蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

本を売る技術

2021年04月03日 | 本の感想
本を売る技術(矢部 潤子 本の雑誌社)

36年間大型書店中心に書店員をしてきた著者の体験談を本の雑誌の杉江さんがまとめたもの。題名通り、書店店頭での販売技術をドライな商人目線で解説している。

書店員というと、書籍に思い入れがあって、自分が読んで気に入った本を積極的に販売したいと思っているのでは?というイメージを持っていたのだが、矢部さんによるとそんなものは全くないという。(以下、引用)
***
-思い入れとかはないですか?私、この本すきなんだけどって。
(矢部)そんなことあるの?
-ええええ?!私、この本好きでPOP立てて売りたいからもうちょっと我慢しちゃおうかとか考えそうじゃないですか。
(矢部)えーっ?!だって今売れてないんでしょ?売れてない本を思い入れだけで一等地に置き続けるなんてことできるかな。棚下の平台くらいだったら考えられなくはないけど。
―じゃあ、一等地に一番好きな本や売りたい本を置くなんて考えられませんか。
(矢部)売れてる本ならいいけど。
―売れてないのは。
(矢部)あり得ない。
―自分が好きな本を売りたいし、だって売れたら倍うれしいじゃないですか。
(矢部)うれしくても、それがどうした(笑)。今入荷した本を置いたらそれの10倍売れるかもしれないもの。身も蓋もない言い方をすれば、早くお金に変わる順に置きたいと思いますよ。
***

本書を読むと、棚の担当者は一日中担当エリアを見回って補充や整頓をする必要があるらしく、雑用などに追われるとすぐに荒れてしまうそうだ。
昔の勤務先近くの本屋は大手チェーンの店だったんだけど、ある時から急に売り場の整理整頓がままならなくなって、荒れた感じになってしまった。しばらくしてスタッフが全部入れ替わった感じになって普通の書店っぽく戻った、なんてことがあったことを思い出した。
本(を読むのが)好きなだけでは、書店員ってつとまりそうにないな、と思った。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 王とサーカス | トップ | パブリック 図書館の奇跡 »

コメントを投稿

本の感想」カテゴリの最新記事