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山川哲学 ハンナ=アーレント

『もういちど読む 山川哲学』より 用語篇 ⇒ やはり、ハンナ=アーレントが好き

ハンナ=アーレントHannah Arendt 1906~75

 ドイツで生まれ、アメリカに亡命した政治学者。ユダヤ人家庭に生まれ、大学で哲学・神学を学ぶが、反ナチスの運動に協力し、1941年にアメリカに亡命した。51年に『全体主義の起源』を出版し、帰属意識を失って孤立した大衆が、空想的な人種的イデオロギーに所属感を求め、全体主義の組織に吸収される過程を分析した。61年には、イスラエルで元ナチスの親衛隊のアイヒマンの裁判を傍聴し、静かで平凡な人間がユダヤ人虐殺を遂行する指導者になったことに関心をもった。主著『全体主義の起源』『人間の条件』。

全体主義〈ハンナ=アーレント〉

 個人よりも全体を優先する政治思想をさす。独裁者への絶対的服従のもとに、国家優先のイデオロギーが強制され、思想的統一が徹底され、反自由主義・反民主主義・人種主義・排外主義などの政策がとられる。アーレントはナチズムに加え、スターリンの独裁も含めて全体主義と呼び、全体主義を帰属意識を失ってアトム化され、孤立させられた個人からなる大衆組織と考えた。個人が共通の利益で結ばれた一定の階級や社会集団に属している時は、その集団を代表する政党を通じて公共的な政治に参加する。しかし、いかなる社会集団にも属さない大衆は、孤立して無力感にとらわれ、所属感を与えてくれる空想的な人種主義にひかれ、ファシズムのイデオロギーの虚構の世界にたやすく吸収される。所属感をもたないアトム化された大衆が、全体主義の発生の条件である。

自由な行為〈ハンナ=アーレント〉

 政治の公共的世界で自由に話し合い、共同の活動に参加する行為。アーレントは人間の活動を、労働(labor)〈ハンナ=アーレント〉・仕事(work)〈ハンナ=アーレント〉・活動(action)〈ハンナ=アーレント〉の3つに分けた。「労働」は生命を維持するために食糧を得、「仕事」は自然を加工して使用するためのものをっくり、文化的世界を形成する。「活動」は私的利害の束縛から解放されて、政治の公的な空間で自由に話し合い、言葉で相手を動かして、共同体を形成する。

公共性(公共的空間)〈ハンナ=アーレント〉

 アーレントは古代ギリシアのポリス(都市国家)で、アゴラ(広場)に集まった市民が自由にポリスについて議論したことをモデルに、人々が共通の課題に関心をいだき、政治や社会のあり方について自由に議論する公共的な場、公共的空間こそが政治であると説いた。特定の個人や集団の利益を離れた対話こそが、社会的存在としての人間の本来の自由な活動(アクション)である。政治は私的利益に縛られない自由な言語活動のための公共的な活動空間であり、それを通じて公共性が形成される。
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