マガジンひとり

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巻き添え食ってたまるかよ

音楽にみるサイバーパンクの終焉

2013-07-30 21:55:05 | 音楽
村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』の装画で知られる小山佐敏氏が描いたFMfan誌のカセットギャラリーを利用して1991年ころ作ったカセット。
90分のカセットで、今回あらためて選曲した30曲も、半数以上それに基づく。
今はiTunesで、曲順など自由に入れ替えたり、ジャケを表示させて楽しむこともでき、音楽をめぐる環境は著しく便利になったと思うのだが、では中味はどうだろうか。

ダウンロード販売する音楽サイトから送られてくるメルマガには、"Clinical, Sci fi-infected rollers"であるとか、"Incredible spatial dynamics and 3D groove control"であるとかの宣伝文句が踊る。
クールな、近未来のSF調の曲がいくらでも溢れてる。

というか、ことインディーズや電子音楽の世界では、すでに多数派である。
トリップホップだかダブステップだか、よく分からないジャンルに分類されてるものの、どれをとっても似たようなもので、次から次へと出てくるアーティスト名や曲名を認知するのもひと苦労。覚えられない。
インスト曲ということもあるが、この中で最新2010年代の3や7を誰かが他の曲と取り替えて私に聞かせたとしても、私は取り換えたことを指摘できないだろう。

もともと選んでいたボウイやスライやロキシーやウルトラヴォックスは、まったく取り替えの利かない、一聴すれば確実に脳裏に刻まれる曲たちだ。
20年以上前のカセットを新たに編み直して、その後に現れた90年代以降の音楽が、テクノロジーの進歩や商品としての扱われ方の変化の他に、実質的な存在感が希薄化していることに思い至る。




1980年代、映画の『ブレードランナー』や小説の『ニューロマンサー』などと共に"サイバーパンク"という言葉がもたらされ、一種の流行現象になった。
ロボットなど日本のテクノロジーや発展する都市のイメージを舞台装置にあつらえたものも少なくなかったし、わが国からもこの流れに列せられるアニメやゲームが生まれた。

いつしか、サイバーパンクで描かれたようなガジェットがいくつも現実のものとなり、映画や小説の近未来が現実と置き換わったようにも思われるが、逆にテクノロジーの限界、人間という生きものの変わらなさ、進歩のなさもひしひしと感じる。

ニューロマンサーの主人公はサイバースペース=電脳空間に"ジャック・イン"して、巨大企業に対し諜報活動を試みたが、現実のわれわれは、せいぜいスマホやパソコンを操る程度だ。
機械を通して人間の意識が拡大するというより、前回述べたソーシャル・メディアのように人間と人間の間に機械を介在させることで、直接責任を回避しているに過ぎない場合が多い。

どんなに巨大なコンピューターでも感情や欲望を持つことはありえないし、人造人間が反乱を起こすこともない。
『未来世紀ブラジル』ほど悪夢的な管理社会にはならなかったが、SF小説の新しい題材=これから先の未来がいくらでも思い描ける、夢のある時代にもならなかった–





iTunes Playlist "HARDWIRED" 143 minutes
1) Slow Motion / Ultravox (1978 - Systems of Romance)



2) Helen of Troy / John Cale (1975 - The Island Years)



3) Truth Flood / Kuedo (2011 - Severant)



4) The Walk / Eurythmics (1983 - Sweet Dreams Are Made of This)



5) Television Rules the Nation/Crescendolls / Daft Punk (2007 - Alive 2007)



6) Modern / Peter Hammill (1973 - The Silent Corner and the Empty Stage)



7) Mega Church / Ikonika (2013 - Aerotropolis)



8) This Town Ain't Big for the Both of Us / Sparks (1974 - Kimono My House)



9) Samurai / Juno Reactor (1996 - EP)



10) White Shadow / Peter Gabriel (1978 - Peter Gabriel 2: Scratch)



11) Monster in the House / Finitribe (1989 - Grossing 10K)



12) Dr. Mabuse / Propaganda (1984 - A Secret Wish)



13) Theme for Great Cities / Simple Minds (1981 - Sons and Fascination/Sister Feelings Call)



14) Our Curious Leader / Luxuria (1990 - Beast Box)



15) 1984 / David Bowie (1974 - Diamond Dogs)



16) Utopia / Jackson and His Computer Band (2005 - Smash)



17) Love Theme / Vangelis (1994 - Blade Runner Soundtrack)



