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天変地異と日本人─保立道久氏のブックガイド

2011-05-30 22:35:07 | Bibliomania
【1】地震列島の歴史
東日本の太平洋岸を襲った大地震を歴史から考えるために、つまり根本的に考えるために参考となる本を紹介したい。
21世紀前半にも発生が予想される東海・東南海トラフ大地震の過去の諸事例については、矢田俊文『中世の巨大地震』(吉川弘文館)がある。中世では1096年、1360年、1498年に3回の東南海大地震が起きており、以降、だいたい100年から150年ごとに発生しているという。本書は徹底的な史料蒐集によって、これまで不明瞭であった中世の地震、特に1498年の明応地震の実像を明らかにしており、中世史研究は本書によって初めて歴史地震についての詳細な叙述を提供することができた。
歴史学は、100年、200年を越える時間を実感するためにあるという私の持論からすると、矢田は、この地震列島の歴史を読むという歴史学の責務をほぼ一人で果たしたことになる。本人はそう考えないかもしれないが「大地と海原」の歴史分析を強調した網野善彦を継ぐ仕事であると思う。
矢田の共同研究者の一人、地震学の石橋克彦『大地動乱の時代』(岩波新書)も必読。地震とは何か、東海大地震とは何かを、その最初の予知者として臨場感をもって述べる。日本の地震学においてプレートテクトニクスの導入は世界水準から10年遅れたといわれるが、予知される地震への恐れと自分の従事する学問の現状への焦慮が重なっている叙述は独特の緊迫感がある。ほぼ半分が江戸時代の地震に充てられているから、矢田の本とあわせれば地震史のほぼ全容が分かる。
もう1点、通史の体裁をとった寒川旭『地震の日本史』(中公新書)も分かりやすく有益だ。寒川は全国の発掘現場を歩いて、地下に残された地震による液状化遺構の発見の方法を伝授し、その中で「地震考古学」という分野をつくり出した。今回の東日本大地震の原型といわれる9世紀の大地震、「貞観地震」の津波痕跡にもふれている。本書の出版は4年前の2007年。それ以降「貞観地震」の研究がさらに進み、昨年には原発との関係を含めて研究者が強い警告を発していたことは、よく知られている。

【2】津波史を生きる
中世の津波については、初回にも挙げた矢田俊文『中世の巨大地震』がある。紹介したように、本書は室町時代、1498年の地震の全体像をはじめて明らかにした仕事であるが、その被害の中心は津波であった。おのおの数千を超える死者を出したという伊勢・駿河・遠江・紀伊の津波被害の分析は臨場感にあふれている。断片的な史料をもとにして、遺跡の情報や江戸時代の伝承を組み合わせて推理をしていく矢田の仕事に歴史学の醍醐味を感じる人も多いだろう。本書には平安時代の津波の分析もあり、海村や海運の歴史の本としても、興味深いものである。
江戸時代の津波についてまとまった歴史書はないが、災害史研究において画期をつくった北原糸子『日本災害史』(吉川弘文館)に、東大地震研究所の郡司嘉宣が、コラム「日本における歴史津波」を書いている。郡司は江戸時代の崩し字の古文書を読みこなす力をもつ地震学者として有名である。
山下文男『津波てんでんこ』(新日本出版社)は近代日本の津波史である。山下は祖母を1896年の三陸大津波で失い、自身も9歳の時に1933年の三陸大津波を経験し、定年後に津波研究を究めたという異能の人物である。今回の津波の時、岩手県陸前高田市の病院の4階に入院していて2度目の津波に襲われたが、カーテンレールにつかまって体を支え、かろうじて流されずにすんだという。
津波について歴史学は後れをとっている。すでに「[古代・中世]地震・噴火史料データベース」(石橋克彦代表の科学研究費グループ作成)があるが、この充実に協力するのが急務だろう。
このデータベースを引いてみると、1454年に奥州の津波という史料があるのを知った。「山の奥百里入って、返りに人多く取る」という。同時に千葉も襲ったようだ。今回の津波は千年に一度の大地震・津波ではなく、ほぼ600年周期ということになる。
つまり最近よく聞く「千年に一度だから想定外」という言い方は正しくないのである。日本の大地が動乱の時代に入った、と地震学が警告していたことの意味は実に大きい。

【3】神としての火山
著名な日本文学研究者である益田勝実の机には、1952年に噴火した伊豆の海底火山、明神礁から噴き出した軽石が置かれていた。その著『火山列島の思想』(ちくま学芸文庫)は、たしかに私たちの持つべき思想を示している。
この列島に棲(す)むものは、日本の火山活動が活発であった紀元前後の時代に「マグマが教えた思想」を心のどこかに覚えている。折口信夫のいう「忌み」の思想、「神道」の思想の実体はそこにあった、というのが益田の主張である。日本の神は火山の神である。霧島新燃岳の噴火は、私たちに必要なのは「安全神話」ではなく、本当の神話への理解かもしれないと思わせる。
私は昨年、益田の火山神論に導かれて火山神について考え『かぐや姫と王権神話─「竹取物語」・天皇・火山神話』(洋泉社歴史新書y)を執筆したが、その中で、噴火こそが網野善彦が強調した「大地と海原」の実体であることを確知した。益田の仕事は、文化の問題として地震・津波・噴火を受けとめるために必須のものである。もし幸運に「原発」を抑え込むことができれば、日本社会は、この問題をめぐって内省を深めざるをえないはずである。
そのために有益な本として、永原慶二『富士山宝永大爆発』(集英社新書)と、小山真人『富士山大爆発が迫っている!』(技術評論社)の2冊を推しておきたい。永原は歴史学の立場から、1707(宝永4)年の富士の噴火と膨大な積砂による荒廃、そして河床上昇による大洪水という二次災害を描いて間然するところがない。その復興には実に70年以上もかかったという。
後者の小山の著書は富士の噴火の歴史と構造についての火山学の側からの説明である。宝永噴火と864(貞観6)年の噴火の比較が面白い。小山は富士山の噴火のハザードマップを作成した人だが、逆に日本の国土は火山なしには盆地・平野もありえない貧困なものとなったろうと火山の恩恵を強調している。そういえば、日本における黄金の産出は火山列島であることによるという。
なお、前回も触れたが「[古代・中世]地震・噴火史料データベース」が、小山が勤める静岡大学防災総合センターから公開されている。 ─(以上3つの記事は、保立道久氏が執筆して東京新聞5月8・15・22日読書面に掲載された「テーマを読み解く~地震・津波・噴火」より。ご本人のブログにも全文が掲載されています)



