マガジンひとり

自分なりの記録

舞台『小沢昭一歌のステージ・唄って語って僕のハーモニカ昭和史』

2008-04-23 21:51:59 | メディア・芸能

@新宿・紀伊國屋ホール
平成の東京のど真ん中にひとり立ちすくむ男は、ご存知、小沢昭一。
昭和4年生まれ、戦争を乗り越え、昭和を目いっぱい生きた男が自らの昭和史をつぶやき、往時の歌をうたう。「昭和の流行歌、童謡、唱歌に、ぼくは心を洗われ、元気をもらっています」
さて、流れくるピアノの調べ。小沢昭一、ハーモニカを手にのっそりと登場。



歯が痛い場合は目に針を刺します。目の痛みで歯の痛みを忘れます。
社会保険庁が年金をずさんにあつかう場合は、年金から後期高齢者医療保険の掛け金を天引きします。その痛みで年金問題を忘れます。
まろ味のある歌声による戦前・戦中の歌の数々。戦前といってもまだ消費文明がけっこう盛んで、芸者がレコードを吹き込んで人気歌手になる例が多く見られたという。中でも“美ち奴”は「あゝそれなのに」などで爆発的な人気を呼んだが(♪怒るのは怒るのはあったりまえでしょう~~ての。オラの親も歌ってた)日中戦争の戦局の拡大~泥沼化~太平洋戦争という時勢のさなか、彼女も色っぽい歌は禁じられ「軍国の母」などという悲壮な戦時歌謡を吹き込むようになる。
一部の軍部が独走したのではなく、国民が熱狂したからこそ軍国主義一色に染まってしまった。そうなると文化の発達度合いの高さや地域社会の密度の濃さも悪い方向へはたらく。新聞・ラジオが戦意を煽り、となり組などがそれを補完。欲しがりません勝つまでは。蒲田で育ち、釣りやメンコ遊び、芝居ごっこやハーモニカに熱中した小沢少年もその例にもれず、軍国少年として旧制中学から長崎県の海軍兵学校予科へ。
入隊のとき荷物検査でハーモニカが見つかり、上官に殴られ没収されてしまったが、その年のうちに敗戦。学校の物資を海苔巻きのように毛布でくるんだ大きな荷物を抱えて彼はすし詰めの汽車で東京へ向かう。
途中、広島駅付近の引込み線で、花火のような火がいくつも打ち上げられているのを目撃、異臭も漂う。それは原爆による死体を焼却しているのだった。
名古屋駅では、海軍将校が「上陸してくる米軍に切り込もう」と仲間を集めるのに加わらせられそうになるものの「便所に行ってきます」と言って中央本線に乗り込み間一髪セーフ。彼らはほんとうに突撃して機銃掃射で全員殺されてしまった。若き小沢さんの運命の分かれ目であったが、そのときに分身のようなハーモニカを入れた米袋をなくしてしまった。
命からがら戻ってきた東京は焼け野原。母親は崩れ落ちた家の下敷きになってもたくましく生き延びたものの、病気がちだった父親はムシロの上で息絶えた。
さまざまな代償と引き替えに手にした平和。小沢さんは♪ハーモニカが欲しかったんだよう~~と自作した「ハーモニカブルース」を歌う……
今年75歳になる伯父(オラの幡ヶ谷の実家を“カプセル”と評した)と見ました。メシも食って戦中戦後の興味深い実話もいろいろと伺いましたが、ここで受け売りみたいにして書くのははばかられる。
自分が生まれてないですから、体験してないことはなかなか書きづらい。といって小沢さんのステージの模様は書いてしまったんだけど。体験したことを書くのにおいて、先人の教訓として消化したうえで間接に反映させていくことができたら、と考えている。
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旧作探訪#20『Mr.BOO! インベーダー作戦』

2008-04-06 21:46:33 | 映画(レンタルその他)

