かつて、月は2つあったのではないか、という説をカリフォルニア大学のエリッグ・アスフォース博士が科学雑誌「Nature」に発表したそうです。
なんでも大きい月とその三分の一くらいの小さな月が800万年間程度安定した距離で浮かんでいたところ、互いの重力に引かれ合ってきわめてゆっくりとしたスピードで衝突、小さいほうの月は一部は大きい月に飲み込まれ、一部は流星群となって地球にふりそそいだそうです。
しかしその美しくも暴虐な流星群を観る生物はまだ存在していなかったようです。
ここで思い出すのは、村上春樹の壮大な最新作「1Q84」BOOK1~BOOK3ですね。
1984年とは異なる1Q84年の世界に紛れ込んだ小説家志望の青年、天吾と美しきテロリストにして青年の幼馴染の女性、青豆の物語です。
1984年と1Q84年との違いは、月の数。
1Q84年には、月が2つあります。
天吾と青豆は互いを求めながらすれ違い、それぞれの物語を紡いでいくのですが、青豆は小児愛者にして新興宗教の教祖を狙い、天吾は教祖の娘が書いた稚拙だが魅力的な小説に編集者に頼まれて大幅に手直しすることで、二人は複雑に絡んだ糸をほどくようにして、接近していきます。
そして二人とも、夜になると不思議な感慨を持って夜空に美しく輝く2つの月を眺めるのです。
私の予想ではBOOK4が出るのではないかと思います。
まだ謎は解決しておらず、読者はもやもやしていますからね。
それにしても、文学上の精華が、最新の宇宙科学と奇妙に一致する不思議。
時代は学問や芸術の分野を超えて、シンクロしているかのごとくです。
1Q84 1-3巻セット | |
村上 春樹 | |
新潮社 |
1Q84 BOOK 1 | |
村上 春樹 | |
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1Q84 BOOK 2 | |
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1Q84 BOOK 3 | |
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