保立道久(ほたてみちひさ)=1948年生まれ。東京大学史料編纂所長を経て、同教授・日本中世史。著書に『中世の女の一生』『平安王朝』『歴史学をみつめ直す』『義経の登場─王権論の視座から』など。


◆震災面・取材メモから─経験を伝える
4月初旬。宮城県気仙沼市の避難所を訪ねると、70歳ぐらいの女性から「報道の人か」と声を掛けられ、手の大きさほどの1枚の厚紙を渡された。
裏表に赤いペンで字がびっしり。震災では津波で多くの船が流されたが、女性の故郷の同県南三陸町石浜地区では、「サトウトシオ」さんら漁師の知恵で多くの船が助かったという。「こん後のためにも是ひ取材お願いしたく思います」とも書かれていた。記者の誰かに渡そうと準備していたらしい。
女性は名前も教えてくれない。車で1時間半かけて石浜地区の避難所を訪ねると、地区会長の佐藤登志夫さん(63)がいた。先祖の教えに従い、地震直後、19隻で津波被害を受けにくい沖合に逃げ、難を逃れたという。
「女性に心当たりはないが、経験を後世に伝えたいのはみんな同じだよ」と佐藤さん。何度も津波被害に遭い、そのたびに再起を果たしてきた東北の人の「つなぐ心」を強く感じた。 ─(鷲野史彦・東京新聞5月30日)
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婦人公論

2011-05-27 22:30:35 | 音楽
◆DREAM A LITTLE DREAM OF ME (Wilbur Schwandt, Fabian André, Gus Kahn─歌詞大意、以下同)
星は輝き、夜風は愛してるって囁く
鳥たちが歌う、ささやかな私の夢を見て
星は消えていくけど、私の思いは消えない
太陽の光があなたを見つけるまで甘い夢を見るの
すべての悩みを忘れさせてくれる甘い夢
たとえどんな夢でも
ささやかな私の夢を見てほしい

◆O’ SAILOR (Fiona Apple)
またしても、あなたのことで心を決めかねているわ
わたしも52枚のカードを使ってプレイしているの
手の内は見え見えで、警戒しようもないけど
とっておきの手、あなたを絶対には信用しない
ああ、船乗りさん、なぜそんなことをするの?
なんのために?
些細なことじゃないかとあなたは言って
崩れて海の中に落ちるがままに任せるのね
わざわざわたしに目を与え、それが
崩れて海の中に落ちるさまを見せつけるのね

◆TOXIC (Cathy Dennis, Christian Karlsson, Henrik Jonback, Pontus Winnberg)
聞こえるでしょ、あなたを呼ぶ声
要注意人物、危なすぎるわ、落ちていきそう
けど最高、ねえ、あたしのこと感じてる?
その唇がたまらない
毒のようにあたしを引きずり込む
完璧にやられたわ
あなたって有毒
(ってな歌をCAのコスチューム着て機内で歌い踊ってたら
あたしのブーツが蒸れて猛烈に臭いんですって
あらやだ、あたしも有毒)

◆返事はいらない (荒井由美)
この手紙が届くころにはここにいないかも
じっとしてると余計なことも心配だから
昔に借りた本の中の
気に入った言葉を書いておいた
あなたも好きになるように
遠く離れたこの街で
あなたのことも知りたいけれど
思い出すと涙が出るから
返事はいらない

◆RHIANNON (Stevie Nicks)
リアノンは夜のしじまを縫う鐘の音のような声で歌う
いまだかつて風に乗った女の人なんて
見たことはないはず
彼女が天国を約束したなら
あなたはそこにとどまり
勝ち取ることができるかしら
夢がほどけていく
恋なんてただの心の持ちように過ぎないわ

◆GIRLS JUST WANT TO HAVE FUN (Robert Hazard)
朝帰りするとママがガミガミ言う
真夜中に電話が鳴るとパパが大声でわめく
ああ、パパは今でも最高よ
ママ私たちって、不幸な生き物なのね
女の子だって楽しみたいのよ
女の子たちだって、楽しくやりたいの
彼女ができたら、どこへも連れ出さず
自分の世界にしまっておく男の子がいるわ
私はとじこめられるのはいや
いつだって外に飛び出していく
女の子たちだって、楽しくやりたいの



◆CROSS BONES STYLE (Chan Marshall)
おお水晶の瞳とともにあっという間に時は過ぎ
あなたのダイヤモンドの瞳が閉じる時、石炭のように冷たく
どくろマークの子供よこっちへおいで
子供よおいで、私を助けて、信じられない光景を見たのでしょ
憎いのね私はあなたのダイヤモンドを手にしてその上
信じられない光景を見たのでしょ

◆THIS LOVE (NOT FOR SALE) (Tracey Thorn, Ben Watt)
この縮み上がったような国で
うまくやっていきたいの?
それとも、なんとかやっていければ満足?
小さな町に住む女の子の、ちっぽけな考え
大人になったら、世界を変えたいと思っていた
ねえそこの女の子
この美しい国でうまくやっていきたいのなら
大物の言うことをよく聞いて、信じ込むのよ
果樹園から夜景のまばゆい都会まで
値段さえ適切なら、誰でも屈服する
神様もそろそろ気づくはず
この愛は売り物じゃない

◆YOU GO YOUR WAY, I’LL GO MINE (David Palmer, Carole King)
あなたが二人の間をへだてたのよ
あなたのデザインした壁でもって
あなたの考え方を正当化しようと努力したけど
あきらめた、すっかり否定されてしまって
あなたが残してくれるのは「妥協」だけ
いいわ、わかったわ、あなたはあなたの道を行って
私は私の道を行くわ
時が経てば、あなたを忘れられる
今、あなたをひきとめるものは何もない

◆しあわせ芝居 (中島みゆき)
泣きながら電話をかければ
ばかなやつだとなだめてくれる
眠りたくない気分の夜は
物語を聞かせてくれる
とてもわがままな私に
とてもあの人はやさしい
恋人がいます、恋人がいます
心のページに綴りたいけれど
綴れないわけがある
私みんな気づいてしまった
しあわせ芝居の舞台裏
逢いたがるのは私ひとり
あの人から来ることはない



◆AUNT SALLY (phew, bikke)
おはようアーントサリーはしっておいで
どうにもならない駄目な人ね
おはよう おはよう どうでもいいわ
ちえ遊びの絵本かずの絵本かなの絵本
本日は即興劇を
おはよう おはよう どうでもいいわ
アヴェ・マリアおはよう
おはよう はしっておいで

