マガジンひとり

オリンピック? 統一教会? ジャニーズ事務所?
巻き添え食ってたまるかよ

世間のアルゴリズム b/w 人生のサブスク化

2024-01-19 22:26:20 | 亡国クロニクル
「俺の子を産めや!」と「キミみたいなマジメな子に俺の子どもを産んでほしいねん」とでは温度差があるにせよ、本心から出た言葉というより、そういう強い言葉・汚い言葉を言うことで自分を鼓舞したい言霊心理というか。

私も会社員時代にストーカー加害体験があるくらいなので女の性について見方が歪んでおり、自分のザーメンから子どもができるということが理屈で分るとしても実感できた試しがない。個体の死を前提とする有性生殖という苦役、これを背負わせるためサルの中でもヒトだけが年中発情期。男女の性に伴う悪は「太古の昔から」。

ヘッダー画像のアフリカ南東部モザンビーク女性は、同国で70年代終りから80年代内戦が続き、家族を殺され、社会主義政権の出国手続きによって同じ東側陣営の東ドイツへ労働力として移民する、その過程で肉体を提供せざるをえなかった(ドイツの漫画マッドジャーマンズより)。とはいえ不倫・パパ活・枕強要・SEX上納システム (NEW!) などなど現代日本では男女の性があまりにも汚れすぎて、女の裸はもちろん街ゆく普通の女たちまでAVのパッケージみたいに汚らしく見えてしまう。彼女らがキョロキョロ視線を向けてくるのもそうした偏見を助長。あれは私というジジイを品定めしているのでなく、街ゆく他人を通して自分を測り、確認しているのだ。電車に乗れば周囲の人でなくスマホを見るのだろう。

監視社会。互いに見下し、自分にしがみつく。


闇金ウシジマくん・フーゾク編の風俗嬢と客は互いに見下している。サラリーマン編の小堀は板橋と親しくしているがすべてにおいて自分より劣ると思っていて、板橋も察している。

日本人が自由や個性を嫌い、狭い範囲に囲われた仲間同士で縛り合う方が安心する傾向について網野善彦は、すべての人を救う建前を掲げるキリスト教のような宗教が大きな力を持つことなく、人びとが「公」に主体的にかかわることを避けて処世的な倫理に従う「世間」の形成、すなわち中世以来の伝統であり、宗教が政治=武家政権の道具でしかなかったから日本で現今「小さな宗教」が乱立していると読み解く。

子どもを公立に通わせれば「公立の不良」=佐久間Pのような人物がリーダーシップを発揮して集団の価値観を決め、私立に通わせれば「私立の不良」=加地Pのような人物がリーダーシップを発揮して価値観を決める。いずれにせよ女社会を男社会の下位に置き、上玉女を調達して上位男に共有させる不良の論理が支配的になる。ダウンタウン松本人志が40歳くらいのころ、年齢別の人口構成を図表化して、中央よりやや若い位置に彼がいるという携帯電話の広告。武家政権自体が米国の下請けとなり、生産年齢人口がピークに達して減少に転じる、テレビと漫画で育った世代が大半になり社会の中枢を担う、そうした時代の日本人代表が松本であり、私も彼が好きだった。


DiscogsでCDを売れるように商品登録しておくと、忘れた頃に海外客に売れるので、設定しておいたSAL便という安価な航空便がコロナ禍に伴って使えなくなり、仕方なく船便で送ると4ヵ月もかかったり紛失したりで散々。現在一般的になっているEMS航空便は米国宛てが最も高く、最軽量の荷物で3900円、その隣国のカナダとメキシコはヨーロッパと同じ3150円と差があり、いずれにせよSAL便より格段に高く、おそらくSAL便がずっと使えないままになっているのはコロナ禍に伴う各国の金融緩和によってインフレが進み(特に米国)、安価なサービスでは人を雇えなくなったということでしょう。

ところが日本郵便のクリックポストは逆に値下げしているくらいで、アベノミクスと称して非常時でもないのに異次元の緩和を行ったわが国は物価上昇に賃金が追い付かず、実質賃金とGDPそれぞれ前年同月比マイナス3%と恐ろしい勢いで経済縮小している。日本人の時価を切り下げ、グローバル資本主義の敗者へと導いた安倍晋三。すべての犯罪は安倍に通じるというくらいの神通力は、武家政権の支配を一度もくつがえすことのなかった日本人が、天皇に代わる神の幻想を彼に求めた、恥を捨て、責任から逃げ、人生をサブスクのように安直な軽いものに換えてしまった。

親が死に、会社を辞めた第2の子ども時代、私に世間の様相を知らせ、影響を与えたロンドンハーツと闇金ウシジマくん。自由な時間を得た筈が「恥知らずのトリクルダウン」に巻き込まれ、自分から卑屈になっていた十数年。もう子育ての望みもない。日本人であるという縛りを解き、人生を賛美できるようになりたい。
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オルタナティブの不在

2023-08-09 18:22:25 | 亡国クロニクル
昼間のパパはちょっと違う。イイ汗かいてる。脂汗、顔は土気色、会議中に昏倒。巨額損失を子会社への「飛ばし」などどうやって隠すか。昼間のパパは男だぜ。銀行幹部総出の盛大な葬儀。しかし大和銀行は巨額の罰金を科されアメリカ追放。

人気番組ザ・ベストテンにて1982年、オーストラリアの一般家庭と中継を結んで番組の一部始終を見てもらうという企画が行われ、彼らの感想は「CMが面白い」というものであった。理解できなくて音楽については触れなかったのかな。当時私は高3で、その前の週にはRCサクセションの「サマーツアー」が初ランクインしたことから、連続登場してオーストラリアに届けられればというようなことを友人と話した記憶が。

甘かった。子どもであった。そもそもサマーツアーはベストテン入りするほど売れておらず、なるべくニューミュージック(歌謡曲に対してフォーク系ロック系を指す当時の言葉)系に出てもらって若い視聴者にアピールしたい「大人の事情」により1週だけ下位に登場し、清志郎は悪びれもせず「芸能人になった気分です」と語ったのだろう。いやきみは立派な芸能人で、原発推進側や悲惨なオリンピック開会式にもつながるような嘘まみれの広告人間だよ。

私が良いと思っている日本人の音楽を、もし海外の音楽愛好者に聞いてもらうとすれば、中森明菜や初期の中島みゆき、あるいはキャンディーズであれば、歌詞をはじめよく分らない、価値判断できないとしても彼女らが精いっぱい音楽にぶつかっている様子は伝わると思う。けれど日本で「ロック」に分類されるような人たちは恥ずかしくて聞かせられない。シンプルな力強さが必要なのに日本のアーティストによる楽曲はあまりにひ弱で人工的だ。「いとしのエリー」がヒットした1979年、同じころヒットした「魅せられて」に比べずいぶん洋楽に近いのではと感じたものだが、今ではそれをレイ・チャールズに歌わせたことを恥ずかしく思う。



ジャニー喜多川氏が事務所を作った意図を、被害者の服部吉次さんはこう見ていた。
「こういったこと(性的欲求)を合理的に処理したい、自分が思い描くことをしたいと(事務所を)つくられたのでは」 ─(47NEWS/70年前、ジャニー喜多川氏から性被害を100回以上受けた=作曲家・服部良一氏の次男らが打ち明けた加害の実態/2023年8月8日)