18) Spaced Cowboy / Sly & the Family Stone (1971 - There's a Riot Goin' On)



19) Kingdom Come / Tom Verlaine (1979 - Tom Verlaine)



20) Olde Wobbly / Mordant Music (2009 - Picking O'er the Bones)
21) Maximum Acceleration / Ultravox (1978 - Systems of Romance)



22) Diamond Avenue / Dave Stewart & the Spiritual Cowboys (1990 - Dave Stewart and the Spiritual Cowboys)



23) The Thin Air / Magazine (1979 - Secondhand Daylight)



24) Alice Practice / Crystal Castles (2008 - Crystal Castles)



25) Karma Police / Radiohead (1997 - OK Computer)



26) She Sells / Roxy Music (1975 - Siren)
27) Could It Happen to Me? / Roxy Music (1975 - Siren)



28) Break a Mirrored Leg / Quirke (2014 - Acid Beth)



29) Cities / Talking Heads (1979 - Fear of Music)
30) Big Brother/Chant of the Ever Circling Skeletal Family / David Bowie (1974 - Diamond Dogs)
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ソーシャル・メディアをこき下ろしたニール・テナント - 10 Best Pet Shop Boys Songs

2013-07-28 20:57:00 | 音楽
ツイッターをやってると「おすすめユーザー」として、話題の著名ユーザーであるとか、自分がフォローしてる他のユーザーも共通してフォローしてるユーザーであるとかが表示される。
そのうちの1コをクリックしてみると、↑のような画面が現れた。

気持ち悪い。
若い女を装ってるものの、実際は村上春樹みたいな顔した広告代理店のおやじか、雑居ビルの一室でブラックIT企業が運営してるアカウントなのかも。
いや私もフォロワー数の水増し目的で相互フォローしてるアカウントがないわけではないが、ここまで気持ち悪いアカウントがフォローしてきたら速攻ブロックですわ。

「それは根本的に不誠実だ(fundamentally insincere)」と、ペット・ショップ・ボーイズのニール・テナントが世間をにぎわすツイッターやフェイスブックをはじめとするソーシャル・メディアに対して述べた。
MOJO誌のインタビュー記事(7月3日)で。


「誰もが本当に"共有(share)"することに傾斜してるのだとは思えない。ソーシャル・メディアが実現してるのはニセモノの親密さ(fake intimacy)に過ぎず、そんなうわべだけのコミュニケーションは根本的に不誠実じゃないか。
ミュージシャン(など著名人)がそれを通してファンの声に耳傾けるというより、それは市場開拓のためのマーケティング・プロセスに他ならない、ニセモノの民主主義だ。
僕は本物を求める。そのようにビートルズやボウイから、そしてインクレディブル・ストリング・バンドから教わってきた。
われわれ自身の文化に沿った、独自の方法で物事を成し遂げようよ、インクレディブル・ストリング・バンドみたいにさ(大意)」



イイこと言うよ。
音楽を基準にして考えれば、AKBやJ-Pop、あるいは東浩紀や宇野常寛、あるいは安倍晋三や橋下徹といったものどもが、フェイクであり、ニセモノの親密さであり、民主主義を装った「民主主義の破壊者」に他ならないと容易に知れよう。
そういや250万のフォロワー数を誇る有吉弘行もラジオで言ってたな、情報収集のためにツイッターやってる(フォロワーのためになんかやってない、可能ならフェイドアウトしたい)って。
流行の話題や若手芸人の動向など、彼なりのマーケティング・プロセスなのだろう。




●The 10 Best Pet Shop Boys Songs
1) Being Boring (1990)
2) What Have I Done to Deserve This? (feat. Dusty Springfield) (1987)
3) Rent (1987)
4) Getting Away with It / Electronic (1989)
5) It's a Sin (1987)
6) West End Girls (1985)
7) Leaving (2012)
8) Dreaming of the Queen (1993)
9) Left to My Own Devices (1988)
10) Axis (2013)





選挙が争点ぼけした責任は、議題設定(アジェンダ・セッティング)機能をもつメディアにもあるはずだ。議題設定そのものを放棄した総花的企画の典型は、『文藝春秋』8月号の政界リーダー連続インタビュー「池上彰 あなたは日本をどう変えますか」である。とはいえ、安倍首相が愛用のフェイスブックについて池上に語ったひと言は収穫だった。「フェイスブックの利点は、限られた空間とはいえ、国民の皆さんが何を求めているのか、リアルタイムで知ることができる点です」。インターネットの利点は情報の双方向性にあると考える一般ユーザーが多いが、首相は国民感情のモニタリングを意識している