◆DOLL PARTS (Hole)
私は人形の目、人形の口、人形の脚
人形の腕、太い血管、犬のちんちん
イエー
彼らは本当にあなたを欲しがっている
彼らは本当にあなたを欲しがっている
彼がこうしたものを好きなのは、それが壊れるところを見たいから
私は本物らしく演じているけど
見せかけだけよ
いつの日かあなたは痛みらしい痛みを感じるの



◆YOU’RE SO VAIN (Carly Simon)
ヨットの上を歩いているような足どりで
あなたはパーティーへと現れた
片目が隠れるよう計算して帽子をかぶり
スカーフときたらあんず色
ガボットをうまく踊れているか、鏡でチェックは怠らない
何年か前、私がまだとってもうぶだった頃
あなたは私をモノにした
ぼくらは素敵なカップルになれる、決して別れたりしないって
私にもちょっとした夢があったけど
コーヒーの中に浮かぶ雲でしかなかったわ
あなたは自分の愛するものをどんどん捨て
その一つは私、あなたはスペインでエリカ様とかいう
ヤンキー娘を連れ回したと思えば
今度はパリで、ミポリンとかいう色黒の小鬼と一緒
あなたって、空っぽなうぬぼれ屋さん
この歌だって、自分のことを歌ってると思ってるんでしょ
そうでしょ、そうでしょ

◆元気を出して (竹内まりや)
涙など見せない、強気なあなたを
そんなに悲しませた人は誰なの?
終わりを告げた恋にすがるのはやめにして
幸せになりたいなら、あしたを見つけることは簡単
チャンスは何度でも訪れてくれる
彼だけが男じゃないことに気づいて
人生はあなたが思うほど悪くない
早く元気出して、あの笑顔を見せて
ガンバ!! (と、クラスのドブスが、美人をはげます歌)

◆赤いスイートピー (松本隆, 呉田軽穂)
春色の汽車に乗って海に連れて行ってよ
煙草の匂いのシャツにそっと寄りそうから
なぜ、知り合った日から半年過ぎても
あなたって手も握らない
あなたについてゆきたい
ちょっぴり気が弱いけど
素敵な人だから
好きよ、今日まで逢った誰より
あなたの生き方が好き
心に春が来た日は、赤いスイートピー

◆SUGAR BOY (Beth Orton, Ted Barnes, Ali Friend)
シュガー・ボーイ、もう終わったわ
あなたの愛し方じゃなくて
あなたのすることなの
もうあなたに飽きたの
愛しているって言ったけど
それ以上は何もできない
このハートをひどく傷つけるだけ
横たわって
あなたのために死ねばいいの?
私はしないわ
あなたのためには死ねない
横たわって死んだりしない



◆CAUGHT OUT THERE (Pharrell Williams, Chad Hugo)
この曲を、彼氏に嘘をつかれた女たちに捧げるわ
みんなは、男たちをコテンパンに痛めつけたりはしないでしょうけど
私はキレるわ、言ってること分かる?
あんたって最悪、あんたなんて大嫌い、ア“~~
浮気癖にはもうウンザリ
あんな下品な女といちゃついて
私に嘘をつき続ける
一発お見舞いしてやるわ
あんたたちの浮気を見破ったのよ
あんたって最悪、あんたなんて大嫌い
ア“~~、あんたって最悪よ!

◆LOVE HAS NO PRIDE (Eric Kaz, Libby Titus)
たくさんの悪い夢を見てきて
楽しい日々は過ぎ去り、置き去りの悲しい心
ひとりぽっちの夜を過ごし
あなたが帰ってくるかもしれないと
ずっと思い続けてきた
お金で買うことができるなら
永遠に祈ることでかなうなら
私は試してみるでしょう
恋にプライドは無用
あなたの名を大声で叫ぶとき
恋にプライドは無用
私はどんなものでも捧げるわ
もう一度あなたと会うためなら



◆(YOU MAKE ME FEEL LIKE) A NATURAL WOMAN (Gerry Goffin, Carole King, Jerry Wexler)
雨のふる朝、窓辺に立って外を見ていると
なんだか気がふさいでしょうがなかった
新しい一日と向き合わなければならないというだけで
すっかり疲れてしまっていた
あなたに出会ったその日まで、私にとって人生は冷酷だったけれど
あなたの愛が閉ざされた心のカギを開けて安らぎをくれた
あなたのおかげ、あなたは
ありのままの私でいさせてくれる
ありのままの私に充足感を与えてくれる

◆WHY (Christine McVie)
泣いても仕方ないわ、すべてが終わったんだから
あなたなしではやっていけないけど
ずっどこのままじゃいけないわ
朝陽とともに私も立ち直り
心の傷も癒えるでしょう
あきらめることはないのよ
罪じゃないわ
私を愛してよ
強くなってよ

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ピッピという女の子

2011-05-21 23:15:56 | Bibliomania
『世界中で愛されるリンドグレーンの絵本』 @芦花公園・世田谷文学館(開催中~6月26日、月曜休館)
世界中の子どもたちに愛されている『長くつしたのピッピ』。作者のアストリッド・リンドグレーン(1907~2002)は、子どもの憧れる生活を、ピッピという日常の価値観を超越した女の子の物語によってかなえてみせました。
リンドグレーンは生涯にわたり、ピッピのように《子どもならではの時代》を謳歌する子どもたちの姿を書き続けました。それは、大人の理想とする子どもの姿を払拭するもので、子どもは大人とは全く異なる世界の中に生きていることを明確にするものでした。
本展では、「やかまし村シリーズ」など、スウェーデンの豊かな自然を背景にした作品群を展示するとともに、世界中に広がった「ピッピシリーズ」の《生き生きとしたイメージ》を、2部構成で紹介します。



