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内乱 カエサル対ポンペイウス

『内乱』より

「内乱にもましておぞましい戦、正義の名を冠された犯罪」という特異なテーマの提示のあと、皇帝ネロヘの助力を請う呼びかけがあり、内乱の抽象的、あるいは間接的、あるいは直接的な原因が挙げられる。中でも、「同輩を許容せぬ」権力に焦点が当てられ、過去の英雄ポンペイウス、昇竜の勢いのカエサルという両雄のあり方が、前者は「樫の古木」、後者は「雷電」の比喩で示される。

警告、制止するローマの幻影を振り切ってルビコンを渡り、アリミニウムに侵攻したカエサルに、ローマを逐われた「舌を金で売る」蛮勇クリオが合流し、内乱を喉けると、カエサルは決意をいっそう固め、兵士に向かってその決意を述べ、兵士を鼓舞する演説を行う。兵らは疑惺、逡巡するが、百人隊長ラエリウスが忠誠と、ローマの破壊をも辞さぬ覚悟を語って煽ると、全員歓呼して鬨の声を上げる。カエサルはガリア全土に展開する部隊を呼び寄せる(兵らがあとにしたガリアの部族の長いカタログが続く)。

ローマはカエサル進軍の風説で恐怖、混乱に陥り、民衆はもとより、当のポンペイウスをはじめ、高官、元老院議員の大半が挙って早々とローマを脱出する。追い打ちをかけるように予兆や怪異、変事が生じ、占い師アッルンスが呼ばれて内臓占いをするが、「大過が襲う」という曖昧な占いしかしない。しかしフィグルスが星占いをして、「兵乱の狂気」、武勇の美名を与えられた「犯罪」と「君主」の到来を予言し、さらに、アポロンにがり影かれた寡婦が内乱の成り行き(主な出来事)を見通し、暗示する予言を語って都を驚動させる。

ローマの不安と混乱の続き。母親らも、出征する男たちも嘆きの声を上げる中、老父が、マリウスとスッラによって争われ、報復、粛清の荒れ狂った凄惨な過去の出来事を語り、今時の内乱がそれをも越える惨禍をもたらすことを予言する。

内乱に心を痛める義父カトーのもとを、ブルートゥスが訪れ、身の処し方を訊ねる。今はどちらにも付かず、決着が付いたあとに勝者の敵となるとする彼に、カトーは、挑手傍観することの非を言い、祖国と自由のためにポンベイウスに与して参戦する決意を披渥する。そこへ、夫ホルテンシウスの遺骨を骨壷に納めたマルキアが戻り、カトーに復縁を願って叶えられ、形ばかりの再婚の儀か行われる。

都落ちしたポンベイウスは、カプアを拠点にして陣を構えるが(イタリアの地形、地勢の描写と、川のカタログが挟まれる)、民衆や諸都市の支持が区々分かれる中、破竹の勢いのカエサル軍は各地でポンペイウス軍を撃破。コルフィニウムに拠ったドミティウスも撃破され、兵に裏切られてカエサルに引き渡されたものの、宥恕される。ポンペイウスは決戦を目論み、兵を鼓舞激励する演説を行うが、まだ見ぬカエサルにすでに敗れている兵らの怯えを感知し、ブルンディシウムヘの退却を余儀なくされ、息子グナエウスと二人の執政官に、世界を巡って諸都市や諸民族、諸王の瞬起を促し、新兵を徴募するよう指令する。

一方、追撃するカエサルはブルンディシウムに迫り、筏を組んだ堤で港を封鎖。しかしポンペイウスの艦隊は、軽微な損害を被っただけでこれを突破、戦線を国外に散らそうと、ギリシアのエペイロスを目指して脱出する。

海原を逃れ行くポンペイウスに、前妻ユリア(カエサルの娘)の亡霊が現われ、どこまでも付き纏い、悩ませることを告げるが、ポンペイウスは、強いて否んで、エペイロスに上陸する。

一方、カエサルは、民心を掴もうと、穀物調達を指示したうえで、平和を装い、ローマに入城するが、歓呼して迎える民衆の姿はない。身を挺してサトゥルヌス神殿の国庫の略奪を阻止しようとする護民官メテッルスを影がにもかけず、カエサルは国庫を略奪する。以下、挙兵し、徴募されて、全世界から参集したポンペイウス方の大軍勢の長いカタログが続く。

ローマを発ったカエサルは、スペインのポンペイウス軍掃討に向けて西進するが、途次、大義を守って自派に与せず、寵城して抵抗するマッシリア攻めを敢行する(自らは攻城軍を残してスペインヘ)。ドルイドの聖林を伐採し、長大な土手を築いての攻城戦であったが、難渋し、夜間に出撃したマッシリア兵に火を放たれて土手は崩壊、陸戦の望みを絶たれたため、カエサル軍は海戦に命運を賭し、ブルートゥス(カエサル方の司令官)の指揮する艦隊とマッシリアの艦隊との間で海戦が繰り広げられる(闇雲に放たれた槍を受けて瀕死となった若者アルゴスと、息子に先立とうと自刃、投身自殺する父親のエピソードも含め、「種々、数多の衝撃的な死の光景」が、海戦の様とともに描写される)。海戦はカエサル方の一方的な勝利に終わる。
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