shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

ウルグアイの「赤盤」3種聴き比べ

2021-06-13 | The Beatles
 私が常日頃お世話になっているビートルズ専門店B-SELSが今週の木曜日、6月17日で開店3周年を迎えられる。初めてお店を訪れたのはちょうどポールの両国公演を間近に控えた2018年の秋だったが、その時はまさかこれほど親しくお付き合いさせていただくことになろうとは夢にも思わなかった。スタンパー1桁盤やら未知の各国盤など、このお店との出会いのおかげでその存在を知った超高音質盤も多い。店主のSさんにはいくら感謝しても足りないくらいだ。
 B-SELSで教えていただいた音の良い各国盤と言えば南ローデシア盤やトルコ盤が思い浮かぶが、手に入れた枚数で言えばウルグアイ盤が断トツに多い。ビートルズ本体やメンバーのソロだけでなくゼップやクイーンといった他のアーティストのアルバムも含めるとトータルで100枚近く買いまくったが、大雑把に言ってその3/4くらいが真空管を使った独自カッティングならではの高音質盤で、UKオリジナル盤とはまた違った濃厚な味わいの音が聴けて大満足! それもこれもレコードを買う時には先入観抜きで実際に音を聴いて購入を決めるというB-SELISM(?) のおかげである。
 私がウルグアイ盤に傾倒したきっかけは「McCartney Ⅱ」や「Band On The Run」といった一連のポールのソロ・アルバムだったが、私がSさんも呆れるくらいウルグアイ盤蒐集にのめり込んでいく決定打となったのが今日取り上げる「The Beatles 1962-1966」、つまりウルグアイの「赤盤」だった。「赤盤」と言えば私が初めて買ったビートルズのレコードであり、そういう意味で思い入れもハンパないのだが、そういった私的な事柄を超えた次元でウルグアイの「赤盤」の音は私を魅了した。
 「赤盤」マニアの私はこれまでインド、デンマーク、スウェーデン、ニュージーランド、イタリア、ベネズエラと様々な国の「赤盤」を買い集めて聴き比べてきたが、このウルグアイの「赤盤」はそれらの中でも頭一つ抜けていると言ってもいいくらい音が良い。具体的に言うと、真空管カッティングならではの中域の分厚い音が聴け、低音域は重低音よりもスピード感重視で切れ味抜群、音の抜けやバランスがとても良くて実に聴きやすいサウンドなのだ。又、他国の「赤盤」によくみられる “トラックごとの音質差” がほとんどないのも嬉しい。
 Discogsによるとウルグアイの「赤盤」には大きく分けて3種類のレーベル・デザインの盤が存在するようなのだが、結果的に私は3枚全部を入手できたので、今回はそれらの細かな違いについて購入順に書いていきたいと思う。
 まず最初に手に入れたのは1975年プレスの“Small Apple Logo”盤で、マトは機械打ちでそれぞれ YEX 905 / YEX 906、YEX 907 / YEX 908 となっており、なぜかSide-2の YEX 906 だけ消そうとした痕跡がある。盤の重量はディスク1が141gでディスク2が121gだ。音質的にはクリアーでクリスプ、スピード感溢れるサウンドが楽しめて文句ナシで、特に「Paperback Writer」の圧倒的なドライヴ感はUK盤をも凌ぐほど凄い。ウルグアイの「赤盤」を狙うならコスパ抜群のこのヴァージョンがオススメだ。尚、この“Small Apple Logo”レーベル盤には更にレーベル・デザインに2~3種類のマイナーなヴァリエーションがあるようだが、私は考古学的な視点からレコードを買っているわけではないのでさすがにそれらを全部集めようとは思わない。
 ということで本来なら最初に買った“Small Apple Logo”レーベル盤で大満足のはずだったのだが、残念なことにディスク2の盤質がイマイチだったこともあって、安くて盤質の良い盤に買い直そうと思って探していたところ、Discogsで他のウルグアイ盤を買おうとした時に偶然そのセラーが「赤盤」も出しているのを見つけ、$20という安さと送料アップ無しという好条件に負けて一緒に購入した。
 しかし届いた盤を見てみるとレーベルは私が意図した “Small Apple Logo” ではなく“Large Apple Logo”の盤だった。まぁDiscogsのセラーのレベルなんて所詮その程度のものと思っていたのでそれほど驚きはしなかったし、ウルグアイではなくアメリカのセラーだったこともあって盤はピッカピカ(^.^) マトを見ると“Small Apple Logo”盤とは違い、手書きで 05307-AR2 4-1-3/ 05307-BR2 4-1-1、05308-AR2 4-1-1-/ 05308-BR6 8-1-1 となっており、盤の重さはディスク1が147gでディスク2が144gだ。送り返すのも面倒くさいし、これはむしろカッティング違いの比較ができて面白いかもと思った私は早速聴き比べを開始した。
 一聴してわかったことは両者の音作りにはハッキリした違いがあるということ。具体的に言うと“Large Apple Logo”盤の方がより整然とした音がするのだが、ハチャメチャなエネルギー感(?)では “Small Apple Logo”盤の方一日の長があるのだ。もちろんこの“Large Apple Logo”盤単体で聴けば何の不満も感じないだろうしむしろ平均点を遥かに超える音質優良盤だとすら思うが、2種類を聴き比べてしまうとやはり “Small Apple Logo”盤の方に軍配を上げてしまう。これはあくまで個人の音の好みの問題だろう。とまぁこのように興味深い聴き比べも出来たことだし、ウルグアイの「赤盤」に関しては一応これで打ち止めにするつもりだった。
 しかし、それから1ヶ月ほど経って今度は eBayにウルグアイのプロモ白レーベル盤がドバーっと出品された。ウルグアイのプロモ盤ってどんな音がするんやろ?と興味を引かれた私は早速入念に出品リストのチェックを開始したのだが、その中にこの「赤盤」があり、しかも驚いたことに「APPLE RECORDS」という大文字活字体の盤(EX)と「Apple Records」という筆記体の盤(VG)の2種類の白レーベル「赤盤」が同時に出ていたのだ。自他共に認めるレコード・バカの私でもさすがに両方買う気にはなれなかったので、盤質表記の良かった大文字活字体盤の方を購入。同じタイトルの3枚目購入に $50はちょっと痛いが、白レーベル盤に対する好奇心が自制心を上回ってしまった。尚、後でわかったことだが、この白レーベル盤は通称 “Emergency Label” と呼ばれるもので、工場に通常の Apple Label が無かったため急遽作成したレーベルで少数出荷したものらしい。
 届いた盤を手に取ってみてまず驚いたのは盤の軽さで、ディスク1が106gでディスク2が121gと超軽量級。マトは“Small Apple Logo”盤と全く同じ機械打ちで、それぞれ YEX 905 / YEX 906、YEX 907 / YEX 908 となっており、Side-2の YEX 906 を消そうとした痕跡も同じだ。
 手に持った時の軽さから “薄っぺらい音がしたら嫌やなぁ...” と一抹の不安を感じながらレコードに針を落としたが、スピーカーから聞こえてきたのはそんな不安を吹き飛ばすような元気溌剌としたサウンドで、基本的には “Small Apple Logo”盤と同じと言っていい音作りだが、おそらくこちらの方がスタンパーが若いのか、そして溝の状態も抜群に良いのだろうが、よりクリアーでドライヴ感溢れるサウンドが楽しめた。何よりも音の芯がしっかりとしており、押し出し感がハンパないのがめちゃくちゃ嬉しい。ウルグアイの「赤盤」を3枚も買うバカは私ぐらいだと思うが、個人的にはこれは買って大正解だった(^o^)丿