2週続けて録画しそこねた、神木きゅんが料理するさまを、きょうはしっかり録画できたので、安心してブログ更新。
どうなのかね、2ちゃんねるでは、神木きゅんかっこよくなって、かわいい子役から脱皮できた貴重な例のような評判も聞くが。ホモホモ目線というより、自分の子どもの成長を見守るのにも似た。
これまでのオラの、若い女たちとの乏しい交遊録においても、ことに4大卒の女子は母親から料理など家事を教わっていない場合がしばしばで、いざマトモな就職先に恵まれなかったときにツブシが利かなくて身を持ち崩す一因にもなっている傾向。ゆえに、若くかっこいい男子が、率先して厨房に立つ様子をドラマ化することによる教育効果も見逃せない。
さらに、近年のオラのように四十の手習いで自炊するにしても、子どものころ「親の手料理」で培った味覚を頼りにせざるをえないわけで、つくづく親の子どもに対する影響力・支配力を実感。
子どもって、自由なようで、意外と不自由。さまざまな制約に、縛られている。
だからこそ、なにものにも縛られない、天衣無縫なピッピちゃんの人気は、いつまでも衰えないに違いない。
日本では1964年に初めてお目見えしたそうなので、いま55~56以上の世代には馴染みが薄いにしても、それ以下の世代にとって、おそらく日曜晩の名作劇場でアニメ化されなかった児童文学作品としては最大の認知度なのでは。
オラ子どものころ愛読した版は、とうの昔に手放してしまっていたが、本展の展示ではわが国のほぼすべての版が網羅されており、めぐり会うことができた。岩波書店版と同じ1964年に講談社から少年少女新世界文学全集の27巻「北欧現代編」として出版されたもののようだ。シリーズの3部作すべてを『長靴下のピッピちゃん』の題で、『ムーミン谷の冬』『青二号、とびだせ』と併録。
そうそう、ムーミンも青二号もぜんぜん読まないで、ピッピちゃんばっかり読んでたんだよ。挿絵は松田穣という人が担当したとのこと。3部作のいよいよ最後の場面、窓辺でひとりロウソクを見ながら考え込むピッピが、↑画像の桜井誠氏によるものより、もっと夢みるような表情だったのが、いまも忘れられない。



イロン・ヴィークランド(Ilon Wikland)─『やかまし村の子どもたち』表紙(1954~61)



クリスティーナ・ディーグマン(Kristina Digman)─『ペーテルとペトラ』表紙(2007)=リンドグレーンの『親指こぞうニルス・カールソン』に基づく絵本



イングリッド・ヴァン・ニイマン(Ingrid Vang Nyman)─『長くつしたのピッピ』より、サルのニルソンを抱くピッピ(1945・出版社用ポスター原画)=芸術家肌の挿絵画家で、後に苦境におちいって自殺したが、ピッピシリーズの最初の版を手がけたので、スウェーデンでは彼女による挿絵がピッピのイメージとして定着している



同じく、『長くつしたのピッピ』の挿絵(1945)



アドルフ・ボルン(Adolf Born)─『長くつしたのピッピ』より、ピッピ、コーヒーの会に呼ばれる(1993)=現代チェコを代表する絵本作家・挿絵画家で、アニメーションでも名高い



ローレン・チャイルド(Lauren Child)─『長くつしたのピッピ』より、ピッピ、ごたごた荘にひっこす(2007)=斬新な作風で人気の、イギリスの絵本作家



桜井誠─『長くつしたのピッピ』より、ピッピ、門にこしかけ、木にのぼる(1964)=『小公女』『赤毛のアン』『アルプスの少女』など児童書の挿絵を多数手がけた日本の挿絵画家。ピッピも最初の岩波書店版を担当、多くの日本人にとって、作品と切り離せないイメージになっている
コメント (2)
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Top 10 Hits of May 2011

2011-05-18 22:26:06 | Weekly Top 15
月曜晩の、有名アスリートを取材したNHKの番組によれば、卓球の五輪出場権が、世界ランキングの各国上位2名に与えられることから、第一人者だった福原愛選手をしのぐ勢いで、昨年、日本人中最上位のTop 10内につけた石川佳純選手に、「このランクを守りたい」という気持ちが生じたんだとか。
それまでは、卓球をすることが楽しくて仕方がないほどだったが、初めて、心から楽しいことばかりでない、苦しさも感じるようになり、試合でも積極的に攻めていくというより、「(対戦相手が)ミスしてくれないかな」のような消極的な気持ちが芽生えた。
せっかくつかんだランキング上位なのに、それは常に浮き沈みするものであるため、逆に心を、体を縛る。
自分がベストをつくすことより、他人の動向が気になる。
彼女ほど、実力の世界で、まっすぐに生きてきた若者でも、そうなってしまうということに、あらためてハッとさせられた。

先日の記事に引用した、ビートたけしが「原子力発電所としては、地震が起きても大丈夫なように、他の施設以上に気を使っているはず。だから、地震が起きたら、本当はここへ逃げるのが一番安全だったりする(笑)。でも、新しい技術に対しては『危険だ』と叫ぶ、オオカミ少年のほうがマスコミ的にはウケがいい─」
─と語った、政府の原子力委員長を招いた新潮45のヨイショ対談。
実際に、原子力は危険だとするオオカミ少年のほうが、マスコミ的にウケがいいのかは別として、ここに、先行して利権をつかんだ者が、他人をおとしめることによって、自分を守ろうとする、石川選手の心を縛ってしまったものとも似ているが、もっとじじむさくて小狡いものを感じるのだ。

スポーツ選手の盛りは短い。まして卓球では、膨大な人口を幼少時から選抜して、徹底した英才教育を施す、中国の選手たちが、壁のようにそびえたっている。
お笑いの才能がとっくに枯渇しても、さまざまなことに保険をかけて、文化人ヅラをして居座っていられる日本のマスコミ界とは、厳しさが違う─
─と、ビートたけしを非難するオラ自身も、さまざまなことをあつかって、あまたの他人への批判・中傷により、弊ブログを長く続けていこうとするような、たけし的老害・マスコミ的悪徳を根強く宿している。

もっと、他人がどうこうではない、自分自身のベスト記録に挑む、自分でなければできないことに挑戦する─という態度がなければ、ブログを続ける意味は薄い。
無職で独身のオラも、ごくわずかでも進歩し、貢献したい。難しいことだと思うが、生産的に生きてみたい。
というわけで、時間が腐るほどあって、一日中音楽を聞いていても叱られない身分であることから、これまで大晦日にやってきた年間チャートの曲数を増やすとともに、毎月のチャートもやっていこうかと。

