■Panasonic Melodious Library
http://www.tfm.co.jp/ml/index.html
2010年8月22日(日) JFN系列38局ネット 10:00-10:30
パーソナリティ: 小川洋子
アシスタント: 藤丸由華
ゲスト: 佐野元春
Playlist
君が気高い孤独なら/佐野元春
荒地の何処かで/佐野元春
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■内容の一部を抜粋
・Melodious Library
パーソナリティの小川洋子が次の世代に残したいと考える文学作品を毎週一冊ずつ紹介する番組。今週は1951年に発表されたJ.D.サリンジャーの小説『ライ麦畑でつかまえて』を取り上げて、この作品の魅力を小川洋子と佐野元春の二人が語り合うスペシャル・プログラム。
・ライ麦畑でつかまえて
佐野元春が『ライ麦畑でつかまえて』をはじめて読んだのは15歳の頃だとか。佐野元春は主人公のホールデン・コールフィールドが置かれてる設定に注目したと話す。ニューヨークのマンハッタン、都市というケイオスにはいろいろな欲望とか子どもには理解できないような複雑な人間模様がある。そうしたものが渦巻いてるケイオスをホールデンは無邪気な心で渡りきっていこうとする。大変なエネルギーと知恵と経験が必要だが15歳の少年にそれを望んでも無理。だから自分の置かれてる状況と自分との間にコンフリクトが当然起こる。そこを描ききった小説だと分析している。そうすると『ライ麦畑でつかまえて』はトム・ソーヤやハックルベリー・フィンと同じように少年のサバイバルのストーリーで、ただその舞台が都会だということに佐野元春はホールデンが自分に似た誰かのように感じたという。多感な頃は聖なるものと邪悪なものを一瞬のうちに見抜く特別な力が備わっていて、ホールデンは自分のことよりも他者に思いを寄せる。それは彼に取って当たり前の感覚なのだけれど、それを大人たちの都合によって汚されてしまうのが、感覚的にたまらなく嫌だというコンフリクトが、この小説の全体を貫いているひとつの魅力なんじゃないかと思ってるそうだ。
・君が気高い孤独なら
2007年のアルバム『COYOTE』から。
この曲のテーマは「孤独ってそんなに悪いもんじゃないよ」ということだそうだ。人は孤立してはいけないけれど、孤独というのは楽しめると思うとか。ホールデンの抱えていた孤独と共通するんじゃないか、と元春。
・It depressed me
ホールデンの抱えていた心の闇というのに興味があると元春。ホールデンはいつもこんなふうにつぶやいている。"It depressed me"(やんなっちゃうぜ)。1950年代当時の流行語だったとか。そうしたつぶやきもまるで自分に似た誰かというふうに感じ共鳴していたという。ちなみにホールデンの前は鉄腕アトムに共鳴していたとか。小学校六年生の頃、手塚治虫に会いに行ったことがあり、仕事場近くのアニメーションの工場を見学させてもらったという思い出があるそうだ。
・献身ということ
この小説の中で語られているいちばん大切なことは「献身ということ」ではないかと元春。街で暮らしていて誠実さということや他者への献身といった本当はあって然るべきのことが、経験という都合によって覆い隠されてしまったり、二の次にされてしまったりすることで、僕らの人間性が後退してしまうことへの恐れといったものを、十代のホールデンはわかっていた。ホールデンの行動はそうした世の有りように対する抵抗だった。抵抗しても無駄なのに抵抗せずにいられない。ホールデンは自分が傷ついても抵抗した。
・禅
サリンジャーの小説『フラニーとゾーイ』。東洋の思想に興味があったサリンジャーによってフラニーとゾーイ兄弟ふたりそれぞれが大乗仏教と小乗仏教に興味を持っているという設定になっていた。『フラニーとゾーイ』を読んで元春は禅を知ることなったそうだ。
・荒地の何処かで
2007年のアルバム『COYOTE』から。
■禅マインド ビギナーズ・マインド
世界中で読まれている禅の入門書『禅マインド ビギナーズ・マインド』がこの度発売されました。佐野元春は帯に推薦文を書いています。
僕は待っていた。待望の翻訳だ。
ZENがビートを作った。
アレン・ギンズバーグを代表とする
ビートニクたちのバイブル。
本書は、禅というシンプルな生き方に
興味を持つ人にとって、
やさしく平易な手引書となるだろう。
佐野元春