ビートルズの主要な曲を聞き飽きるということはないが、サザンオールスターズの代表曲ですら飽きる。常時シャッフル再生で全ジャンル全年代の曲が流れてくる中でかつて好きだった日本の曲に「ああ…」と心が曇ってしまう。サザンは初期の方が自由に伸び伸びやっていて魅力があるけれども英語で歌ったりする試みがうまくいかず、所属のアミューズが芸能事務所として巨大になるのにも伴いいくつかの類型を順繰りにやるだけでロック味皆無の存在に。福山雅治とか星野源って、さだまさしとジャニーズの男アイドルをミックスしたようなマーケティングの産物だと思う。存在自体が気持ち悪いし一曲も知らない。アミューズっていうのも渡辺プロの分家なんですね。素行の悪さが問題になった若い頃のジャニー喜多川を匿ったのも渡辺プロ。監督も劇団も写真家もモデル事務所もそれらの裏方も大なり小なりセックス目的で、そういう業界の総意がジャニー喜多川を世界犯罪者列伝に載って遠い将来にわたって日本を辱める存在に育てあげた。

2009年に恩人である従姉が急死、葬儀などでその弟が「今回は民主党でしょ」と迫る総選挙の投票先を広言していた。彼こそ「消防団のネトウヨの従弟」なんですが、その時点で分ってなくて、やがて原発事故の件や民主党の悪口などから典型的な安倍自民支持層であると知れて。お殿さまにお灸をすえるため一時的に小沢や鳩山のいる「第二自民党」としての民主党に預けておく。実際民主党政権は事業仕分けでお茶を濁すのみで、暗殺された石井紘基議員が追っていた特別会計・特殊法人の問題にメスを入れる動きはなく、特殊法人の代表格ともいえる原子力村が招いた過酷事故を押し付けられて潰されてしまった。代わって安倍や笹川の別働隊のような大阪のチンピラ集団が第二自民党を名乗るように。既に第三・第四も用意されている。

支配階級がエージェントを使って農漁民がヨコに連帯しないよう懐柔する「接待の価値観」。お気持ちお立場の一体化。独自の信念や価値観を持っているかどうかより、まず世間に背を向けているだけでこの国では差別され排除される。日の当たる場所に出ることはない。あらゆる面で後進国になってきている、それが最初に表れたのが音楽であるゆえん。
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成長を止める呪い

2023-07-07 19:33:59 | 亡国クロニクル
「俺ァ~ジンジラジンがええ~な!」
渡辺美智雄・衆院7期目・自由民主党中曽根派、の発言。近藤真彦は田原俊彦より6ヵ月遅れて1980年12月にレコードデビュー。各種賞レースでは翌81年に回る。大晦日に行われるTBSのレコード大賞に対し、TBS以外の民放各局持ち回りで11月に行われる歌謡大賞というのが当時あって、こちらは新人賞候補から表彰を受けた2組が自動的に大賞候補にもなる仕組みだったので、来賓の渡辺は新人賞の近藤が歌った「ギンギラギンにさりげなく」がお気に召したらしく、大賞は誰がいいと思いますかと問われてそう答えた。

別に、いま騒がれているようなジャニー喜多川の大規模な性犯罪の一環として、自社タレントを政財界要人の元へ売春斡旋し、渡辺の親分で翌年首相になる中曽根康弘が太客だったと噂されている関連でそう発言したわけではないと思う。この時点では喜多川の汚いやり口は未完成で、田原と近藤の大成功を糸口として長期にわたってシステム化されていったのだろうと思う。ただ何か、当時歌が下手だと叩かれた田原近藤に対し、既に立場を築いている人ほど彼らを庇うような発言・そぶりを示す傾向があったように思う。私が覚えているのは沢田研二・ビートたけし・竹宮惠子…。

魔夜峰央はパタリロの漫画に本人として出演し「ゆれてゆらゆら首の座らぬトシちゃん音頭~~わたしは元気の良いマッチの方が好きだ」と、2人をライバル関係とみて肩入れするファン心理に火を注いだ。後年さくらももこも『ちびまる子ちゃん』の時代設定を無視して光GENJI内海のことをまる子に喋らせているな。まあ少女漫画は客層がほぼミーハーに決まっている小中学生女子ということで、喜多川が田原近藤を売り出すにあたっても、田原には少女漫画の王子さま、近藤には少年漫画のピュアな不良のような役割分担させてリサーチ&マーケティングを図り、2人とも成功したけれども近藤の人気が上回る、この結果はたとえばやがて少女漫画の発展が頭打ちとなって90年代には少年漫画のホモパロディ、いわゆる「やおい・腐女子」が専業主婦の陰画のような存在として台頭してくる、ジェンダー事情の保守化と日本文化の退廃をテレビと漫画が共同で演出する、いわば共犯関係のようなものなので、先の竹宮や魔夜は一種の楽屋落ちとして本音を覗かせたに過ぎないのでは。いや客への媚びとか共犯とかご本人ですら意識していない、漫画雑誌やテレビを含む構造が生み出し、個々をそう導くものに違いない。すなわち日本のメディア・広告業界の前近代性と、経済発展から爛熟に至る大衆の欲望が出会う、時代精神に衝き動かされた権化的存在が喜多川や秋元康であり、タレントや番組スタッフや作家漫画家やコピーライターであったのだろう。



しばらく前からウォーレンバフェットが日本の商社の株を買い増し、いまや5大商社の平均8.5%を超える大株主になっているという。この「総合商社」という、あらゆる輸出入を扱う事業形態は日本独特なのだそうで、中国の王朝は昔から総合商社のように運営されてきたと聞いたことがあるが、それって政府の役割ってことじゃないですかね。わが国は公共を民営化して私物化する新自由主義の先進国で、円安のため国民は苦しみ商社や政府関係者は潤い、バフェットは商社の大株主になることで日本人の命を安く囲っている。

民営化の最たるものは中世から発達した「世間」だ。人びとが色と金の現実主義で協調し、監視・査定・選別・ときに排除の機能を持つ。武士階級にとっては分断支配に役立ち、農民漁民、とくに女たちにとって相互の「監視」は暮らしの安全保障にもなる。武士と農漁民、男と女がお気持ちお立場を分かち合って一枚岩となる世間の存在は、英国産業革命に伴う中流階級の形成よりはるかに先行しており、戦争と加工貿易の欧米帝国主義に日本がキャッチアップし繁栄するのに最大貢献した民活。

現代の私たちにとって分りやすい世間は「小中学校の女子」だ。社会性が強く、マジメで、団結して悪い男子を糾弾することも。しかし理想のためでなく基本エゴと現実なので、誰が誰を好きだとか、噂や陰口でクラスは騒然、一匹のメスに戻ってしまう。結婚できない男は蔑まれるが、女はもっと悲惨。「妹よ、おまえは器量が悪いのだから、俺はずいぶん心配したんだ」。兄の親友と結婚することに。狭い世間。近親相姦的で同類婚が多い。均質性の高さ、自分の考えのない集団主義は帝国主義の時代には強みにもなりえたろう。いまではマザコンかつロリコン、マザコンかつ男尊女卑、マザコンかつ同性愛(私?)、甘えと被害者意識、冷笑と差別、公私混同と無責任を大量生産。

