一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

猪か山賊か

2012-12-11 18:11:37 | 雑記


       翌日、多少の興奮といくばくかの惜別の思いを抱
      いて帰りのバスに乗った。
      こんどは南相馬ーー福島ーー東京の逆ルートである。

      途中の山越えは折からの紅葉と前日の雪がマッチし
      て目の覚めるような絶景だった。
      やはり美しさは自然のきびしさがあってこそ、
      ぬくぬくと暖まっていてはそれなりのものしか得ら
      れないのだろう。

      すると車掌(運転手)の声。
      「途中イノシシが出る……いや、イノシシのような
      歩き方をする人がいるのでシートベルトはお締めく
      ださい」

      そうか、イノシシか。いや、イノシシのような歩き
      方をする人か。笑った。

      地図でみると明らかだが、かなりの山越え(峠越え)
      だから、イノシシだって出るだろう。
      昔なら山賊だ。
     
      それにしても昔の人はよく歩いた。

      みちのくといえば芭蕉である。
      芭蕉が平泉を訪ねた後「尿前の関」(しとまえのせき)
      を越え、

        蚤虱 馬が尿する 枕元

      の句で有名な堺田の関守の家に泊ったのは陰暦の5月
      15日(陽暦7月1日)である。

      江戸を出て50日も経っていた。
      結局そこでは梅雨の大雨にたたられ2泊、ようやく
      尾花沢に向かうが、途中の山刀伐峠(なたぎりのとうげ)
      で四苦八苦、土地の若者に案内してもらってようやく
      峠越えをした。

      尾花沢では旧知の清風に会って気持ちもほぐれ、疲れも
      癒されたようで、10日間という長逗留になった。
      そこでこんな句をよんだ。

        涼しさを 我が宿にして ねまる也

      今や舗装された道路をバスで越え、句もつくれない私は
      新幹線に乗ってから爆睡した。

      (写真はバスの窓からみた紅葉と雪)
      
            
      
      

      
           

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