ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

4代目歌舞伎座

2013年03月02日 | その他

 このたび4代目歌舞伎座が新装なって、4月2日からこけら落とし公演が始まるそうですね。

 

 私が初めて歌舞伎座に足を運んだのはもう23年も前、大学生の頃でした。

 安い三階席を購入し、かなり鋭角に高い座席で、ちょっとびびりました。

 三階席からだと花道がよく見えないため、三階席の客は役者が花道を通ったり、花道の真ん中あたりで見得を切る際、一斉に階段を駆け下りて、三階席の一番前の手すりにつかまりながら必死で花道の役者を目に焼き付けようとするのが印象的でした。

 三階席は何度も歌舞伎座に通う常連が多く、音羽屋っ、とか、成田屋っ、とか、役者の芝居が盛り上がるとしゃがれた声で短く役者の屋号の掛け声をかけるのが江戸情緒を感じさせましたね。

 時折若い女性などが、成駒やぁぁぁ、などと語尾を延ばして掛け声をかけるのが間抜けで場内の失笑を買っていました。
 国技館などで力士に掛け声をかける時は語尾を延ばすのが普通ですが、歌舞伎座でそれをやられちゃかないません。

 確か初めて観たのは中村勘九郎(当時)の「俊寛」でした。
 この前亡くなった中村勘三郎で、芝居がくどかったのを覚えています。
 この人、芝居がくどい感じは生涯抜けませんでしたね。
  歌舞伎の真髄は悪を描くことにあり、しかもそれはキリスト教的な絶対悪ではなく、人間精神の愚かしさが生み出す悪であり、初めて観たのが「俊寛」だったのは今思うといただけません。 

 その点、私が贔屓にする尾上菊五郎などは、小柄ながら爽やかな江戸弁と振る舞いの美しさで、私を魅了し続けています。
 今は大分おじいちゃんになってしまいましたが。

 その後は三階席で観る気が起きず、行く回数を減らしても一階席で観劇するようになりました。

 国立劇場大劇場では、職場の先輩が文化庁で出世した関係で、一階中央の前のほうのチケットをもらい、何度か観劇しました。
 ただ国立劇場は歌舞伎の保護の観点から、近年あまりかけなくなった演目を、しかも長い通し狂言で上演するため、ツボにはまらないと退屈するきらいがあります。

 逆に歌舞伎座は人気の演目を通し狂言ではなく、ぶつ切りで上演することが多いため、あらかじめ荒筋を頭に入れておかないと、わけがわからん、ということになってしまいます。

 一長一短がありますね。

 いずれにしろ4月2日以降、できれば菊五郎主演の演目を観に行きたいと思っています。

 楽しみですねぇ。

俊寛
菊池 寛
メーカー情報なし

 

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春一番

2013年03月02日 | 文学

 昨日の強い南風、春一番だったんですねぇ。
 気象庁が発表していました。

 私の職場にもちらほら泣きはらしたような目でくしゃみを連発している職員を見かけるようになりました。
 私は今のところ花粉症の気は全くないので楽ですが、見るからに辛そうです。

 花粉症という名称が一般的になったのはいつからなんでしょうか。
 私が子どもの頃はそういう呼び方はせず、アレルギーと言っていたように思います。
 さらに言えば、そんなにアレルギーの人は多くなかったように思い出します。

 実際に花粉の量がここ数十年で劇的に増えたのか、花粉症と言ってしまえば誰もが納得するから軽くても花粉症を自称する人が増えたのか、よくわかりません。

 これからは三寒四温の日が続き、やがて本格的な春が来るんですねぇ。

 私が春一番という言葉を知ったのは、7歳の頃流行したキャンディーズの「春一番」という曲によってだったように思います。



 石破茂自民党幹事長が若い頃キャンディーズのファンだったと公言しているのは有名な話ですね。

 ピンではなく、グループで活躍した少女アイドルの原型だったかもしれません。

 今の私には、この歌のように、春だからと言って浮かれて恋をするような年ははるか昔のことです。
 ただ季節の移ろいを感じ、無常を嘆くよりよりほか、今の私は春をやり過ごす術を知りません。

 
キャンディーズの一員だったすーちゃんももはやこの世の人ではなく、若さを売りにするということの切なさを痛感します。
 すーちゃんはその後「黒い雨」などの文芸大作に出演するなど、キャンディーズ解散後は本格女優としての道を歩みました。
 それでも、常にあのキャンディーズのすーちゃんという目で見られるのは辛いことだったかもしれません。

 昨夜、同居人が気持ちが沈むと言って私の主治医である精神科医を受診したそうです。

 40代半ばに達した女性に多く見られる不定愁訴ということで、私から見れば微々たる量の抗うつ薬と抗不安薬を処方されていました。
 私の闘病を横で見ていたおかげで、精神科受診へのハードルが低く、早めに受診となったことは不幸中の幸いです。

 人は必ず老い、老いれば健康に不安を抱えることになることを痛感させられました。
 多くの人生の先輩がいかに老い、いかにして死んでいったかを考えなければならない年齢になったのでしょうか。

 幸若舞「敦盛」では、

 人間(じんかん)五十年、化天のうちをくらぶれば、夢幻のごとくなり

 
という一節があります。

 大河ドラマなどで、信長が本能寺で最後に舞う場面が知られていますね。

 人の世にいられるのが五十年ということですから、昔の基準で言うと私も初老ということになるんでしょうね。

 春一番とともに年月の流れが持つ本質的な残酷さを思い知らされ、春一番が恨めしく感じられる今年ですねぇ。

幸若舞 3 敦盛・夜討曽我 (東洋文庫 426)
荒木 繁
平凡社




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今村昌平,井伏鱒二,石堂淑朗
東北新社



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井伏 鱒二
新潮社

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