Life in America ~JAPAN編

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シカゴのブルースミュージシャンから、日本への愛のメッセージ ~その2 Magic Slim

2011-07-16 16:12:20 | がんばろう、日本。
マジック・スリム氏が待っていると指定されたところは、シカゴダウンタウンから少し北部にあるさびれた安モーテル。
受付で彼の本名(モリス・ホルト)を告げると、特に怪しむでもなく「あそこの部屋だよ」と指をさされた。
1階の奥のほうに、扉があきっぱなしになっている部屋が一つ見えた。
本当にあんなところにいるのか??

ちょっと緊張して開いている扉をノック。目の前にはで~んと椅子に腰かけて煙草をくゆらせている大男の姿が。
あの~、マジック・スリムさんですよね?という私に向こうもきょとん。
ルームサービスか何かとでも勘違いしたのか、それがどうした、というような雰囲気。

「こんにちは。私、SHOKOと申します。実は●●さん(マネージャー)からここでインタビューをするように言われてきました。お聞きですか?」
「へ?」
「いえ、ですから、あのう、日本のために何か一言メッセージをいただけないでしょうかと伺ったのですが」
「あーあー、そういやそんなこと言うとったなぁ・・」

かなりおぼつかない様子だったので、横に腰をかけて、耳元で大きな声でゆっくりと
「あのね、おじいちゃん(とは言わないが・・)、今日本は大変な状況にあるんです。今年のJapan Blues Festivalの冒頭で、過去にご出演のブルースミュージシャンの方々から応援メッセージをいただければと思いまして」
そして彼のリアクションに私は文字通り椅子から転げ落ちそうになった。

「え゛?日本で何かあったん?」


知らない・・・この人は何も知らないのだ。
じゃぁマネージャー氏はいったいどんな前ふりをしていたのか?「誰か来るってさ」くらいのもんだろう、きっと。
さすが、おおざっぱなアメリカ。
ざっくりとしたブルースミュージシャン。

3月に日本を大きな地震&津波が襲ったこと、死者・行方不明者を合わせると何万人もなること、
今もなお、人々は避難生活を余儀なくされていること、
その中で今年の「Japan Blues Festival」が開催されることになり、少しでも日本の人たちに希望と勇気を与えたいという意図から、過去出演のみなさんにコメントをいただいて回っていること・・・・をひとつひとつ一から説明した。

ようやく事の経緯がわかったスリム氏、快くOK。
ビデオを録るとわかり、ぼろぼろのTシャツの上に青いシャツを羽織り、すきっ歯の前歯をきちんと入れ直し、
テーブルの上にあった帽子をひょいと被って、瞬く間にただのじいさんからブルースマンに変身しスタンバイしてくれた。

メッセージはほんの20秒足らずの短いものだったけれど、とても今この場で一瞬で考えたとは思えないくらいちゃんとしたメッセージで、ちょっとじいんときた。
(このメッセージは是非青森の会場でご覧ください!)
無事に録画が終了したあとは、厚くお礼を言い、去年青森の方たちに頂いた「ねぶたの扇子」をお礼に渡すといたくお喜びのご様子。
とても気さくな、心の温かい人だった。


終わってみるとあっけなかったけれど、一人目のコメントがいただけて、しかもそれがマジック・スリム氏で、かなり肩が軽くなった。

しかし。
この年代のブルースマンというものは、本当に世情に疎いということを目の当たりにした。
きっと新聞も全く読まなきゃ、テレビも見ない、昼間は寝て夜出かけていくそんな毎日なんだろうな。
こんなビッグネームでも、ちゃんとしたホテルではなくこんなうらさびれたモーテルに泊まっているのだ。
以前Shun氏もブログに書いていたが、一部を除いてブルースミュージシャンはみな貧乏で、
保険にも入っていない(払えない)人たちが多いそうだ。何のかんの言っても、黒人たちの本当のの生活はこうなのかもしれない。



Thank you, Magic!


さて、家に帰ると、次の方からメールのメッセージが・・・


(まだまだつづく・・・)

シカゴのブルースミュージシャンから、日本への愛のメッセージ ~その1

2011-07-16 09:50:33 | がんばろう、日本。
毎年7月中ごろに青森で行われる、その名も「Japan Blues Festival」(今年は7/21から23まで)。
このブルース・フェス、私は残念ながら一度も行ったことはないのだけれど、
昨年、ひょんなご縁でこのフェスの存在を知ることとなり、以来、まるでわが町のお祭りのように近い存在になっている。

このフェスの面白いところは、シカゴのミュージシャンが“公式に”呼ばれて参加していること、
しかも、“Japan”の冠を配しながらも東京でも大阪でもなく、なぜか青森であるということだ。
昨年、主催者である青森の商工会議所青年部の方たちが下見に訪れた際、密着取材をさせていただいたご縁で
、どっぷりと「アオモリの回し者」になっている私。
だってなんだか応援したいんだもん 

震災の影響もあって、今年の開催はどうなるかと心配していたけれど、
「ブルースで日本を、東北を元気づけたい」という主催者の強い気持ちで実現することになった。
こうでなくっちゃ!

ところで、今回のフェスティバル開催にあたって「シカゴから何か届けられるものはないでしょうか?」、ある日そういう相談をいただいた。
シカゴではすでに義援金集めのためのコンサートなどもあちこちで行われていたし、いまさらお金じゃない気がしていたので、
「そんじゃ、過去に出演したシカゴのブルースミュージシャンから日本復興に向けた一言メッセージをいただいて、ライブの開演前にそのビデオを大スクリーンで流すってのはどうでしょう?」
うん、これはいい、ということでこの案採用。
そこで、言いだしっぺのこの私が過去の出演ミュージシャンのコメントをいただくという大役の一部を仰せつかうことになった。

シカゴで活動中の日本人ミュージシャン、ギタリストのSHUN(菊田俊介氏、今年のフェスに出演予定)と、ビリー・ブランチ&Sons of Bluesのピアニスト、Ariyo(有吉寿美人氏)にもそれぞれお願いし、Shun氏には昨年参加したネリー・タイガー・トラヴィスと今年参加予定のJ.W.ウィリアムスを、Ariyo氏には2005・2006年参加のビリー・ブランチ&Sons of Bluesのコメントをいただくことに。


★ ★

さて、私は残る過去の出演者を洗いざらいにあたることに(過去の出演者には高齢者が多かったためか、数人はすでに他界)。
とはいってもこの時期、シカゴのミュージシャンはアメリカ各地のブルースフェスや、海外でのフェスティバルへと遠征していくことが多いため、なかなかつかまえるのが至難の業。

まず、ようやく連絡がついたのが2009年に出演した大御所ブルース・ギタリスト、マジック・スリム氏(74歳)。
翌日からNYへ行ってしまいしばらくシカゴには戻らないということで一時はあきらめたが、
マネージャーから連絡が入り、NYへ向かう前の数時間なら時間がとれる、という。
それならば会いに行くしきゃない!
数年使ったことのない家庭用のホームビデオを取り出し、サウンドチェックを入念にし、彼が待っているとあるモーテルへと車を走らせたのだった・・・


(・・・つづく)