マガジンひとり

オリンピック? 統一教会? ジャニーズ事務所?
巻き添え食ってたまるかよ

レアグルーヴ@ユーチューブ #44

2023-05-28 13:20:07 | 音楽

Los TNT / Eso (1960) Uruguay


Shlomo Artzi / יופיה אינו ידוע
(1972) Israel


Luli e Lucina / Flor lilás (1972) Brazil


Stig & Steen / Sommer (1972) Denmark


Moti Special / Cold Days, Hot Nights (1984) Germany


Stimela / Phinda Mzala (Whispers in the Deep) (1986) South Africa


Kedge / Chime (1988) Japan


Oliver Mtukudzi / Todii (1998) Zimbabwe
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05/27/2023 Top 15 Hits

2023-05-27 18:32:49 | Weekly Top 15
1. ← 1. 4Rahul Sipligunj & Kaala Bhairava / Naatu Naatu (2021 - Single)
2. ← 2. 5Palehound / The Clutch (2023 - Eye on the Bat)
3. ← 3. 5Jessie Ware / That! Feels Good! (2023 - That! Feels Good!)
4. ← 10. 2ANOHNI and the Johnsons / It Must Change (2023 - My Back Was a Bridge for You to Cross)
5. ← 8. 2Spoon / Sugar Babies (2023 - Memory Dust)
6. ← 5. 6The Last Dinner Party / Nothing Matters (2023 - Single)
7. ← 4. 7Jessie Ware / Begin Again (2023 - That! Feels Good!)



8. NEW 1M. Ward / Supernatural Thing (2023 - Supernatural Thing)
9. ← 7. 5Thundercat & Tame Impala / No More Lies (2023 - Single)
10. ← 6. 3Baiuca / Veleno (2021 - Embruxo)



11. NEW 1Anjimile / The King (2023 - The King)
12. ← 15. 2Baustelle / Contro il mondo (2023 - Elvis)
13. ← 12. 3Decisive Pink / Dopamine (2023 - Ticket to Fame)



14. NEW 1Jess Williamson / Time Ain't Accidental (2023 - Time Ain't Accidental)
15. ← 11. 7Nation of Language / Weak in Your Light (2023 - Strange Disciple)


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夜の銀狐

2023-05-26 16:58:07 | 中産階級ハーレム
ソログリースデラノーチェ、愛しているのさ。小さなマンション探しておいたよ、2人で住みたい。

「小さな」ってのがミソかな、小坂明子。典型的なムード歌謡である「夜の銀狐」、長期入院から復職した2001年、労組の隣の分会で書記長をやっていた人が同僚になっていて、カラオケの十八番がこの曲。電話局時代のならわし的に、どの分会でも書記長が金庫番のような形で飲み会や旅行を仕切る。親分肌タイプが多く、会社での先は知れているからか、組合活動に付随する夜遊びの方が主体になってしまい、その人の場合は離婚後、小料理屋でバイトしていたバツイチ子持ち女を愛人にして、その女をママとして店を持たせ、仲間を店で飲ませる。私もその1人で、会社を辞めてからもよく誘われた。

あるときママが眼帯をしていて、どうしたのかなと思ったら、元書記長が携帯で呼び出されて席を外した際に「殴られたの」と眼帯を外して腫れた瞼を見せてくれた。女を殴るような人に見えないのだが、親分肌のB面は暴力というわけか。私が組合活動をやっていた分会の書記長は、やはり離婚して、定年前に病気で死んでしまった。



1) 斉条史朗 / 夜の銀狐 (1969 - Single)



2) Culture Club / Do You Really Want to Hurt Me (1982 - Single)



3) Clifford Brown & Max Roach / Time (1956 - At Basin Street)



4) Erasure / Always (1994 - Single)



5) Ian Neal / Kingdom of the Birds (2008 - A Monstrous Psychedelic Bubble, Vol. 1: Cosmic Space Music)



6) Them / Don't Look Back (1965 - The Story of Them Featuring Van Morrison)



7) Broadcast / Before We Begin (2003 - Haha Sound)



8) Joe Wilder / Darn That Dream (1956 - Wilder 'n' Wilder)



9) ゆらゆら帝国 / EVIL CAR (1998 - 3×3×3)



10) David Axelrod / The Human Abstract (1969 - Songs of Experience)



11) 金井克子 / 他人の関係 (1973 - Single)



12) Stereolab / Come and Play in the Milky Night (1999 - Cobra and Phases Group Play Voltage in the Milky Night)


13) 美川憲一 / 柳ケ瀬ブルース (1966 - Single)



14) Jerry Goldsmith / Galaxy a Go-Go! or Leave It to Flint (1966 - Our Man Flint OST)



15) James Brown and the Famous Flames / Lost Someone (1963 - Live at the Apollo)



16) 増位山太志郎 / そんな女のひとりごと (1977 - Single)


17) Beach House / Zebra (2010 - Single)



18) Tubby Hayes / Israel Nights (1964 - Tubbs' Tours)



19) 黒沢明とロス・プリモス / ラブユー東京 (1966 - Single)



20) Julie London / Cry Me a River (1955 - Julie London Sings Film Songs)




