蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

バカが多いのには理由がある

2015年02月11日 | 本の感想
バカが多いのには理由がある(橘玲 集英社)

この本の大部分は週刊誌に連載されたもので、掲載時から数週間後には著者のHPにアップされている。その大半をHP上で読んでいるにもかかわらずつい買ってしまったのは、かなり長目の(書下ろしの)プロローグ、エピローグがあったからだろう。

プロローグでは、人間には(直感的な)「速い思考」と(複雑な経路を頭の中で検索したうえで結論に達する)「遅い思考」があって、日常生活のほとんどが「速い思考」で営まれているゆえに、人間のほとんどは「バカ」だとしている。

エピローグでは、フェアトレードやNGOの欺瞞を暴いている。特にアフリカの一部で手足を切断される人が増えたのはなぜか?という疑問に対する回答(の仮説)は衝撃的だった。(ただ、いずれも単一ソースに依っているので、真実のほどは定かではないけれど)

プロローグ、エピローグ、また本体部分の多くが(著者独自の調査や思索ではなく)引用から成っているし、対立する見解の両方を取り上げて止揚するというよりは意外性がある方だけを取り上げて読者の興味を引こうとしているので、まんまと著者の商売に乗せられてしまっている、というわけだ。

まあ、しかし、世間一般のライターだったら、連載をHPに公開したりしないだろうし、相当に長いプロローグ、エピローグを書き下ろすこともしないだろう。読者サービスと商売を両立させようという著者の営業努力が感じられて、繰り返しになるけれど、ついつい買ってしまったのだった。

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