今月は、以下のような結果となり、1970年代から活動してきたザ・カーズの久々の新曲がベテラン勢としては唯一のランク入りを果たしたものの、日本の音楽が不在なのが寂しい。
石川選手を追った番組でも、エンディングに悪夢のようにひどいJ-POPが聞こえてきて。GReeeeNとかいう。eの数、合ってます?
間違ってようが、どうでもeeeeんだけどね。
オラ子どものころ日本でヒットしていた曲は、たとえ保守的でロックとは無関係だとしても、音楽としては、そうひどいものではなかった。
下手クソなアイドル歌手でも、曲そのものはよくできていることもあった。
それに対し、今のJ-POPは、ギターで作曲しているのか、ピアノ等で作曲しているのか知らないが、それらの楽器の宿す長い歴史から、まったく切り離されて、バブル期・CDバブル期以降のわが国の特殊な文脈に沿って、一部のお客さんを囲い込むようなものに成り下がっている。
「自己啓発セミナー」みたいな。
もし、これから結婚・子育てするとすれば、そうした音楽や、音楽以外の子ども向けカルチャーなどの洗脳から、わが子を守ることができるのか不安。
たけしの原発擁護対談が、記事なのか広告なのかはっきりしないように、公共の出版、公共の電波といったものも、汚染されて信用できないので、ヒットチャート作りなどを通じて、自分なりの座標軸を定める試みとしてゆきたい。



◆Top 10 Hits of May 2011
1. "Think You Can Wait (From the Film "Win Win")" The National (2011 - Single)



2. "Hyena" Snowman (2011 - Absence)



3. "Limit to Your Love" James Blake (2011 - James Blake)



4. "You See Everything" Low (2011 - C'mon)



5. "My Time's Up" The Raveonettes (2011 - Raven in the Grave)



6. "Afterburner" Panda Bear (2011 - Tomboy)



7. "New Beat" Toro y Moi (2011 - Underneath the Pine)



8. "What You Need" The Weeknd (2011 - House of Balloons)



9. "Sad Song" The Cars (2011 - Single)



10. "Mirrorage (Lindstrøm Remix)" Glasser (2011 - Single)
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佐藤栄佐久氏の証言

2011-05-14 22:39:36 | Bibliomania
「福島原発の事故は人災だ」─私の逮捕も含め全てを語ろう @御茶ノ水・明治大学リバティータワー(5月13日)
5期18年にわたって福島県知事を務め、実弟の不正な土地取引の疑いと逮捕の道義的責任をとって2006年9月、知事を辞任、その1ヵ月後、建設会社からの収賄容疑で逮捕され現在最高裁へ上告中の前福島県知事、佐藤栄佐久(さとうえいさく・↑画像中央の、白黒メッシュ髪の人物)氏は、「地震、津波は天災だが、原発事故は人災だ。起こるべくして起こった」と語る。
同氏は知事在任中、道州制に代表される東京・大都市一極集中を進める小泉政権の方針に「地方の痛み」を理由に反対し続けてきたことでも知られる。
さらに、原子力発電についても初期のころを除けば、発電所から離れた自治体や県政には恩恵が薄いことから反対、プルサーマル計画には東京電力による事故隠しが発覚した後、計画承認を撤回したように、是々非々の知事でもあった。
この講演では、同氏が在任中に体験した、事故・トラブルを隠蔽して原発政策を進める、政府と東電の癒着構造の実態、そして原発で地方が豊かになるという嘘について余すことなく語っていただく。



先日、かわいそうな女性タレントが自ら命を絶って、それ自体は何度も繰り返されてきたことではあるが、それに伴うツイッターなどのネット言説に、薄気味悪いものを覚えて。
そのタレントが、ロンドンハーツの格付けや落ち目タレント進路相談に出演し、有吉弘行の毒舌を浴びていたことから、「有吉に殺された─」のような風説が一人歩き。
グーグル検索の急上昇ワードでも、そのタレントの名に加え、「有吉」という検索が急増。

まあ、一部の、踊らされやすい人たちの仕業だとは思うんです。
思うんですが、弘行という名前さえ入力しない、「有吉」だけで検索して、なんらか有益な情報が得られる可能性は、限りなく低いでしょう。どんだけ頭が悪いんですかね。

やがて、時間が経つにつれ、マスコミを中心に、背景となる情報が出回りはじめ、有吉氏への嫌疑は晴れたようだが、ツイッターへ書き込んだ人たちや、検索した人たち、あるいは有吉氏の毒舌キャラを演出し、彼への反感が蓄積されるよう仕向けたテレビ局なんてのは、それこそ、なあんの反省もなく、次の話題へ移っていくのだろう。
人一人死んでいるのだが、詮ない話だ。

有吉氏にとって「毒舌キャラ」は、彼の人格の一部に過ぎない。
亡くなったタレントにしても、テレビでいじられている姿は、彼女の全人生のわずかな部分に過ぎない。
それだけを取り上げて、「殺された」とかの重大なことを無責任に書き込む人びとを、愚かだと笑うよりも、現在進行中の原発危機とも重なるものを感じ、恐ろしいのだ。

相変わらず、福島第一原発事故の情報は、極めて乏しい。
1号機でメルトダウンが起こっていたのも、今週になってようやく。2号機・3号機では、建屋に人が入ることさえできていない。
菅内閣がせっついて、東京電力に発表させた「工程表」も、おそらく大幅に遅れることだろう。
とりあえずの収束にも2年~3年、さらに近隣に人が住めるようになるのを、オラが生きているうちに見届けることも難しいかも分からない。
テレビ的な「使い捨ての話題」とは、まったく異なる時間軸だ。
原発は、1950年代から長い時間をかけて、国民には都合よい情報しか知らせないようにして、隠密裏の国策として遂行されてきた。
いざ重大事故が起こり、撤退するにも同じくらいの時間がかかり、さらにそれでも「核のゴミ」は半永久的にわれわれとその子孫に脅威を与えるだろう。

最近の一部報道では、モンゴルに原子力発電所を建て、「核のゴミ」も引き受けてもらう計画もあるのだとか。
引退させられて母国の国会議員になる横綱や、彼のタニマチ衆も一枚噛んでいたりするかも。開発型の政治にたかってくる輩の行動様式は、いずこの国も同じだ。
きのう拝聴させていただいた福島県の佐藤前知事も、5期18年という県政は、いくらなんでも尋常ではない長さ。彼自身は今も、収賄ではない、原発推進に都合悪い存在なので狙い撃ちされた─との認識のようだが、その話ぶりは─

─県政の最高責任者だった者でしか語りえない、生々しいエピソードも豊富に。
1990年代の行政改革に伴う省庁再編、さらにはJCO臨界事故を踏まえ、経産省の原子力安全・保安院が260名体制、内閣府の同安全委員会が100名体制で、それぞれ専門教育を受けた学者・官僚による監視体制を敷いたとのことだが、福島県の既存の立地住民には、↑画像のようなペラ紙が1枚配られたきりで、こういう体制だから、安全です─と。
その裏側では、日本の地震学の第一人者で、原発への厳しい見解で知られた石橋克彦氏が、耐震性の強化基準にまつわって、これではとうてい責任を果たせない─と安全委員を辞任。
JCO事故より以前にも、福島第一・第二原発ではトラブルが多発し、県側に重大な情報が伝わってこない傾向も強かったため、内部告発の制度も設けられたが、安全・保安院は告発者名や内容を東電に流し、ひそかに処理しようとした。そのため佐藤氏は、県の担当者に「国を信用するな!」と檄を飛ばしたのだとか。