会社を辞めてしばらくこのようになってました。先述の元書記長が、会社員時代末期の私にキャバクラ遊びを教え、金で買えるならというわけでソープで童貞を捨ててキャバ・風俗に散財。2009年ころには「ベニスに死す計画」など称してジャニー喜多川みたいなことをやろうとして当ブログの黒歴史にもなっている。そもそもヴィスコンティが糞ヤクザだったんですね。空しい。飲む打つ買う系の遊びは依存症を招きやすく、やればやるほど喉が渇き、卑屈になる。借金や、健康を損ねたり元も子もない。

とはいえ、主語が大きくてごめん、日本人なんてみんな卑屈ですよ、強者に媚びへつらい、弱者を見下しいじめる。中抜き大好き、多重下請け、外国人技能実習。個々はマジメで優しいとしても集団になるほど卑屈で尊大で無責任になる。集団の和を乱す者、人付き合いの苦手な者は蔑まれ、のけ者にされ、無力な状態に置かれる。といってもし集団内で上手く立ち回ったとしても、たとえば会社員であれば長時間の拘束と監視、通勤、住宅ローン、子どもの教育問題などなど足枷がたくさん。いっときでもそれらを忘れてお気持ちお立場を分かち合いましょうというわけで、労働者向け飲む打つ買う娯楽がさまざま用意されている。

パチンコやったことない。もしパチンコの題材になっていないとしてもガンダムや北斗の拳は嫌いだ。風俗なんかくだらないって分ってる。ホストに騙されてとかも、性病もある。心から好きなのは高校の友人(もちろん同性)だけなんだから童貞を貫いて堂々と生きるべき。でも無理なんだ、テレビや漫画、学校教育、会社勤めと、一人分の人生よりもっと前から「代官の接待を受ける鎌倉時代の図太い百姓」が日本人のロールモデルになっていて、英国で産業革命が起って中流階級が形成されるより早く、井原西鶴は結局は世間(という人間マーケット)には勝てないから浮いたり沈んだり打算的に生きるしかないという小説を書いている。そして私はこれまでの曲がりくねった卑屈な人生を糧にして当ブログを土台にエロ同人誌作りの道を歩むことになった。


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Spectrum True Series

2023-05-22 14:10:49 | 音楽
ピンク・レディーの時代、シングル盤1枚あたりの歌唱印税は7円くらいだと聞いたことがある。いま検証するすべはないが、検索するとCDの歌唱印税はCD定価の1~3%という記述が先頭の方に現れ、ピンク・レディーの頃にシングル盤は500~600円だったので、信憑性はありそう。

ただしピンク・レディーは、暴力団系の総会屋が出資する、地方興行の収益なども出資者に奪われる弱小プロダクションに所属し、月給制だったので、2人が馬車馬のように働いて稼ぎだした数百億円から闇社会へ流れてしまった部分は少なくないといわれる。

「かわいそうだとは思うよ
でもさ、その後20年くらい、何してたんて話よ
流石に30超えたら対象外になるやろ
なら、自分がやられなくなって、代わりに10代の後輩が次々に餌食になってるのを、
知ってて放置してたのなんで?
なんで助けなかったん?なんでジャニーを止めなかったん?
自分が干されるから?
なら、自分の地位を守るために、後輩を犠牲にしてきたってことよな」

相手が暴力団でもそう言えるのか。しかも政治家や米軍ともつながりがあるとされる暴力団である。統一教会被害者が「議員や警察に訴えても動いてくれないと知って絶望した」というのと同じ構図。封建制ともいえる、日本の芸能界の前近代性が、テレビのお墨付きを得ることで、ジャニーズ事務所や秋元康を筆頭に1980年代のアイドル復権とその後の音楽全般のガラパゴス化を招き、少子化と経済低迷の一因になったともいえよう。



ピンク・レディー所属事務所の陰にいた暴力団よりも、もちろん作詞作曲の阿久悠と都倉俊一、レコード会社や全国の小売店、テレビやグッズや広告や興行の関係者の方が大きな額を正規に稼いだ。連続1位・初登場1位・連続ミリオンといった現象に注目が集まり、やがて業界の腹黒い面々が主導して、人工的にそれが作られるようになっていったわけだ。

しばらく前に「帰ってきたサンプラー/各国の選曲」という記事で紹介した配信専門・編集盤専門の音楽レーベルX5 Music Groupは、当初はゲーム音楽とクラシック、やがてワーナー傘下に収まって大量の編集盤をリリースし、高い利益率でIT業界の称賛を集めているということで、上に述べたような演奏者には雀の涙ほどしか払わなくていい、音楽業界が歴史的に反社会勢力との結び付きが強く不透明な商慣行がまかり通っていることに乗じて成功したに違いないと気づく。その種の配信専用の編集盤に嫌悪感を覚えるようになり、iTunes内で元のスタジオアルバムから聞くような感じでない曲を編集盤にまとめる際も、選曲やジャケだけでなくフィジカルとしての完成度、愛着が持てる商品かどうかを厳密に問うようになりました。




True No. 1s (2006)
Manfred Mann / The Mighty Quinn (1968)
Captain Sensible / Happy Talk (1982)