賣身契The Contract@DVD、マイケル・ホイ(許冠文)監督(1978年・香港)
大手のTV局と専属契約を交わしたもののほとんど飼い殺しで芽が出ない中年タレント、ジーマン(マイケル・ホイ)。そんなとき、たまたま他局で司会を務めた番組が大うけ。思わぬ引きぬき話が舞い込む。このチャンスに飛びついたジーマンは、移籍の障害となる8年間も縛られる契約書を盗むべく制作局長室に飛び込むが、同行した発明狂の弟ティンガイ(リッキー・ホイ)が誤って金庫に閉じ込められてしまう。あわてたジーマンは局長の巨漢SPと追いつ追われつを繰り広げつつ、奇術師のサイギッ(サミュエル・ホイ)に弟の救出を頼み込む…。



「ノンノン!ムーミンと仲良くしたらダメじゃないか」
亡き広川太一郎さんの声でお読みいただきたい。一生忘れないよ、子どもの頃に聞いたことは。子ども向け番組でも決して手を抜かない、むしろ大人向け以上に精魂かたむける人がいっぱいいたもんだ。
Mr.BOOシリーズの映画がTVで放映されるにあたって、広川さんがマイケル・ホイの声を務めたのね。日本公開第2弾のインベーダー作戦からはプロの声優が務めているが、第1弾のときはサミュエル・ホイの声をビートたけし(北野武)が。話題つくりのためにお笑い芸人やアイドルを声優に起用するののはしりでしょうか。
ドタバタ喜劇としてはドリフターズと似た感じでっけど、TV放映のときはすでに『ひょうきん族』が『全員集合』の人気を上回ろうか、というときだった。
手抜きのクイズ番組が増えて、子どもに人気の高い『はねトび』でもコントは姿を消し企画ものだらけになってしまう今からしてみると、ひょうきん族のコント部分はわりとしっかり作られてはいたけどな。今では言葉の暴力大将・島田紳助がそのときはすげえ女装で明石家さんまのホテルの部屋から締め出されてくるくる回って「…寒い。」…隔世の感がありまんなあ。

たけし「漫才でもなんて言うのかやっぱりお客さんがだんだん増えましたけどね」
きよし「うれしいですね」
たけし「お客さんはいろいろと特徴ありますね。だいたい男は頭がバカね、女は顔がブスって…」
きよし「やめろ!せっかく来てくれたんじゃないか」
たけし「しかし男はブスでもいいですよ、女のブスはどうしようもないですね。あれはもうね、法律を作ってブスは殺したほうがいいですね」
きよし「そこまで言うな、おまえ」
たけし「ブスは外歩いちゃいけない、とかね」
きよし「歩いちゃいけない?」
たけし「ブスは横断歩道歩くな、とかさ」
きよし「どこ歩くんだ」
たけし「ブスはブスバッジつける、とかね」
きよし「なんだブスバッジって」
たけし「やっぱあれですよ。ブスになってまだ1年だったら、若葉マークのブスマーク」
きよし「車の運転じゃないんだよ」
たけし「それから、ブスは殺しても捕まらない、とかね」
きよし「捕まるわ!」

ほかに老人ネタとか田舎者ネタとかも。ビートたけし(北野武、めんどくせえなあ)や太田光はラジオでもテレビでも手抜きをする。さらにたけしは収録を突然すっぽかす。愛人が強引な取材を受けたことに立腹して、子分を引き連れて出版社に殴り込みをかける。紳助も暴力事件の謹慎が明けてからさらに暴力性を増したが、たとえフライデーみたいな雑誌でも言論に対するテロ行為を行うような人間を世間は許し、文化人として祭り上げ、今ではその系統の人間が増殖して毎日のようにTVから世論形成に影響力をおよぼし、選挙で選ばれて法律をこしらえる立場に立ったというわけ。
当時はわけのわからぬ中学~高校生で、ツービートの漫才に笑ってたしオールナイトニッポンは夢中で聞いてたし彼の歌うレコードまで買ってたが、音楽はウソをつかない。
ブサイクでチック症のたけしがガニ股でロッド・スチュワートの「Hot Legs」なんて歌ってた男権志向と自己愛。オリジナル曲も今になってみるとひどいもんだ。
それにひきかえサミュエル・ホイ(許冠傑)の歌う映画のテーマ曲・挿入曲はすごい。今になってもすごい。哀愁といい親しみといい、権力志向からは決して生まれない生活臭にあふれた人民のポップスである。
「連合赤軍とオウム真理教では出発点が違う」って言葉はけっこう重い。最初の発想が反権力か権力か、弱者の側に立つのか強者の側に立つのかってことが問われる。権力に媚びへつらい弱者を寄ってたかっていじめ倒す、本末転倒なTV民主主義の国すなわちにっぽんに、いったいどんな未来が…。

