ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

「高野聖」現代語訳?

2011年08月05日 | 文学

 かっくりげえっちゃいました。

 WEB版で、泉鏡花「高野聖」の現代語訳なるものが大枚300円の値をつけて売っていたのです。

 お気は確か?

 泉鏡花といったら、明治から昭和初期にかけて活躍した近代作家で、当然現代語で書かれているのですよ。
 わが国の近代幻想文学の親分みたいな人で、文体は独特の流麗なもので、それを読むとほとんど生理的快感をすら覚えるような、美しい文章です。

 で、WEB版の「高野聖」、購入はしませんでしたが、あらすじがHPに書いてあったので、読んでみると、要するに「高野聖」の抜け殻のようなもの。
 この調子で現代語訳をしてあるのだとすれば、本物のビールが飲みたいのにノン・アルコール・ビールを頼んでしまったようなもの。

http://www.dlmarket.jp/product_info.php/products_id/139464
                ↓
      
「高野聖」現代語訳の販売サイトです。

 「高野聖」は高野山の一番下っ端の坊さんが、布教や勧進のため、全国を飛び回っているところ、飛騨の山中で謎の美女が住む家に一晩の宿を乞い、そこから美女の魔性に惑わされる様が、悪夢のような美しさで描き出される、幻想文学の名作です。

 少々読みにくいと思っても、我慢して読んでいるうちに、必ず惹き込まれる類の作品で、しかもそう長くありません。

 私はむしろ埴谷雄高とか、大江健三郎のような、それこそ西洋文学の翻訳文としか思えない、いわゆる悪文を読むほうが苦痛を感じます。
 したがってこの二人の作品は、ほんの少しかじって、私には向かないと、敬して遠ざけることにしています。

 わが国文学の豊饒な果実を味わうには、多少読みにくいと思っても、それに慣れる必要がありましょう。
 せっかく日本語を母語にする国に生まれて、その果実に触れないのはあまりにももったいないというものです。

高野聖 (角川文庫)
泉 鏡花
角川書店
死霊(1) (講談社文芸文庫)
埴谷 雄高
講談社
死霊(2) (講談社文芸文庫)
鶴見 俊輔
講談社
死霊(3) (講談社文芸文庫)
埴谷 雄高
講談社
死者の奢り・飼育 (新潮文庫)
大江 健三郎
新潮社

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我もむかしの

2011年08月05日 | 文学

  職場復帰して1年3カ月。
 淡々と日々を過ごすのは誠に平穏で、素晴らしい日々です。

 しかし欲を持つのが人間。
 物足りなくもあります。
 こうしてただ生きていけば、平穏ではあるもののつまらなくもあり、先は見えています。

 古人のほとんどがそうであるように、私もまた、老いて死に、冷たい石の下で忘れ去られていくのでしょう。

 それはまた、私の望むところでもあります。
 私がこの世に生きて在ったという痕跡をすべて洗い流して、時の流れとともに忘れ去られたい、という欲求は常に失うことがありません。

 その一方、生きて在った印を、この世に永遠に残したい、という大それた欲求をも忘れられないのですから、私と言う者、つくづく因業に生まれついているものと見えます。

 
たれかまた 花橘に 思ひいでむ 我もむかしの 人となりなば

 新古今和歌集
に所収の
藤原俊成の和歌です。
 私もむかしの人になり忘れられれば、たちばなの花が咲いても誰も思いだしてくれないだろう、というほどの意味かと思います。

 橘は夏に小さな花を咲かせるので、これは夏を詠んだ歌でもあります。
 生命力が溢れ、しみじみとした風情が似合わない夏の歌に仮託して無常感を謳い上げた、心憎い演出を感じさせる歌でもあります。

 しかし藤原俊成は、千載和歌集を編んだ当時一流の歌人として、今も忘れられていません。
 源平の争乱の時代を生き、齢90ちかくまで生きた長命の人でもありました。

 政治家にも、大臣なんかになると、短い在任中にこれを仕上げた、というような手柄を求めて焦る人がいますね。
 何事もないほど良いことはないのに。
 それもまた、自分が○○大臣であった証しが欲しいのでしょうか。

