蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

流れ星と遊んだころ

2015年02月07日 | 本の感想
流れ星と遊んだころ(連城三紀彦 双葉社)

大物俳優のマネージャの北上は、ふとしたきっかけで知り合った自分と同じ年頃の秋葉に俳優の素質を感じ、映画デビューさせようと画策する。そこに秋葉の恋人:鈴子もからんで・・・という話。

私にとって、叙述ミステリの最高作は「十角館の殺人」だったのですが、本作はそれに勝るとも劣らない出来栄えで、久々にミステリを読んで驚きを(しかも2回)感じました。

叙述ミステリでは重要なキーは大抵伏せられているのですが、本作は冒頭から完全にネタがオープン(1人称と3人称の書き分け)になっているのに、それでも騙されてしまうという豪快な技巧が使われています。
ジェットコースタームービー並に激しくストーリーが転変するので、読んでいて振り回される感じがするのですが、実はそれがトリックの一部にもなっています。終盤の入り口で叙述トリックの種明かしがあるのですが、それまで全く気づきませんでした。

最終盤まで(叙述トリックはあっても)ミステリ的要素はない話なのかと思わせておいて、実は堂々のフーダニットでもあることが最後の最後に明かされて、2回目の驚愕が訪れます。

さらにすごいなあと思うのは、叙述トリックもフーダニットも関係なしにラブストーリーあるいは芸能小説として読んでも十分面白いと思われることです。

著者の死去がきっかけであるのは極めて残念ですが、最近再評価が行われることによって本書を読むことができたのは、非常な幸運でした。
私が知らないだけかもしれませんが、本作はさほど世間での評価が高いようには思えません。しかし、ミステリを読み飽きたという人にこそおすすめしたい真の傑作だと思います。


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