ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

グレイヴ・エンカウンターズ2

2013年03月31日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 昨年の12月20日、このブログで「グレイヴ・エンカウンターズ」というホラー映画を紹介し、久しぶりに震え上がるほど怖かった、とべた褒めしました。
               
 今日レンタル店に立ち寄ったら、その続編が置いてあり、早速借りました。

 シリーズ物というのは一作目の印象が強烈だと、だんだん尻すぼみになったり、矛盾を糊塗しようとして説明くさくなりがちですが「グレイヴ・エンカウンターズ2」は一作目を凌ぐ強烈な印象を与えてくれました。

 映画学校に通う映画監督志望の学生が、SNSに「グレイヴ・エンカウンターズ」の批評をアップします。
 それはけちょんけちょんに貶した内容でした。
 それに対し、死の番人というハンドルネームの者から書き込みがあり、不思議な動画が添付されています。

 それは「グレイヴ・エンカウンターズ」で主演した役者が、薄暗い病院で閉じ込められている映像でした。

 「グレイヴ・エンカウンターズ」は最近出尽くした感のあるPOVの手法で撮影されており、いわゆるドキュメンタリー風のフィクションとされています。

 しかし学生は、もしかしたら本物のドキュメンタリー映像なのではないかと考えます。

 幽霊が出るという噂のすでに廃墟となったカナダの巨大精神病院で撮影スタッフ数名が心霊現象に会い、出口がふさがれ、しかも建物の内部構造が時間とともに変化するという究極の迷宮に閉じ込められ、一人、また一人と怪死を遂げていく内容ですが、主人公は生死不明ということになっています。

 主人公を演じた役者、その他の役者やスタッフの所在を確認してみると、全員行方不明となっていることが判明します。

 そこでその謎を解くべく、死の番人に導かれて映画の舞台となった精神病院跡にスタッフ数名とともに潜入し、撮影を行います。

 そこで映画と同様の怪奇現象にあい、推測は当たっていたことがわかり、学生は何が何でも脱出して続編として映画を売り込もうと決意します。

 そこでぶったまげたのが、行方不明の主人公を演じた役者が、半ば精神を病みながら、ネズミを喰らい、便所の水を飲んで9年間も脱出のために生き延びていたこと。

 スタッフの大方を失い、女優と学生の2人だけになっていたところ、役者の長年の経験と計算から、おもちゃのドアこそが唯一の外界との接点だという言葉を仮に信じ、それに望みを託します。

 しかし、さぁ、脱出という段になって、脱出できるのは一人だけだと知った学生は、映画を公開させろ、という死の番人の命令を実行すべく、友人である女優を殴り殺し、役者は心霊現象によって暗黒に落ちていき、見事生還します。


 ハンドル・ネーム死の番人こそは、その精神病院で狂気の実験を続けた院長とそのスタッフ、患者らすべての意を受けた、言わば悪霊の塊だったのです。

 学生は天才ホラー監督として見事デヴューを果たし、狂気を宿した異様な目つきで、これはPOVの手法を用い、自ら主演したフィクションであると説明するというわけです。

 精神病院跡に導かれるまでの時間が長く、中だるみしますが、精神病院跡に9年も閉じ込められていた役者、映像制作に執念を燃やす学生、その学生に惚れていながら見向きもされない女優の、三者三様の我欲がぶつかり合い、ただ怖いだけでなく、人間の暗部をもえぐる奥深い作りになっています。

 是非ご覧ください。

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復活祭

2013年03月31日 | 思想・学問

 今日はキリスト教西方教会系ではイースター(復活祭)なんだそうで。

 キリスト教では、磔にされたイエスが死後3日経って復活したとされており、今日がその復活を祝う祭りだと聞き及びました。
 しかし毎年何月何日と決まっているわけではなく、3月後半から4月前半の日曜日、月の満ち欠けによって決まるんだとか。
 また、西方教会系と東方教会系では、布教の過程で土着の古い宗教の習慣を取り入れたため、イースターを祝う日も違うとかで、なんだかいい加減ですねぇ。

