Life in America ~JAPAN編

I love Jazz, fine cuisine, good wine

踊るインタビュー

2014-10-18 15:05:11 | アメリカ生活雑感
先週のこと。シカゴ取材に訪れていた日本の某新聞社のアテンド役を急きょ頼まれた。
彼らがシカゴに滞在するのは3日間。そのうちどこかでぜひともシカゴの「音楽シーン」を取材したいという。
JazzやBluesなどいろいろご提案したが、「シカゴと言えばブルースですよね」ということで、ブルースシーンを取材したいとのこと。
なんと、私にうってつけのありがたいお話。

しかし、正式に取材の依頼を受けたのが3日前というどたばたぶり、そのうえ「ブルースマンにインタビューをしたい」という依頼内容だった。
そこで、友人の音楽イベントプロデューサー、リンに連絡をとり、彼女がかねてからプロモートしていてシカゴの重鎮ブルースマン、エディー・クリアウォーター氏にインタビュー&撮影をたのんでみたところすぐにOKの返事をもらうことができた。
エディーは日曜日にNYでライブを終え、月曜日にシカゴに戻ったばかりだった。

以前、彼のおうちにお招きいただいたことがあったが、そのときに聞いた昔話や数々の逸話がとても面白かったことや、気さくで温かい彼の性格が印象深かったこともあって、話を聞くには彼しかいない、この取材は絶対にいいものになると確信していた。

エディーは御年79歳。いわゆるブルース第一世代と呼ばれ、ブルースの生き字引のような人。
昨今はこの第一世代がだんだんとこの世を去りつつあり、このタイミングで彼にお話を聞けるのはとても貴重なチャンスだった。

●エディー関して過去に書いた記事 ↓↓
http://www.usshimbun.com/Music-Series/music-vol.4-EddyClearwaterBDLive


かくして、アポイントの火曜日当日。
女性記者さん(このとき初対面)をホテルに車で迎えに行き、シカゴのこと、ブルースの歴史のこと、エディーのことなどを怒涛のようにレクチャーしながらエディーのお宅に向かった。
彼女曰はく「ブルースのこと、ほとんど何も知らないんですよ。だから通訳とフォローをお願いします」
いやいや、だからいいのである。
オタクしか読まないブルース雑誌のための知ったかぶりした小難しいインタビューではなく、彼女のような“一般人”にインタビューしてもらうこと、その中で彼女が感じたこと、発見したこと、伝えたいことをナマの言葉にしてもらうことにこそ意味があるのだ。


★★

午後3時、家のチャイムを鳴らすとリンがうれしそうに出迎えてくれた。
今日のインタビューを、きっと本人よりも楽しみにしていたにちがいないというような満面の笑顔で、挨拶もそこそこにエディーの過去の写真やグラミーノミネートの時の記事などを次々に見せてくれた。
奥のリクライニングチェアーにゆったりと座っていたエディーも、やぁやぁいらっしゃいと出迎えてくれ、そのままカジュアルなインタビューが始まった。


インタビューの内容はネタバレになってしまうのでここでは言えないが、とても印象的だったのは彼の真摯な姿勢だった。
どんな「素人質問」にも丁寧にかつ簡潔に答えてくれ、その素晴らしい受け答えに彼のインテリジェンスを感じることができた。
記者さんが「ブルースっていうと、まだまだマイナーなジャンルであり、しかも悲しいマイナートーンの歌ばかりだという印象があります」
と話すと、最新のCDの中から、“ド・ブルース”(いわゆる“ド演歌”のようなマイナートーンのスローブルース)と、対照的に明るい“踊れるブルース”(いわゆるRock)を聞かせてくれた。

最初に聞いたのは、彼の書いたオリジナル曲でド・ブルースの“Came UP The Hard Way”。
エディーはやおらギターを持って、目の前で弾き語りを始めた。





続いて、一転して明るい曲調の“ 'Good Times Are Coming' ”が流れると、エディーは今度はギターを置いて立ち上がり、軽くステップを踏み始めた。

予想外のエディーの生演奏を目の前で聴きながらふたつの曲を比べ、記者さんの顔色が変わっていくのがわかった。
「悲しいだけがブルースじゃない、どちらもブルースなんですね。ブルースはいろんな形に進化をしている音楽なんですね!」
そうして、エディーを真ん中にはさんで何故か一緒に私たちも踊り始めていた。

それを見てリンが「あなたたち、まるで“ダンシング・ジャーナリスト”ね!」というので、
「これは私にとって産まれて初めての“ダンシング・インタビュー”だわ」、と私が言うとエディーも大笑い。

そんなこんなで初めは硬い表情だった記者さんもすっかり打ち解けて、私たちの踊るインタビューは和やかに終了した。
女性3人に囲まれたエディーは旅疲れた様子もなくいたってご機嫌のようすだった。




最後に一緒に記念写真 

このインタビューは、私にとってももちろんとても意味深い、貴重なものとなったことは言うまでもない。
ありがとう、チーフ!



ギターを弾き始めるともう何も見えなくなる人。これほど絵になるブルースマンもそうそう存在しない



エディー宅を後にした私たちが向かったのは、シカゴのブルースライブハウス「Kingston Mines」。
今日はロニー・ヒックス(この日は彼が病欠のためピンチヒッター)と、マイク・ウィーラーのふたつのバンドが演奏する日。
あらかじめマイクに私たちが取材に行くことを伝えておき、ステージの合間にインタビューさせてもらった。
第一世代であるエディーの話をじっくり聞いたあと、第二世代の先鋒であるマイクのライブを聴けたのはとてもいい流れだった。




ブルースはあらゆる音楽のルーツであり、絶えず進化をし続けている音楽なのだ。

これを実感できたとても素晴らしい日だった。


急な取材にも快く対応してくれたエディー、マイク、ありがとう!
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