True Rock (2006)
Joe Walsh / Rocky Mountain Way (1973)
Nils Lofgren / Shine Silently (1979)
John Miles / Music (1976)



True Sixties Love (2006)
Dusty Springfield / Goin' Back (1966)


True Chill Out (2007)
Lamb / Górecki (1996)
Free / Mouthful of Grass (1969)
Secret Garden / Nocturne (1996)


True Acoustic (2007)
Lynyrd Skynyrd / All I Can Do Is Write About It (1991)



True Funk (2007)
Yarbrough & Peoples / Don't Stop the Music (1980)
Bobby Byrd / I Know You Got Soul (1971)
Creative Source / Who Is He and What Is He to You (1973)


True Power Ballads (2007)
Styx / Babe (1979)
Nik Kershaw / Wouldn't It Be Good (1984)



True Soulful Love (2008)
Love Unlimited / Walkin' in the Rain With the One I Love (1972)


True Mellow (2008)
Dave Berry / The Crying Game (1964)
Acker Bilk / A Taste of Honey (1963)
Peter Skellern / You're a Lady (1972)


True Eighties Love (2008)
Bourgeois Tagg / I Don't Mind at All (1987)

スペクトラムは元ポリグラム、現ユニバーサル傘下で廉価盤を専門とする英国本拠のレーベル。Trueは2006~08年に30種ほどリリースされたCD3枚組シリーズ。安直といえば安直ですが、たとえばモータウンのヒット曲にしても米国と英国で様相が異なったりして、同じ時代にある程度ヒットしていたにもかかわらずこのシリーズによって初めて聞くことになった曲が少なくない。
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05/20/2023 Top 15 Hits

2023-05-20 15:20:29 | Weekly Top 15
1. ← 1. 3Rahul Sipligunj & Kaala Bhairava / Naatu Naatu (2021 - Single)
2. ← 5. 4Palehound / The Clutch (2023 - Eye on the Bat)
3. ← 4. 4Jessie Ware / That! Feels Good! (2023 - That! Feels Good!)
4. ← 2. 6Jessie Ware / Begin Again (2023 - That! Feels Good!)
5. ← 3. 5The Last Dinner Party / Nothing Matters (2023 - Single)
6. ← 9. 2Baiuca / Veleno (2021 - Embruxo)
7. ← 7. 4Thundercat & Tame Impala / No More Lies (2023 - Single)



8. NEW 1Spoon / Sugar Babies (2023 - Memory Dust)
9. ← 6. 7Sarah Grace White / Ribbon (2023 - Are You Here This Time)



10. NEW 1ANOHNI and the Johnsons / It Must Change (2023 - My Back Was a Bridge for You to Cross)
11. ← 8. 6Nation of Language / Weak in Your Light (2023 - Strange Disciple)
12. ← 14. 2Decisive Pink / Dopamine (2023 - Ticket to Fame)
13. ← 11. 5BC Camplight / Kicking Up a Fuss (2023 - The Last Rotation of Earth)
14. ← 12. 3Lael Neale / I Am the River (2023 - Star Eaters Delight)



15. NEW 1Baustelle / Contro il mondo (2023 - Elvis)


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2010 ─ 50 Best Songs

2023-05-18 19:55:01 | Year End Charts
50) of Montreal / Sex Karma
49) Ghost / Ritual
48) Los Peyotes / Peyoteando con ayahuasca
47) Ted Leo and the Pharmacists / Bottled in Cork
46) Stars / Dead Hearts
45) Ben Folds & Nick Hornby / Levi Johnston's Blues
44) Villagers / Becoming a Jackal



43) Flying Lotus / MmmHmm (feat. Thundercat)
42) Dr. Dog / Where'd All the Time Go?
41) Gepe / Por la.ventana
40) The New Pornographers / Crash Years
39) MGMT / Siberian Breaks



38) Ben l'Oncle Soul / Soulman
37) Ariel Pink's Haunted Graffiti / Bright Lit Blue Skies
36) Deerhunter / Desire Lines
35) Hot Chip / I Feel Better (2009)
34) ceo / Come with Me
33) Tame Impala / Solitude Is Bliss
32) Janelle Monáe / Cold War
31) LCD Soundsystem / Dance Yrself Clean
30) Chimarruts / Do lado de cá
29) Deerhunter / Helicopter
28) Yeasayer / 0.N.E



27) Karina Buhr / Eu menti pra você
26) Owen Pallett / E Is for Estranged
25) Ariel Pink's Haunted Graffiti / Round and Round
24) Emeralds / Candy Shoppe
23) Josh Ritter / The Curse
22) Caribou / Odessa
21) Sleigh Bells / Rill Rill
20) Blitzen Trapper / Destroyer of the Void
19) Memory Tapes / Bicycle (2009)
18) klaus&kinski / Forma, sentido y realidad
17) JJ Grey & Mofro / King Hummingbird
16) Joanna Newsom / Good Intentions Paving Co.
15) The Black Keys / Tighten Up
14) Hot Chip / Thieves in the Night
13) Gorillaz / On Melancholy Hill
12) Agnes Obel / Riverside
11) The National / Conversation 16
10) Robyn / Dancing on My Own



