蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

資本主義の終焉と歴史の危機

2014年04月23日 | 本の感想
資本主義の終焉と歴史の危機(水野和夫 集英社新書)

先進国で相次ぐ低金利の定着は16世紀ころにも見られたことだが、フロンティアをなくしてしまった現代においてはその打開策はなく、資本主義はすでに終焉を迎えている。
従って、さまざまな資本主義的経済対策は無効であり、そうかといってこの先どうなるか、どうすべきかは、よくわからないので、とりあえず現状維持をめざしましょう、というのが本書の内容(だと思う)。

経済評論家と呼ばれ、一般読者向けに本を書いている人は、いわゆる一つのトンデモ系といえる人とそうでない人に分けられると思います。
トンデモ系といえば、浅●さんとか、副●さんとか、三●さんとかがそれに当たると思うのですが、本の売れ行きは、概してこうした人の方が良いようですね・・・

トンデモ系とそうでない人を分類する一つの方法(私の勝手な見方ですが)に、日経新聞がその人の評論等を載せているか否か、というのがあります。(そういう意味では、一時期、WEBのみ(だったはず)とは言え、日経系の代表的ビジネス雑誌が(どう見てもトンデモ系の三●さんの記事を連載していたのには少なからず驚きました)

さて、本書の著者水野さんは、日経紙上でもその寄稿を見ることしばしばでしたし、その内容もそれなりにアカデミックな印象があったのですが、本書の内容は少々、トンデモ系に近いものがあったような・・・(失礼)。
新書なので小難しい理屈は省いてあるだけなのかもしれませんが。
それにしても、悲観的な現状分析だけで、著者なりの解決案が全く示されないというのは、なんとも興醒めな読後感しか抱けません。
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転換期の日本へ

2014年04月23日 | 本の感想
転換期の日本へ(ジョン・W・ダワー、ガバン・マコーマック NHK出版新書)

共著者の一人、ダワーは、戦後の東アジア秩序は、サンフランシスコ条約によって形作られたが、同条約は参戦国のほとんど(ソ連、中国、朝鮮)が関与していない「片面講和」であり、このことが沖縄・米軍基地問題、曖昧な国境線問題、歴史問題、いわゆる核の傘論等、今に至っても解決しない諸問題の原因だとする。
一方、マコーマックは、日本はアメリカの属国であり、沖縄を中心とする南西諸島の人々に過大な負担を強いており、日本はこのような戦後レジームから脱却すべきとする。

***

ダワーさんのお名前はなんとなく聞いたことがあったのですが、お二人とも著名な歴史学者とのことです。しかし、その主張は、いささかナイーブすぎるというのか、学者臭すぎるというのか、現実感のないものに感じられました。

まあ、確かに日本って、アメリカ政府から見ると、(自らの連邦内の州に比べてさえ)ものわかりよい従順な同盟国なんだろうなあ、と思える現象は良くみかけますが、かといってちょっと前の政権党が、上記の主張をそのまま実現しようとして(本書の主張はこの党からでた最初の首相を代弁している(あるいはその後盾になっている)ような内容でした)、そんな人たちを選良としてしまった国民を赤面させるような結果を招いてしてしまったことからも、本書の主題は絵空事である、と言えるような気がします。

本書の後半は、共著者二人の対談がおさめらているのですが、考え方がほとんど同じ人を対談させても、あまり意味をなさないように思えました。
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