 よく米国の映画などを観ていると、イースターにはウサギの着ぐるみを着た人々が練り歩き、家庭ではそれぞれに思い思いのご馳走を楽しんでいますね。

 中東諸国がイスラム教化前と後では大きく生活が変わったように、欧米ではキリスト教以前と以降で人々の生活や思考パターンが大きく変わったものと推察します。

 しかるにわが国では、仏教伝来後も根強く神道は残り、ついには神仏習合なんていう破天荒な理屈を作って、共存共栄を図ってきました。

 今でこそ神道の守護者に見える天皇家も、長いこと仏教を庇護し、出家して法皇となられる天皇も多くおられました。

 聖徳太子の父帝の用明天皇は、「仏法を信じ、神道を尊う」と述べたと、「日本書紀」にあります。

 そう考えると、神道一本やりの現在の皇室はむしろいびつであると言えましょう。

 わが国が原理主義的な思想を嫌い、仏教でも神道でも儒教でも耶蘇教でも、柔軟に様ざまな考えを取り入れたことは、戦国末期わが国に訪れたイエズス会の司祭たちが一様に驚愕したという、わが国民の知的好奇心の旺盛さにあろうかと思います。

 あるイエズス会士は、他のアジア諸国と違い、日本では民百姓にいたるまで、天文学の話や哲学の話の話に驚くほど熱心に耳を傾ける。しかし、なぜか神の話には関心を示さない、といったほどの意味の手紙を本国に書き送っています。

 そりゃそうでしょうねぇ。

 わが国には八百万の神々が住み給うわけですから、1柱くらい増えたってどうってことないし、そもそも昨日今日やってきた異教の神だけが唯一絶対で、わが国の八百万の神々は偽者だと決め付けられたら、怒るより前に失笑をもらし、聞く耳を持たなくなるのは必定。

 江戸時代、耶蘇教が御法度となっても、ひっそりと信仰を持ち続ける隠れキリシタンが存在し続けたようですが、それだって専門家である司祭は一人もいないわけですから、ずいぶん日本化したものと思われます。

 石川淳の小説「至福千年」では、幕末の混乱に乗じて、キリスト教による千年王国を築こうとする隠れキリシタンの一派の暗躍が気風の良い江戸弁風の文体で描かれており、フィクションとはいえじつに興味深い作品でした。
 やや難解ではありますが。

 私の職場には数多くの欧米人の研究者が長期滞在しますが、彼らと喫煙室などで話したところ、欧州ではキリスト教への信仰はほとんど姿を消して、風俗習慣として残ってはいるものの、多くは無神論者だそうです。
 一方米国では熱心なキリスト教信者が数多くいて、原理主義的団体も少なくないとか。
 ただ、いわゆる高学歴のエリートはあまり熱心な信仰は持っていない人が多いと聞きました。

 ナチのSS将校のキリスト教棄教率は99%を超えていたとかで、ヒトラーやヒムラーがキリスト教以前のゲルマン神話に回帰しようとしたためと思われます。
 それには同盟国日本で神話に基づく神道が途切れることなく隆盛を誇っていたことに刺激を受けたせいだ、という説も聞きました。

 宗教、とくにユダヤ・キリスト・イスラムの三つの兄弟宗教は、日本人から見るとほとんど同じ教えに見えるのですが、世界の平和と繁栄を言葉では願いながら、じつは侵略の尖兵になったり、紛争の原因を作ったりしてきました。

 この三宗教のわずかな違いを考えると、表面的には仏教の浄土門と禅門のほうがよほど違いが大きいように思えます。

 しかし、仏教では悟りにいたるには様ざまな門(宗派)があり、どの門から入ってもたどり着く頂上は同じなのだから、本質的に大乗仏教も上座部仏教も同じものだと考えるため、論争は起きても殺し合いまでには到りません。

  要するに同じ山を登るのに登山口がいくつもあって、どの登山口から登っても、ルートは違えど頂は一緒ということですね。

 
 ところが件の三宗教は、違いばかりを強調して血みどろの殺し合いを繰り返してきました。

 みみっちい話です。


 イースターという良き日に、あえて、キリスト教徒の皆様におかれましては、キリスト教が過去に侵した世界史上の巨大な過ちに思いを馳せてほしいものだと切望します。

イースターってなあに
Liesbet Slegers,女子パウロ会,聖パウロ女子修道会=
女子パウロ会



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宇治谷 孟
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日本書紀(下)全現代語訳 (講談社学術文庫)
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至福千年 (岩波文庫 緑 94-2)
石川 淳
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