それが為政者の正しいソーシャル・メディア利用法であることは、ネグリ+ハートの「帝国」をメディア論から読み解いた水嶋一憲「そこに一緒に存在すること ポストメディア時代の政治的情動と一般的感情」(『現代思想』7月号)を一読すればわかる。2011年のオキュパイ・ウォールストリート運動やアラブの春は「ツイッター革命」「フェイスブック革命」として論じられたが、ソーシャル・メディアは一緒に存在することで生まれる身体的なコミュニケーションの代替とはならないこと、それは何より「脱中心化の後でコントロールを作動させるための分散型マネジメント・システム」であることを明らかにしている。つまり、上からのデータ管理装置であるだけでなく、一般ユーザーのアクセスや書き込みを数量化し、「一般的感情」として測定可能にする下からの価値生産装置なのである。リンク数で情報を価値付けるグーグル型「リンク経済」から、フェイスブックのいいね!(Like)ボタンで感情を評価する「ライク経済」へ進化する中で、「金融–ソーシャル・メディア–一般的感情」の三位一体でこの情動制御装置は機能している。社会変革のメディアというナイーブな幻想から離れて、アベノミクスの株価変動、それと連動する内閣支持率、そして安倍晋三フェイスブックのフォロワー37.5万人という数字の意味が吟味されねばならない。 –(佐藤卓己「論壇時評・参院選でみえたもの~理念の復権とウェブの機能」より、東京新聞2013年7月25日夕刊)



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Top 20 Hits of 27-Jul-2013

2013-07-27 18:29:05 | Weekly Top 15
1. ← 2. 4 "Pink Rabbits" The National (2013 - Trouble Will Find Me)
2. ← 1. 3 "Glacier" John Grant (2013 - Pale Green Ghosts)
3. ← 16. 2 "Axis" Pet Shop Boys (2013 - Electric)
4. ← 3. 4 "Nightcall (feat. Lovefoxxx)" Kavinsky (2010 - OutRun)
5. ← 4. 3 "The World Set Free" William Tyler (2013 - Impossible Truth)
6. ← 11. 2 "Airglow Fires" Lone (2013 - Single)
7. ← 13. 3 "Blurred Lines (feat. T.I. & Pharrell)" Robin Thicke (2013 - EP)
8. ← 5. 4 "Another Love" Tom Odell (2013 - Long Way Down)



9. NEW 1 "Stalker" Fuck Buttons (2013 - Slow Focus)
10. ← 8. 5 "Weakling Paradinas" µ-Ziq (2013 - Chewed Corners)
11. ← 7. 5 "Blood On the Leaves" Kanye West (2013 - Yeezus)
12. ← 15. 3 "Man" Neko Case (2013 - Single)



13. NEW 1 "Shout It Out" Mikal Cronin (2013 - MCII)
14. ← 6. 6 "Field of Reeds" These New Puritans (2013 - Field of Reeds)
15. ← 19. 2 "Strandbar (disko)" Todd Terje (2013 - Single)



16. NEW 1 "Get It" Run the Jewels (2013 - Free Download - Run the Jewels)
17. ← 10. 6 "Black Skinhead" Kanye West (2013 - Yeezus)
18. ← 9. 7 "Bruane Brenn" Kvelertak (2013 - Meir)
19. ← 14. 6 "Only Tomorrow" My Bloody Valentine (2013 - m b v)
20. ← 12. 7 "Fragment Two" These New Puritans (2013 - Field of Reeds)
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Sumo Decade - 1973

2013-07-24 21:36:03 | Bibliomania
私が大相撲を見始めたのは小5の1975(昭和50)年・名古屋場所のことで、おそらくきっかけとして、ベースボールマガジン社から出ていた専門誌・相撲の同・春場所での貴ノ花初優勝についての増刊号を父親が買ってくれたのに感化されたのだろう。
同誌は必ず年末に「相撲界総集号」として一年を振り返る増刊号を出しており、75年から80年あたりまで毎年買っていた記憶が。
とっくに手放していたが、このほど1973年~1982年という10年分の総集号を古本で入手することができたので、1年ずつ紹介してゆきたい。




