蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

おいしいごはんが食べられますように

2022年10月17日 | 本の感想
おいしいごはんが食べられますように(高瀬隼子 講談社)

食品包装資材のメーカーの社員の二谷は、同僚の芦川とつき合っていた。芦川は料理は得意だが、仕事の要領が悪く休みも多いので、職場では評価されていなかった。後輩の押尾は二谷を憎からず思っていて嫉妬心がある上に、同僚が芦川に気をつかっているのが気に入らなかった。押尾は二谷を巻き込んで芦川に嫌がらせをしようとするが・・・という話。

私はNHKの番組「サラメシ」が好きで、録画して何度も見返したりする。
本書のタイトルとほんわかとした表紙の装画から「サラメシ」みたいな話なのかと思って読んでみたが、内容は正反対のギスギスした筋立てだった。

定期的に二谷の自宅を訪れて夕食をつくり、泊まっていくほど、芦川とは深い仲なのに、二谷の方はこれっぽっちの愛情も感じていない。
芦川の作る美味な料理を平らげた後でさえ、二谷は(常食にしている)カップラーメンが食べたくて仕方がない、というシーンが特に印象的。二谷は腹がくちればそれでよくて食事というものに無関心なのだった。

押尾みたいに感情を表出させて本音に近いことを漏らさずにはいられない人は、近頃はみかけないような気がする。
二谷みたいな、表向きは穏やかでも、何考えているかわからない人はたくさんいるけど、そういうキャラを主役にして物語を愉快なものにするというのはなかなか難しい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 月の光の届く距離 | トップ | 台湾流通革命 »

コメントを投稿

本の感想」カテゴリの最新記事