← 7. 6 "Annabel" Goldfrapp (2013 - Tales of Us)
11. ← 18. 2 "Heartbeats" September Girls (2014 - Cursing the Sea)
12. ← 11. 4 "Denial" I Break Horses (2014 - Chiaroscuro)
13. ← 6. 6 "PrimeTime (feat. Miguel)" Janelle Monáe (2013 - The Electric Lady)



14. NEW 1 "All Night Graves" Sevendeaths (2014 - Concreté Misery)



15. NEW 1 "Salt Carousel" Evian Christ (2013 - Single)
16. ← 12. 5 "Chrome Country" Oneohtrix Point Never (2013 - R Plus Seven)



17. NEW 1 "Driver" Perfect Pussy (2014 - Say Yes to Love)
18. ← 13. 7 "Let Me Back in" Rilo Kiley (2013 - rkives)



19. NEW 1 "Satellites" EMA (2013 - Single)



20. NEW 1 "Good Sex" Kevin Drew (2014 - Darlings)
コメント

グーグル金融道

2014-01-23 21:10:11 | 読書
(学者の故ニール・ポストマンは著書『死ぬまで楽しむ』の中で)人間にとって最も恐ろしい脅威は、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』ではなく、それ以前に書かれたオルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』に描かれていると指摘した。
善意で徹底的に管理された生活と社会に満足しきった未来人の話である。


「教養のある人々ですら誤解しているが、ハクスリーとオーウェルは同じ脅威を予言しているのではない。オーウェルは我々が外部からの強制的な抑圧に屈すると警告した。だがハクスリーは、人々から自律性や成熟や歴史を奪うのに"ビッグブラザー"など必要ないと考えた。人々は抑圧を喜ぶようになり、考える能力を奪うような技術をありがたがるようになるという。オーウェルは我々から情報を奪う者を恐れた。ハクスリーはあまりにも多くの情報を与えることで、我々を受動的で自己中心的にしてしまう者を恐れたのだ」

–(ケン・オーレッタ 『グーグル秘録』 文藝春秋、2010年)





人が情報を集めたがるのは、不安から逃れて主体的に生きるための、いわば生存本能として刷り込まれたものではないか。
とすれば、情報を流す媒体側に回れば、たいへん効率的に収益をあげることが可能になる。
既存のマスコミやインフラ企業が独占していたその商機は、インターネットによる「双方向」や携帯電話による「どこにいても」という要素が加わったことで、扱う情報の細分化・ニッチ化を招き、飛躍的に拡大することにつながった、その最大の助けとなったのが「グーグルの検索」技術であろう。

「情報の質・信頼性」という面ではどうだろう。
その情報は本当に生きるための糧になるのか。
私がしばしば香山リカとか内田樹とかを中傷するのに「メディアを介して直接責任を回避しながら安直なコメントや処方箋を乱発する」という言い回しを用いるのは、責任回避こそ新自由主義のキモになっている考え方だと思うからだ。
それにしても彼らは実名でさまざまなメディアから継続的に雇われて発言しているので、一定の信頼性は担保されていよう。

問題は、インターネットを駆け巡る無限大の情報である。
亡くなった小野田さんは諜報将校として、決してメモをとらずすべての情報を暗記するよう訓練を受けたとのことで、それがジャングルの中で生き延びることを可能にしたともいえよう。
いま、スマホの普及により「調べれば分かる」からと、直前まで行動を決めないタイプの若者が増えているように思うのだが、小野田さんの反対で、スマホに依存し、生きる力を奪われてしまっているとは考えられないだろうか。
しかも、あまり多過ぎる情報は、人を「受動的で自己中心的にしてしまう」ので、依存していることにさえ気づかず、「情強」と称し愛国者を気取る貧乏人がアメリカ富裕層をますます富ませる結果になりかねない。
グーグルが中国からは撤退せざるをえなかったのも、情報が死命を制するという小野田さん的な戦時の考え方を中国の支配層が忘れておらず、国民を物資化できる地位の独占を揺るがしかねないグーグルの芽を早期に摘んだということに他ならないのでは。

本書の原題=Googled: The End of the World as We Know It=とは、グーグルを経て、完全にグーグル化された、人びとが好んで自らネットに接続し(接続され)、寸暇を惜しんでスマホやPCを操る(操られる)一種のディストピアを指すのではないかと–
コメント

Top 20 Hits of 18-Jan-2014

2014-01-18 19:17:31 | Weekly Top 15
1. ← 13. 2 "Days Are Gone" HAIM (2013 - Days Are Gone)



