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旧作探訪できようもないニジンスキー

2010-05-07 23:28:14 | メディア・芸能
『ニジンスキー』Nijinsky(ハーバート・ロス監督、1980年アメリカ)
19世紀末から20世紀へという変革の時代に生き、魂と肉体を通してバレエの真髄を極め、そして狂気の中に神を見い出した不世出のバレエ・ダンサー=ヴァーツラフ・ニジンスキー。以降も男性の優れたダンサーが現われるたび「ニジンスキーの再来」と称されるなど、その業績は見事な踊り・振り付けとともに語り継がれているが、この映画はニジンスキーの1912年3月から1913年11月までの20ヵ月の足跡をほぼ忠実に追ったものである。
1912年2月、ブダペスト。ロシア・バレエ団の主宰者セルゲイ・ディアギレフ(アラン・ベイツ)が、病床に伏しているニジンスキー(ジョルジュ・デ・ラ・ペーニャ)の許にパリから帰ってきた。芸術を愛し、美しい少年を愛するディアギレフの庇護のもとニジンスキーの名声は今まさにヨーロッパに広がろうとしていた。5月のパリ公演をひかえ舞台稽古をするニジンスキーに熱い視線を注ぐ若い娘がいた。ロモラ・ド・プルスキー(レスリー・ブラウン)である。
5月、パリのシャトレ座。ニジンスキー振り付けの「牧神の午後」が初演され、その革新的な踊りに観客は酔ったのだが、牧神との魂の合体に陶酔したニジンスキーがニンフのヴェールをおかずに自慰行為めいた振りをするのは、あまりにやり過ぎであった。
彼は常に新しいものに挑戦していった。当時、ストラヴィンスキーが作曲したばかりの『春の祭典』を振り付けたこともその顕れである。1年後、パリのシャンゼリゼ劇場で初演したが、観客にはまったく受け入れられなかった。そしてこの間にロモラの入団が決定した。この出来事がニジンスキーの運命を狂わせてしまうのだ。天性の才能や両性的かつ未成熟な魅力を熱愛して彼を育て、と同時に愛人としたディアギレフ、そしてロモラとの凄絶なる三角関係のすえ、ついに破綻をきたすのである。
バレエ団は南米公演をすることになったが、航海を好まないディアギレフは同行せず、ニジンスキーは団員とともに南米へ向けて出発した。長旅の船内はロモラにとってはニジンスキーに近づく絶好のチャンス。─そしてディアギレフが他のダンサーを探し始めたと聞いて錯乱した彼は、ロモラに異性への欲望を感じた。南米で二人が結婚したことを知ったディアギレフは怒って、ニジンスキーに「バレエ団に残るか、ロモラを取るか」との最後通牒を送り、彼の精神錯乱は強まっていく─。



映画グッズをあつかう店で、旧作探訪のためにチラシを探して、目的の映画と同じクリアファイルに収められていたことから芋ヅル式に手を伸ばすことがある。『ニジンスキー』のチラシも、そんな1枚。家に帰って、さて、オークションにレンタル落ちのビデオが出品されているかどうかチェックしておくか─。
ない。DVD化はもちろん、どうやらVHSビデオですら売られたことがないらしい。公開前から、少女マンガがらみのムック本まで作られたといい、バレエ、オペラ、オーケストラなどの映画は女性層に手堅い需要が見込まれることから、まさか見ることのできない映画になっていようとは予想外。



きのうの本『ゲイ文化の主役たち』にもディアギレフとニジンスキーはペアで46位に登場。↑の写真などでもいかにも人相の悪い、ホモのブタ野郎がセルゲイ・ディアギレフ。音楽の道を志したものの自分には作曲も演奏も才能がないと知り、社交能力を活かして芸術家たちをオーガナイズする側に回ろうと。ロシアの芸術と、パリの音楽・美術・社交界を取り結ぶ存在として、主宰するバレエ団には現在でも著名な顔ぶれが音楽・衣裳やセットの美術・ダンサーとして集った。
中でも傑出した存在がニジンスキーで、それまで女性ダンサーをリフトする影の役回りに過ぎなかった男性ダンサーを初めて光の当たるものとし、官能的な振り付けと驚異的な跳躍力=映画公開当時には「空中で止まっているように見える」という伝説もあった=で観客を魅惑。もちろんその実現はディアギレフの組織力・集金力なくしては考えられず、ホモ野郎のディアギレフが彼の肉体をむさぼったことは言うまでもない。
独占欲・嫉妬心の強いディアギレフは、なんでも言いなりになるニジンスキーを自分の持ちもののごとくあつかったが、それだけに自分の不在時に彼が突然結婚してしまったことが許せなかったのだろう。バレエ団を逐われた彼は、自前で奔走してバレエ公演を打たざるをえなくなるが、次第に統合失調症が悪化し、後半生は病院を転々として終えた。
1960~70年代に「ニジンスキーの再来」と騒がれたスター・ダンサー、ルドルフ・ヌレエフもまた同性愛で、ソ連からの亡命や、AIDS合併症による死去などこちらも映画の題材にうってつけ。ニジンスキーが首や太ももが非常に太くて、わりと野暮ったい印象なのに対し、ヌレエフは中性的・耽美的で、わが国のダンサーなどでも演じられそうな。
そういや西島隆弘きゅんも、女もすなる新体操というものを男もしてみむとて連ドラ出演中なのよね─。脇役で出番が少ないので2回目以降見てないや。もったいないよね。吹き替えなしとのことなので、身体能力も磨かれてることでしょうに。
もし彼がエロい衣裳で「牧神の午後」を踊ってくれるとしたら、最前列で見るために10万円くらい出すよん─とオラの中のホモホモ心が言っている─。



↑「牧神の午後」のニジンスキー/衣裳・舞台美術を担当したレオン・バクストの画



↑『アルミードの館』のニジンスキー

  

↑ストラヴィンスキー(左)と『ペトルーシュカ』のニジンスキー/ジャン・コクトーが描いた『カルナヴァル』のニジンスキーとストラヴィンスキー

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