蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

グインサーガ124~126巻

2009年05月28日 | 本の感想
グインサーガ124~126巻(栗本薫 ハヤカワ文庫)

ミロクの巡礼、ヤーンの選択、黒衣の女王

ナリスの最も信頼する研究者で後のパロの参謀長でイシュトヴァーンの旧友という、運命の申し子のような経歴を持つヨナは、イシュトヴァーンの子を追って、ミロク教の聖地ヤガへの巡礼団にまぎれこむ。
この巡礼団は途中の草原地帯で野盗団に襲われるが、運命の子ヨナだけは突如現れたスカールに助けられる。
一方、イシュトヴァーンは、ゴーラの経営にも飽きてきて、昔の恋人リンダを落としてパロを手にいれようと千騎ばかりを率いてクリスタルをめざす。リンダはちょっと迷いつつもイシュトヴァーンの求婚を拒否する。

この3巻で最もおもしろかったのは、「ヤーンの選択」の終盤で、イシュトヴァーンがカメロンをいっしょにパロへ連れていこうと口説くところ。イシュトヴァーンの弁舌はとてつもなく巧みで、カメロンの弱点を突き、ついにカメロンは陥落してしまう。読んでいても「そうだカメロン、お前も正気を捨ててパロへ行け」なんて思わされてしまうほどだ。
結局、カメロンは正気に戻ってしまうのだが、そうでないストーリーにしてほしかった。

グインサーガで最も面白いのは英雄達の対決場面とかではなくて、この場面のような、主要キャラの長々とした会話場面だと思う。

100巻をすぎたころから、グインランドの観光案内みたいな感じの場面が多くて、そういうところは正直いって面白くなかったのだが、「ミロクの巡礼」で描かれたダネイン大湿原は例外的に興味深く読めた。

ここまで、5日前に書いたが、昨日(5月27日)に著者の訃報を聞いた。まだ56歳。せめて平均寿命までがんばれたら、きっと「豹頭王の花嫁」を読むことができたと思うのだが、残念無念。

今日の新聞によると129巻までは刊行されそうだという。あと三巻でどこまで進むかわからないが、126巻現在ではサイロンで黒死病がはやりはじめている。
今から30年近く前に出た最初の外伝「七人の魔道師」は、このあたりから始まる話で、外伝というより本筋中の本筋で、最もヒロイックファンタジーらしい内容だった。この「七人の魔道師」が書かれた中では、ストーリー上最も進んでいるエピソードになっているというのが、とても不思議な感じだ。

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