このたび4代目歌舞伎座が新装なって、4月2日からこけら落とし公演が始まるそうですね。
私が初めて歌舞伎座に足を運んだのはもう23年も前、大学生の頃でした。
安い三階席を購入し、かなり鋭角に高い座席で、ちょっとびびりました。
三階席からだと花道がよく見えないため、三階席の客は役者が花道を通ったり、花道の真ん中あたりで見得を切る際、一斉に階段を駆け下りて、三階席の一番前の手すりにつかまりながら必死で花道の役者を目に焼き付けようとするのが印象的でした。
三階席は何度も歌舞伎座に通う常連が多く、音羽屋っ、とか、成田屋っ、とか、役者の芝居が盛り上がるとしゃがれた声で短く役者の屋号の掛け声をかけるのが江戸情緒を感じさせましたね。
時折若い女性などが、成駒やぁぁぁ、などと語尾を延ばして掛け声をかけるのが間抜けで場内の失笑を買っていました。
国技館などで力士に掛け声をかける時は語尾を延ばすのが普通ですが、歌舞伎座でそれをやられちゃかないません。
確か初めて観たのは中村勘九郎(当時)の「俊寛」でした。
この前亡くなった中村勘三郎で、芝居がくどかったのを覚えています。
この人、芝居がくどい感じは生涯抜けませんでしたね。
歌舞伎の真髄は悪を描くことにあり、しかもそれはキリスト教的な絶対悪ではなく、人間精神の愚かしさが生み出す悪であり、初めて観たのが「俊寛」だったのは今思うといただけません。
その点、私が贔屓にする尾上菊五郎などは、小柄ながら爽やかな江戸弁と振る舞いの美しさで、私を魅了し続けています。
今は大分おじいちゃんになってしまいましたが。
その後は三階席で観る気が起きず、行く回数を減らしても一階席で観劇するようになりました。
国立劇場大劇場では、職場の先輩が文化庁で出世した関係で、一階中央の前のほうのチケットをもらい、何度か観劇しました。
ただ国立劇場は歌舞伎の保護の観点から、近年あまりかけなくなった演目を、しかも長い通し狂言で上演するため、ツボにはまらないと退屈するきらいがあります。
逆に歌舞伎座は人気の演目を通し狂言ではなく、ぶつ切りで上演することが多いため、あらかじめ荒筋を頭に入れておかないと、わけがわからん、ということになってしまいます。
一長一短がありますね。
いずれにしろ4月2日以降、できれば菊五郎主演の演目を観に行きたいと思っています。
楽しみですねぇ。
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