蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

次なる100年

2022年11月26日 | 本の感想
次なる100年(水野和夫 東洋経済新報社)

近年の先進国における長期金利の低迷は16世紀のジェノバの再現であり、現在はニクソンショックに端を発する歴史の危機にあるとする。金利が低迷するのは有望な投資機会がなくなった(=貯蓄が過剰になった)からで、これは反対からみると十分な社会資本が整備された豊かな社会が実現したことを意味する。これ以上の成長を目指すのではなく、ゆとりがある心の豊かさを感じられる生活を追求すべきである、とする。

水野さんというとバブル批判とかで、けっこう著名なアナリスト?だったような記憶がある。大学の先生になったせいか、やたらと論文チックに文献を引用(引用元を示す注だけで170ページもある!)して小難しい話にしているけど、言いたいことは昔とあんまり変わってない。ただバブルや金融危機はすべてウォール街のせいだ、というのは安っぽい陰謀論に聞こえる。

本文は700ページ余りあるのだけど、同じ話の繰り返しが多すぎる。もう少し整理して書いてもらいたかった。

日本の財政維持は再生可能エネルギーの開発に依存している(資源価格の高騰などにより経常収支の赤字が続くと国内貯蓄が減って国債の消化ができなくなる。再生可能エネルギーの開発を進めれば海外資源への依存が減り経常収支の悪化を防げる)という、一見トンデモ系かに見えた終章の前半の議論は意外と興味深かった。

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