<08月21日プレイリスト>
[ニュー・アルバム "SONORITE" 特集 PART 1]
MIDAS TOUCH(マイダス・タッチ)/山下達郎
KISSからはじまるミステリー/
山下達郎 <feat. RYO (from ケツメイシ)>
FOREVER MINE(フォーエヴァー・マイン)/山下達郎
忘れないで/山下達郎
風がくれたプロペラ/山下達郎
ラッキーガールに花束を/山下達郎
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■内容の一部を抜粋
・地方プロモーションと新たな仕事
この2週間ニュー・アルバムの雑誌取材をずっーとやりました。明日からは地方プロモーションがはじまります。各地お邪魔した時に生番組にいきなり登場することがあると思います。今週から9月の1,2週ぐらいまで全国ズラッーとなめて地方プロモションという感じでございます。その間に東京に帰ってきて、人のレコーディングをしなくちゃならないので、わりと忙しい感じでございますけれど、がんばって夏の終わり仕事したいと思います。
・ソノリテ
今週、来週と2週間に分けて9月14日発売のニュー・アルバム『SONORITE』全13曲を曲順どおりに紹介します。"SONORITE"(ソノリテ)とは音の響き方とかそういう意味でございます。クラシックの管弦楽法とかそういう本を読みますと、「この楽器とこの楽器を足すといいソノリテが得られる」とかですね、「あのソプラノ歌手は綺麗なソノリテをしている」とか、音楽で使う時はそういった音の響き方。イタリア語は"ソノリテ"、フランス語は"ソノリティ"、英語になりますと"ソノリティー"。 "ソノリテ"なのでイタリア語的な感じでございます。
・山下達郎通算21枚目、オリジナル・アルバムとしては12枚目
私、今年で芸能生活30周年でございまして、シュガーベイブからはじめまして30年、ソロになりましてこれで通算21枚! オリジナル・フル・アルバムの新作としまして12枚目! でございます。一言で言いまして今までとちょっと違うかなという感じの曲が多いか、もしくはすごーく前に戻ったというそんな感じでございます。
・本当のマスターの音
本日はオリジナル・デジタル・マスターと同じもの、正確に申しますとCDになる一段階前の本当のマスターの音をそのままオンエアでお届けしてお聴きいただきたいと思います。
・MIDAS TOUCH
久し振りに山下達郎のファルセット、R&B調、そういう響きでございます。ちょっとクールな曲ですが、自分ですごく気に入ってるので1曲目に持ってきました。今回のアルバムはこの「MIDAS TOUCH」に象徴されるように割と繊細な歌い方の曲が多いです。何故そういうことになったかと言うと、声が出なくなったとかそういうのではございません。レコーディング・システムがちょいと変わりまして、今までやってきたレコーディング・システムと、変えたんじゃなくて換えさせられたんですが(苦笑)、変わらざるをえないといいましょうか。21世紀に入ってからレコーディング・システムが激変しまして、それがいろんな音楽の変化を強いられるというそういう風なものがありますので、そういう結果繊細さを重きに置いたそういうようなサウンド作りを今回は。わりとアダルトなそういう感じでございます。
・KISSからはじまるミステリー
もともと「KISSからはじまるミステリー」は自分のために作った曲でありまして、kinki kidsのアレンジも自分がレコーディングして歌うために作ったアレンジと曲でありましたが、それがkinki kidsに提供することになりまして、そういう曲は自分で底のところでアレンジも曲も完結しているものなので再構築してやるっていうのがなかなか難しい。いわゆるセルフ・カヴァーってやつですね。僕の場合、自分でアレンジした曲をセルフ・カヴァーするというのは非常に難しいので、ずっと尻込みしていたんですけれど、あまりみんなやれやれというので、それではとやりましたが実際に苦労しました、とっても(苦笑)。ところが今のレコーディングのやり方というのは昔のように普通のドラムとベースでやるものとは違って、マシンを使って、しかもサウンド・データといいまして、写真を切ったり貼ったりするのと同じで音のデータをハードディスク上で切り貼りして作る手法が今のヒップホップやR&Bのやり方なので、その技術を完全に踏襲して今までそういうやり方で曲をアレンジしたことはありませんでしたけれども、その結果ちょっとストレンジなリズム・パターンができましたので、これならいいやという。オリジナルのkinki kidsのヴァージョンはいわゆる学園ソングでございましたが、私は大人なので詩を若干変えまして夜の世界にちょいと変えました。「MIDAS TOUCH」も夜のイリュージョンの恋の歌でございますが、その延長としてあるような感じでございます。
