私は高校時代、総武・中央線で通学しており、いわゆる女子御三家の最寄り駅をすべて通過していました。
桜蔭は水道橋駅、女子学院は市ヶ谷駅、雙葉は四谷駅ですね。
桜蔭はなんとなく田舎くさくて糞真面目な感じ、雙葉はお嬢様然とした感じを持っていましたが、女子学院にはこれと言ったイメージを持っていませんでした。
それもそのはず、女子学院には制服が無いんだそうですね。
知りませんでした。
同じ電車に乗っていても、桜蔭と雙葉は制服ですぐわかりますが、女子学院は分からないわけですから、イメージの持ちようがありません。
女子御三家を評するに、空き缶の話というのがあるそうです。
もし道に空き缶が落ちていたら、桜蔭生は「本を読むのに夢中で缶が落ちていることに気づかない」、雙葉生なら「そうっと拾ってゴミ箱に捨てる」、女子学院生は、と言えば、「その空き缶で缶蹴りを始める」んだそうです。
なるほどねぇ。
どんな組織にもその組織のカラーというのがありますねぇ。
人は見かけによらない、と言いますが、大抵は見かけによるんじゃないでしょうか。
ヤクザはヤクザみたいな格好をしていますし、銀行員や公務員は堅い感じですし、ホームレスはそんな感じの見た目の人がほとんどです。
そういう意味では、私たち研究機関の事務職員はどんなイメージなんでしょうね。
自分ではよくわかりません。
でも役人や団体職員というのは堅いイメージがありますが、じつは結構ヤクザっぽい人やくだけた感じの人が多いのも事実。
それというのも、民間企業と違い、服装などはうるさく言われることがないのですよねぇ。
市役所職員なんかは結構ラフな格好をした人が多いようですが、あれと一緒でしょうか。
要するに大人の常識に任されているということで、それはたいへんありがたいと思っています。
朝礼みたいなものもないし。
研究機関に勤務していると、時折、一風変わった研究について教えを請いに来る人がいます。
先日は、もう50歳は過ぎているかと思われるおじさんが、研究生として受け入れて欲しい、とコンタクトを取ってきました。
おじさんの独自の研究によると、有史以前、現在の天皇家の祖となった一族が世界を支配しており、それらは古文書からも考古資料からも明らかだ、というのです。
で、私が勤務する機関の文献史学者と考古学者はおじさんを押し付け合い、結局断りました。
でもその話、偽書とされる竹内文書などとそっくりな気がします。
受け売りですかねぇ。
それを横で見ていて、福来友吉博士のことを思い出しました。
明治末期、催眠術の研究によって東京帝国大学で博士号を取得した人で、東京帝国大学という日本最高のアカデミズムの現場で助教授を勤めながら、興味の対象が心理学から超能力に移り、千里眼やら念写やらの研究を始め、超能力者を集めて公開実験をやったりして、明治から大正にかけてマスコミをにぎわせた人です。
しかし、検証実験ではことごとく失敗し、実証性がないと、事実上東京帝国大学を辞職に追い込まれ、その後は私設の研究所でひっそりと研究を続けながら、自らも超能力を身につけるべく、高野山で修行したりしたそうです。
捨てる神あれば拾う神ありで、後に高野山大学の教授になっています。
この人の実験が、Jホラーの金字塔、「リング」の貞子の母親のモデルとなったとされる人物です。
この人、晩年は忘れさられた感がありますが、「リング」の大ヒットによって再び知られるようになりました。
福来博士は当時のアカデミズムやマスコミからペテン師と言われましたが、今は必ずしもそういう扱いではなくなってきましたね。
一般に超能力者と呼ばれる人の能力は、その時々で好調だったり不調だったりし、とくに自分に敵対的な態度をとる人の前では委縮するんだか緊張するんだか、不調になると言われていますね。
いかに偉大な打者でも、10割打てる人は存在せず、それどころか4割打者もまず生まれないことを考えれば、毎回毎回必ず安定して超能力を発揮するのは無理でしょうねぇ。
しかしポスト・ドクターが溢れかえり、博士号の大安売りのような現代とは違い、当時東京帝国大学で博士号を取るというのは大変なことだったと思います。
おそらく超能力の研究を始めればせっかく築いた自らの地位も失うであろうことは予想できたはず。
そうであってもおのれの探究心に従い、世間から後ろ指を差されながらも孤独な研究をつづけたのは、なかなかできることではありません。
彼の研究を継ぐ者も当然アカデミズムの世界に居場所はなく、手弁当でやらなければなりません。
世間を渡っていくのが不利だと判っていても、自らの信念を貫くというのはなかなか立派なことだと思います。
当然、私には無理ですねぇ。
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