高速増殖炉や再処理工場がトラブル続きで稼働できないなか進められるプルサーマル計画に対しても、彼が汚職の疑いで追われた後、自民党県議団の働きかけで後任の佐藤・現知事がプルサーマル受け入れを決めた、そのわずか2日後に国が再処理工場の完成を延期すると発表したことに、国の典型的なやり口だと批判する。

また「平成の大合併」でできた南相馬市には300もの神社があり、それぞれのコミュニティーがある、このたびの地震・津波・原発事故にあたって「道州制」で東北復興しようという動きについても、そうした地域の抱えるさまざまな事情を無視して、上から目線で管理・再開発するものでしかないと、厳しく釘を刺す。

オラも以前から、お笑いの実績はゼロながら、たけし軍団の武闘派として、芸能界・マスコミ界での知名度を活かして、宮崎県に天下った某氏などの例からも、彼らののたまう地方分権って、ぜんぜん地方分権じゃないよなァ、むしろ中央集権を強化してるよなァ─と感じていたので、福島県にドッシリ根を下ろしながらも国を批判する老政治家の姿に、静かな迫力を覚えました。
震災を経て、世間では、いったい何が真実なのか見極めようとする動きが強まり、それにつれ既存の権威が引きずり下ろされたり、怪しげな新興勢力が機をうかがったりもするでしょう。
弊ブログも、「有吉に殺された説」などを他山の石として、できる限りおのれを貫きつつ、長期的にお客さんからの信認を得られる存在でありたいと願っております。
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闇金ウシジマくんのサウンドトラック

2011-05-12 21:25:37 | マンガ
iTunes Playlist "SOUNDTRACK FOR USHIJIMA-KUN" 58 minutes
1. "MUGO・ん…色っぽい" 工藤静香 (1988 - gradation - 1巻・若い女くん)




2. "Pusherman" Curtis Mayfield (1972 - Superfly - 17巻・楽園くん)




3. "15の夜" 尾崎豊 (1983 - 十七歳の地図 - 2巻・ヤンキーくん)




4. "ラストダンスは私に" 越路吹雪 (1961 - 愛の生涯 - 15巻・テレクラくん)




5. "ガラスの十代" 光GENJI (1987 - Best Friends - 3巻・ゲイくん)




6. "パパはやっぱりすばらしい" 水谷 賢、コロムビアゆりかご会、こおろぎ'73 (1975 - 元祖天才バカボン サウンドトラック総集盤 - 21巻・トレンディーくん)




7. "The Freshmen" The Verve Pipe (1996 - Villains - 7巻・フーゾクくん)




8. "喝采" ちあきなおみ (1972 - 喝采/矢切の渡し - 22巻・ホストくん)




9. "Tokyo Disneyland Electrical Parade" Don Dorsey (1985 - Tokyo Disneyland History Of Nighttime Entertainment - 14巻・スーパータクシーくん)




10. "西新宿の親父の唄" 長渕剛 (1990 - JEEP - 13巻・出会いカフェくん)




11. "TRY ME" 安室奈美恵 (1995 - Single - 18巻・ヤミ金くん)




12. "PTA ~光のネットワーク~" UNICORN (1990 - おどる亀ヤプシ - 15巻・テレクラくん)




13. "In the Shadows" The Stranglers (1979 - Live, X-Cert - 7巻・フーゾクくん)




14. "だまって俺について来い" ハナ肇とクレイジーキャッツ (1964 - クレイジー・キャッツ・デラックス - 12巻・サラリーマンくん)








※2012年3月9日に "パパはやっぱりすばらしい" "PTA ~光のネットワーク~" "In the Shadows" の3曲を追加
※同4月5日に "15の夜" を追加
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311に伴う新聞社・出版社の格下げ/もののねだん1

2011-05-03 23:56:45 | 亡国クロニクル
B⇒C 中日新聞
C⇒D 平凡社
D⇒E 小学館
D⇒E 岩波書店
E⇒F 筑摩書房
E⇒F 光文社
E⇒F 角川書店
E⇒G 集英社
F⇒G 主婦と生活社
G⇒H 毎日新聞
F⇒H 朝日新聞
E⇒I 東洋経済新報社
E⇒I 講談社
F⇒I 中央公論新社
F⇒I 読売新聞
G⇒J 新潮社
G⇒J 日本経済新聞
H⇒K マガジンハウス
G⇒L 文藝春秋
H⇒L 産経新聞
J⇒M 幻冬舎



「幸福はいじわる。失ってはじめて分かる。なので、失う前に『絶対なくしてはいけないもの』『あってもなくてもいいもの』『なくてもいいもの』を日頃から仕分けしておくべき。夏の電力不足を考えれば、みな、『なくてもいいもの』を懸命に選び出す。その時、『絶対なくしてはいけないもの』も見えてくるはず」

いえ、きのうの朝刊で鷲田清一って人が述べてたんですけど。そのとおりだと。きょう、ふたなり中心・女装少年・男装少女・TSオンリー同人誌即売会=ふたけっと7が浜松町で行われて。
すでに「選びに選んで買わなく」なりつつあったオラとしても、作家さん本人が対面販売する場で、慎重に検討して、結局カクガリ兄弟さんの新刊1冊のみ買うのにとどめました。
神経を研ぎ澄まして、立ち読み用の見本などから、実用性や将来性を探っていると、作家さんや常連のファンの人の内輪の話し声も耳に。
「●●●●な属性の美少女が、●●●●でドレスアップして─」とか。
それぞれのサークルが、おのれの世界観を追及しているのでしょうが、かもし出すおたく特有の空気は、世界観を異にする者を受け付けない、ずっと昔ならブンガク青年・ブンガク少女として詩歌や小説の同人誌でも作っていたタイプの人たちなのではないかと。
すなわち、石原慎太郎がエロマンガを弾圧するのには、若さへの嫉妬や近親憎悪がないまぜになっていたりもするのではないだろうか。
石原慎太郎がいじめる相手は、エロマンガしかり、都立高の先生しかり、自動販売機しかり、パチンコしかり。世論の流れも見ながら、自分には害がおよばず安全地帯から一方的にいじめることができる相手に限られる。強そげに見せかけているが、卑怯で臆病なやつだ。
節電や、「我欲を捨てる」ためなら、まず民放のテレビを輪番で放送休止させるとかすればいいんだけどね、テレビ局・新聞社を敵に回すと、自らの「何を言っても許されるマスコミ治外法権」が剥奪され、権力基盤が失われることになるからね。
テレビ・新聞といえば─。