・FOREVER MINE
曲自体は'80年代によく作っていた感じの曲でございます。私のいちばん尊敬する作家バリー・マンのような曲を作りたくて作りました。アレンジが非常に風変わりでピアノの弾き語りとドラムマシーンという、これにアヴィーロードで録ってきた40人編成のストリングスが乗っとります。これだけ。ベースがいません、ドラムはもちろんマシンでございますが(笑)。すごくストレンジなアレンジでございますが、最近のレコーディングのシステムというのは楽器どうしが喧嘩をする、特に声がいろいろな楽器と溶け合うというのが難しい。はじめはシンセベースを入れてやってたんですが、ベースを入れると歌の細かい繊細さが邪魔されるんです。もういいや、ベース取っちゃえってベース取ったら、なんか綺麗に向こうが見えるようになりました。あっこれがいいやって。5,6年前だとこんなアレンジ絶対やりませんが、これは災い転じて福となすと申しましょうか、最近のレコーディングのテクノロジー、ハードディスク・レコーディングの弱点をうまく利用したアレンジでございます。映画の先を想定して書いたようなメタファーに満ちた曲であります。
・『SONORITE』は意外とフレッシュ
3年前に『RARITIES』というアルバムを出しました。いわゆる裏ベストという、それまでアルバム化されてなかった曲とか未発表曲とかを集めました。その時にそれまで出していたシングル「君の声に恋してる」、「ジュブナイルのテーマ」、「Love Goes On」を全部入れてしまいましたので、今回のアルバム『SONORITE』フル・オリジナル・アルバムとしては7年振りですが、作品としましては2003年以降にリリースした作品で占められています。曲の鮮度は意外とフレッシュかなという感じでございます。
・30年目に何を作るのか
22歳でシュガーベイブを作りまして今年で52歳になります。30年! 30年続けていると一体30年目に何を作るのか? なかなか大変なものがあります。マンネリズムに陥らないように、あとは自分で自分の模倣、いわゆる自己模倣というやつですね、昔やったパターンをまた焼き直してお茶を濁す、そういうことをなるべくやりたくないので、なんか違うことをやりたい。でもあんまりかけ離れすぎると問題が起きますので、離れすぎずつか過ぎず、どれだけ変わってどれだけ変わらないか(笑)、なかなかそのへんが難しいんですが。50を過ぎたらもうちょっと作家的自我とか作風を広げてみたい。あと何年できるか、あと何作できるか。30年なのでもうそろそろそういうのいいんじゃないかと。
・忘れないで
今までもずいぶんしっちゃかめっちゃかで作品がばらけていると仰るかもしれませんが、これまでも自主規制をしておったんですが、だんだん自主規制が取れてきました。「忘れないで」は私の30年のキャリアでもかなり異色な一作でございます。ずばりいってカンツォーネでございます。カンツォーネは昔からやってみたかった。50過ぎたら絶対カンツォーネをやるんだと昔から決めてやって参りました。ちょうどアガサ・クリスティーのアニメーションのオファーが来ましたので、1920,30年代のロンドンが舞台のアニメで、イギリスのポピュラー音楽界は昔からカンツォーネを積極的に取り入れてやってまいりました。代表的なのはダスティー・スプリングフィールドの「You Don't Have To Say You Love Me(この胸のときめきを)」に代表されるようなマイナーなカンツォーネ。アガサ・クリスティーのアニメのオファーが来た時に「これだ~」と思いましてそれで作ったのが「忘れないで」。いろんな人からいろんな事を言われました。「今頃こんな曲をシングルで切るやつはオマエだけだ」とかひどいのになると「遂に演歌へ鞍替えか」とか。いろんな事を言われましたが今だからこれをやるんです。ロックンロールなカンツォーネがようやくできた。