9) Hot Chip / One Life Stand (2009)
8) MGMT / Flash Delirium
7) Charlotte Gainsbourg / IRM (2009)
6) Best Coast / Boyfriend
5) Cee Lo Green / Fuck You
4) Janelle Monáe / Tightrope (feat. Big Boi)
3) The National / Bloodbuzz Ohio
2) ゆらゆら帝国 / 空洞です (2007)
1) Arcade Fire / Sprawl II (Mountains Beyond Mountains)



※追記:ジミー・サヴィル(Jimmy Savile)の件を知らず、ヘッダー画像に入れられなくて残念。
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世界の音楽 — エチオピア

2023-05-16 17:10:24 | 世界の音楽
1980年代だったか90年代に入っていたか覚えていないが、商社の駐在員的な立場の人物が「エチオピアで日本の演歌が聞かれている」と話すのをどこかのメディアで目にした。それをいま検証しようとすると、確かに音階や節回しが演歌と当地のポップスで似ている部分がありますが、演歌が当地で聞かれている(いた)という証言はないですねという冷静なところに落ち着いた様子。おそらく「演歌と似ている」「演歌のカセットを聞かせたら気に入ったみたいだ」くらいの話に尾鰭が付いて、いまだにネットの一部で言及されているのだろう。

最古の独立国の一つである同国は音楽も歴史が古く、既に6世紀には皇帝お抱えの作曲家(宗教音楽の)がいたという。民俗音楽には4種類のモードがあり、うちティジータと呼ばれるモードからTezeta(思い出の歌)という流行の曲名にもなって、同国の歌謡は1969~75年の黄金時代を迎える。75年のクーデターにより皇室が排され、ソ連の衛星国になって文化的に冬の時代となり、自由を求めて亡命する音楽家も。80~90年代、エリトリア独立に伴う政変と前後して、フランス人プロデューサーのフランシス・ファルチェト氏がマフムード・アーメッドのエチオジャズのアルバム再発に執念を燃やし、97年にそれを含むエチオピークのシリーズ再発がスタート、黄金期の音楽が各国で聞かれ始めると共に本国の音楽シーンも活気を取り戻してきているという。 



Mulatu Astatke / Yègellé Tezeta (1969 - New York-Addis-London: The Story of Ethio Jazz 1965-1975)
2006年日本公開の映画ブロークン・フラワーズ、サウンドトラックにこれを含むムラトゥ・アスタトゥケの3曲と、デング・フィーバーが彼の曲をカバーした1曲が収められ、いずれも印象的でそれがエチオピア音楽を認識した最初。ロンドンやボストンで音楽教育を受け、ジャズやラテン音楽とエチオピア伝統音楽を融合させた「エチオジャズ」の創始者で、90年代レアグルーヴの流れで再発見され、エチオピークのシリーズ再発と映画での使用により存在感の高まりを決定づけた。



Bahta Gèbrè-Heywèt / Tessassategn Eko (1970 - Ethiopiques, Vol. 8: Swinging Addis 1969-1974)
エチオピア人だけで構成された最初期のホテルバンド「Ras Band」のボーカルに18歳のとき抜擢。



Tèsfa-Maryam Kidané / Tezeta (1972 - Ethiopiques, Vol. 10: Ethiopian Blues & Ballads)


Alèmayèhu Eshèté / Telantena Zaré (1974 - Éthiopiques, Vol. 9: Alèmayèhu Eshèté 1969-1974)



Tlahoun Gèssèssè / Aykedashem Lebe (1974 - Ethiopiques, Vol. 17: Tlahoun Gèssèssè)
ティラフン・ゲッセセは同国「黄金時代」やその後も最も人気があり、ザ・ヴォイスの異名でエチオピア全土に知られた歌手。70~80年代にかけて起った飢饉の際も支援金を集め、国民から愛され、晩年は糖尿病を患い2009年に死去したが、数万人の市民が参列する国葬で讃えられた。



Mahmoud Ahmed / Erè mèla mèla (1975 - Éthiopiques, Vol. 7: Mahmoud Ahmed)



Hailu Mergia / Wede Harer Guzo (1978 - Wede Harer Guzo)
エチオジャズのキーボード奏者で80年代米国に亡命。非常にドリーミーで陶酔感のあるインスト曲で、同国の音楽の中で私が最も好む曲ですが、斬新さ・実験性は薄いかなと思う。



Aster Aweke / Hagerae (1983 - Hagerae)
アスター・アウェケはエチオピアで最も有名な歌手の1人。1981~97年の間アメリカ移住し音楽活動も行った。エチオピアとエリトリアでブルースに相当する伝統歌謡のジャンルに欧米のR&B・主流ポップをミックスした作風。



Imperial Tiger Orchestra / Lale Lale (2011 - Mercato)
ハイレセラシェ皇帝時代の帝国ボディガードバンドとモンティパイソンの「アフリカの虎」に想を得て結成されたスイスのグループ。1960~80年代のエチオピア音楽を蘇らせることを活動の柱とし、政治的迫害やエリトリア独立戦争のためヨーロッパに逃れたエチオピア人音楽家・ダンサーと共演したり南アフリカやモザンビークでもツアー演奏している。