本質を見極めることは自分との戦い。自分の考え・価値観が確立しなければ文化を生み出すことはできない。ジャニーズ事務所や秋元康、メディアや広告業界の前近代性とは、きのうやきょう始まった話でなく、遠い過去からの必然として日本が衰退する縮図を見せてくれた。私は近藤真彦と同学年。光GENJIが半裸で歌い踊るのをハァハァして見ていた。ジャニーズの問題は私の人生の問題でもある。喜多川は逃げ切って死んでいったが、関係者はみな決まりの悪い思いをしている筈だ。「一族の誰かを殺せば他の者が喜ぶ。皆殺しにする力はない。なので安倍を殺すことにした」「今さら洗脳を解くのはかわいそう。70の老人から生きるよすがを奪うべきでない」。世間の日本人は山上のお母さん。何かにすがり、守られていると信じる子どものまま滅んでいく。
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両建て(プロレス)

2022-12-14 19:15:10 | 亡国クロニクル
うつの最も重いときから比べると薬の強さは10分の1ほどになってはいるものの入眠時にはまだ必要ということで4週に1度精神科に通う。ことし7月安倍元首相が暗殺された日がたまたまそれに当っており、最寄り駅を超えて反対側の医院へ向かうと、参院選投票日直前ということで駅前では参政党の候補者が多くのギャラリーを集めて演説していた。なるべく聞かないようにしていたが断片的に入ってくるのは軍備強化・財政出動といった左右双方のポピュリズム政策の組合せ。しかしもちろん参政党最大の売りは「反ワク」であり、口当りのよいポピュリズムを統一教会とつながっているらしい動員力で売り込み、高齢保守層のうち少なからずいるであろう、ワクチンの副作用が重かったりネットの風評を信じてしまったりで反ワクチンの見方をとるようになった少数派ウヨを囲い込み票につなげる。まんまと議席獲得。かーんたん。

この時点では統一教会が恐ろしいほどのさばっていることは分っていないが、汚染されているのは自民党中心であっても維新・旧みんなの党・国民民主・立憲民主の過半に触手が伸びており、たとえば統一と創価学会(公明党)が与党内で協調していたり、小学館の雑誌などが一時期やたらと玉木を持ち上げていたり(まだ国民民主が分れる前)、そうしたうさん臭い動きに最近のNHK党やれいわ新選組の要素を持ち込んでアップデートしたのが参政党だという察しはつく。統一だけでなく、そうした連中がたくさんの関連団体をでっち上げたりあちこちに人を派遣して貸しを作ったりするのは、暴力団がフロント企業をたくさん立てて官憲の目をくらましつつ利潤追求するような「保険」であり、実際安倍が殺されて統一の件が暴かれたり五輪汚職に捜査が入ったりと今まさに「いざというとき」なのだが保険が利いてむしろ野党の無力が際立ち自民党を中心とする国賊勢力が焼け太りしている、その一つの帰結が「防衛費のためと称する増税」に他ならない。



第二次大戦後、公式に大英帝国から主導権を引き継いで、アメリカ合衆国が最初におこなったのは、まさに世界初の正真正銘の地球規模の官僚制度を設立することであった。すなわち、国際通貨基金、世界銀行、のちにWTOになるGATTのような国際連合やブレトンウッズ体制を構成する諸制度である。大英帝国はこのようなことを試みたことは一度もない。他国を征服するか、貿易をおこなうかである。「それに対し」アメリカ人はあらゆるものとあらゆる人間を管理しようと試みたのだ。わたしの観察するところ、イギリスの人びとは、じぶんたちが官僚制にとくにむいていないということを大いに誇りに感じている。ところがアメリカ人は、概して、じぶんたちが官僚制にとてもむいているという事実に困惑をおぼえるようにみえる。自国の自己イメージにふさわしくないからである。われわれは、本来、自立した個人主義者であるはずなのだ(まさにこれが右翼ポピュリストによる官僚制の悪魔化が、どうしてかくもうまくいくのかの理由である)。とはいえ、アメリカ合衆国が根っから官僚制社会である──そして一世紀を超えてずっとそうだった──という事実は揺るぎない。この点がなぜ見逃されやすいかというと、アメリカの官僚制的習慣や感性のほとんどが──衣服から言語、文書やオフィスのデザインにいたるまで──民間「私的」セクターから生まれてきたからである。
(中略)この事例は極端なもののようにみえる。しかし、これもまた、あたらしい金融体制のもとでの公的権力と私的権力の融合の模範例なのである。アメリカにおける企業利益は、ますます、商業や産業からではなく、金融から──つまるところ人びとの負債から──上がるようになっている。こうした人びとの負債は、たまたま生じたのではない。それらは、かなりの部分が操作的につくられたものである──まさに、この種類の公的権力と私的権力の融合によって、である。教育が私企業化(コーポラタイゼーション)する。その結果、授業料は増大する。学生たちは、巨大フットボール・スタジアムやそのたぐいの常務理事お気に入りのプロジェクトへの支払い負担や、増える一方の大学職員の急増する給与支払に貢献するよう見込まれている。それから、中産階級の生活水準を保障してくれるはずの職種への参入資格証明としての学位への要求の上昇。その結果、負債の度合いもどんどん高まる──これらはすべて、単一の網の目を形成しているのだ。 ─(デヴィッド・グレーバー/官僚制のユートピア/以文社2017・原著2011)


上に引用したグレーバー氏の著書は、小さな政府⇒規制緩和や民営化といった新自由主義の政策はむしろより多くの規制・官僚・警察官を生みだすという「リベラリズムの鉄則」、そして自由な市場経済を維持するために専制王朝の数千倍のお役所仕事が必要になるという逆説について論じている。「この事例は極端なもののようにみえる」とした事例とは中流家庭の子どもたちが高利の学生ローンに卒業後も縛られる問題のことで、教育費と医療費の高さ、それと共存する金融・保険・広告業こそアメリカが官僚帝国であるいっぽう一人当りGDPの高さも有数である暴力団的な資本主義の本質を示しており、出版時よりグーグル・アマゾン・アップルなどによって相互監視と利潤追求がさらに進んでいることで本書の説得力は増している。

米国の一人当り医療費負担は日本の3倍近いが、平均寿命は日本が8年以上長い。米国の新型コロナ大量死によってさらに開く。すなわち「日本人からはまだ搾り取れる」。岸田首相が軍事費(防衛費)のための増税を打ち出したのは、まずアメリカが民主党だろうと共和党だろうと「反共」という国是にあくまで従いますよというポーズ、そして統一や五輪汚職の問題でストレスを溜めていた国内ウヨ層に自分を叩かせることでガス抜きを図り非主流に追いやられた安倍派にも花を持たせられること、最後に最も重要な、経常赤字が常態化しそうになって懸念されるさらなる円安と財政破綻という危機を先送りし、お友だちに逃げる猶予期間を与え、最悪でも過去負ける戦争でボロ儲けした連中が戦後も占領軍の手先となって焼け太りしたような惨事便乗資本主義の機会を設けられる。一石で三鳥も四鳥も落とすような派手なプロレスを狙っているのでしょう。
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金で心を汚してしまえ ─ 売国奴安倍晋三