私自身はやれたことに非常に満足しておりまして、不思議なことに60代の諸先輩からお手紙をもらいましてお褒めの言葉をいただきました。気を良くしています。機会があったらまたやりたいと思います。私昔からアメリカの歌が好きなんですけれど、歌い手としましてはジャズのシンガーよりはカンツォーネのほうが自分にはあっている感じがしておりました。というのもロックンロールのヒストリーの中で自分がいちばん影響を受けたシンガーのタイプはイタロアメリカン(イタリア系アメリカ人)、フォーシーズンズのフランキー・ヴァリとかドゥーワップ・エリアではディオン、ジョニー・マエストロ、それから私のアイドル・グループでありますヤング・ラスカルズ、彼らはイタリア系白人のブルー・アイド・ソウル(白人のR&B)でありました。そうしたイタリア系の人たちの歌に影響されましたのでカンツォーネに行くのは当然でございます。声が出てるうちにカンツォーネのアルバムを出してみたいかななんて、まりやの『LONGTIME FAVORITES』に影響されて考えたりしております。
・風がくれたプロペラ
昨年、カーナビゲーション「ストラーダ」のCMとしてオンエアされておりました曲でございます。レゲエやったことないんですが、レゲエといってもなんちゃってレゲエでございますが、リズム・パターンとしてのレゲエ・ビートの曲を生まれてはじめて取り上げます。若い人年寄り関係なく人の心の中にある小さな孤独に対する癒しの歌を1曲作ってみました。
・テクノロジーの変化が与えた影響
今回はひとりでやってるものが多いです。特にギターはほとんどひとりです。そう意味で内向的、内省的なアルバムでございます。抑制した歌い方の作品が多いんですが、'90年代の後半から出てきましたハードディスク・レコーディングの手法がデジタルの世界をすごく変えました。それによって音の鳴り方というのがずいぶんと変わりまして、例えていうならデジカメと昔のアナログカメラの違いのような、同じカメラでも似て非なるものでありまして、それまでのフィルムで撮っていたノウハウがデジタルカメラになって全然通用しなくなった。そういうことが21世紀になって起こりましたので、今のそうしたデジタル・レコーディング、音はすごくいいんですが、爆発する音に弱い、爆裂音に弱い。むしろ息の繊細さとか、囁くようなそういうものにものすごくいい表現力を持ちます。今から去ること20年くらい前に『POCKET MUSIC』というアルバムを出した時にちょうどあたかも時代はアナログ盤からCDへ、アナログからデジタルへと移った時代に七転八倒しまして。なぜかというと「オレはデジタルになっても絶対にアナログの世界の音を出してやる」って出せこっないのに出そうとした。あれで途端の苦しみを味わいました。今もそれ以上のテクノロジーの変化が押し寄せてくるんですけど、今回はもう足掻かない、柳のように流れに乗って、そこでいちばんいい響き方を探すというやり方をしますと、内省的なちょっと繊細さに重きを置いた音作りになってしまいます。
・ラッキーガールに花束を
「忘れないで」のカップリングでアガサ・クリスティーのアニメ「名探偵ポワロとマープル」のオープニング・テーマでございます。スタッフにこの曲異常に評判よくて「外そうかな」とか言ったらみんなに怒られまして。「なんで入れないんだ。俺はあの曲好きなんだ」そんな人ばっかり。今回はミックスが同じなんですが、マスターを作る段階でちょっと手法を変えまして、わりと奥行きが出すように改善しましたので、シングルよりまたちょっと明るい感じになっておると思います。
・初回限定は紙ジャケ
初回限定は紙ジャケです。オールディーズものでおなじみの紙ジャケ。実はこの紙ジャケというのは非常に手間がかかります。あと予算がかかります。新譜にはほとんど使ってくれません。私今回使いました。豪華紙ジャケ仕様でございます。
■今後の予定
来週はニュー・アルバム『SONORITE』の全曲紹介Part.2。
グッズ、プレゼントは竹内まりやさんゲストの夫婦放談あたりで。
おなじみの夫婦放談は9月4日、11日。
今回はプロモーションの関係で2本まとめて収録の予定。
そういうわけで竹内まりやさん宛てのお便り、ご質問、リクエスト等はお早めにいただけると助かります。
宛先
〒102-8080
TOKYO FM 山下達郎「Sunday Songbook」