マガジンひとり

自分なりの記録

ウィノナの心の旅路

2005-01-18 20:42:23 | 映画(レンタルその他)
17歳のカルテ コレクターズ・エディション

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

このアイテムの詳細を見る

「17歳のカルテ」
レンタルにて、ジェイムズ・マンゴールド監督。
1967年、精神不安から自殺を図った17歳のスザンナ(ウィノナ・ライダー)は精神病院に入院し、様々な心の病に苦しみながらも健気に生き抜こうとしている同世代の女性たちと知り合い、交流を続けていくうちに、やがて少しずつ自立心を取り戻していく...

ずっと気になっていた作品。
恵比寿ガーデンシネマの10周年記念リクエスト上映では、「スモーク」「ボウリング・フォー・コロンバイン」に次いで3位の得票を集めた。
「ガタカ」は5位。
原作に惚れ込んだウィノナ・ライダーが製作総指揮を買って出て映画化。
結果としてはアンジェリーナ・ジョリーがアカデミー助演女優賞を獲得したが、激しい役なので評価されやすかったのかもしれない。
ウィノナも真に迫る素晴らしい演技。
本作の冒頭に「おカネがあるのに万引きしたり」という独白が出てくる。
最後に退院するウィノナだが、作中での病院と外の世界の対比、映画とそれを作る虚飾のハリウッドの対比が入れ子になっているような...
じんわり伝わってくるのは、ウィノナとアンジー以外の美しくはない患者たちとウーピー・ゴールドバーグ演じる婦長の深い存在感。
3回使われるペトゥラ・クラークの「ダウンタウン」、こんな優しい癒しの曲とは知らなかった。



コメント

「揮発性の女」

2005-01-08 14:52:16 | 映画(映画館)
渋谷シネ・ラ・セットにて、熊切和嘉監督。
夫を亡くし、ひとりガソリンスタンドを経営しながら寂しく暮らしていた中年女性(石井苗子)が、若い強盗犯(澤田俊輔)と出会い、生活をともにすることで自分の中の「女」を取り戻していく...

石井苗子が中年女性のにじみ出る性欲をどう表現するのか興味があった。
しかし、エロというより切ない情感を漂わせる佳品である。
知性と美貌を併せ持ちながら情けないスキャンダルで株を落としていた石井苗子が、田舎町に埋もれようとしていく女性の孤独を抑えた演技で伝える。
ヘタレ強盗役の澤田俊輔も好演。
低予算でもいい映画は作れるということを教えてくれる。

渋谷のド真ん中にもかかわらず劇場というより公民館に近い場所に30人ほどが集まり、上映後に監督と主演2人のトークショーが行われた。
石井苗子は渋い赤のスーツの似合う都会の女性であった。
コメント (2)

2004年に読んだ本10選

2005-01-04 14:44:02 | 読書
もっと、わたしを

幻冬舎

このアイテムの詳細を見る

読書は音楽よりヒットチャートという概念が薄く、読める量も限られているので新作旧作無差別に10冊選んでみました。

「綺譚集」津原泰水(集英社)
~乱歩meets乙一。
「デッド・ゾーン」スティーヴン・キング(上下・新潮文庫・旧作)
~原作も映画化も立派。
「もっと、わたしを」平安寿子(幻冬舎)
~くすくす笑えて勇気をもらえる。
「こんな世界に誰がした」爆笑問題(幻冬舎)
~笑撃の日本原論シリーズ4作目。
「私が殺した少女」原りょう(ハヤカワ文庫・旧作)
~世界最高級のハードボイルド。
「魍魎の匣」京極夏彦(講談社ノベルズ・旧作)
~京極堂シリーズはとりあえずこれを読んでおけば間違いないかも。
「薔薇密室」皆川博子(講談社)
~耽美幻想世界。
「荊の城」サラ・ウォーターズ(上下・創元推理文庫)
~2003年の「半身」より若干衝撃度落ちる。
「夏の庭 The Friends」湯本香樹実(新潮文庫・旧作)
~少年と老人の交流をみずみずしく描く。
「手紙」東野圭吾(毎日新聞社・旧作)
~職人芸。「さまよう刃」も楽しみ。

そして、読了はしたものの即座に叩き売ったワースト本3冊。
ワースト1・「リピート」乾くるみ(文藝春秋)
~登場人物が卑しいエゴイストだらけのタイムスリップものミステリー。
ワースト2・「孤独か、それに等しいもの」大崎善生(角川書店)
~鼻もちならない自己陶酔。
ワースト3・「FLY」窪依凛(文芸社)
~山田悠介系ジャンク・ホラー。

今日の朝日朝刊に桐野夏生さんの読みごたえのあるインタビューが掲載された。
「精神面で言えばバブルは、『マル金(金持ち)・マルビ(貧乏人)』という分類法がはやったように、持てる者が持たざる者を臆面もなく揶揄する、下品な社会を作ったと思います。バブル崩壊後もその下品さは残った。そして今、バブルを楽しいと感じた人々、欲望を全開にしてしまった人々が閉塞感の中で行きはぐれ、右往左往しています。中でも40歳前後の女性が変だというのが私の直感です。『和歌山カレー毒物混入』などの事件もおそらく、こうした状況と無縁ではない。
『所有』に代わる新しい豊かさの原理を見いだすことが、日本の課題なのでしょう。
私は、認識するという行為がその成否のカギになると感じています。若者や女性の中に今後、『私は貧しい』と考える人がどれだけ増えるか。認識することが『なぜこんなことになっているのか』という問題意識への第一歩になるからです。
もちろん『一生安定した職に就けず、結婚もできず、子どもも住宅も持てない』と落胆する若者に、現実を見ろとは言いにくい面もあります。私は自分で道を切り開こうと考えたけれど、それは経済的に拡大し膨張する社会を背景にしていた。しぼんでいく社会を生きる若者には、異なる現実もある」

「負け犬の遠吠え」などという身もフタもないタイトルの本が売れるという現実、そして私の大好きな「格付け~」に嬉々として出演する女性たちにも、同じ時代の影が射しているのだろうか。
この社会への問題意識のありようと、それでも物語を創造していこうとするこだわりにおいて、宮部みゆき、高村薫、桐野夏生の3巨頭にこれからも注目していきたい。
コメント