2022-09-27 17:01:47 | 亡国クロニクル
♪インドの山奥でっっ修行してぇ~~

1970年代、私が小2~3のころ放映されたレインボーマンは異色の等身大ヒーロー番組であった。主人公が「火の化身」「土の化身」といった7つの姿に変化(へんげ)する。悪の組織が「♪死ね死ね死ね死ね死んじまえ~」という異様な歌とともに現れ、偽札をバラまいて菓子パンが1個1000円というようなインフレ誘導し日本滅亡を企む。



サイト「1945年への道」大東亜ハイパーインフレ狂乱圏の項より。あまりにインフレがひどいため縦軸を「対数目盛」に。

1941年12月8日、開戦とともに日本海軍はハワイ真珠湾に奇襲攻撃を加え、航空母艦を除き米太平洋艦隊の主力を全滅させた。さらにマレー沖で英東洋艦隊の主力戦艦を沈め、西太平洋の制海・空権を握った。優勢な海空軍力に支援されて、陸軍はタイ、マレー、フィリピンに進出し、1942年1月にはマニラ、2月にはシンガポールを占領したあと、3月にはラングーン(現ヤンゴン)も占領した。蘭印(らんいん)(オランダ領インドシナ、現インドネシア)も3月には完全に攻略され、日本軍はニューギニア西岸からソロモン諸島に上陸し、この間オーストラリアのポート・ダーウィンにも日本機による空襲が行われた。太平洋では開戦と同時にグアム島上陸が行われ、マーシャル、ギルバート諸島の線にまで日本軍は進出した。
こうして西太平洋からビルマ(現ミャンマー)に至る広大な地域が日本軍の占領下に置かれた。アジアの諸民族がおのおのそのところを得る「大東亜共栄圏」の建設が日本の占領目的とされたが、具体的な占領政策は、資源の獲得と軍隊の「自活」を目的とした。また将来独立を与えるのはビルマとフィリピンだけで、現地民衆に独立の観念を植え付けるよりは、日本軍に一方的に依存し屈従するよう指導する方針がとられた。「大東亜共栄圏」の実態は日本を中心とする植民地体制にほかならなかった。日本軍は至る所で戦争遂行に必要な資源や労働力を略奪したので、現地の物資は欠乏し、生産は破壊され、激しいインフレーションのため民衆は窮乏した。たとえばベトナムでは約200万人が餓死したといわれる。それは、日本軍の過酷な軍政と相まって、各地民衆の占領に対する武装抵抗運動を発展させた。インドシナのベトミン(ベトナム独立同盟)や、フィリピンのフクバラハップ(抗日人民軍)などが抗日のための民族的な統一戦線として結成され武装闘争を行った。「大東亜共栄圏」の中核とされた中国では、日本の占領地域に中国共産党系の八路軍(はちろぐん)や新四軍(しんしぐん)が浸透して次々に解放区をつくり、終戦までにその人口は約1億(1945年8月15日朱徳総司令の米英ソ3国あて覚書)に達したとされた。これら諸民族の自律的な解放闘争の発展は、日本の占領を内部からむしばみ、その敗北をもたらす要因となった。 ─(ジャパンナレッジ/太平洋戦争)



♪誰もわたしの心 見抜くことはできない
だけどあなたにだけは わかってほしかった

自分自分自分。あみんの「待つわ」は恐い歌だ。前回の中産階級ハーレムで、もしあみんが同じポプコン優勝の小坂明子のように一発屋で消えてくれたら、恋している状態の自分が好き(なので待つだけ)という女の本音が時代にヒットした、必死な良い曲として記憶に残ったでしょうにということを書いた。でも80年代、音楽業界は「女子大生」「曲が書ける」あみんの岡村孝子を放っておかなかった。松田聖子やビートたけしをはじめ、この時代は一度知名度を得ると専門分野外に進出したりゴシップを売りにしたりそのままずっとメディア上に露出し続ける芸能人が急増し、フレンドパークだの東京マガジンだの番組ごと老人ホーム化するケースまである。

それまでもスポーツや映画出身、2世タレント、歌舞伎や宝塚といった芸能人バンクはあったと思うが、この時代からはっきり異なってきたのは、NHK含めテレビに内輪の広告色が強まり、あらゆる分野で幼児化が進み、特に音楽市場が世界2番目の大きさであるにもかかわらず質の劣化傾向が定着したことである。

1980年、男性アイドルとしては画期的に歌が下手だった田原俊彦から4年連続でジャニーズ事務所が最優秀新人賞を獲得し、ジャニーズはテレビの権威になった。当時のジャニタレは例外なく寮に入ってジャニー喜多川の枕強要を受け入れることでデビューできたのだが。ジャニーの妻はメリーっていうんだっけ。統一教会(統一協会、現『世界平和統一家庭連合』)≒国際勝共連合の教祖夫婦とよく似ているな。博報堂に勤めていた本間龍氏の『電通巨大利権』によれば、欧米の広告業界では企業秘密保持・公正競争の見地から、ある業界で複数のスポンサーを担当できない一業種一社制が大勢なのだとか。ところが日本ではコンプライアンスの意識が低く、東京オリンピックに小口のスポンサー枠を設け、カドカワが講談社に「賄賂を贈って一緒にスポンサーに」と持ちかけるようなことが起きてしまう。電通は大企業幹部や政治家の子女を縁故採用し、リクルートは将来有望な官僚や政治家に値上がり確実な未公開株を贈る。統一教会が水面下でこれほどまでのさばったのは、安倍晋三元首相のせいだけでなく、彼らの工作を受け入れてしまう素地がわれわれに備わっているからで、そもそも戦前の日本軍と官僚のやり方が統一教会を生み出したのである。


学校のいじめ、各国にあるようですが日本の、特に女子のいじめで独特なのが「集団で一人を無視する」。外国では誰かが話しかけてしまうから成立しないらしい。このように集団内の空気・お立場・お気持ちでその都度動いていくのが日本の社会で、ぼく・きみといった一人称二人称も立場で変るし、自分の考えをしっかり持った人より、小グループ・派閥間の調整役タイプがリーダーに選ばれやすい。出る杭は打たれ、情報は隠され、IT化は進まない。日本全体としては80~90年代に経済的な頂点に達し、人口が多い国としては現在も平均寿命が最も長いが、それとて敗戦によって超円安になり、中国への戦争責任に蓋をしたままアメリカ傘下に入って、西側先進国の工場として人口急増期に賃金と物価の好循環を実現できた、戦争と貿易の20世紀に最適化した運のよさ。

ヒソヒソ。かわいいふりしてあの子わりとやるもんだね。主婦やママ友やOLの監視社会。オリンピックの悲惨な開会式を、私は断片的にしか知らないが、評する言葉で印象に残ったのは、あちこちに遠慮して結局は誰も意味が分らないものになってしまったという。北京冬季大会のそれと好対照。自由・責任ということについてはもはや後進国。狭い世間のたくさん連なった狭い世間。安倍が暗殺されたことで、日本人が30年の眠りから覚め始め、分断とヘイト、それを養分とする統一教会・電通・パソナ・ジャニーズ事務所などなど(政府にぶら下がって税金を分け合う)特殊法人が取り返し付かないほどのさばってしまっている事態が露わに。祖父と二代にわたる売国奴。歴史の必然。
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パンドラの壺 b/w 特殊法人

