レンタルにて、スコット・ヒックス監督(1995年)。
オーストラリア出身のピアニスト、デビッド・ヘルフゴットDavid Helfgott(青年期ノア・テイラー、成人後ジェフリー・ラッシュ)は、6歳の頃から父ピーター(アーミン・ミューラー=スタール)の厳しい英才教育を受け各地のコンクールで頭角を現す。高圧的に父権をふりかざしてデビッドの言うことに耳を貸さない父の望みは、デビッドが高度な技巧を必要とする情熱的な大曲・ラフマニノフのピアノ協奏曲3番を弾きこなすようになること。
やがて父を振り切ってロンドン王立音楽学院に留学したデビッドはますます才能に磨きをかけ演奏会も成功させるのだが、徐々に精神に変調をきたし始め、10年間も演奏活動を休止して療養することを余儀なくされる。
しかし絶望とかすかな希望の間でゆれ動いていた彼の前に年上の温かい女性ギリアン(リン・レットグレイヴ)が現れ、彼は本格的な復帰に向けて小さなスタートを切る…。
ジェフリー・ラッシュが1996年のアカデミー主演男優賞を受賞。
ギターならば左手でコードを押さえて右手でかき鳴らす、それはまだなんとか手に負えるかもしれないが、ピアノともなると両手の指を駆使してまったく常人の想像のおよばないような超絶技巧を…いずれ「鍵盤ヒーローズ」って企画もやりたいですね。
しかし『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』でもつくづく感じたのだが、クラシックの演奏家は昔に作曲された曲を複雑な楽譜から生の音楽として再現するのが仕事じゃないですか。他人の思いを伝えるような「役者」でなければならないし、かといって多くの聴衆に訴えかけるためには「自分」というものを失うわけにもいかない。精神の平衡を保って長く活動していくことはたいへんに厳しい道なのではないだろうか。
ひょんなことから下掲のチラシを入手して、デビッド・ヘルフゴット氏がこの7月に6回の来日公演を行うことを知ったのだが、『シャイン』がヒットしたことにより96年あたりから世界50都市でツアーを行い、日本にも97年~01年と5年連続で来日しているらしい。
ロック系なら作詞作曲による印税収入も見込めるし、スターになれば金も女もウッハウハ、しかし市場の小さいクラシックCDの演奏印税などたかが知れていそう、また音楽大好きなオラですら客層の俗物臭キツそうなクラシックのコンサートにはさすがに二の足を踏んでしまうくらいだし、多くのクラシック演奏家の人生は経済的には報われることの少ない地道な旅芸人のような感じなのかもしれない。