「激安な衣料のユニクロは、ひんぱんに新聞折込広告を入れて宣伝─」/「激安な焼肉のえびすは、島田紳助のテレビ番組で宣伝─」

激安なのに、担当者が付いて接客してくれるということで、紳助含む10人全員が「深イイ」ボタンを押したそうな。
浅ワルイ話。
4月18日のOA直後に食中毒事件が起こり、子どもの死者も出ているということで、ネット界では紳助および日テレの責任を問う声も聞かれる。
「安かろう悪かろう」という、お客の判断力うんぬんよりも、今どき、民放では夕方のニュース番組でも飲食店の宣伝をしていたりするのだ。





先の、絶対なくしてはいけないものとそうでないもの─というのは、必需品か贅沢品か─ということでもある。東日本大震災の直後、為替は円高に振れた。
大災害への反応としては、異例なことだが、最悪の事態になっても、食料や燃料は外国から買える、必需品が欠乏することはないということでもあり、正直、日本円の信用力をうれしく思ったものである。
円高になり過ぎないように協調介入するとかもな。
戦争に負けたときは、ハイパーインフレになって、円の価値が一挙に下がったとか聞いてたからさ。
分かりにくいじゃん、戦前の小説とか、ものの値段が違って。
違うにしても、『値段の明治・大正・昭和・風俗史』という本を見ていて、ものの種類によって、変りように差があると知った。
近年だと、電車賃はいったん値上げすると、デフレでも値下げしなくてムカつくなあ─、それに比べ、音楽ってのは恐ろしいほど安くなったよなあ、あ~あ、ビートルズまで曲単位で150円で買えるようになっちゃって─とかだけどね。もっともっと、変動の幅がすごい。
↑に掲げたのは、総合雑誌(明治20年から続く中央公論)と、家賃(板橋区仲宿の3DKの長屋形式の貸家)の値段のうつりかわり。
ずっと戦争ばかりやってきたせいか、明治から敗戦まで一貫してインフレだったと知れるし、敗戦を境にハイパーインフレになったというより、そこから10年ほど、昭和20年代にものすごく物価が上がったことも分かる。
それにしても、過去、貸家が一般的で、今より家賃が割安だったとしても、いかに総合雑誌が高かったかということである。昭和40(オラの生まれた1965)年あたりまで、幅はあるが、だいたい家賃の5%~10%ほどの値段だ。
もしあなたが、8万円の家賃を払っているとして、4000~8000円という値段を、たかが雑誌に払えますか。昔の人は払ってたんだよね。
それくらい、活字で印刷された情報が貴重品だったということでしょうか。
情報を一部の人たちが独占し、われわれに対して発信することで、小説家であれ新聞記者であれ雑誌編集者であれ、特権階級になることができたのである
今、誰もがケータイやパソコンで、いつでもどこでも情報を交換できるようになったことこそ、先のような、マスコミの劣化を招いた、一種の時代的な相互現象でもあるのではないだろうか。
さらに言えば、紳助の番組を見るような人は、受動的・依存的でだまされやすく、優先度の仕分けができていなくて、危機管理がおろそかだったともいえよう。実際に、深イイ話を見て同店で食中毒に遭った人がいるかは分からないが。



ふたけっとが行われた都立産業貿易センター、取り壊しのため来年からは会場が変わるとのことだが、1階の休憩スペースでは、↑ご覧のような人だかりで、同人誌を買い終えた人たちが戦利品を広げるでもなく、携帯ゲーム機やiPhoneに没入していた。
「在特会」の人たちが、韓国や中国へのヘイトスピーチを叫んだ後、居酒屋で盛り上がって「社会とつながれた気がした」ように、つながっていたいのだろうか。これはこれで、紳助の番組を見るのとはまた違った、依存的なものを感じずにはいられない。
客種(きゃくだね)としては、ギャンブルの客や性風俗の客と似ており、客同士でも油断がならないし、店側としても、恨みを買う危険を覚悟する必要がある。
すなわち、ハッカー攻撃を受けて、膨大なゲーム顧客の個人情報を流出させてしまったソニーは、危機管理がまったくできておらず、そこには、お客さんの目線に立つ気がないという、一方的な上から目線で無責任なことをするマスコミと共通する悪徳が宿っているとも考えられる。
一人一人は優秀な社員なんでしょうに。
しばらく前に、地震・津波・原発事故から見えてきたのは国民一流・経済二流・政治三流・マスコミ四流ということ─とも述べたし、国民の信用が日本円の強さにもつながっているのでしょうが、「悪貨は良貨を駆逐する」ということもあります。
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角を矯めて牛を殺す

2011-05-01 23:38:12 | マンガ
「火の鳥・羽衣編(COM版)」 手塚治虫 (COM1971年10月号)
羽衣伝説に基づき、古典芸能を客席から見るような形式で描かれている。望郷編(COM版)のプロローグになっており、火の鳥全編中でも際立って短い作品。
三保浜の漁師の村に生まれながら、臆病で殺生ができず、「びゃーら」を商って暮らしているづくなしは、浜の松の木にかけられた、透き通って美しい羽衣を見つけ、自分のものにする。
羽衣は、美しい女性のおときが海へ入るためにかけておいたもので、彼女はそれがなければ故郷へ帰れず、づくなしに返してくれるよう哀願するが、次第に情にほだされ、づくなしの妻になって、しばらく滞在することになった。
やがて二人の間には子どもができるが、2200年後の世界で大きな戦争に巻き込まれ、被爆して逃げてきたおときが生んだのは、障害があって普通ではない赤ん坊であるらしい。
そんなところへ、源義朝の配下の武士2名が徴兵に訪れ、人を殺めることなどできないといやがるづくなしを、「頭数さえそろえば」と無理やり連れて行こうとする。おときは、命より大事にしていたはずの羽衣を賄賂として渡し、づくなしは連れて行かれずに済んだのだが、それではづくなしの気が収まらず、おときのために羽衣を取り返そうと行ってしまう。
残されたおときは将来を悲観し、一度は赤ん坊を手にかけようとするが思い直し、赤ん坊を連れて2200年後の世界へ旅立つ。彼女が去った後に、羽衣を取り戻したづくなしが、傷だらけになって帰ってくる─。