Ukandanz / Tchuhetén Betsèmu (2016 - Awo)
伝統的なエチオピア歌謡に触発され、フランス人演奏者がエチオピア人ボーカル、アスナケ・ゲブレイスをフィーチャーして結成。ロック・ジャズ・ノイズ要素を加え、活気が戻ったアジスアベバの音楽シーンを象徴。


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世界の音楽 — デンマーク

2023-05-14 17:06:52 | 世界の音楽
同国の文化省が2006年に「デンマーク文化キャノン」として建築・工芸・文学・映画など8つのカテゴリーから計108の作品を選定。音楽ではクラシックとポピュラーそれぞれ12作ずつ、ポピュラー音楽からはアルバム単位で選ばれている。中でセバスティアンという芸名のシンガーソングライターについてはSpotifyの再生回数、Rate Your Musicのレビュー件数などから推し量ってデンマーク国外では知名度が低くほとんど聞かれていない様子。国内では英雄的、国外ではさっぱりというとすぐにわが国の悲惨な状況を連想しますが、彼の音楽はとても優れていて、もっと聞かれて不思議はない。先日イスラエルでも同様の存在を見つけたばかりだ。

思うに、維新の馬鹿女が入管を叩かないでウィシュマさんと支援団体の落ち度を責める、あるいはロンブー淳の有田叩き、暇アノンの女叩きと、せっかく山上青年が安倍を成敗して統一教会汚染を知らしめてくれたにもかかわらず、むしろ自民党とネトウヨが焼け太りしてますますお先真っ暗になっているのは、歴史的に長きにわたりそういう構造が固定されてもはやくつがえせないからなのではないか。

「代官から接待を受ける鎌倉時代の図太い百姓」。維新やロンブー淳、あるいはジャニー喜多川と彼の性暴力を受け入れてスターになった、今も口をつぐんでいる、それらはみな「軍事独裁による、国民が反抗しないよう一部の者を引き立てて行う懐柔工作」であり、日本のメディアも企業も国民でなく政府与党の方しか向いていないから手を変え品を変え同じようなものが再生産され続ける。そも明治維新に伴う「文明開化」も、武士階級の支配を継続するため(クーデターにより徳川幕府から薩長藩閥に移ったが武士には変わりない)、自分たちの歴史や文化を犠牲にして西欧文明を取り入れる。このところの経済低迷と少子化、世界一みっともない音楽も恥さらしなオリンピック開催も、民主主義が一度も存在したことがない、誰も王様は裸だと言えない卑屈な歴史の帰結と申せましょう。




Gade: Elverskud, Op. 30 - Morgensang (1854)
ニルス・ゲーゼと読むらしい作曲家、上記のデンマーク文化キャノンに選ばれている「妖精の娘」と題された歌曲集の1曲。メンデルスゾーンやシューマンと親交があったそうで作風も似ている。



Nielsen: Symphony #4, Op. 29, FS 76 "The Inextinguishable" - 1. Allegro (1916)
ノルウェーのグリーグ、フィンランドのシベリウスに相当する、デンマークを代表する作曲家カール・ニールセン。とのことなのだが、いくつかの代表曲を聞いてみても印象がぼんやりして決め手に欠ける作曲家だなァと思ってしまう。



Savage Rose / Dear Little Mother (1972 - Dødens triumf)
幼女のような老婆のような奇妙なボーカルが特色のサイケデリック・ロック・グループ。1967年から現在まで活動。



Stig & Steen / Sommer (1972 - Da solen kom)
ラウンジとかチルとかの流れで再発見されたらしいムーディーなプログレの曲



Sebastian / Stille før storm (1981 - Stjerne til støv)
今回発見した極めつけ。フォーク/トラッド系のシンガーソングライターということで地味かと思いきや歌も編曲も華麗。デンマーク文化キャノン、ポピュラー音楽カテゴリーに選定。



Laid Back / White Horse (1983 - Single)
男性デュオによるNW系ディスコ曲。当初はSunshine ReggaeのB面として発表され両面とも大ヒット、米国ではこちらの方がヒットし、各国で独立したシングルとしてリリースされた。人畜無害なダンス曲に聞こえるが「白い馬に乗る」は麻薬使用を暗示しているとされる。



Mercyful Fate / Into the Coven (1983 - Melissa)
メタルの悪魔的なサブジャンル「ブラックメタル」第一世代に属し、PMRCがこの曲を不快な曲にリストアップしたという。基本ジャンルに貴賤はないと思うがジャンル内で凝り固まって排他的な空気をかもすジャズ・プログレ・メタル・ヒップホップをやや軽んじている。この曲は好き。メタルにはもっと不快なバンドがいくらでもいる。



Gangway / My Girl and Me (1986 - Single)
いわゆるネオアコ系のギターポップ。シュールレアリスム風の奇妙な歌詞でも知られる。



Mew / The Zookeeper's Boy (2005 - And the Glass Handed Kites)
デンマークでは最もビッグネームになるのかな、英Wikiに「コペンハーゲン郊外の上流階級が住む街で結成された」との記述があり、なるほどそのニオイはあるなと。細分化されたジャンルからは距離を置く、のほほんとしたリベラルな作風。


