Life in America ~JAPAN編

I love Jazz, fine cuisine, good wine

Sheila Jordanという人。

2007-06-11 16:23:08 | music/festival
バークレー生活ももう長くないかもしれないとハラをくくったとたん、やれることはなんでもやっておかなければという気持ちに火がついた。あれもやっておくんだった!と後悔のないように、ここんとこカレンダーはスケジュールでぎっしり。

今日(6月10日)はそういうわけで、近所のJazz Schoolのワークショップに参加してみた。
“Vocal Masters Series”と銘打たれたヴォーカリストのためのワークショップシリーズの、本日が最終回。本日のレクチャラーは、アメリカのJazz史に間違いなく名前を刻むであろう女性ヴォーカリストの長老、Sheila Jordan(シーラ・ジョーダン)。名前は知ってはいたものの今まで歌を聴く機会がなかったので、先週あわてて図書館でCDを借りてきてじっくりと聞き込んだ。歌の中に彼女の人生すべてがしみこんでいる、そんな彼女の歌は私の大好きなタイプ。今日はいい話が聞けるかもしれないと胸が躍る

午後2時。Jazz Schoolの小さな教室には15~6人のシンガーたちが集合していた。ここは数年前にLedisiのレッスンを受けた思い出の教室。こんな小さな教室で天下のシーラ・ジョーダンのレクチャーがあるところがいかにもアメリカらしい。
最初の20分間は、彼女へのミニインタビュー。「あなたにとってJazzを歌うとは?」という茫洋とした質問に彼女はこう答えた。
「Jazz is freedom. Singing jazz is to express my life and all experience.(ジャズは私の人生そのものを表現すること)」。そしてこう続けた。「歳を重ねれば重ねるほど、より歌えるようになっていくの」。今年で80歳。その言葉はずっしりと重い。
歌うのには3つのIngredients(必要要素)があり、それは「to feel(感じること), To be able to listen(良く聴くこと), to take rythm with feet(足でリズムを取ること)」だという。

このあと、あらかじめサインアップしていた6人のシンガーたちが1曲ずつ歌ってそれにシーラがコメントしていくことになった。まずはウォーミングアップ。「私がJazzを歌う理由」をFブルース(ピアノ)に合わせて皆が即興で歌っていく。「娘が大きくなったから」「Jazzが好きだから」・・内容も歌い方も個性が出ていてこれはなかなか面白かった。
普段からレッスンを受けている人たちとあってシンガーは皆、それぞれに上手だった。オープンマイクに行くとよくこういうレベルの人たちにお目にかかる。シーラは彼女たちの歌そのものというよりも、「歌詞が良くききとれないわ。もっと息継ぎをちゃんとして意味を大切にしなさい」という基本的なことから「伴奏者たちにあなたがどう歌いたいかをうまく伝えるのもシンガーの役目」といったパフォーマンスのテクニカルなことを改めて教えてくれた。伴奏者はいつも同じ人とは限らない。初めて会った人たちに、自分のキーやテンポ、イントロ何小節か、エンディングは?など細かなところを即座に伝えなければ、演奏がちぐはぐになるばかりか演奏に間が空いて白けてしまう。すべての基本はコミュニケーションなのだ。
そして、最も心に響いたのはこのひとこと。
「作曲者が意図した美しいメロディーをなぜ変える必要があるの?オリジナルメロディーは何度歌ってもいいのよ。何度でも歌って自分の中に何かが芽生えたらそのとき初めて自由になりなさい」「スキャット?自分に合わないならやめておきなさい。醜いだけ。スキャットしないいい歌手はいくらでもいるわ。ナンシー・ウィルソンやアビー・リンカーンもそうね。特に“シュビドゥビ”はいけない。そのうち“shit”に聞こえてくるから」
奇抜なフェイクや長~いスキャットこそがJazzの真髄だという神話は大ライだ。彼女にこう言われると、心の迷いがスッキリして本当に気持ちよかった。

白熱のあまり20分の延長となり、それでもまだやりたそうだったシーラの情熱にどうしてもお礼がいいたくてレクチャー終了後ご挨拶に行った。シーラは握手する私の手を優しく引き寄せてあたたかなハグをしてくれた。その、あったかいほっぺの感触が今でも残っている。
「機会を作ってどんどん歌いなさい、そしてNever give up」。
貧しい環境に育ったシーラは、子どもの頃聞いたチャーリー・パーカーに「これぞまさしく私のやりたい音楽だ!」と感動し、彼のすべてのソロを夢中でコピーしたという。それが彼女の出発点だった。インターネットもi-podもJazz Schoolも何もない時代。自分の“全身耳”こそがたよりだったあの頃に、今こそ私も戻ろう。

※オススメの一枚
 Celebration: Live at the Triad [LIVE]
Cameron BrownのベースとのDeo。
祈りをささげるような味わい深い音が聴けます。

SHEILA JORDAN - BIOGRAPHY
b. Sheila Jeanette Dawson, 18 November 1928, Detroit, Michigan, USA.
Raised in poverty in Pennsylvania's coal-mining country, Jordan began singing as a child and by the time she was in her early teens was working semi-professionally in Detroit clubs. Her first great influence was Charlie Parker and, indeed, most of her influences have been instrumentalists rather than singers. Working chiefly with black musicians, she met with disapproval from the white community but persisted with her career. She was a member of a vocal trio, Skeeter, Mitch And Jean (she was Jean), who sang versions of Parker's solos in a manner akin to that of the later Lambert, Hendricks And Ross.

After moving to New York in the early 50s, she married Parker's pianist, Duke Jordan, and studied with Lennie Tristano, but it was not until the early 60s that she made her first recordings. One of these was under her own name, the other was The Outer View with George Russell, which featured a famous 10-minute version of "You Are My Sunshine".

In the mid-60s her work encompassed jazz liturgies sung in churches and extensive club work, but her appeal was narrow even within the confines of jazz. By the late 70s jazz audiences had begun to understand her uncompromising style a little more and her popularity increased - as did her appearances on record, which included albums with pianist Steve Kuhn, whose quartet she joined, and an album, Home, comprising a selection of Robert Creeley's poems set to music and arranged by Steve Swallow.

A 1983 duo set with bassist Harvie Swartz, Old Time Feeling, comprises several of the standards Jordan regularly features in her live repertoire, while 1990's Lost And Found pays tribute to her bebop roots. Both sets display her unique musical trademarks, such as the frequent and unexpected sweeping changes of pitch which still tend to confound an uninitiated audience. Entirely non-derivative, Jordan is one of only a tiny handful of jazz singers who fully deserve the appellation and for whom no other term will do.
(Copyright 1989-2000 Muze UK Ltd)
http://www.sheilajordanjazz.com/