Life in America ~JAPAN編

I love Jazz, fine cuisine, good wine

身の毛もよだつ映画。

2007-06-13 06:35:04 | movie


2006年に封切られ、大センセーションを引き起こした問題の映画『Jesus Camp』をやっと見ることができた。
「ジーザス・キャンプ」の名の示すとおり、「キリストに我が身を捧げ、キリストの“聖戦士”として“神の国”アメリカを取り戻そう」というサマーキャンプその名も“Kids On Fire ”を追ったドキュメンタリーである。
どんな宗教を信仰しようが自由なのだが、問題はこのキャンプが主に6歳から9歳までといういたいけな子どもたちを対象にしていること、そしてその内容が“洗脳”以外の何ものでもないことだ。参加している子どもたちのほとんどはhomeschooled children(学校に行かず在宅教育を受けている児童)。アメリカのhomeschooled childrenの75%がいわゆる福音派キリスト教徒(超原理主義とも呼ばれる)Evangelical Christians(エヴァンゲリカル・クリスチャン)の家庭の子どもたちで、彼らは産まれたときから両親によって「聖書は誤り無い神のことばであり、世界はすべて神の手にある。学校で教える進化論などの科学はでたらめで危険思想である」と洗脳されて育てられている。

映画にこんなシーンがある。
Leviという少年(13歳)が家で母親から教育を受けている。母親が彼にこうたずねる。「ここ数年でアメリカの平均気温は上昇しています。このことから地球温暖化は存在するといえるでしょうか?」Leviは即座に答える。「上昇といっても0コンマいくつの話。それは温暖化といえないよ。」母親は満足気に言う。「そのとおり!これはきわめて政治的な議論であって政治家が(ささいな事実を大げさに)利用して惑わそうとしているのよ。良く覚えておくようにね」。

もちろん、クリスチャンの大多数は自由派(リベラル)であり、beliefとevidenceの違いをわきまえた人たちである。しかし、このアメリカの人口の25%(なんと800万人)がこのような極右的なファンダメンタリストで占められている。ブッシュが2期も大統領に当選できたのは、厖大な彼らの票を取り込んだからというのは周知の事実。国の憲法を改正して同性愛や中絶を禁止しようとするブッシュ政権の動きも、彼らの思想が後ろにある。キャンプでも、ブッシュの等身大パネルに向かって子どもたちが英雄のように忠誠を誓うようなシーンがある。アメリカの政治とキリスト教原理主義者はもはや切りはなせない関係にある。

しかし昨今、若者を中心に原理主義から離れていく信者が増えはじめたことに危機感を感じた教団関係者が「このままでは神の国アメリカがくだらない信仰心のないやつらにのっとられてだめになってしまう。そうならないうちに子どもたちを未来の戦士に育て、将来アメリカ政治の中枢に送り込もう」と考え始めた。それがこのジーザス・キャンプというわけだ。
「ジーザ~ス!」と絶叫し、涙を流し、そして気を失う子どもたちの様はどんなホラー映画よりも恐ろしい。

このキャンプの主催者であり講師を務めるベッキー・フィッシャー女史はカメラに向かって平然と言う。「モスラムの子どもたちは5歳からイスラム教の教育を叩き込まれているのよ。こっちも早くやらないと世界はおかしくなってしまうわ」
(“I wanna see young people who are as committed to the cause of Jesus Christ as the young people are to the cause of Islam. I wanna see them as radically laying down their lives for the Gospel as they are over in Pakistan and Israel and Palestine and all those different places, you know, because we have... excuse me, but we have the truth! ”)
そしてキャンプで子どもたちにこう叫ぶ。「あなたたちは世界を変えることができるのよ!」

彼女は気づいているはずだ。自分たちが育てているのは間違いなく「第3次世界大戦」の兵士たちであるということを・・。
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