蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

締め殺しの樹

2024年05月25日 | 本の感想
締め殺しの樹(河﨑秋子 小学館)

橋宮ミサエは、根室に生まれたが両親が亡くなって、新発田の親戚で育てられてたが、再び根室の吉岡家に引き取られることになる。吉岡家では召使のように家事労働にこき使われれる。勉強好きで、薬の行商人の小山田の援助もあり、根室の町の学校に進学し保健婦となる・・・という話。

前半、ミサエが吉岡家で奴隷のような扱いをうけても、自分の境涯を嘆かず、蛍の光、窓の雪を地でいく熱心さで夜中に教科書を読み耽るのだけを楽しみにしてけなげに、しかしたくましく生き抜いていくあたりが、あざとくて、お涙頂戴であっても、とてもよかった。

後半は小山田の息子(父親とちがって冷血漢)を敵役にしてミサエの苦労を描いているのだが、前半ほどの盛り上がりはなかったかな。ミサエの娘の運命が(ミサエにとっても)とても残酷で、お話しとはいえ、そこまでしなくていいだろ、と、著者を恨みたくなった。

締め殺しの樹というのは菩提樹のことで、菩提樹って太い幹の立派な木というイメージがあったが、ツタ系で、他の木に絡みついて、ついにはその木を枯らしてしまうことからあだ名がついたのだそうである。

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