The Raveonettes / Love in a Trashcan (2005 - Pretty in Black)
ラヴェオネッツはコペンハーゲン出身の男女デュオ。エヴァリー・ブラザーズやソニック・ユースの影響を受けたレトロかつノイジーかつ退廃的な曲想。



Agnes Obel / Riverside (2010 - Philharmonics)
このとき29歳と遅咲きながら将来を嘱望される女性シンガーソングライターの一人。子どものころピアノ教師から「嫌いなものは弾かなくていい」と言われ、後にヤン・ヨハンソンのジャズと民謡の混交したシンプルな作風に影響を受けてオリジナルな才能を育んだ。


Palace Winter / The Accident (2018 - Nowadays)
オーストラリアとデンマークの男性デュオ。チルウェイヴ系の幽玄な持ち味。私の年間チャート入りしたこの曲は彼らの曲の中では人気がないようだ。Spotifyの再生回数表示を恐く思うことがしばしば。


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05/13/2023 Top 15 Hits

2023-05-13 16:07:07 | Weekly Top 15
1. ← 5. 2Rahul Sipligunj & Kaala Bhairava / Naatu Naatu (2021 - Single)
2. ← 1. 5Jessie Ware / Begin Again (2023 - That! Feels Good!)
3. ← 3. 4The Last Dinner Party / Nothing Matters (2023 - Single)
4. ← 2. 3Jessie Ware / That! Feels Good! (2023 - That! Feels Good!)
5. ← 6. 3Palehound / The Clutch (2023 - Eye on the Bat)
6. ← 4. 6Sarah Grace White / Ribbon (2023 - Are You Here This Time)
7. ← 9. 3Thundercat & Tame Impala / No More Lies (2023 - Single)
8. ← 7. 5Nation of Language / Weak in Your Light (2023 - Strange Disciple)



9. NEW 1Baiuca / Veleno (2021 - Embruxo)
10. ← 8. 7Lightning Dust / Run (2023 - Nostalgia Killer)
11. ← 13. 4BC Camplight / Kicking Up a Fuss (2023 - The Last Rotation of Earth)
12. ← 15. 2Lael Neale / I Am the River (2023 - Star Eaters Delight)
13. ← 10. 6The WAEVE / Standing Still (2023 - The WAEVE: Deluxe)



14. NEW 1Decisive Pink / Dopamine (2023 - Ticket to Fame)
15. ← 12. 3Alfa Mist / Aged Eyes (feat. Kaya Thomas-Dyke) (2023 - Variables)


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読書録 #35 — ヒトは〈家畜化〉して進化した、ほか

2023-05-10 17:46:11 | 読書
レイモンド・チャンドラー/長いお別れ/ハヤカワ・ミステリ文庫1976・原著1954
富豪のポッターは言う。「金というものは不思議なものだ。ひとところに多額に集まると、金に生命が生まれ、ときには良心さえも生まれる。金の力を制御することがむずかしくなる。人間はむかしから金に動かされやすい動物だった。人ロの増加、戦争に要する多額の軍事費、税金の重圧──こういったものが人間をさらに金に動かされやすくしている。ふつうの人間は疲れて、怯えている。疲れ怯えている人間に理想は用がない。まず家族のため食物を買わなけれぱならないのだ。われわれは社会の道徳(モラル)と個人の道徳がいちじるしく崩れ去ったことを見てきている。人間の品質が低下しているのだ。マス・プロの時代に品質は望めないし、もともと、望んではいない。品質を高めると永持ちするからなのだ。だから、型を変える。いままであった型をむりにすたらせようとする。商業戦術が生んだ詐欺だよ。ことし売ったものは一年たったら流行おくれになるように思わせないと、来年は商品を売ることができない。われわれは世界で一ばんきれいな台所と一ばん光り輝いている浴室を持っている。しかしアメリカの一般の主婦はきれいな台所で満足な食事をつくることができないし、光り輝いている浴室はたいていの場合、防臭剤、下剤、睡眠薬それに、化粧品産業と呼ぱれている信用だけにたよる事業の商品の陳列所になっている。われわれは世界で一ばんりっぱな包装箱をつくっているんだよ、マーロウ君。しかし、中に入っているものはほとんどすべてがらくただ」。
殺人を題材とするハードボイルド小説であると同時に米国の郊外・大量消費・拝金を描く物語。


吉田光邦/錬金術 仙術と科学の間/中公文庫2014・原著1963
「中国の錬金術では結果はすでに自明の理であり、操作はすでに確定している結果を実際に導き出すための手続きにすぎないとする。それが現代の科学の論理とまったく異なる点」「現代の科学者はいつもその解決を未来に求める。自分らが創案し、計画した実験の結果のなかから法則を求めてゆこうとする。逆に錬金術師たちは、東西を問わずその法則を過去のなかから、過去のテキストから見出そうとした。彼らにとって過去は完全なもの、過去の賢人は全智全能で、しかるに現実は堕落した時代である」。
このところの炎上案件=暇アノン・ジョーカーやルフィ・AI生成、そして最新やしろあずき等々もっぱら漫画やゲームの延長上で起っている印象があり、それについて「どの世代にも一定数の馬鹿がいて、どの世代にも倫理を欠いた金の亡者がいる。ネット・スマホ・SNSが馬鹿と金の亡者をマッチングさせたのが今の時代」と評する書き込みを見た(なるくんとかいう暇アノンが本人特定されたという嫌儲スレで)。