2022-08-09 18:43:01 | 亡国クロニクル
山田 大連は満州の中でも、しゃれた街だったでしょ。税金のつかないフリーマーケットの街で、ヨーロッパやアメリカの舶来品が安く買えたし。ところで、君は「あじあ」号に乗ったことある?
来嶋 うん、2度ほど乗った。兄貴が満鉄の旅客専務だったから。小学校5年のときかな、兄貴の顔で乗せてもらって、結婚した姉が住んでいるハルビンまで行った。2度目は父が単身赴任で新京にいたから、また乗せてもらった。
山田 うちの親父も満鉄のエンジニアだったから、乗せてもらった。とにかく賛沢な汽車だったねえ。自動ドアだし、ボタンを押せば椅子が回転するでしょ、今の新幹線レベルのサービスだよ。 ─(対談「僕ら、満州の少国民」山田洋次×来嶋靖生、満州の記録 満映フィルムに映された満州、集英社1995より)


ことし深刻化しているコロナ・円安・統一教会というtriple disasterの前触れというか、正月に母方の親戚が2年ぶりに集まって、主宰といっていい存在である同い年の従弟は元から長男を連れて在特会の街宣を見物するくらいのネトウヨだったのだが、ほかの面々はウヨ傾向であっても以前は「安倍はちょっと…」という感じだったのが、2年の間に老若男女すっかりこじらせて、特にネトウヨ従弟の次姉の娘さんが重症で、虎ノ門や百田の本に感化され、「高市さんに投票したくて自民党員になろうかと」。この娘さんは30手前、大卒で銀行勤務、コロナ直前にテレビ番組制作会社勤務の男性と結婚し、2年前に次いで夫婦でやって来たのだが、夫も同じ考え、安倍元首相を偶像視しているためか代々木上原のマンション住まい。

この一家は元々宗教&サブカル一家というか、親世代・イトコ世代の女たちはほぼ何らか仏教系の新興宗教をやっており、友人知人が多い。問題の従弟はドラえもん好きの乗り鉄の消防団。みな霊や輪廻を信じている。私の母親だけ例外で、占いやオカルトが嫌い、私もそれを継いだ形。なのでたとえ統一教会と直接かかわっていなくても、コロナの閉塞感も手伝って、彼らがみな愛国プロパガンダを無抵抗に受け入れてしまった様子、子どもの頃から付き合ってきた身として感慨深いものがある。今の統一教会についてのさまざまな報道、どのように接しているだろう。

同人誌の関係でツイッターを観察していると、オタクの7~8割はネトウヨなので、その話題については黙ってしまう場合、あるいは親戚や友人がカルトの被害にあったなど経験を語り、なるべく安倍と自民党に触れないようにしながらポジション修正を図る場合があるようだ。


官制経済体制とは、中央集権、官僚制、討画経済、そして閉鎖財政(国民に見えない財政)を基本構造とする国家の類型である。官制経済体制の下では基本的に経済は権力に従属するため、本来の経済(=市場)は失われる。
この闇の「経済」は端的にいえば、国と地方と合わせて国民の税金と貯金、年金、保険積立金など350兆円を上から流し込んで消費しているだけのものだ。つまり、市場特有の拡大再生産機能によって生み出される果実はないに近い。経済的価値を創出する“市場”が死亡状態となり、回復不能の、借金が借金を呼ぶ財政破綻構造に陥っている。積もり積もったほんとうの借金額は1000兆円を超えてしまっている。
(中略)マスコミも特別会計や財政投融資についてあまり報道しようとしない。政府は「知らしむべからず」で、詳細な内容を示したがらない。マスコミは調査に手問がかかるし、それぞれ複雑な仕組みなので、読者・視聴者に説明しにくい。マスコミが報道しないのにはじつは記者クラブ制も影響している。特別会計の実態を探ることは省庁の権益を傷つけることになり、官僚からの情報に依存している新聞社などにとっては自殺行為にもなりかねないからである。 ─(石井紘基/日本が自滅する日/PHP研究所2002)


特別会計や財政投融資について報道しようとしないマスコミ。官僚からの情報に依存する、マスコミ自身が(政府にぶら下がる)特殊法人と化しているから。統一教会についても、NHK・テレビ朝日・朝日新聞・毎日新聞が消極的で、日テレと読売新聞にも温度差があるなど足並みが乱れている。

ことしの初め「古塔つみ」なるイラストレーターが、ほとんどの作品が写真をトレース・加工したものであるとバレて炎上。彼のバックにエージェント的な人物がいて、有名企業に売り込み、起用させていたのだが、案件が多数あったため、かえって担当者も訴えるなどの動きが取れず、うやむやになってしまった。いま統一教会について起っていること、ネトウヨビジウヨの混乱や内ゲバ、あるいはコロナや円安についても同じだ。

官制経済と、それを可能にするプロパガンダは過去の歴史において連綿と培われ、もはやどうすることもできない。戦前の軍国主義と、戦後の高度成長、やがてはバブルと失われた30年、戦前と戦後を連続させるのに大きな役割を果たしたのが、商工省(戦後の通産省・経産省)のエリートで満洲国の2キ3スケと呼ばれた権力者のうちA級戦犯として逮捕された時点でも49歳と若かった岸信介である。戦後の日本経済は、満洲国で行われていた統制経済が土台になっているから、歴史の負の遺産といえる統一教会を排除することはできないでしょう。


来嶋 五族協和ね。
山田 五族の中で日本人が一番優れているという教育。満州という国は形の上では独立国なんだけど、僕たちは日本だと思っていた。中国人は使用人でしかないという、中国における日本の支配というのは相当にひどいものでしたよ。
来嶋 中国人をぶん殴ったり、蹴飛ばしたりするのは平気だったし。
来嶋 人力車は中国人が引くものだ、というのが当時の僕らの通念でしょ。敗戦直後、中国人が日本人の腕を捕まえて、「お前、車引け」って。「今や、日 本人がそうすべきだ」と言っているのを見た。 ─(対談「僕ら、満州の少国民」山田洋次×来嶋靖生、満州の記録 満映フィルムに映された満州、集英社1995より)
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時間よ止まれ b/w 狭い世間

2022-07-18 14:59:22 | 亡国クロニクル
2011年、東北地方を中心に日本を襲った震災は地震・津波・原発事故ということで海外の一部報道ではtriple disasterと呼ばれた。そしていま日本をコロナ・円安・統一教会という複合的な困難が襲う。統一教会の問題は自民党結党当時から続いていたが、30年成長なく眠り続ける日本において安倍元首相の命を奪った銃弾が同時にこの問題を呼び覚ますことに。


同人誌の通販で、パスワードを知る者だけが商品ページにアクセスできるという限定公開機能。ジャンルや専門用語で交わる習性はオタク全般にみられるが、女のオタクでは特にこのような閉鎖性が目立つ。専業主婦が「亭主元気で留守がいい」と思考停止するのとも似た、哺乳類の♀としての本能ともいえよう。

