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心をクリアに見る

『脳をみる心、心をみる脳』より エピローグ--「自己」の枠を広げる

もしわたしたちの心が自動的に自己感覚を小さく制限し、他者から切り離されたバラバラの「個」として自己をとらえるようにしているのだとしたら、いったいどうすれば個人として、また社会としてその制限から抜け出し、「愛の輪」を広げることができるのでしょうか? その答えは、互いに助け合い、相手が心をクリアに見ることができるようにサポートすることにあります。

心をクリアに見ることができれば、各領域の統合が促進されるだけではなく、身体的そして心理的な健康と幸せ、快適な他者との関係が得られるとともに、「人はみなひとりで生きている」という錯覚が間違ったものであると気づくことができます。自分と大切な人をより深く愛せるようになり、さらにはより広い世界に愛情と関心を向けることができるようになります。それによって、わたしたちはとの大きな世界のかけがえのない一部なのだと感じることができます。この世界のなかで、生き物はすべてつながりあって生きているということ、わたしたちがそのうちのなにかに愛を注ぐことによってそのすべてに愛を注ぐことになるということが理解できるようになると、別々の肉体に宿っていることも、その個体の差異もまったく気にならなくなります。-自分は人きな宇宙、生命の一部としてこれまでも存在してきたし、肉体が証明した後も存在していくのだ」と悟ることによって、時間や距離を越えた存在として自己を受け入れられるようになるのです。これがトランスピレーションの感覚です。

統合が達成されれば、わたしたちは自分自身をより大いなるものと一体のものとしてとらえることができます。自分がすべての生命とつながりあっていると思えるようになると、生き方が根本的に変わります。世界的な人間愛のある視野でものを見て、すべてを大切にできるようになるのです。そうなると、この統合によって生み出されるトランスピレーションの感覚は、生きがいや幸福感を生み出すだけではなく、人類の生存において欠かせないものなのだということが理解されるようになるのです。

わたしたちの脳は遺伝的にも身体器官としても過去四万年の間にそれほど進化していませんが、心は進化しましど。今日生まれた赤ちゃんは、一万年前に生まれた赤ちゃんとほぼ同じです。しかし、もし現代社会に暮らす大人の脳の神経構造を、四万年前の大人のものと比べることができたとしたら、大きな違いが見つかることでしょう。四万年前とは社会文化が大きく異なります。その環境の違いは経験の違いをもたらし、エネルギーと情報の流れの差異が脳神経のネットワークを大きく変えるはずです。

心は脳を使って自らを成長させています。ひとつの文化のなかで、エネルギーと情報の流れのパターンが人と人とのあいだに世代から世代へと受け継がれます。こうした人間社会の進化のなかで、脳を育てているのが心です。科学がこのことを明らかにしました。このことからわかったのは、意志の力によってこの世界をよりよいものに変えていくことは可能なのだということです。自分とそして相手のマインドサイトを高めることによって、わたしたちは次世代のマインドサイトを高めることができます。そして、それをこの世界の在り方にすることができます。いまを生きるわたしたち自身のために、そして未来を生きる次の世代のために、彼らが人間らしく生きられるように、わたしたちはいま自らの手で心のありようを変えることができるのです。
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