生きている間にこのような出来事があるとは予想もしなかった、というのが現世の大騒動事件に対する正直な感想である。一つの感染症が地球全体をあらゆる面で混乱・困惑の渦に巻き込んでいるという現実。もはや国などというコンセプトが成り立たないほどに、人類は生物としての営みを世界全体でつくり上げて来てしまっているようだ。
パンデミックの話は知らないわけではないけど、現代においては香港風邪のインフルエンザくらいで、世界中が大騒ぎになっても今回ほどの深刻さはなかったように思う。予防法も治療法もなく、ひたすら感染しないように、感染させないようにとマスクなどに依存してウイルスという見えない敵から、世界中が国を挙げて逃げまくるといった事態は、今回が初めではないか。連日国内・国外の感染者数が棒グラフや地図で示されて報道されているのを見ていると、人間という生き物の弱点のようなものが見えて来て、人間といえどもやはり神ではなく、その本質は他の動植物たちと変わらないのではないか。その様に思ってしまう。
自分は、とにかくこのようなものに取憑かれたり巻き込まれたりすることなく、もうしばらくは生きていたいと思っている。傘寿の歳回りで、糖尿病患者を30年もやっている身なので、うっかりすると取憑かれる可能性は高いのだと思う。それで、自分なりにこの事態への対処法を考えてみた。
自分の病に対する基本的な考え方は、病と正対して仲良くすることだと思っている。簡単に言うと、バイキンマンと仲良くすることなのだ。仲良くというのは、敵対関係ではないということ。ある種の味方関係をつくるということなのである。病を敵と捉えて考えると、そこには常に戦いが必要となって来る。戦うとなると勝たねばならなくなり、負ければあの世行きとなる。しかし、人間は生き物だから、勝っても負けてもいずれはあの世に行くものなのだ。だとすれば、病とは戦うよりも仲良くした方がいい。
このような考え方は30年来の糖尿病との付き合いから生まれた。糖尿君は、今、自分の敵ではない。良きアドバイザーだと思っている。例えば糖尿病のレベルを図る指標としてヘモグロビンA1Cというのがあるのだが、この指標は自分が身体の管理をいい加減にしているとたちまち悪化を示す数値となり、真面目にやっていれば安全圏の数値を示してくれる。このためには定期的な医師の仲介が必要だけど、要は糖尿君と仲良くして彼の忠告に従って己の身体の管理をしてゆけばいい。このおかげで自分は今までほぼ健康を保ちながら生きて来られたのだと思っている。もしこの忠告を聴かずに好きなだけ食べ、飲んでいたら、とっくの昔にあの世へ行っていたか、或いは余命の時間を細々と数えながら医者通いをしていたに違いない。自分は今、糖尿君のアドバイスを真剣に受け止め、彼を信頼しているのである。
では、今度の新型コロナウイルスの場合はどう考え対応すればいいのか。先ず、この新型コロナウイルス(=新コロ君と呼ぶことにしよう)とはいきなり仲良くなれるとは思えない。というのも、こちらは仲良くしようと思っても、新コロ君の方は相当の敵愾心を以て取憑いて来るに違いない。恐らく降参という手を使っても決して許すなどするまい。逆にそのような弱い奴はぶっ殺す、ということになるであろう。
となれば仲良くなる前に、新コロ君の方が諦めて和睦を願って来るようにするしかあるまい。それにはまず心身を強くもって、こちらの強さを新コロ君に見せつけてやるしかあるまい。どんなに敵愾心を燃やしても、こいつには歯が立たないとなったら、新コロ君の心境も変わって来るに違いない。仲良くするには様々な方法が考えられるけど、この新コロ君に対してはこれしかないのではないかと思っている。
ということで、今実行していることは、新コロ君が取憑いていようといまいと、心を強く持って身体の管理を保持すること。毎日しっかり運動(基本は歩き)して、しっかり手洗い・洗顔・嗽を徹底し、三密の場所などに、のこのこ出かけるなんてとんでもないこと。密かに少量のアルコールで身体全体を内側から温め、消毒すること。
継続は力なり。どんないいことも、頭で考えるだけ、半端な実践だけでは力は発揮できない。新コロ君への対処の知恵は、連日の報道や解説の中に出尽くしていると思う。それらの中から自分の思うことを選んで、信念を以て実践を継続すること。新コロ君の方から和睦の申し入れをして来るのはこれしかあるまい。新コロ君の敵愾心を消すような良薬が現れるまでは、自分の身は自分で守るしかない。