ほとんどの哺乳類には発情期があり、乱婚、一日に複数の♂を受け入れることも普通だという。すなわち子育ては♀が行い、父親が誰であるかは問題にならない。ヒトは頭が大きく難産で、未熟なまま生まれてくるので、母親は妊娠・授乳のあいだなるべく父を縛って協力させる必要がある。森から出て直立し、脳と手を発達させ、発情期をなくし単婚中心となったヒトは、そもそも「互いを家畜化したサル」だという説もある。

言葉・農耕・戦争・資本主義といった文明はヒトの進化がもたらした必然であり、すべて他人を道具にして我欲を満たす性質を帯びている。以前引用した知識であるけれども、電通が政治家や大企業幹部の子女を縁故採用する場合、特に男が「劣るくん」と呼ばれ、実質は取引関係を続けさせるための人質でしかない場合が多いのも、女なら安倍昭恵(短大卒資格なので普通なら電通に採用されないが森永の社長令嬢)のような活躍機会があるからでしょう。

縁故主義は監視社会である。裏切らないよう、陰に陽に。いま盛んに統一教会がダミー団体をたくさん作ったり政治家の選挙活動に人を出したり秘書を派遣したりして各界に浸透を図る手口が掘り起こされているが、電通は統一教会より歴史が古いし、江戸時代に武士階級から権力を奪う動きが起らなかったことなどからも、身分が低くても、異物を排した均質的な「世間」を形成し、同じようなことを繰り返しながら安心して暮らす、女性的な生き方が本来の日本人の姿であると考えられる(戦後昭和期に経済力と平均寿命が世界最高水準に)。キリスト教文明の父権的なタテ支配を取り入れて一度は戦争と貿易の勝者となりながらも、主婦・電通・統一教会に代表されるような縁故的なヨコの監視が、昭和期に築いた利権の安定・永続化を望むことから、平成初期バブル崩壊後のさまざまな問題、少子化や経済衰退の大部分が説明できるのではないだろうか。

暗殺犯とみられるツイッター、2020年9月「自民党憲法草案を支持してきた自分が言うのも何だが、今の日本人が自民党草案を憲法にしたらとんでもないバカが生まれるんじゃないか…」。目覚めたネトウヨ。日本全体が、狭い世間の連なった狭い世間化していた。暗殺犯も安倍晋三も、資本主義と家制度の犠牲者であるといえよう。安倍元首相と、戦争・植民地支配・宗教団体の犠牲になった方々の冥福を祈ります。
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兵隊の位でいうと

2022-03-03 17:41:10 | 亡国クロニクル
米国出身で長く日本の大学で教え、居酒屋マニアとしても知られ、ジャズ・小説など戦後日本文化論の著書があるマイク・モラスキーという人物。その居酒屋での体験談の一つとして私の印象に残っているのが、居合わせた2人連れの客の男が文科省の役人であるらしく、外国人の大学教授と聞きつけ、「私たちは東京大学卒なんですよ」と話しかけてきたので、彼は「分りました、今度だけは許してあげますから次からはもっと面白い話をしてください」と応答。男たちは「ナニッ!!」と不穏な空気に。

カッペ・チョン・チャンコロ・ヤンキー・根暗・オタク・ガテン系・DQN・ガラケー・ニート・ネトウヨ・パヨク・民度・底辺・情弱・陰キャ・パパ活・池沼・ガイジ・こどおじ(子ども部屋おじさん)・etc・etc… 人を見下す・蔑む言葉が短期間で全国区になる。集団で連携し、よそ者や少数派を見つけて叩くことが好き。下町の不良少年。居酒屋って、そういう子どものようなおじさんの遊び場として万国共通だと思うので、モラスキー氏は一種の異文化交流として、東大卒のおじさん2人をスマートに見下してあげたのだろう。

個々は弱い存在だから、集団を形成して秩序を守り、安心する。狭い世間の中だけで、お互い遠慮し、共通の知識・価値観からはみ出さないように馴れ合っていると、人の脳は急激に退化する。どこかの経済誌のサイトで、オリンピックの悲惨な開会式の様子を「あちこちに遠慮した結果、小劇場の芝居みたいな内輪受けに」と評していたが、そもそも経済誌なんてのがそういう傾向の元凶でしょ。先の文科省のおじさんをベネッセのような教育産業が接待するとすれば、モラスキー氏と逆にチヤホヤおだてて癒着して税金泥棒するに違いない。

くりぃむしちゅーが2006~09年ころにやっていたオールナイトニッポンで語るところによると、後に彼らを連れ独立し社長になった大橋由佳(愛称:ババア)をはじめ、芸能プロのマネジャーたちは24時間制を「16時でお願いします、あれ?…夕方6時…18…時…ですかね?」のように何度も間違えるという、致命的な感じもするのだが、ヤクザ商売ということでタレントもマネジャーもビシバシした企業ではやっていけないようなはみ出し者をうまく使って利潤を挙げている面があるのかなと。くりぃむのANNにオリエンタルラジオの2人がゲストにやって来て、東京以外から東京の名門私大を経て売れっ子芸人になった4人が揃うということで、興味深いトークが繰り広げられたのだが、やはりオリラジの2人は本来の不良少年というよりは、優秀ではあるが価値観が狭く、文科省のおじさんに通じるひ弱な内向き志向をかもし出していた。

アマゾンのベゾスとテスラのマスクは共に一代で帝国を築き上げたカリスマ起業家であるが、内実は隔たりがある。マスクのカリスマ性、テスラ車のブランド・イメージ、テスラの株価・時価総額の3つは密接につながってファンタジーを成し、ひとたび逆境におちいれば急激に全体が崩れてしまいかねない脆さがある。ベゾスはAWSのように、むしろそういうイメージやファンタジー、人の心の弱さを利用して着々と現実を固めている印象だ。中国政府はアマゾンであり、安倍・トランプ・プーチンはテスラであり文科省である。



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掛け捨て保険くん

2022-02-15 11:33:16 | 亡国クロニクル
ネット上で新型コロナ後遺症やワクチン副作用のことを話すとネトウヨがシュバッてきて叩くのか。貧すれば鈍す、まことにひどい国になった。「検査を増やすと偽陽性などの問題から医療崩壊を招く」「新型コロナ、とくにオミクロン株はただの風邪」、こういうのを広める者たちは、別にDappiや日本会議や笹川財団・統一教会のようなカネとコネで動くわけでなく、多数派にすり寄って異物を探していじめるような、子どもの遊びの延長としてやっているのだと思うが、そもそも実際にお金が動くテレビや政治や企業活動がイベサーの不良大学生の域なので東京五輪・イソジン・あさり・うなぎ・古塔つみ・入管の外国人虐待などなど最近の日本人がらみの風評被害はあらゆる価値をおとしめてとどまるところを知らない。

藤田ニコルの嗅覚が戻るのか心配。でも彼女は俺のこと知らないし病気になっても心配してくれない。イメージを売る商売。がんばって教習所なしで免許を取ってベンツを乗り回す。だから病気になったのにそれまで買ったひがみねたみそねみのため心ない中傷を浴びる。そう考えると人気・知名度というのは借金のようなものでもある。逆境で一気に顕在化し、その人の心や言動を縛って追い詰める。極端な例はアンジャッシュ渡部だ。ハライチだったかラジオでグルメだのアパレルだの旅行だのおしゃれなイメージの広告タイアップ的な仕事は金払いがよいと言っていた。渡部はイメージと真逆のことをやって裏切ったから、脱税のチュートリアル徳井より復帰が難しい。