初場所11日目、大関同士の対戦で輪島を破る琴桜。14勝1敗で2場所連続優勝を果たし、場所後、53代横綱に推挙された




後にプロレスで名をはせる天龍源一郎がこの場所新入幕




春場所は横綱・北の富士が14勝1敗で10回目の優勝




夏場所11日目、新入幕で100キロにも満たない小兵の鷲羽山が大関・清国を破る




輪島が全勝で2回目の優勝を果たし、場所後に54代横綱に推挙された




3横綱となった名古屋場所は優勝決定戦で琴桜が北の富士を破った。押し相撲の関脇・大受が13勝2敗の好成績で殊勲・敢闘・技能の三賞独占し(史上初)、場所後に大関に昇進




秋場所は横綱2場所目の輪島が全勝優勝。新入幕の大錦が1横綱1大関を倒す殊勲で三賞独占したが、その後は病気などで伸び悩んだ。新大関の大受も自律神経失調により休場して早くもカド番に追い込まれており、機が熟するのを待たずに花形力士を作ろうとする相撲界の事情がかいま見える




九州場所6日目、期待の若手だった関脇・北の湖が横綱・北の富士を破る。それにしても「もっとじっくり取るべきだ」とはやや失礼なキャプションで、他の座談記事などを見ても新聞記者たちが偉そうに介入してスモー・インサイダーを気取る態度に昭和の香り




輪島と貴ノ花は前年そろって大関昇進したが、この年は輪島が横綱昇進して77勝で年間最多勝と花開いたのに対し、貴ノ花は1度も10勝に達せず差が開いた。12日目の対戦では輪島が吊り出したが、序盤の突き合いで右手の指の間が割ける怪我を負い、14日目から休場、しかし12勝2敗1休で優勝した。この時の負傷を直接知らない私は「差し手争いで貴ノ花の指の間が割けた」と間違って記憶していた–
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Top 20 Hits of 20-Jul-2013

2013-07-20 17:43:29 | Weekly Top 15
1. ← 1. 2 "Glacier" John Grant (2013 - Pale Green Ghosts)
2. ← 2. 3 "Pink Rabbits" The National (2013 - Trouble Will Find Me)
3. ← 12. 3 "Nightcall (feat. Lovefoxxx)" Kavinsky (2010 - OutRun)
4. ← 11. 2 "The World Set Free" William Tyler (2013 - Impossible Truth)
5. ← 8. 3 "Another Love" Tom Odell (2013 - Long Way Down)
6. ← 4. 5 "Field of Reeds" These New Puritans (2013 - Field of Reeds)
7. ← 3. 4 "Blood On the Leaves" Kanye West (2013 - Yeezus)
8. ← 9. 4 "Weakling Paradinas" µ-Ziq (2013 - Chewed Corners)
9. ← 5. 6 "Bruane Brenn" Kvelertak (2013 - Meir)
10. ← 6. 5 "Black Skinhead" Kanye West (2013 - Yeezus)



11. NEW 1 "Airglow Fires" Lone (2013 - Single)
12. ← 7. 6 "Fragment Two" These New Puritans (2013 - Field of Reeds)
13. ← 19. 2 "Blurred Lines (feat. T.I. & Pharrell)" Robin Thicke (2013 - EP)
14. ← 13. 5 "Only Tomorrow" My Bloody Valentine (2013 - m b v)
15. ← 20. 2 "Man" Neko Case (2013 - Single)



16. NEW 1 "Axis" Pet Shop Boys (2013 - Electric)
17. ← 14. 4 "Varsity" Smith Westerns (2013 - Soft Will)
18. ← 15. 6 "Vertigo" Deafheaven (2013 - Sunbather)



19. NEW 1 "Strandbar (disko)" Todd Terje (2013 - Single)
20. ← 10. 6 "Q.U.E.E.N. (feat. Erykah Badu)" Janelle Monáe (2013 - Single)
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Top 20 Hits of 13-Jul-2013

2013-07-13 22:01:59 | Weekly Top 15
1. NEW 1 "Glacier" John Grant (2013 - Pale Green Ghosts)
2. ← 10. 2 "Pink Rabbits" The National (2013 - Trouble Will Find Me)
3. ← 3. 3 "Blood On the Leaves" Kanye West (2013 - Yeezus)
4. ← 2. 4 "Field of Reeds" These New Puritans (2013 - Field of Reeds)
5. ← 1. 5 "Bruane Brenn" Kvelertak (2013 - Meir)
6. ← 6. 4 "Black Skinhead" Kanye West (2013 - Yeezus)
7. ← 4. 5 "Fragment Two" These New Puritans (2013 - Field of Reeds)
8. ← 15. 2 "Another Love" Tom Odell (2013 - Long Way Down)
9. ← 9. 3 "Weakling Paradinas" µ-Ziq (2013 - Chewed Corners)
10. ← 5. 5 "Q.U.E.E.N. (feat. Erykah Badu)" Janelle Monáe (2013 - Single)