 でも究極のところ、この世に生きた最大の証しは、子孫でしょうねぇ。
 自分のDNAが何百年、何千年と、広がっていくのですからねぇ。

 「老いてこそ人生」に拠れば、
石原慎太郎が初めて子どもを授かったとき、当代を生きる者として、縦に遺伝子をつないだことで、安心したそうです。
 一人石原慎太郎の子というばかりではなく、はるか昔から続く歴代ご先祖様のDNAを次代につないだのですから、義務を果たしたように思ったのでしょう。

 私は、ご先祖様には申し訳ないですが、DNAを次代につなぐことができませんでした。
 私の人生に決定的に欠落しているものは、私の遺伝子を受け継ぐ者の存在でしょう。
 しかしこればっかりは自分一人ではどうにもならないのですから、諦めるより他に手はありません。

 やれやれ。

新古今和歌集〈上〉 (角川ソフィア文庫)
久保田 淳
角川学芸出版
新古今和歌集〈下〉 (角川ソフィア文庫)
久保田 淳
角川学芸出版
千載和歌集 (岩波文庫)
久保田 淳
岩波書店
老いてこそ人生 (幻冬舎文庫)
石原 慎太郎
幻冬舎

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開拓魂

2011年08月05日 | 社会・政治

 なぜ日本はあの無謀な戦争に突き進んでいったのか、という反省や分析は、よく目にするところです。

 しかし、なぜ米国は、あのタフな戦争に突き進んでいったのか、という言説には、あまりお目にかかれません。
 戦争は相手がなくてはできないので、こちらの事情だけではなく、あちらの事情も探ることが、今後の平和維持に役立つでしょう。

 明治31年、ハワイ王国は米国に侵略された末、併合されます。
 ハワイ王国は米国の脅威に立ち向かうため、同じ有色人種の日本政府との連邦化を望みますが、日本政府はこれを丁重に断っています。
 また、米国がハワイを併合しようとした際には、日本人居留民保護の目的で軍艦を派遣し、米国軍艦のすぐ横に係留して米国をけん制するなど、ハワイ王国の独立維持に尽力しますが、さすがに米国と一戦交える覚悟はなく、引き上げます。
 
 この時すでに、太平洋を挟んだ新興帝国主義国家の日本と米国は、いずれ戦う運命にあることを予感させたでしょう。

 その他米国はメキシコと戦って南部諸州を併合し、スペインと戦ってフィリピンを手に入れ、グァムなど太平洋の島々を平らげていきます。
 そしてその先には、日本や朝鮮、中国などのアジア国家が控えているわけですが、朝鮮は日本に併合され、中国は欧州諸国や日本につぎはぎに齧られ、米国はここに参加して中国に拠点を求めようとしますが、アジア経済は日本の影響下にあり、思うに任せません。

 そしてついに、米国は英国、オランダ、オーストラリアと手を組み、日本に経済制裁を仕掛けてきます。
 しかもあらゆる植民地を手放せ、という当時としては極めて非礼で無茶な要求を押し付けてきます。
 誇り高い日本民族がこの屈辱に耐えられるわけもなく、真珠湾に一発かましたというわけです。

 そして、米国大勝利。

 米国には誤算がありました。

 日本が本土決戦を回避して、早々と白旗を挙げたことです。
 米国の読みでは、日本はドイツ同様、首都が陥落するまで徹底的に戦いぬき、結果として国家としての体裁を失うはずだったのです。
 そのため、米国では日本が無政府状態に陥った場合の占領政策しか立案していませんでした。
 ところが日本は国家としての統治能力どころか、朝鮮や台湾、満州でも統治能力を維持していたため、米国は日本を占領しても日本政府の意向を無視できず、米国による直接統治ではなく、日本政府をとおした間接統治を認めざるを得なかったわけです。
 ここが、米国領にくみいれられた沖縄や小笠原と大きく異なる点でしょう。

 結局米国は、日本を完膚なきまでに叩くことに失敗し、後の日本の急激な復興による日米経済摩擦などの遠因になったといえましょう。

 それかあらぬか、アジア・アフリカ諸国はもはや昔のように大人しくはありませんでした。
 米国はフィリピンなど、英国はインドなど、フランスはインドシナなどを次々と失い、結果として植民地帝国主義の時代は終わりを告げたのです。