『火の鳥・望郷編(COM版)』 手塚治虫 (COM1971年12月号・72年1月号)
木々に囲まれた屋敷。一人暮らしらしい白髪の老人が、朝のシャワーを浴び、動物たちに挨拶し、絵を描き、ピアノをかき鳴らす。警報が鳴って、ライフルを持った異様な風体の者たちが近づいてくる様子がモニターに映し出されるが、要塞のような屋敷に侵入できず、備えられた装置で皆殺しにされてしまう。
場面はガレキだらけの荒れ果てた土地に変わる。そびえたつピラミッド様の建物の中に、老人の屋敷と木々や動物たちが収められているらしい。そこへ宇宙船で降り立った来客。
その男はジョシュア・オーヴァードという名の宇宙開発土木請負業者で、かつて老人=城之内博士が造物主としてすべてを作り上げる手伝いをし、ささいなミスで追い出されたその惑星を、10年ぶりに訪れたのだ。
博士が作り上げた、クローン人間やクローンの動植物、博士はそれらをナポレオンのごとく支配し、地球のような文明の堕落への道を歩ませまいと管理していたのだが、オーヴァードの去った後に大きな核戦争が起こったのだという。
博士にはクローンではない時子という名の一人娘がいたのだが、戦争の際に放射能を浴びたことで、死にもの狂いになって、博士が発明したばかりの四次元世界へ行く機械スワープを操作して、どこへともなく姿を消してしまう。
惑星を去ってからも時子と交信していたオーヴァードは、その事実やスワープの存在をつかんでいたのだった。
言い争ってもみ合う2人の耳に、どこからか時子の声が聞こえ始め、やがて空間がゆがんで、スワープに乗った時子が姿を現す。彼女は次元移動の衝撃からか記憶喪失になっていた。
博士はオーヴァードを殺そうとして銃の暴発で死んでしまい、オーヴァードはスワープの中に、時子が連れてきた赤ん坊を見つける。それは戦争の影響か、普通ではない姿(マンガ少年版『望郷編』のコムと同じ外見)をした奇形児だった。
オーヴァードは「かわいそうだが─」と赤ん坊を池に投げ込むと、時子を連れスワープを積み込んで、宇宙船で飛び立つ。
赤ん坊を助けたのは、クローンの動物たちだった。歳月は流れ、ミュータントの赤ん坊は目は見えないが頭部の触覚で周囲を知覚して動物たちと意思疎通ができ、コムと名付けられて成長していた。
そして、人工的に作られたその惑星を快く思っていなかった火の鳥が訪れると、たくさんの質問を浴びせかけ、その中には彼の心に刻まれていた言葉「おとき」もあった─(未完)。



菅直人って人は、どうして自分が人気がないのかさえ分かっていなさそうな。
そもそもの「ボタンの掛け違え」は、首相に就任した際、「最少不幸社会」でしたっけか、提唱したの。
その際も、否定語を2つ重ねるセンスはいかがなものか─と指摘されていたが、不幸を最少にするという理想はいいものの、言葉づかいなどから、国民の気持ちをつかめない人であることが如実に。
いまも、国難ともいえる状況にあって、政権に就いていたことは、人気を挽回するチャンスでもあったのに、見当違いを繰り返している。
先日も、わざわざ内閣官房参与に任命した人が「学校の20ミリシーベルト」をめぐって抗議の辞任。
いくらなんでも世襲の麻生や鳩山よりはマシだろうと思ってきたが、人の気持ちが分からないということでは、似たようなものかも。
で、弊ブログの前回のマンガ評で、ひんぱんに大地震に襲われる惑星を舞台とする『火の鳥・望郷編』を採りあげた後、その全面的に描き直されたエピソードの、元々の版が掲載されたCOM誌を古書市で発見して。
買ってじっくり見てみると、なるほど手塚先生の時代に先駆けるすごさ、そして不幸な事情で長く中断した『火の鳥』が、再開後にすっかりつまらなくなってしまったわけもいくらか理解できたような。
このたびの風評被害の問題にもつながるが、放射能という匂いもなく目にも見えないものに対して、どう表現するべきかというのは難しい。核戦争の後に時空を移って、づくなしの子を懐妊したにもかかわらず、ミュータントの子どもが生まれるというのは、おかしいといえばおかしい。
しかし、それでもなお、手塚先生が描きたいように描きとおしてほしかったという気持ちが勝る。
描き直された版よりも、圧倒的に面白いのである。
この時期、何度も述べてきたとおり、手塚治虫という名前は本来の子ども向けマンガの世界では古いものになっていた。それでも手塚先生は、人気のある売れっ子たちにライバル意識を燃やし、彼らの要素を取り入れてでも、挑戦することをやめなかった。
そこには、戦争を知っている世代の、医師という知識人でもある自分が、子どもたちを導くマンガの世界の第一人者であらねばならない─という使命感もあったろう。
青年誌やマニア誌に描かれた作品では、読者が子どもであるという制約から解き放されて、劇画や怪奇ものや本格SFの要素を借りて、さまざまな実験を試みているが、根本にはそうした思いが息づいている。
オリジナルの「羽衣編」も「望郷編」も、放射能・被爆についての表現はいくらか不用意でも、戦争への怒り、そして残念ながら戦争によって科学技術を発展させてきた人類が、それによって何度でもあやまちを繰り返すことへのやり切れない思いがあふれている。
過去・日本を描く「羽衣編」と未来・宇宙を描く「望郷編」の設定が連続することにより、『火の鳥』本来の雄大な構想が効果を挙げていることも見逃せない。
この後、COMは休刊し、虫プロも倒産するが、青年誌やマニア誌で培った技術を基に、『三つ目がとおる』と『ブラックジャック』によって、ついに手塚先生は少年マンガ誌の人気作家として返り咲くのだ。
再開された『火の鳥』こそ、全盛期の面白さには遠く及ばなかったものの、やや短い「生命編」と「異形編」では、往年の妖しさ・まがまがしさ・実験精神もよみがえっている。
やがて、昭和が終わるとともに亡くなった手塚先生が、いま、天上から何を思っているか分からないけれども、人に媚びるということではなく、決して理想を忘れずに自分を貫き、それでいて読者の、特に子どもの気持ちをつかむことに心を砕いた手塚先生の御遺志を大切に、毎日をベストを尽くして生きてゆきたい。

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