11. NEW 1 "The World Set Free" William Tyler (2013 - Impossible Truth)
12. ← 19. 2 "Nightcall (feat. Lovefoxxx)" Kavinsky (2010 - OutRun)
13. ← 12. 4 "Only Tomorrow" My Bloody Valentine (2013 - m b v)
14. ← 16. 3 "Varsity" Smith Westerns (2013 - Soft Will)
15. ← 11. 5 "Vertigo" Deafheaven (2013 - Sunbather)
16. ← 14. 4 "Lanzarote" Lindstrøm & Todd Terje (2013 - Single)
17. ← 8. 6 "Master Hunter" Laura Marling (2013 - Once I Was an Eagle)
18. ← 7. 6 "Little Colored Balloons" John Murry (2013 - The Graceless Age)



19. NEW 1 "Blurred Lines (feat. T.I. & Pharrell)" Robin Thicke (2013 - EP)



20. NEW 1 "Man" Neko Case (2013 - Single)
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継父

2013-07-07 22:09:07 | マンガ
引用したツイッターの主からクレームが付き、日本幻景の2回目の記事は削除することになったのだが、そこで扱ったつげ義春さんの「無能の人」シリーズのマンガについて心に引っ掛かるものが。
同シリーズの少し前(1984年)に発表され、つげさんの全集でも同じ8巻に収められた「ある無名作家」のあらすじ。

教養があるばかりにプライドが邪魔をしてマンガのアシスタントなど下積みの仕事を要領よくこなすことができず、子持ちの売春婦のヒモ同然に落ちぶれる男。
そのアシスタント時代の同僚がつげさん本人とおぼしき主人公で、久しぶりに男と再会してみると、売春させていた女房には逃げられたものの、英語塾を始めたとかで、逃げた女房に置き去りにされた血のつながらない息子と父子家庭を営むまでに立ち直っていた。

ヒモ同然だった頃は、その子に対して虐待まがいの扱いをしていたのを目にしたこともあるつげさんは、父子の姿にほっとしたものを覚え、帰宅して我が子と菖蒲湯に入り、子どもの頃、義父からひどい仕打ちを受けた記憶がふとよみがえるというラストシーン。



その「義父」とは何者なのか、ひどい仕打ちを含め、その後のつげさんの人生にどんな影響を及ぼしたのかということが、全集の7巻に収められた自伝的作品群でつまびらかに。
実父は彼が5歳の時に亡くなり、親類から3人の子どもをどこか養子に出せと迫られるのを拒み通した母との極貧の暮らしが始まる。



しかしこの母は、まだ女としてイケていたと見え、周囲に男がたかってくるのだ。
まず↑画像で「ズロース脱いで裸踊りやれ」と命じる男。中耳炎の手術のため耳の後ろに穴が開いており、入籍はしてない様子だが母のもとに入り浸って、小1当時のつげさんにタバコの火を押し当てるなどの折檻をする(「やもり」 1986年)。

やがて母が再婚するのは、もう一人の、↑画像では「孫六さん」と呼ばれる男で、極めて陰気な性格の持ち主であり、ずっと後のエピソードである「義男の青春」に至るまでほぼ一貫して失業状態。
家計は母と長男、そして次男のつげさんも小さな頃から内職の手伝いや零細メッキ工場、やがては貸本マンガの執筆で支えることになる。

この継父も虐待とまではいかないが子どもにつらく当たり、妻にも日常的に暴力をふるうのだが、より大きな問題として、先の「中耳炎のおじさん」と継父の間で、母子家庭をいいことに介入して物のようにやり取りするというか「女を共有する」暗黙の了解が感じられ、そのことが後々のつげさんに影を投げかけている様子なのだ。



昭和30年代、20代の彼は実家を離れ、貸本マンガ界が縮小傾向で、先の見えない下宿暮らしを強いられる。
下宿の家主は生活力旺盛な男で、つげさんを手伝わせてヤミ米の買い出しで儲けたり、人の女に手を付けたり、付けた女をさらに若い衆に斡旋するなど、あつかましくもたくましい好色漢(「隣りの女」 1984年)。