パコ・ロカ/皺/小学館集英社プロダクション2011・原著2007
ツイッターは地獄。マトモな人もやっているうち狂人に。若い頃になくてよかった。同人アカウントではウヨが多かったり絵のRTが頻繁だったりなのでフォローしていても半数くらいはミュート。そんな私が、この漫画のように認知症など心身が衰え、高齢者施設の集団生活に耐えられるだろうか。統一教会・原子力村・電通やパソナ・ジャニー喜多川などなど避けてなごやかに談笑? 無理。「洗脳を解くのはかえってかわいそう。70の老人から生きるよすがを奪うべきでない」山上母はすべての日本人。そのようにいざなう共犯、日本のくだらないテレビや漫画とこの本は違うが、それでも読了して本を閉じれば人物は遠くへ去ってしまう。他人が作るストーリー自体が無理になってきている。あなたはどう考えるのか、人生のテーマは何なのか、少人数で直接伺いたい。




TKO×浜口倫太郎/転落/幻冬舎2023
素人臭い文章でTKO木本(投資詐欺の方)の視点から2人のこれまでを青春っぽく美化して描く。浜口という人が広告屋・テレビ屋・マネージャーのような立場で一儲け狙ったのかな、帯で千原ジュニアが「映画化させてくれへんか」と。今の時代、悪名でも売ったもん勝ちである。汚職や統一教会などから話題を逸らせる、テレビも新聞も出版もそれで恩を売って政府にぶら下がっていこうと。TKOのネタを見たことがない。若い頃はイケメンコンビだったとのことで、現状の落差をイジられる、でも本当は2人ともナルシスト中年でカッコよくありたい、そこへ不祥事で叩かれる、でも本当は…のような無限ループで生き残りを図るのだろうか。顔と名前が売れている強み。


桜井哲夫/〈自己責任〉とは何か/講談社現代新書1998
「捕虜を虐待して罪に間われた問題で、裁判の報告を読んでけげんに思うのは、すべての被告が異口同音に、自分は収容施設の改善につとめたと力説していることだ。確かに言い逃れではなく、彼らは改善につとめたのだろう。だがなぐったり、蹴ったりしたことも事実なのである。待遇を改善すると同時になぐる、蹴るの暴行がはたらけるという事態こそ、個人の内面的倫理が確立されず、個人の行動の基準が権力との一体化 (捕虜に対する自分の優越を示す権力=暴力の行使)のなかにしかない状況を説明してくれるのだ。そうした権力から放り出され、一人の人間に戻ったときの軍人たちの何という弱々しさだろうか」。
読み応えある。講談社現代新書も今はひどいものが多くなった。00年代の新書ブームと出版不況が相まって粗製乱造に走る各社。私はこれまで多くの過ちを犯してきたが、漫画やテレビの影響があったとしても、ほぼ個人の資質に起因することばかりで、一人で責めを負える。一方日本の社会は中世から〝世間〟と呼ばれる、お気持ちお立場で物事が動き、すべて相対化されてしまう、常に監視や査定や選別を伴ういわば人間マーケットが支配する。勤めや家族・友人のある方々は、世間に背を向けるのは無理でも、せめて世間による監視・査定の〝価値観〟には縛られないよう心がけるべきでしょう。




ジョナサン・ゴットシャル/ストーリーが世界を滅ぼす/東洋経済新報社2022・原著2021
男による少女漫画『エリート狂走曲』以上に、女の伊藤理佐が「ブス・デブ」の脇役を登場させるのは卑怯。漫画やテレビはこうした詐術で客を呼び込む商売なので、どっぷり浸かっていると自意識ばかり肥大して人の心をつかめない失敗人生になる。本当は誰もが人生の主人公の筈だが「人は物語を求める。物語は問題を求める。問題はそれを起こした悪者を求める」というわけで、政治や宗教をはじめ大小さまざまな物語の下僕として生きざるを得なくなる。言うまでもなく物語戦争の最大の勝者はキリスト教であったが、宗教改革と称する新たな物語戦争が起り、近年は共産党にさえ従っていれば商売の自由を認める中国がグローバル資本主義の覇者となり、西側自由社会はQアノン・暇アノンはじめ分断と囲い込みの無間地獄に。他の哺乳類と異なり年中発情期であるヒトが異性を求め社会を形成する性質こそ「誇大妄想的で勧善懲悪的なナラティブ心理」の生みの親。人類の文明が限界に達しつつあることを暗示する、詐欺師が種明かしをするような本。