2. NEW 1 "Says" Nils Frahm (2013 - Spaces)
3. ← 1. 5 "Come Down to Us" Burial (2013 - Rival Dealer EP)
4. ← 2. 4 "Touch (feat. Paul Williams)" Daft Punk (2013 - Random Access Memories)
5. ← 4. 4 "Xe2" Mssingno (2013 - Mssingno EP)
6. ← 3. 5 "PrimeTime (feat. Miguel)" Janelle Monáe (2013 - The Electric Lady)
7. ← 5. 5 "Annabel" Goldfrapp (2013 - Tales of Us)



8. NEW 1 "Stranger to My Happiness" Sharon Jones & the Dap-Kings (2014 - Give the People What They Want)
9. ← 11. 3 "XO" Beyoncé (2013 - BEYONCÉ)
10. ← 10. 3 "You Show Great Spirit" Prurient (2013 - Through the Window)
11. ← 12. 3 "Denial" I Break Horses (2014 - Chiaroscuro)
12. ← 9. 4 "Chrome Country" Oneohtrix Point Never (2013 - R Plus Seven)
13. ← 8. 6 "Let Me Back in" Rilo Kiley (2013 - rkives)
14. ← 7. 7 "The Wire" HAIM (2013 - Days Are Gone)
15. ← 6. 6 "Pendulum" Pure Bathing Culture (2013 - Moon Tides)



16. NEW 1 "Begging for Your Life/In the City Light" Merchandise (2014 - Single)
17. ← 19. 2 "Sinking Stone" GEMS (2013 - Medusa EP)



18. NEW 1 "Heartbeats" September Girls (2014 - Cursing the Sea)
19. ← 18. 2 "Dead City Emily" Marissa Nadler (2014 - July)
20. ← 17. 4 "Nobody Asked Me (If I Was Okay)" Sky Ferreira (2013 - Night Time, My Time)
コメント

Top 20 Hits of 11-Jan-2014

2014-01-11 18:46:13 | Weekly Top 15
1. ← 1. 4 "Come Down to Us" Burial (2013 - Rival Dealer EP)
2. ← 2. 3 "Touch (feat. Paul Williams)" Daft Punk (2013 - Random Access Memories)
3. ← 5. 4 "PrimeTime (feat. Miguel)" Janelle Monáe (2013 - The Electric Lady)
4. ← 9. 3 "Xe2" Mssingno (2013 - Mssingno EP)
5. ← 6. 4 "Annabel" Goldfrapp (2013 - Tales of Us)
6. ← 4. 5 "Pendulum" Pure Bathing Culture (2013 - Moon Tides)
7. ← 3. 6 "The Wire" HAIM (2013 - Days Are Gone)
8. ← 8. 5 "Let Me Back in" Rilo Kiley (2013 - rkives)
9. ← 11. 3 "Chrome Country" Oneohtrix Point Never (2013 - R Plus Seven)
10. ← 13. 2 "You Show Great Spirit" Prurient (2013 - Through the Window)
11. ← 18. 2 "XO" Beyoncé (2013 - BEYONCÉ)
12. ← 20. 2 "Denial" I Break Horses (2014 - Chiaroscuro)



13. NEW 1 "Days Are Gone" HAIM (2013 - Days Are Gone)
14. ← 7. 7 "Tough Luck" Eagulls (2014 - Eagulls)
15. ← 10. 6 "Indie Cindy" Pixies (2013 - EP1)
16. ← 14. 3 "Rival Dealer" Burial (2013 - EP)
17. ← 19. 3 "Nobody Asked Me (If I Was Okay)" Sky Ferreira (2013 - Night Time, My Time)



18. NEW 1 "Dead City Emily" Marissa Nadler (2014 - July)



19. NEW 1 "Sinking Stone" GEMS (2013 - Medusa EP)
20. ← 12. 6 "Lecce, Leaving" Lee Ranaldo and the Dust (2013 - Last Night On Earth)
コメント

Sumo Decade - 1980

2014-01-05 22:08:16 | Bibliomania
昭和55(1980)年の大相撲は前年と同じく4横綱が6場所の優勝を分け合う形となったが、やはり内容では北の湖が春・夏・名古屋と3連覇、77勝で4年連続の最多勝と他を圧した。初場所後に増位山が大関昇進したものの、栃赤城、琴風、朝汐は昇進の掛かった場所でつまづき、進境著しい千代の富士、隆の里と合わせ大関候補は群雄割拠。九州場所中に横綱・三重ノ海が引退




初場所千秋楽、終始頭をつけて若乃花に上手を与えない完璧な取り口で、三重ノ海が3度目の賜杯を初の全勝で抱くことに




春場所4日目、輪島と琴風は円い土俵を充分に使い両者根比べ。やっと勝った輪島だったが、二人とも起き上がれず。優勝争いは北の湖の独走となり14日目に18度目の優勝を決めた