ほか「池袋百点会」(1984年)という話に出てくる男も、山梨県の商家にムコ入りしておきながら、太宰にかぶれて東京で一花咲かす夢を捨てきれず、情婦をこしらえて貢がせたり、怪しげな広告代理業を立ち上げてつげさんを引き入れ、失敗して女をつげさんに押し付けて山梨に逃げ帰ったりとロクでもない。



まあ『闇金ウシジマくん』にも登場するような男たちなのだが、それ以上に日本の男たちが全く変わってないと痛感させられる、先のフィギュアスケート選手の出産騒動。

名前を書く気はない。
それは悪意というより、じゃあみなさんは彼女がオリンピックに選ばれないとしても、そのまま引退するとしても、彼女を話題にしてタレントとして持ち上げ続け、それによって母子家庭を経済的に支えてゆくつもりがあるんですかと。
彼女が矢面に立つことで、子どもを生ませた男が隠れおおせるとすれば、それはつげさんの母が複数の男を引き入れることでどうにか子どもを育て上げることができたのと本質的に変わらないではないか。

話変わるが私の母方の祖父は1896(明治29)年生まれとのことで、大戦中すでに40代後半だから赤紙が来ることはなかったというが、86歳まで生きた頑健な職人なので兵役には耐えられた筈である。
しかし、兵隊を使い、命令を下す立場で考えれば、やはり世間知に長けた年配者よりは何も知らぬ10代の少年兵が使いやすかったことだろう。

すなわち、戦争で惨敗して従軍した男たちが大勢死んだとしても、むしろ年配の男たちにとって、若い競争相手が減り、つげさんのマンガに出てくるように女を共有したり働かせたりして、父権社会の体面・メリトクラシーが強化される側面があったのではないかという。



7巻の最後に収められた「別離」(1987年)をもって、つげさんはマンガの執筆を止めることに。
若き日、マンガが売れないので同棲中の恋人を養えず、別居して住み込みで働いてもらうことになり、さらに恋人が浮気を告白して思い悩んだつげさんが自殺未遂するという内容。
女を共有し働かせる男社会の「暗黙の了解」が亡霊となって、現代日本を閉塞感ですっぽり覆っていることを暗示するようではないだろうか–
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Top 20 Hits of 6-Jul-2013

2013-07-06 19:54:20 | Weekly Top 15
1. ← 1. 4 "Bruane Brenn" Kvelertak (2013 - Meir)
2. ← 2. 3 "Field of Reeds" These New Puritans (2013 - Field of Reeds)
3. ← 9. 2 "Blood On the Leaves" Kanye West (2013 - Yeezus)
4. ← 7. 4 "Fragment Two" These New Puritans (2013 - Field of Reeds)
5. ← 3. 4 "Q.U.E.E.N. (feat. Erykah Badu)" Janelle Monáe (2013 - Single)
6. ← 6. 3 "Black Skinhead" Kanye West (2013 - Yeezus)
7. ← 4. 5 "Little Colored Balloons" John Murry (2013 - The Graceless Age)
8. ← 5. 5 "Master Hunter" Laura Marling (2013 - Once I Was an Eagle)
9. ← 16. 2 "Weakling Paradinas" µ-Ziq (2013 - Chewed Corners)



10. NEW 1 "Pink Rabbits" The National (2013 - Trouble Will Find Me)
11. ← 12. 4 "Vertigo" Deafheaven (2013 - Sunbather)
12. ← 11. 3 "Only Tomorrow" My Bloody Valentine (2013 - m b v)
13. ← 8. 6 "Things I Like to Do" Scorpio Loon (2012 - Free Download - MS MR Track Addict Vol. III)
14. ← 17. 3 "Lanzarote" Lindstrøm & Todd Terje (2013 - Single)



15. NEW 1 "Another Love" Tom Odell (2013 - Long Way Down)
16. ← 20. 2 "Varsity" Smith Westerns (2013 - Soft Will)
17. ← 14. 3 "I Am a God (feat. God)" Kanye West (2013 - Yeezus)
18. ← 13. 6 "Mephisto in the Water" Jenny Hval (2013 - Innocence Is Kinky)



19. NEW 1 "Nightcall (feat. Lovefoxxx)" Kavinsky (2010 - OutRun)
20. ← 10. 7 "Doin' It Right (feat. Panda Bear)" Daft Pank (2013 - Random Access Memories)
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