goo

ドイツのリトアニア占領時代のユダヤ人の状況

『キリスト教とホロコースト』より

一九四一年六月二十二日にドイツがソビエト連邦に侵略したとき、多くのリトアニア人は彼らを解放者として歓迎し、最初のうちは熱狂的に協力しさえした。ドイツの宗主体制の下で独立を願う彼らの希望はじきに阻まれた。代わってこの国は(ラトヴィア、エストニア、白ロシア〔今のベルラーシ〕を含む)オストランド総督府の一部として直接ドイツの管理下に置かれた。エードリアン・フォン・レンテルンは、この国を治める国家弁務官に任命された。独立リトアニアの回復をめざしていたユオザス・アンブラゼヅィツィウスを首班とするこの国の政権は、たちまち押さえ込まれた。独立をめざすリトアニア人がドイツとの共通の敵のソビエト連邦と闘っているという根拠でドイツとの協力を強く促し続ける主導的な民族主義者勢力を阻止できなかったからである。この状況は、ドイツが勝利しているかぎり揺らがなかった。一九四三年に始まるスターリングラードでのドイツの敗北に伴い、リトアニアの民族主義者はこの国を乗っ取ろうとするソビエトを阻止するために西側連合国に打診をし友好回復を模索しようとした。こうした動きがあるにもかかわらず、多くのリトアニア人は、ドイツ支援部隊に入り、ドイツの心証をよくしようとする行動で応じた。ユダヤ人殺しのことを言えば、特に占領の初日からいわゆるリトアニアのパルチザン、侵略に先立ってドイツで訓練され後に組織される歩兵大隊が自らの手で事態の処理を始めた。ドイツがソビエト連邦を攻撃した一九四一年六月二十二日にリトアニア人は街頭にいた多数のユダヤ人を殺戮する激しいポグロムの実行に取りかかった。ドイツ軍がカウナスに入ったとき、地元民が市中のユダヤ人を襲い、棍棒や斧で残忍な殺戮を展開した。それはリトアニア人の支配者のドイツ人にすら衝撃を与えた。多数の学生や知識人もこの破壊行為に加わった。ドイツの侵略後四ヶ月の一九四一年十月末までに八万人のユダヤ人が殺された。一九四一年十二月末までに、この国にもともといた二十三万五千人のユダヤ人の八十五パーセントがリトアニア人であった。

彼らはこの卑劣な行為を進んで演じることに志願した民兵やリトアニア警察に殺された。残ったユダヤ人は、悪名高い移動殺戮部隊によって殺戮された。ビルニュス郊外のポナリの森の中で数千人のユダヤ人がたった一人のドイツ人将校の命令の下、リトアニアの保安隊員たちに殺された。第七駐屯地や第九駐屯地といった軍事防衛拠点に連行されたカウナスのユダヤ人も同様であった。残ったユダヤ人は主に三つのゲットー、ビリニュス(一万五千~二万人)、カウナス(一万五千から一万七千五百人)、シャウレイ(四千五百~五千人)に集められた。多くの共同体は不意の襲撃で一掃され、彼らのこの受難の物語を語る者は誰一人として残っていなかった。リトアニアのユダヤ人はガス室で殺されはしなかったが多くの場合、墓穴を自ら掘らされた後に大量射殺によって殺された。リトアニアは、占領の第一段階の期間中、しかもこの国の地元民にユダヤ人の大半が皆殺しにされた最初の国であった。移動殺戮部隊を指揮した親衛隊のフランツ・W・シュターレッカーが報告したようにリトアニア人の補助部隊によって行われたユダヤ人の大規模な殲滅は、長年のユダヤ人による抑圧への自発的反応として難なく行われた。ビルニュスのゲットーは一九四三年に一掃され、ユダヤ人住民の多くは殲滅させられた。一例を挙げれば、リトアニア人のジャーナリストのクリマイティスに命令された三百名の部隊がカウナスの千五百人のユダヤ人の大量殺戮を行った。最初の殺しの熱気が鎮まった後に、ドイツ軍は計画を進め、生き延びたユダヤ人に過酷な制限を課した。ビルニュスのゲットーは一九四三年に一掃され、ユダヤ人住民は皆殺しにされた。一部の者は別の地域の強制収容所に送られた。一握りのユダヤ人は不可欠な労働力として生かされたが、彼ら(約二千名)もまた一九四四年七月の市の解放の前夜に殺された。カウナスとシャウレイではごく少数のユダヤ人の一部のみが、解放まで生き残ることができた。

要約するとドイツ占領下のリトアニアの二十二万五千人から二十三万五千人のユダヤ人のうち、ソピエト軍がこの国を解放したとき生存できたユダヤ人は三千名(パルチザン部隊に参加したり、部隊を創設するために森に逃げたユダヤ人を含め)にすぎなかった。その他数千人余が強制収容所と他の収容所に移送する強制行進を生き抜くことができた。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 次期ネットの検討 やっと、3.11... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。