昨年の6~7月だったか、長く聞いていた有吉弘行のラジオが急激につまらなくなり、しばらく聞かずにいて、気が向いて聞いてみた回、冒頭からタイムマシーン3号とアルコ&ピース、アルピーの平子と酒井、とんねるず石橋と上島竜兵、前者を持ち上げて後者を落とすというくだらない身内イジリの3連発でもう2度と聞くまいと。結婚前から予兆はあった。どこかの高価なダウンジャケットに言及したら、メーカーから彼とアシスタント(デンジャラス安田)の2着をプレゼント。有吉と渡部とカンニング竹山は不定期に会食し、渡部が店を決めて竹山が勘定を払うという、政治のニオイ。案の定、聞かなくなってから、贔屓にしてラジオやテレビに呼んでいた「もう中学生」にみみっちい文春砲。アンジャッシュ児嶋の悪口でプチ炎上。有吉は同輩後輩とのつながりを保険にしているのかも分らないが、狭い界隈に縛られ、世間の空気が変ってきていることに対応できず、本人も評判を落としてしまっている。広告・テレビ・芸能界全体からすれば有吉弘行というタレントもまた切り捨て可能な保険くんの一人に過ぎないのである。




個人事業主という建付け上、労働基準法などの労働法規はいっさい適用されない。男性が労基法の適用される労働者だったら、仮に上記のようなツイートを理由に解雇されても、裁判上で争えば解雇権の濫用と認定されるだろうが、個人請負だとそうした保護もない。
保護がないばかりか、男性はランキングを上げるために、プラットフォーム会社が行うセミナーにお金を払って参加していた。個人請負からセミナーや研修と称して、金銭を徴収する業界はほかにもある。 (経験者が激白!流行する「ギグワーク」過酷な末路 若者たちはどうしてのめり込んでしまうのか:東洋経済ONLINE・2021年11月30日)

本来、こんなにも悲惨な状況に置かれていて、米国なら市民が政府を訴える。このインタビューは日本で読まれる限り、私の言いっ放しになるだろう。官僚や政治家、市民、日本は誰も動かない。米国なら司法を通じて市民が社会を変えることができる。日本は何も変わらない。それが当たり前だ、仕方ない、と思っているから沈んでいるということに気が付くべきだ。一度すべて壊れなければ、若い世代が再興することもできないのだろう。 (ノーベル物理学賞受賞の中村氏「日本は研究者から選ばれない。上意下達が過ぎる」:ニュースイチ2017年11月23日)


元日の記事「世間という民活」にて監視・査定・選別、ときに排除までが日本の世間の機能であるとしましたが、「評価」でなく「査定」としたのは、たとえば中古品を扱う店に私物を持ち込んで買い取ってもらうような、そこでなければ自分ではさばけない、より一方的で因業なニュアンスを持たせたかったので。世間というのは、主婦やOL、学級やサブカルの女たちが徒党を組んで身の安全を図るような、男性が支配する攻撃的な資本主義と対照的に女の防御的な価値観から成り立ち、一時の大金よりも家柄・人間関係・将来性といったように、金銭万能にさせないための保険になってきた面がある。

ところが↑の青色LEDの発明者・中村氏が「日本でLEDの信号機が普及しないのは信号の電球取り換えが警察の天下り利権になっているから」とするように、戦後の日本で会社員の夫と主婦、あるいは妻が被扶養者の範囲でパート労働するような働き方が一般化し、さらに大卒が多数派になって、会社を通してしかお金を得られない、家族を含めて会社の人質のような、自由を嫌う隷属の安定が望まれる時代になり、そこで戦前のような全体主義、しかし表面上は法治・民主主義のまま、人治があいまいに連携する権力一極集中をタイミングよく成功させたのが安倍一派による「日本を取り戻す」である。

安倍晋三が最も敵視する菅直人の「橋下ヒトラー発言」がこうした構造を一部あぶり出す結果につながったのは、暗い世相ながらも愉快な出来事であった。橋下徹が逆上して吠え、維新幹部が応援に駆け付け、テレビ新聞も維新寄りで「ヘイトスピーチ」の意味を歪めて伝え、国会では維新議員がアベノマスク産着コントを披露。これらがすべて「民間人としてテレビ出演しているのになぜ維新が私を攻撃してくるのか」「維新は自民の別働隊なのでは」という菅直人の疑問を裏書きする。大阪が真っ先に医療崩壊しても在阪メディアは別世界。吉村はんはようやっとる。

維新が、N国が、入管が、警察が、検査スンナ派が、幸福の科学やDHCやアパホテルが、経団連や連合が、ネトウヨやテレビの著名人が、騒いだり暴れてくれるのは好都合、しかしほとんどの場合安倍周辺が直接命じてはおらず、あくまでも勝手に遊んでいる。不都合になったら籠池や河合夫妻や日大理事長や愛知県知事リコールのように切り捨ててくれて構わない。普通・平凡に寄せて、異物を排除し身の安全を図るバカ主婦的な「世間」の価値観が、日本人の無責任・付和雷同を極限まで推し進めた最終兵器が安倍晋三であり、日本が衰退しても最後まで守られるご本尊。

米国のように2大政党の力が均衡していればそれが最大の保険。トランプの暴走はどこかで止められる。韓国や台湾は分断国家の緊張があり、国内も左右や地域間の対立が激しいので、民主化と経済成長を急速に達成できた面があり、中国共産党やアマゾンのベゾスは独裁でも人間を信じておらず、データ化して厳密に管理する。日本はあいまいで無責任な人治だからIT化すると困るのである。国民の健康よりもGoToだのユースビオだの関係各所の利権が優先(中村氏の記事の後にはLED信号機も普及してきた。中抜き・天下りの仕組みを整えるので遅くなる)。なので急激に衰退し、格差拡大と貧困化が進んだ。

裏切り・内ゲバ・下剋上。脱税の徳井より復帰が難しい、広告イメージを裏切った渡部。アメリカにとっては日本そのものが、決して歯向かってこない保険くん。コロナとウクライナのドサクサにまぎれてなのか不明だが、日銀が10年国債を0.25%の金利で「無制限に」引き受けるという危険なニオイのする報道が。食品のサイズ・個数を小さくするようなステルス値上げもまた上記のような「ご本尊だけは守る」動きの一環だと思うが、このところ堰を切ったように各所の値上げが続いており、今後さらに事態が悪化し、国民が「日本を取り戻す」「アベノミクス」のウソ・裏切りに気づき始めれば、筒井康隆の全盛期のドタバタをはるかに超える一大スペクタクルを楽しめるであろうと連日ワクワクしています。
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昭和博覧会③ 預金封鎖・財産税

2021-11-09 16:24:53 | 亡国クロニクル
すこし数字をあげてみたが、これくらいでは当時の深刻さを肌身にしみて感じるにはとても足りない。敗戦後すぐ、食糧難と同時に襲ってきたのは、とめどもないインフレーションだった。一般物価が戦前の65倍というけれども、この間の賃銀の値上りは28倍、とても追付かない。