ウンベルト・エーコ/歴史が後ずさりするとき 熱い戦争とメディア/岩波現代文庫2021・原著2016
ガンヅェンローゼズ、安全どーです。しりあがり寿の駄ジャレ。しりあがり寿や萩尾望都が福島の原発事故が起きてから作品で脱原発を訴えたことに嫌悪感があった。それまで一度でも原発問題に触れたことがあるのか、地球防衛家とか。町山智浩が映画オタクを生み出し、映画オタクがネトウヨやQアノンを生み出し、いまそれと町山が戦っているみたいなことです。本書は近年手にした文明批評系の書籍のうち最もその種のアホらしさを覚えさせる。記号論を代表するイタリアの学者、中世思想家にして人類学の会議を北京やマリで開く。知的ミステリー『薔薇の名前』をベストセラーに。いまのイタリアは極右「イタリアの同胞」メローニを首班とする右派連立政権で、エーコの晩年には安倍やトランプの先駆けといえる愚劣で醜悪なベルルスコーニの時代が続いた。キリスト教が人間を収集・分類する、その過程がルネッサンスであり戦争と植民地支配であり、いまの分断や格差や局地的な戦争や環境破壊であり、本書でひけらかされる博識はキリスト教文明の強欲と無反省の一端に過ぎない。




ケン・クリムスティーン/ハンナ・アーレント、三つの逃亡/みすず書房2023・原著2018
ドイツのユダヤ人女性としてナチ政権とホロコーストを目撃し、後年著した『全体主義の起原』ではソ連のスターリン体制をも批判して時代の寵児となった亡命哲学者ハンナ・アーレント。その生涯を大胆に漫画化し、米紙誌で高い評価を受けた作品。とのことだが文字と人名が多く、絵柄に魅力が乏しい。序盤、大学でハイデッガーの周囲にエリート学生の〝界隈〟が形成され、ナチ協力者であった彼とアーレントが不倫関係にあった描写以降は飛ばし読み。虐殺の中心人物の一人アイヒマンを「完全な無思想性、悪の凡庸さ」と評した裁判傍聴記によってユダヤ人社会から激しいバッシングを浴びたというが、もし政府高官を思想のない小役人として過小評価するなら、ネトウヨや各種陰謀論者が大増殖するいま〝知識人〟も同じ誹りを免れないだろう。


ヨハン・ホイジンガ/朝(あした)の影のなかに/中公文庫1975・原著1935
『中世の秋』『ホモ・ルーデンス』で知られるオランダの歴史家ホイジンガがナチの政権掌握後に執筆した警世の書。フロイト理論を「科学的認識と文化的認識の混同、真理の相対化、倫理を欠いた実用主義」と強く批判したのをはじめ、キリスト教/ヨーロッパ文明の限界を暗示し、優れて今日的。
「こんにち西洋に生きているごくあたりまえの人のばあい、彼はあまりにも多くのことを知らされすぎている」「せまい共同体の形をとっていた社会にあっては、人びとは、彼らじしん、娯楽を創造し、享受していた。(中略)ところが近代文化にあっては、娯楽とは、要するにみな同じことになってしまった」「人間は、およそすべての倫理規範をふりすててしまったぱあいにおいても、なお、他人に対して倫理的な侮蔑感をいだき、他人を断罪しがちなものなのであり、してみれば、この内なる弱さ、あるいは外からの抵抗という概念には、なおいくぶんか残る真正の〝悪〟に対する畏怖の念がつねに混在しているのである。ここからして、混同がすぐ生じる。対立するものがあれば、それはそのまま悪と感じられてしまうのだ」「時代の偉大なる神々、機械化と組織化とは死と生とをもたらした。それは、世界中いたるところに道をつけた、接触の網をひろげた、共同作業、力の集中、相互理解の可能性を創造した。だが、同時にまた、ここにもたらされたさまざまな手段が、精神を縛り、その動きを止め、そのはたらきを停止せしめることにもなったのである。それは、人びとをして、個人主義から集産主義へとむかわしめた。人びとは、これを支持したものの、かれらの洞察は正しい方向にむかわず、ここに、すべて集産主義なるもののはらむ悪い面のみが現実のものとなるにいたった。深奥の個人的なるものの否定、精神の隷従が結果したのである」。


ブライアン・ヘア&ヴァネッサ・ウッズ/ヒトは〈家畜化〉して進化した/白揚社2022・原著2020
副題に「私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか」とある。昔の農奴と領主は、物理的には作物によって農奴が領主を養っているにもかかわらず、心理的には逆である。これは会社員と経営者、あるいは会社員と主婦などにも言えることで、専業主婦は夫の給料に依存しきっている状態にもかかわらず精神が安定し、日本の主婦は世界的にみて最長命な集団だ。
思考停止ともいう。牛や馬は、家畜化された世代では野生だった世代に比べ脳が15%ほど縮小する。本書は、チンパンジーの♂が仲間に見せる残虐な習性、対照的にボノボが平和的なコミュニケーションを好むこと、ヒトの定住に伴い、オオカミがその残飯・糞尿を漁るようになってイヌが生まれた(異論もある)など多様な例証を紐解き、類人猿と共通の祖先から分化した初期のヒト族のうち現生人類だけ生き残って繁栄したのは「自己家畜化したサル」ゆえという結論を導き出す。人類の文明とは、目的に応じたさまざまな品種やその改良、自然な生殖よりは「交配」や「繁殖」という家畜化システムの進化を示すに過ぎず、ヒトとしては進化の行き止まりにある。性暴力や差別や大量殺人や依存症はこれからもなくならない。虚無的な結論かもしれないが、私は少数・異端で繁殖させにくい品種の家畜としての生をまっとうしてゆきたい。
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