Mr.BOO!インベーダー作戦

ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

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『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』

2008-04-02 21:36:05 | 映画(映画館)
In the Realms of the Unreal: The Mystery of Henry Darger@渋谷シネマライズ、ジェシカ・ユー監督(2004年アメリカ)
親類も友人もなく、雑役夫として働いた病院と教会のミサを行き来するだけのつましい生活を送ったヘンリー・ダーガー(1892-1973)。身寄りもないままひっそりと息を引き取った後、40年間を孤独に暮らしたアパートの部屋から「非現実の王国で」と題した15000ページを超える物語の原稿と数百枚の挿絵が発見された。
誰に知られることもなく、ひそかな妄想を綴り、生涯をかけて描いた作品は死後急速に評価を得て、今もっとも注目を浴びるアーティストともなっている。
彼自身の写真すら3点しかなく、生前の彼を知る人間もほとんどいない中、ジェシカ・ユーは彼の人生を入念に調べ、家主のラーナー夫妻や教会の合唱団の男の子らの証言を集め、彼の部屋や作品の引用なども織り交ぜて、孤高のアウトサイダー・アーティストの謎めいた肖像を描き出した…。



長期入院してたオラが言うのもなんですけどキチガイみたいなカッコした若いカップルが見に来てたよん。女はよくあるゴスロリ、すごいのは男のほうでピンクのタイツにピンクのリュック、とどめは山高帽。渋谷って街がステージなのねん、車って感じでもないので、そのカッコで電車に乗ってやってきたんだろ~か。
渋谷のミニシアターに限らず、アート系のイベントはそ~ゆ~やつの見本市みたいなもの。独善の王国に君臨して自己主張しまくってるが、誰しも若いうちはその種のアピールをしたがるもんでっしゃろ。キチガイどころか健全の証明?
そこへいくとヘンリー・ダーガー氏はすごいね。早くに親と死別して小学校も退学になり、知的障害児の施設で7年間を過ごしたが、そこでのつらい体験が後のひそかな創作活動に多く反映されている模様。読破した者は誰もいないのではないかといわれる15000ページの物語は、聖なる7人の少女ヴィヴィアン・ガールズがアンジェリニアンの子どもたちを迫害から守るべく、邪悪なグランデリニアンと戦うという壮大な叙事詩で、少女たちはしばしば裸でちんちんがついている。
真にすごい、と思わせられるのは誰かに見せるということを完全に想定してない創作活動だってことで、生前に認められなかった画家や音楽家でも少しはお客さんの存在を意識してるもんでしょう、それがほぼ皆無。
なおかつ「引きこもりの芸術家」というわけでなく、雑役夫の仕事に関してはかなり勤勉で、変人ではあるが家主との関係など社会生活はわりときちんとしていたらしい。
作風からすると連想されるのはダニエル・ジョンストン、真珠子、辛酸なめ子といったところでしょうが、あらゆる商品による消費をうながす声に囲まれて暮らす現代社会では、ダーガー氏のように自分自身の内面から発する声に耳かたむけて常識にとらわれない奇想天外な発想をし続ける創作活動というのは困難になっていくのかもしれない。下画像:辛酸なめ子…じゃなくて、あんまり似てるので驚いたが7年前の小倉優子なんだって…「こりん星から来た」とか言い出す前の。
最近の辛酸なめ子は「フランス映画に出てみたい」とかの野望を抱いてるらしいが、小倉ゆうこりんもゴルフやら株・FXやらキャラクターが混乱…人相学的な運命の類似、というよりかは高度情報化・大量消費社会の中に自分自身を見失って立ちすくむ2人の女…

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