Life in America ~JAPAN編

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フランス、万歳!

2017-05-11 12:11:54 | アメリカ生活雑感
5月7日に行われたフランス大統領選挙。
外国のニュースにあまり興味がないアメリカでは、イギリスのEU脱退のときほどの報道はされていない。
結果から言うと、中道左派のマクロン氏が、極右のル・ペン女史になんとか勝利して、アメリカ大統領の悪夢再現とならずに胸をなでおろしたところ。

フランスがアメリカと違うのは、国民がちゃんと冷静にその辺をわかっているところだろう。
「フランス第一主義」とは聞こえがいいが、だからといってEUを脱退したり、フラン(自国通貨)を復活させたりしたりして太古の昔に戻ることに何の意味があるのか、それを正しく判断できる層が勝った、ということだ。
アメリカはこの真逆の結果になり今は混迷を極めているから、この賢そうな39歳の新大統領を見るにつけ、あほトランプと比較してうらやましいやらうらめしいやら。

びっくりしたのはマクロン氏の若さだけではない。
彼の奥様、新ファーストレディーとなるブリジットさんが25歳年上の64歳だというニュースは、大統領選そのものよりも大きく報じられている。
女性が25歳若かったらこんな大騒ぎにならないのだから、しょせん世の中は女性蔑視なのだ。
このふたりの「なれそめ」がこれまたすさまじい。

ふたりの出会いは、マクロン氏が15歳、ブリジットさんが40歳のとき。
当時ブリジットさんは既婚で3人の子持ち。高校でマクロン氏に演劇指導を行う教師だった。
その知性に次第に惹かれあう二人・・・。

頭の中で森田童子の歌う「高校教師」のテーマ曲『僕たちの失敗』が流れる。
いや待てよ、この場合は女教師だから「魔女の条件」だな。テーマ曲は『First Love』(by 宇多田ヒカル)

・・と、そんなことはどうでもよいとして。


当然、学校や街中のうわさになった二人にマクロン少年の両親は激しく動揺、息子をパリ市内にある他の学校に転校させてしまう。
17歳のマクロン少年がそのときにブリジットに言い放った言葉がすごいのだ。


「私から逃れることはできない。私は戻ってきてあなたと結婚する」


17歳にしてこの決意。ただのマザコン高校生には言えないセリフだ。
まるで、「早乙女愛よ。石清水弘は君のためなら死ねる」と高校生の分際で言い放った石清水弘のようだ。(『愛と誠』より)
しかしこれは漫画ではなく、リアリティーだ。
そして、15年後。本当に二人は結婚してしまった。

人間が真に惹かれあうのに、性別も、年の差も、未婚も既婚もないってことなのだろうが、そこまで貫き通すほどの絆や根性は並大抵の人にはないもの。
これはもはや、リスペクトを通り越したAwe(畏敬)だ。


で、ここからが本題。
私が改めて感心(というか仰天)したのは、フランスの国民性だ。

国内ではここ数年、無残な無差別テロが続いている。当然、モスラムや移民に対する風当たりも厳しくなってきたなかで、トランプばりの保守極右勢力、移民排除派「国民戦線」のマリーヌ・ル・ペン氏が台頭してきた。
4月に行われた第1回選挙では、マクロン氏とル・ペン氏、共に既定の票数に達しなかったため、今回再度二人の間で決選投票が行われたのだが、結果は66.1%対33.9%という、マクロン氏の圧勝に終わった。

これをアメリカに置き換えたら・・?
テロアタックに常軌を失った民衆は、戦争へと突き進んだあほブッシュを再選し、そして今回の選挙では口だけで何もできない6歳知能児トランプを大統領に選んでしまった。
大統領選でのロシアとの密通スキャンダルを捜査していたFBI長官を(自分のやっていたリアリティー番組ばりに)クビにし、オバマケアでやっと手の届く保険に入れた2000万人の国民を締め出して見殺しにしようとし、これまた北朝鮮のボケアタマを煽って世界は今核戦争勃発寸前レベル。

民衆のレベルの差が国策に如実に出た、といってもいいだろう。


加えて、この「年の差結婚」。
もしアメリカ大統領選挙だったら・・・

「高校教師と不倫関係に陥った未成年。」

「彼女はみだらな高校教師で、罪に問われるべきだ。」

「インモラルな女がファーストレディー??」

などと、格好の相手侮辱型ネガティブキャンペーンの標的になっていたにちがいない。
タブロイド紙は当分ネタに事欠かないだろう。きっと彼女が一番“年老いて”見えるショットを表紙にして、「生徒を食った鬼畜女」などというタイトルがつくんだろうなぁ。
こうやって“キリスト教の国”アメリカでは、許されない人物、とレッテルを貼られるのは明らかだ。
こういうときだけキリスト教、がでしゃばってくるのがアメリカだ。
(そのくせ、国民皆保険で隣人を助けることにはかたくなに反対するのだから、矛盾だらけのあじゃぱっぱーだ)


でもどうだ、このフランス人のきっぱりとした態度は。

プライベートライフと政治は別物、誰を国のトップに選ぶかはそんなものにかけらも影響されないわよ、という高笑いがフランスから風に乗ってアメリカに聞こえてくるようだ。


そうはいっても、この騒ぎのなかブリジットの元ダンナや子供たちはどうしているんだろう?などと下世話なことを考えていたら、再婚した母親の結婚式に成人したブリジットの子供たちも出席したというから、やはりフランスはすごい!
自由・平等・博愛の国だ。
ブラボー!だ


「フランス人ってMature(成熟してる)よね?」と感心してPちゃんに言うと、彼は全く意に介さず、バッサリと一言。

「Mature、じゃないよ。They absolutely don't care(全くどーでもいい)んだよ。プライベートと政治とは何のかかわりのないことだと思っている。そんなわかりきったことを・・」

解りきったこと、が通じないのがアメリカ。
フランスは、先進国の中でも宗教色がきわめて少ない国であるというデータも、皮肉にもこれを証明している。
信心深い人ほど、排他的、という統計的アナリシスはこんな形であらわれるのか。




参考:

「フランス史上最年少の大統領 国民の融和が課題に」(2017年5月11日 NHK NEW WEB)

https://www3.nhk.or.jp/news/special/frenchpresident2017/




2017年4月22日、選挙活動の一環で訪れたフランスのレ・テュケ=パリ=プラージュで写真に収まるマクロン氏とトロニュー氏。SYLVAIN LEFEVRE VIA GETTY IMAGES










Comments (2)
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