 皮肉なことです。

 生意気で邪魔くさい大日本帝国を破った英米等の国々は、また白人お金持ちクラブでよろしくやろうと考えていたでしょうが、自らの巨大な利益を失う結果になってしまったのですから。

 結果的に、大日本帝国は米英等と差しちがえたとも言えるでしょう。
 大日本帝国政府は、その時点では全く意図していなかったでしょうけれど。

 その後米国は朝鮮戦争を戦って勝てず、ベトナム戦争を戦って勝てず、しかし東西冷戦には勝利して、ついには遠く中東まで出張っていって湾岸線戦争、イラク戦争、アフガニスタンと、太平洋を越えてユーラシア大陸にいたり、西へ西へと際限なく進み、その様はまるで西部開拓を思わせます。

 われらに大和魂があるごとく、彼らには開拓魂があって、それはまるで米国人の本能であるかのように、今だにそれを続けています。
 
  米国は、ほぼいつの時代もどこかで戦争をしていますね。
 今はイラクとアフガニスタンですね。

 そう考えると、冒頭の問いに対する答えは、あってなきが如しです。
 要するに、いつだって米国は、武力でおのれの利益を追求し、価値観を押し付けようとするのです。
 相手は誰だって構いません。

 米国が邪魔者だと思えば、理屈は後から付いてくるのです。
 大日本帝国が他国を侵略したからとは嗤わせます。
 進んだ文明国であるはずの西欧や米国の処世術を真似しただけです。
 イラクが大量破壊兵器を持っているかもしれないからとは、ブラック・ジョークですか。
 米国が世界で一番多くの大量破壊兵器を持っているではありませんか。
 しかも戦後、イラクは大量破壊兵器を持っていなかったことが判明しました。
 9.11テロへの報復であっちでもこっちでも無闇と人を殺しに行くのはおよしなさい。

 バグダットはかつて、中東の真珠と言われ、名作「バグダット・カフェ」では米国西部にあるカフェにバグダットの名を冠して平和でオリエンタルな場所の象徴として米国民も認めていたのですよ。
 それが今ではテロリストで溢れかえっているではありませんか。

 しかし悲しいかな、わが国は米国軍の駐留を認め、わが国軍は米軍の補完勢力として位置づけられ、生殺与奪の権は米国が握っています。
 現下の状況に鑑みて、わが国には対米追従という外交以外の政策オプションは、存在しないと言ってよいでしょう。

 しかし、驕れる者は久しからず、盛者必衰と申します。
 米国が衰えていく時、わが国は米国と心中しないように密かに米国抜きで国際社会を生き抜く知恵を身につけなければなりますまい。

学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史〈上〉1492~1901年
Howard Zinn,Rebecca Stefoff,鳥見 真生
あすなろ書房
学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史〈下〉1901~2006年
Howard Zinn,Rebecca Stefoff,鳥見 真生
あすなろ書房
バグダッド・カフェ 完全版 [DVD]
マリアンネ・ゼーゲブレヒト
紀伊國屋書店

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NAKED

2011年08月05日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 最近はまっているNAKEDシリーズの第1作「NAKED」を昨夜鑑賞しました。

 シリーズ物は最初が一番面白いと言いますが、本当にそうですねぇ。
 基本は森の中でのマン・ハンティングなのですが、第1作は獲物にされる女、ハンターの男、それを取り巻く人々の人物造型がしっかりしていて、違和感なく物語に入り込めました。
 ラストも衝撃でしたね。

 米国、ニューメキシコ州の田舎町、テキサスからストリッパーとして出稼ぎに来た若い女が、生活苦のため、売春を始めます。
 しかし最初の客が、町一番のハンターであり、しかもこっそりマン・ハンティングを楽しむ犯罪者だったのです。
 女が気付くと、全裸で森の中にいます。
 そこへハンターが寄ってきて、15分やるからできるだけ遠くへ逃げろ、と言い、15分後、恐るべきハンティングが始まります。
 この女、じつにしぶとい。
 腕利きのハンターを翻弄します。
 そして衝撃の結末。
 ラストは観てのお楽しみです。  

NAKED-ネイキッド- [DVD]
トム・エバーハード,クリスティーヌ・バスケス
アルバトロス

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