夏場所9日目、朝汐の突進を受け全勝の北の湖に土。朝汐は無敵の横綱に前場所から2連勝。12日目まで北の湖と輪島が1敗、若乃花が2敗、三重ノ海が3敗で13日目からの4横綱リーグ戦で優勝が争われ、北の湖が1敗を守り連覇




電話ボックスが窮屈そうな巨漢・高見山。36歳となったが連続出場を続け、6月には日本への帰化も決まった




名古屋場所は全勝の北の湖と幕尻近くながら1敗で走った隆の里が13日目に対決。北の湖が落ち着いてさばき、そのまま全勝で3連覇。隆の里はここから見違えるような相撲ぶりで3場所連続10勝以上を挙げ一躍大関候補に




8月の札幌巡業で愛娘とくつろぐ双津竜。後の時津風親方としてあのような不祥事を主導することになろうとは…




秋場所4日目、玉ノ富士が波離間投げで荒瀬を下した一番で行司が転倒




場所後に師匠二子山親方の長女・花田幸子さんと挙式することが決まっていた若乃花が14勝1敗で両手に花の美酒




九州場所、三重ノ海が初日から2連敗して引退したが、ベテラン横綱の輪島が1敗を守り14度目の優勝。画像は10日目、新入幕ながら9連勝と突っ走った佐田の海を関脇・千代の富士が上手投げに下した一番。この年、千代の富士は4度の技能賞を獲得、ウルフの異名で人気も実力も急上昇。翌年には北の湖の牙城をおびやかす存在へと–
コメント

Top 20 Hits of 4-Jan-2014

2014-01-04 19:20:23 | Weekly Top 15
1. ← 2. 3 "Come Down to Us" Burial (2013 - Rival Dealer EP)
2. ← 5. 2 "Touch (feat. Paul Williams)" Daft Punk (2013 - Random Access Memories)
3. ← 1. 5 "The Wire" Haim (2013 - Days Are Gone)
4. ← 3. 4 "Pendulum" Pure Bathing Culture (2013 - Moon Tides)
5. ← 7. 3 "PrimeTime (feat. Miguel)" Janelle Monáe (2013 - The Electric Lady)
6. ← 11. 3 "Annabel" Goldfrapp (2013 - Tales of Us)
7. ← 4. 6 "Tough Luck" Eagulls (2014 - Eagulls)
8. ← 10. 4 "Let Me Back in" Rilo Kiley (2013 - rkives)
9. ← 14. 2 "Xe2" Mssingno (2013 - Mssingno EP)
10. ← 6. 5 "Indie Cindy" Pixies (2013 - EP1)
11. ← 17. 2 "Chrome Country" Oneohtrix Point Never (2013 - R Plus Seven)
12. ← 8. 5 "Lecce, Leaving" Lee Ranaldo and the Dust (2013 - Last Night On Earth)



13. NEW 1 "You Show Great Spirit" Prurient (2013 - Through the Window)
14. ← 15. 2 "Rival Dealer" Burial (2013 - EP)
15. ← 13. 6 "No One Knows Nothing Anymore" Billy Bragg (2013 - Tooth & Nail)
16. ← 9. 5 "Love Me Again" John Newman (2013 - Tribute)
17. ← 12. 6 "Antiphon" Midlake (2013 - Antiphon)



18. NEW 1 "XO" Beyoncé (2013 - BEYONCÉ)
19. ← 20. 2 "Nobody Asked Me (If I Was Okay)" Sky Ferreira (2013 - Night Time, My Time)



20. NEW 1 "Denial" I Break Horses (2014 - Chiaroscuro)
コメント

ソーシャル・メディアと人間のデフレ

2014-01-03 21:15:01 | メディア・芸能
同人誌を作って、お買い上げいただく立場で言うと、500という数字はたいへん重い。新参サークルにとって、実売で500部を超えることは高いハードルであると同時に、実現を思い描くことも可能な一つの夢でもある。
が、TVなどのマスメディアをフルに使って「第2の倖田來未」として売り出された光上(こうじょう)せあらのCDが500枚しか売れないとなると、話は違ってくる。

音楽のスタッフは彼女を見放してしまい、多人数のアイドル・ユニットに属し、SM女王様に扮してイベントで男性ファンの局部をタッチ、あるいは大食いや小倉優子のモノマネなど、自らのタレント性を総動員して生き残りを図る。
昨年5月にOAされたロンハー「有吉先生の進路相談」での彼女は、前述のようなキャラの迷走ぶりと合わせ、「同じエイベックスの丸高愛美がロンハーの企画でチャンスをつかんだ時、嫉妬から精神状態が崩壊していた」というような、妬みや欲求不満を表に出してしまう様子が生々しくて面白かったですな。




