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国債管理政策

『日本の財政』より 国債費

財政健全化に向けた取組みにもかかわらず、我が国の財政は依然、厳しい状況にある。新規の国債発行とともにこれまで発行した国債が大量に償還されることもあり、借換債を含めた大量の国債発行が今後も見込まれる。このため、国債管理政策を適切に運営していくことが重要な課題の1つとなっている。

いわゆる「国債管理政策」の一義的な定義はないが、国債を発行する立場である財政当局からは、「財政負担を軽減する観点から、利払費といった調達コストを中長期的に抑制しつつ、国債の確実かつ円滑な消化を図るため、国債の発行、償還などの各方面にわたり行われる種々の政策の総称」と解することができる。

「国債管理政策」の運営にあたっては、まずは財政健全化に向けた取組みを着実に進めることにより、国債に対する信認を確保する必要がある。そのうえで、中長期的な調達コストを抑制しつつ、国債の確実かつ円滑な消化を図るという基本的な考え方のもと、市場のニーズ・動向などを十分に踏まえた国債発行を行うとともに、国債の商品性の多様化を通じた国債保有者層の拡大や巨額の既発国債の適切な管理など、国債にかかる各種の施策を総合的に講じていくことが重要である。具体的には以下のような施策が行われている。

(イ)市場のニーズ・動向などを踏まえた国債発行計画の策定

 毎年度の国債発行の計画の策定にあたっては、国債の確実かつ円滑な消化を図る観点から、市場関係者との意見交換などを通じ、市場のニーズ・動向などを十分に踏まえ、短期・中期・長期・超長期の各ゾーンにおいてバランスのとれた発行額が設定される必要がある。また、市場の状況などを踏まえ、必要に応じ、年度の途中でも発行計画を適宜見直している。

 国債の発行にあたっては、例年12月下旬に発表される国債発行計画を通じ、翌年度の発行予定額について、発行総額や年限別の国債の発行額などが公表されるほか、日々の国債の発行に際しても、入札スケジュールを3ヵ月先まで定期的に公表するなど、市場の予見可能性が確保されるようになっている。

(ロ)国債市場の流動性の維持・向上

 国債を確実かつ円滑に発行し、また、中長期的な資金調達コストを抑制するためには、国債市場の流動性を向上させることも重要であり、近年の国債管理政策においても、市中からの買入消却や流動性供給入札の導入など、その方向に沿った施策が実施されてきたところである。

 平成25年度においては、流動性供給入札について、現行の規模での実施を継続(総額7.2兆円。具体的な実施方法は、四半期毎に市場の状況を見ながら決定)することとなっている。また、市中からの買入消却について、総額2.7兆円を上限に実施(具体的な実施方法は、四半期毎に国債市場特別参加者会合等の場を通じた市場との対話を踏まえて決定)することとなっている。

(ハ)国債の商品性・保有者層の多様化

 国債の大量発行が続くなか、国債の安定的な消化を確保し、国債市場の安定を図る観点から、国債の保有者層の多様化を図ることが重要である。特に、我が国の国債の保有構造をみると、個人や海外投資家などの保有が少ない一方で、金融機関による保有割合が高く、市場環境が変化した場合、取引が一方向に流れがちな傾向があると指摘されている(図表n。12.3)。こうした観点から、以下の取組みが行われている。

 生保などの機関投資家については、金融機関のなかでも長期安定投資家として位置づけられることから、平成25年度においては、生保などの長期運用ニーズを踏まえ、30年債について、現在の年間8回発行から、毎月発行に移行し、市場を育成することとしている。毎月の発行額については、5・8・11・2月を5000億円、それ以外の月を6000億円とすることにより、前年度当初計画と比べて1.2兆円の増額とした。個人投資家については、23年1月から5年固定金利型の個人向け国債の満期償還が始まったことを踏まえ、販売促進の観点から、22年7月(募集は6月)から3年固定金利型の個人向け国債を導入するとともに個人向け国債の商品性を改善することとした。具体的には、変動10年について、低金利時に仕上り金利(適用金利)が低くなりすぎないよう金利設定方法を見直す(基準金利-0.8%⇒基準金利×0.66)とともに、固定5年について、中途換金禁止期間を変更(2年⇒1年)し、個人向け国債の中途換金禁止期間などを統一した。このほか、平成25年1月より、受け取る利子に対して復興特別所得税が付加されることから、中途換金調整額を見直した(直前2回分の各利子相当額(税引前)×0.8⇒直前2回分の各利子相当額(税引前)×0.79685)。                                          
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