昭和21年8月に厚生省が全国勤労者標準五人家族を対象に行なった調査で、ーケ月の平均実収504円40銭、支出は844円80銭、差引き赤字340円40銭、ひどいものだ。

追付かないうえに、もっと怖ろしい残酷なことが起っていた。〈預金封鎖〉──預金がおろせない。この預金封鎖もいまはほとんど忘れられ語られない戦後のーつだ。

それは突然やってきた。昭和21年2月17日の朝のことだ。終戦から半年後。 ぼくはその朝、新聞の朝刊を見た母親の驚きよう、あわてようをよく覚えている。我が家はなにしろ一家のかせぎ手の父親がシベリヤに抑留されたまま、いつ帰ってくるとも、いや生死のほどもわからない。何も収入がなく、小学生の子供二人をかかえて、たよりに出来るのは零細な貯金だけだが、居喰いとインフレの目減りだけでも気が気でないのに、お金が引き出せないと知って、母は本当に発狂したような顔をしていた。

前日のタ刻、銀行、郵便局の窓ロが閉った後、大蔵大臣渋沢敬三は、2月16日までに預け入れた預金、貯金、信託等は生活維持のために必要な金額、一家の世帯主300円、その他の人は一人100円までを毎月認める以外、当分の間自由な払出しは禁止となること、さらに現在通用している100円以上の紙幣は来月2日いっぱいですべて無効になる──と発表した。

一般の庶民にはまったくの寝耳に水、予防手段や防衛準備も、何も出来なかった。もちろんすぐ銀行に駆けつけても、とうにもならない。前出の統計でもわかるように、ひと月どうしても800円はかかるのだ。それなのに我が家は500円しか引き出せない。どうやって暮らしてゆけというのか。 ─(鴨下信一/誰も「戦後」を覚えていない/文春新書2005)


敗戦直後、渋谷駅前広場のヤミ市。上方のY字路が現在のSHIBUYA109前の道玄坂下(藤木TDC/東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く/実業之日本社2016)

敗戦によって財政運営は完全に行き詰まりました。昭和財政史の第11巻(政府債務)には、当時の政府内で、債務調整の検討がどのように進められていったのかが記録されています。大蔵省内では、①官業および国有財産払い下げ、②財産税等の徴収、③債務破棄(元本を返さない、債務不履行のことです)、④インフレーション、⑤国債の利率引き下げ、 以上五つの選択肢が上ったと『昭和財政史』には記録されています。そのなかで、GHQによる押しつけではなく、あくまでわが国の財政当局の判断として「取るものは取る、返すものは返す」という原則に象徴される対応が決定されていったのです。

具本的には、一度限り、いわば空前絶後の大規模課税として、動産、不動産、現預金などを対象に、高率の「財産税」(税率は25~90パーセント)が課税されました。これが「取るものは取る」です。それを主な原資に、内国債の可能な限りの償還が行われ、内国債の債務不履行そのものの事態は回避されました。これが「返すものは返す」です。民間銀行なども多く保有していた内国債を債務不履行とすれば、金融システムに大きな影響 が及び、民間銀行の倒産や社会的な混乱も抑えられなくなるため、財政当局は、「債務不履行」とは別の形で財政破綻する道を選んだものと思われます。

他方、戦時補償債務を切り捨てるため、国民に対して、政府の負っている債務と同額での「戦時補償特別税」の課税が断行されました。そして、これらの課税に先立ち、1946年2月、順番としては一番先に、預金封鎖および新円切り替えが行われたのです。 ─(河村小百合/中央銀行は持ちこたえられるか -忍び寄る「経済敗戦」の足音/集英社新書2016)


国債借入金残高の対国民所得比率等の推移(中央銀行は持ちこたえられるか)

1932年の株式市場は、11月からのリフレ政策開始を大歓迎した。株価は年末までの2カ月間で33.2%も上昇した。しかし、日銀が国債売りオぺを行っていることが株式市場関係者の間で知られるようになると、33年1~3月にかけて株価は一旦急落を見せた。そういった反応を高橋(是清大蔵大臣)と深井(英五日銀副総裁)は想定していたと思われる。彼らは過度に株式市場に迎合せずにリフレ政策を運用しようとしていた。 東洋経済新報33年2月21日号は、23人の経済学者、金融機関の経営者・エコノミスト、 ジャーナリスト、政治家の国債売りオぺに対する評価を掲載した。当時の空気が生々しく伝わってくるため、一部を紹介しよう。

立教大学教授の竹村豊太郎氏は、日銀を激しく批判した。「株式界では採算を無視した熱狂的大衆買によって大相場出現の慨があった。それが日銀の行動をきっかけにしてあの瓦落を超した。買方が日銀を怨むのも無理はない」「相場思惑をいつも不健全視するのが第一に間違いである」「景気は思惑から、である。その景気の芽を摘むには慎重な注意を要する」

中外商業新報経済部長の小汀利得氏も、「日銀は不当なる通貨調節の常習犯」「(今回の 売りオぺは)全財界に無用の波乱を惹起し、轟々たる世論の対象となるに至った」と述べ、 時事新報記者の西野喜輿作氏は、「刻下必要なるリインフレーションの進行を阻害する」と売りオぺを批判した。

京都帝大助教授の谷口吉彦氏は、「せっかく沸きたったところへ冷や水を浴びせかけて、 インフレ景気の出鼻を挫いてしまった日銀の出動は、株式界から見ればなるほど小づら憎いほどの処置であったに相違ない。またインフレ景気に随喜する産業資本の立場から見れば、まことに思慮なき仕わざである」と当時の空気を描写した。しかし谷口氏本人は過度のインフレを警戒していたので、この売りオぺは「最も機宜をえた処置」と評価した。ただし、先行きは悲観的な見方を示した。「国民はいま換物運動に夢中である。金から物へ、 債券から株券へと急ぎつつある国民に公債を売りつけるためには余程の安値でなければむづかしい」「国民一般の購買力は、仕事も増さず所得も増さずに、ただ物価だけ上がって行っては、所詮は行詰りに逢着するの外あるまい」

景気研究所長の勝田貞次氏は、「聞く処によると、日銀当局者は今回の公開市場政策をば、成功なりと称して得々たりとのことであるが、若し、そうであるとしたら何たる近視眼者であることよ」「インフレの本質は通貨数量の増加よりも通貨流通速力の増大、通貨不信の発生にある。インフレは長い長い潜伏期問を経た後に、俄然として大爆発するものであって、その爆発するや、日銀のオプ・オぺなんぞの手におへるものではない」と述べた。

ダイヤモンド主筆の安田興四郎は政策の枠組みへの疑問を呈した。「大インフレーション政策を実行しながら、低金利の永続を予想するは痴人の夢に類する」「歳出総額を大に削減しない限り、大インフレーション時代の到来は必死不可避の状勢である」。

以前はリフレ政策を強く主張していた高橋亀吉も、「財政上のインフレは通貨が支出された瞬間において、物価高、為替安の作用を発揮するもので、(日銀の売りオぺによって)回収される通貨はかかる作用が発揮された残骸に過ぎない」と危険性を語るようになった。 ─(加藤出/日銀、「出口」なし! 異次元緩和の次に来る危機/朝日新書2014)


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