ここ(浅田彰の『構造と力』)では、文化的記号論が、近代社会全般に一般化される「差異の体系」や「象徴秩序」などというものへと、究極的に抽象化されている。まるで「文化」が、世界のすべてを覆ったかのような形で議論が進行していく。

『構造と力』において、「象徴秩序」を支える、社会的・経済的文脈が一顧だにされていないことは、現在から考えれば驚くべきことである。この本で多用される「差異」というものはほぼすべて、社会・経済的な文脈が何もない、まるで真空管の中で閉鎖的に培養されたような「趣味的差異」という領域でしかない。

それは、もともとの浅田の意図とはやや離れた形で、「資本主義の内部で遊ぶ」というモティーフとして日本社会に広く独り歩きしていった。

事後的に見れば、これらの議論はおしなべて、「趣味を下支えする社会・経済的インフラはブラックボックスに入れておいて構わない」という、多幸感に満ちた「総中間層化の夢」の産物であった、と評する他はないと私は思う。

浅田の「資本主義の内部で遊ぶ」というモティーフは、80年代のマーケティング論に流用されていった。日本的なポストモダニズムにおける「文化」は、楽観的な「趣味的差異」に接合されていき、大企業が率先して行う「消費者教育」へと結晶化していった。

その際、たとえば「人並み」志向のような、他人と同じモノがほしいという段階が終わり、他の人と自分を「差異化」したいという欲望が発生した、とされるのが通例であった。この「差異化」から利潤を生みだすような産業の必要性が要請されていくことになる。それが、第1章で触れた「高付加価値産業化」というものであった。

「差異化」がクローズアップされる過程は、言葉の表面的な意味と違い、人々の「均質化」を意味していた。人口のほとんどが、いろいろある趣味的な差異の中から、任意のどれかを選び取ることのできる社会が前提とされたからである。 –(高原基彰 『不安型ナショナリズムの時代』 洋泉社新書y、2006年)




あらためまして、新年おめでとうございます。可能な限り更新に努めますので、今年もお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
で、のっけから、やや旧聞に属する話題で恐縮なのですが、この『不安型ナショナリズムの時代』という本を先月の「日韓の歴史認識が平行線をうんぬん」との記事で参考にするため読み返したところ、古くなっていないというか、むしろSNSだの下世話な芸能・痴情ネタとも響き合い、随所に先見性が。

特に↑に引用したような、「趣味的な小さな差異を任意に選べることを可能にするような、社会・経済的インフラはブラックボックスに入れる」ことで一億総中流の文化的生活が成り立ってきたとの視点は、その後の脱工業化や、インターネット・携帯電話の普及を経て、「60年代の対抗文化が伝統的な価値観を破壊し、社会のヒエラルキーがどうあるべきかについて混乱が続いた70~80年代を経た後で、いよいよゲームのルールが単一のものに収束していっていることを示している。それは、対抗文化をも含み込む形の資本主義であり、そういう形で、批判的な知識人がずっと相互矛盾するものと考えてきた、効率性と個人の創造性の両方を、共に利用しようとする経済である」と評されるような、メディアを経由することで責任を回避しながら、人間が相互的に人間を消費する経済の誕生と拡大=ひらたく言えばどんな場所でもスマホ等でツイッターやLINEにのめり込む人びとが現れることを予見する。

野呂佳代はロンハーで↑画像のような失敗を繰り返しながらも、他人の言動に対してムクレたり大笑いする表情を抜かれることも多く、昨年1年のみですっかりキャラが定着、なくてはならぬ存在に。
光上さんもロンハーでは見かけないが、おそらく他のバラエティー番組ではいくらか仕事も増えたろう。
しかし、見ない日はないくらいTVに出ているハリセンボン箕輪さんとたんぽぽ川村さんのトークイベントでさえ、お金を払って入場したのは30~40人というありさま。TVを離れては、彼女らの価値はないのだ。

グーグル社は創業当初、世界一便利な検索エンジンを作ることを目標に掲げたが、それでどうやって儲けるのかは考えていなかった。
目標を実現し、日々膨大な集客が見込めるようになって、「結局は広告」で儲けることに。
よく分からないがLINEもツイッターも似たようなものだろう。彼らはボロ儲けしてるのだろうが、ユーザーが費やす総時間からすれば、その儲けは大したものではないとも言えるだろう。
まして犯罪自慢して炎上したり、(嫉妬してる時の光上せあらのように)精神が消耗してしまっても、彼らから何ら還元されるわけではない。ブラックボックスに入れるとは、そういうことである。
しかしそれでもなおわれわれの目立とう精神は不滅であり、これからも表面上は経済の成長が続いてゆくことでしょう、人間そのものを燃料にしながら–
コメント