津々堂のたわごと日録

爺様のたわごとは果たして世の中で通用するのか?

■井田衍義・歛法式令ー八・九 (6)

2018-04-30 07:43:02 | 史料

 ニ一
 ○百姓の姦曲を止る事
一下方の姦曲ハ不足より生し、且廉直ハ衣食足りて恥を知
 る所より生し候儀常の行にて候、まして御損引の節ハ不
 作して御土免に不足する処より下見いたし候ニ付、いか
 にもして下り米多き様に志候心目より見積候間、私欲に
 流レ申候、私欲に流レ候ヘハ本心を失申候、本心を失候
 得は姦曲なる謀に與し不届なる事共仕出申候、依之損引
 の場に指懸り以下躰申開候ても、耳に留り不申習にて
 候、されハ春の初御高札の表讀聞せ、先初の御ヶ條に有
 之候忠孝をはけまし夫婦兄弟諸親類にむつましく、召仕
 の者に至迄憐憫を加へ、家内之者共申合農業出精いたし、
 一家よく相治候上、五人組示し合之譯等精々教諭いた
 し、内外和上の上、我を勵に作出候事を心に懸、御損引
 に心懸候ては、中々御百姓は取續かたきものと相心得候
 様、尤非情の凶作ハ勿論、災害所にて地位相衰へいか躰
 にも定免に届兼候不作の村々は、不得止御損引仕候様相
 心得候儀、百姓共の勤方と合點いたさせ候取計庄屋・村
 役人の本務にて、御損引の世話いたし候事ハ、凶年の變
 務にて候、然處間にハ本務を忘れ變務に専なる取計い
 たし候様なる行苦々敷事ニ候、何事に不依、役人ハ不及
 申百姓にいたる迄本を務候儀肝要にて候故、勸農筋行れ
 候様厚世話加致候、譬(タトエ)同キ地味の田相割に有之、一方ハ
 手入肥存分に仕届一方ハ可也ニ致置、作毛出來之上下見
 いたし候ヘハ、手入れ肥存分仕届候方の田一歩舛もミ壹升
 餘も有之所、可也ニ致置候分の田ハ六七合ならて無之
 候、壹升餘の田ハ三石の籾有之處、六七合の田ハ貮石内
 外有之候、左候ヘハ一反ニ壹石の籾出來不出來有之、一
 町にてハ拾石程の違にて、一町作る百姓籾拾石取かち取
 後レ相見候、此境より曲直を生し候、凡下方之姦曲は不
 足より生し、廉直は衣食の足る所より生し候間、勸農筋
 に精を入、手入肥存分に仕届候様、御惣庄屋以下の役人
 百姓共の骨折同前に相心得、晝夜となく相勤候ハヽ、い
 つとなく一歩壹升の籾作出候様相成可申候、然るに貧窮
 者ハ肥の買入届兼任心不申事多、是等ハ厩こへ或ハかし
 き草肥又ハ山土削り芝堀溝の垢土なと、いつれも其地味
 に可應銭不入の肥しも有之候、然處右類之肥ハ心懸さへ
 厚有之随分出來可申候、冬中より田植迄の間追々に相備
 可申候、左候て夫々入わたし、地拵入念根付草浚水引等
 無怠、自然蟲入等之節ハ油差入等無間抜、夫々の手數抜
 不申候ハヽ、常並の百姓銭こやしいたし候様大かた出來
 可申候、然處一村之中には、農業には疎く御損引等ニは
 巧者なるもの有之、右勸農筋の取行ひいたし候場におゐ
 ては責を受候ニ付、不氣受ニ有之、却て村方之者を誘ひ
 教育の障に相成候、是等ハ速ニ遂吟味急度可申付候、尤
 親類五人組迄兼々示方届兼候子細相糺、五人組法急度行
 れ候様可申付候、尤下見の姦曲ため直し候事ハ、村々毛
 上見分之時分片遠所の下ヶ名の内數ヶ所に目印を付置、
 田主の名前等記し置、村近所又ハ方角能道端の田、片遠
 所の目印に引合毛上に目印いたし置、何レも名前承
 置、見圖帳の番畝等書抜置、村方の者知り不申様秘置、
 至秋下見帳仕出し、御惣庄屋内舛の節下見帳を見渡し、
 双方目印田の籾反引合、もし甲乙有之候ハヽ双方共舛を
 入、割起の不同有之候ハヽ其子細遂吟味、石見甲乙之譯
 可相分候、其節下見の主に相成候者共遂吟味、初春より
 教諭いたし置候廉直正道の筋に違、表裏の取計いたし候
 所糺シ候上にて、御法に背候段相達候ハヽ、屹ト御咎可
 被仰付候、教無して御咎二出し候得は御惣庄屋の荒打に
 も可相當候間、右之通教を初として咎を後にいたし候へ
 は、自然と正道に懐き姦曲を止メ可申候 

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